環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「NHK クローズアップ現代:広がる“においビジネス”」、20年前の懸念がついに今

2010-05-21 11:17:03 | 化学物質/アスベスト
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 試しに、「においビジネス」をグーグルで検索してみました。5,370,000件がヒットしました。「香りビジネス」では4,250,000件がヒットしました。

 3日前の5月18日(火)に放映された「NHKクローブアップ現代:広がる“においビジネス”」を見て、20年前の状況を思い出しました。そして、ついに、「ここまできたか」というのが印象です。今日はこの懸念を紹介しましよう。

20年前の“においビジネス”に対する私の懸念が、幸いにも1992年に刊行された私の最初の本「いま、環境エネルギー問題を考える」(ダイヤモンド社 1992年)の169~170ページに収録されています。その懸念は、20年後の今改めて読んでも、違和感はまったく違和感がありません。むしろ、3日前の「NHKクローブアップ現代」を見た直後の感想だと言っても通用するのではないかと、私自身は思っています。皆さんの判断はいかがでしょうか。

 ここで、20年前の私の懸念を紹介しておきましょう。

 
 ご覧にならなかった方のために、まず、NHKクローブアップ現代のホームページから「内容」を紹介します。

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消費不況が続く中、従来の視覚や聴覚ではなく、嗅覚に訴えかけるビジネスに注目が高まっている。大手の航空会社や自動車メーカー、さらに、進学塾やパチンコ店まで、幅広い業種がにおいを活用して、イメージアップや販売促進を狙っているのだ。こうした“においビジネス”を可能にしたのは、記憶力を高めたり、禁煙を手助けする効果があるとされる“機能性アロマ”や、10時間以上も香りを長続きさせる最新の“におい噴霧器”の開発だ。その一方、人工的な香りの氾濫によって、日本人がもつ繊細な“香り文化”が失われているのではないか、自然のかすかなにおいを教える必要があるのではないかという専門家の指摘もある。いま急速に広がりつつある“においビジネス”とどう付き合えばいいのか考える。
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 番組の前半では、環境にやさしい企業のイメージづくりや、モノが余っている中でいかに売り上げをアップするか、販売促進をするか、他社との競争を有利にするための戦略としての“においビジネス”の事例が紹介されています。

 番組の後半では、米国シカゴのカジノで柑橘系のにおいを室内に流すことによって、客が居心地よく、気分が高揚して長居をした結果、53%の売り上げ増につながった例が紹介されていましたし、シカゴのカジノで用いられた柑橘系のにおいを流しているパチンコ店がすでに日本にもあるとのことでした。

 米国シカゴのカジノや、それをまねた日本のパチンコ店の実例は、言葉は適切でないかもしれないが、まさに「人体実験」ではないでしょうか。この20年間に、日本では低濃度の化学物質の暴露により、数多くの「化学物質過敏症」「化学物質アレルギー」などの症状や「シックハウス症候群」など新築マンションにかかわる不都合が報告されています。このあたりについて、国谷キャスターとゲストの坂井信之さん(神戸松蔭女子学院大学准教授)の認識を拾っておきましょう。

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●ビジネス戦略や生活製品の一部として、いつのまにか鼻や皮膚を通して人工的な香りをかがされることで、健康への影響など心配はないのか?
そこが今、問題だとは思うんですけれども。まだ、人間が人工的な香料をかぎ始めてそれほど長い時間がたっていないということから、実際にそのような被害があるかどうか、まだよくわからないというのが現状です。それから、においの種類というのは、膨大にありますので、例えば食品添加物のように、このリストの中から使いなさいというような(安全)リストを作るのには、かなりな労力が必要なんですね。しかも毎日、作られつつあるということですから、なかなかそこの部分は難しいところだと思います。今、そういうところを、各種団体や行政がいろんな試みを行いながら、なんとか解決していこうと、工夫しているところです。
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 この対話に日本が「治療志向国」であることが読み取れるでしょう。また、私の20年前の本の記述からスウェーデンが「予防志向の国」であるということも容易に想像できるはずです。
  

混迷する日本⑲ EUの化学物質規制「REACH」のルーツは

2008-02-05 22:43:27 | 化学物質/アスベスト
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1月31日のブログ「混迷する日本⑯ 国際社会に大きな遅れをとった化学物質政策」 で紹介した新聞記事にEUの「REACH(化学物質の登録・評価・認可に関する規則)」という用語が出てきます。この用語を理解するのに役立つ記事が昨年5月31日の日本経済新聞に掲載されておりましたので、紹介します。1月31日のブログと合わせて読んでいただくとよいでしょう。




このEUのREACH規則のルーツはスウェーデンの化学物質政策です。つぎの図は1985年に制定された「化学製品法」の要点を示したものです。この法律は、1980年代後半から1990年代後半にかけてこの分野で世界の最先端を行く法律であったといってよいでしょう。製造者/輸入業者の責任が明示されています。とりわけ、化学品を評価し、正しい情報を使用者に提供するのは製品の製造者および輸入業者であるとして、「製造者/輸入者」の責任をはっきりさせています。


この法律は他の14本の環境関連法とともに、「1998年成立の環境法典」(99年1月1日施行)に統合され、つぎの図に示すように、環境法典の「第14条 化学製品およびバイオ・テクニカル生物」に引き継がれました。



関連記事
緑の福祉国家32 新しい化学物質の策定① 2つの判断基準 


参考資料

海外廃棄物・リサイクル動向セミナー
「遠くて近き環境先進国-ドイツ、近くて遠き環境先進国-韓国」

この資料の中には、スウェーデンに関して次のような記述があります。

スウェーデンでは自然の循環を乱すという点で、有害物質の削減を図り、RoHS(Restriction of certain Hazardous Substances)指令という有害物質に関する規制を決めている。また、そのような有害物質について、事前的に調査をしていくREACH(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals)という法律も定めている。

正しくは、「RoHS指令」「REACH規則」も1999年施行の「環境法典(環境コード)」という名の法律の「第14章 化学製品およびバイオテクニカル生物」に定められている規定です。

重要なことは、私たちがEUの最新の化学物質政策として理解している「「RoHS指令」や「REACH規則」のルーツが「スウェーデンの化学物質政策」にあるということです。



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混迷する日本⑯ 国際社会に大きく遅れをとった化学物質政策

2008-01-31 13:36:20 | 化学物質/アスベスト
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「健康に有害」あるいは「環境(生態系)に有害」な化学物質を製品に使うのは、むろん好ましいことではありません。化学物質を合成するとき、そして、それらの化学物質を製品として製造し、販売し、使用するときには、この2つの基準に照らして、適当かどうかを判断する必要があります。

皆さんは覚えておられるでしょうか。昨年5月2日のブログで、「日本の環境省によれば、2002年の時点でOECD加盟25カ国のうち生態系保全を考慮していないのは日本だけ」という記事を紹介しました。記憶を新たにするために再掲します。

この記事は今となっては5年前の記事ですが、その後日本の化学物質関連法がどうなっているかをお知らせしようというのが今日のブログです。次の図が示すように、2003年5月の通常国会で「化審法」(化学物質の審査及び製造などの規制に関する法律)を改正し、2004年4月1日から改正法が施行されました。これで、やっと日本は最下位から脱し、形の上では他のOECD加盟国並みとなったのです。


さて、今日の朝日新聞に次のような記事がありました。


同日の毎日新聞がもう少し詳しく背景を報じています。


やっとOECD加盟国と足並みがそろったと思ったら、海外の規制動向を踏まえて、再び来年の通常国会で、再生法案の提出をめざすのだそうです。福田首相が1月18日の施政方針演説で述べた「世界最高水準の環境関連技術」 を有する日本、「世界最高のエネルギー効率」を実現した日本、そして、安倍前首相が2007年1月26日の施政方針演説で述べた「21世紀環境立国戦略」を有する日本が国際社会の後を追いかけている図が見えてきます。残念ながら、ここにも日本が世界をリードしている姿は見えてきません。この記事に出てくる「EUのREACH規制」というのは、元をただせば、「EUのRoHS指令」と同様に、スウェーデン発の化学物質規制なのです。

関連記事

緑の福祉国家36 新しい化学物質政策の策定⑤ スウェーデン発の政策がEUを通して日本へ(07-05-06) 


つまり、ここでも次のような図式が認められます。「予防志向の国」スウェーデン vs 「治療志向の国」日本という構図です。




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「アスベスト」への行政の対応の相違をもう一度

2007-07-08 09:54:21 | 化学物質/アスベスト


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このアスベスト(石綿)に関する投書は、今朝の朝日新聞の「声」欄に掲載されていたものです。

米国科学アカデミーがアスベストの害について1971年に報告書を公刊し、早急な規制が必要なことを求めたそうです。投稿した植木 厚さんは「日本の役所が米国科学アカデミーの報告に即座に対応していたら、どれだけ多くの人の健康と生命が救われたか言うまでもない」と書いておられます。本当にその通りだと思います。

6月20日のブログ「アスベスト問題へのすばやい対応①」で紹介した「スウェーデンのアスベストにかかわる規制の推移」を再掲します。


植木さんが日本の政府に期待したことが実現するのに13年かかったそうですが、スウェーデンでは直ちに行政が対応していたことがわかりいただけるでしょう。治療志向の国と予防志向の国の対応の相違です。

このようにすばやい対応をしても、6月21日のブログ「アスベスト問題へのすばやい対応②」で紹介しましたようにアスベストによる「中皮腫」は確実に増えている傾向が見られます。この傾向を見れば、植木さんのご指摘が適切であると思います。



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「アスベスト問題」へのすばやい対応②

2007-06-21 08:03:45 | 化学物質/アスベスト


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ILOの専門家会議でアスベストの職業がんの発生が指摘され、WHOの国際がん研究機関の専門家会議でアスベストの発がん性が指摘されたのがともに1972年で、ILO条約で青石綿の使用禁止が勧告されたのが86年、WHOが青石綿と茶石綿の使用禁止を勧告したのが89年ですから、76年に「青石綿」を法的に全面禁止したスウェーデンの行政的決定は、特筆に値します。

規制の効果を反映して、アスベストによる健康被害の発生は80年代半ば頃までにピークに達し、現在ではほとんど報告されていません。ただし、アスベストが原因とされる中皮腫の潜伏期間は30年以上とされていますので、中皮腫の報告例が年々増える傾向にあるようです。

日本では、1975年に青石綿と白石綿の吹きつけが原則禁止されましたが、青石綿と茶石綿の使用が禁止されたのは95年で、白石綿も含めたアスベストの原則禁止は2004年10月でした。アスベストの全面禁止は2008年の予定だそうです。ここでも、行政の縦割りの弊害が問われます。
 

アスベストにかかわる日本とスウェーデンの行政対応の20年の落差は、大きな社会コストの差となって、21世紀前半の日本社会を直撃することになるでしょう。アスベスト問題は、私の環境論の考え方である「今日の決断が原則的に明日の状況を決めるという経験則」と「環境問題は蓄積性の問題」であることを理解する好例といってもよいでしょう。



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「アスベスト問題」へのすばやい対応①

2007-06-20 07:25:20 | 化学物質/アスベスト


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労働安全衛生分野も、スウェーデンが国際社会から高い評価を受けている分野です。スウェーデンのアスベスト(石綿)使用量は、50年代には5000トン、1965年頃には2000万トンに達しましたが、つぎつぎに規制が強化されましたので、84年には1000トンまで減少し、その後、商業用途は完全に禁止されました。
 
最初のアスベストの行政規制(労働安全衛生庁の指示書)がつくられたのは1964年でした。75年には、労働環境における制限値が決められ、76年には制限値の強化とともに、最も毒性が強いとされる「クロシドライト(青石綿)の使用」が法的に全面禁止されました。 

1986年には、法的な拘束力を持った総合的な規制が始まり、92年にはさらに規制が強化されました。92年の規制は、それまでの知見を集大成した新しい規制で、アスベスト問題を幅広くとらえています。アスベストはさまざまな用途に使われてきたので、建造物を解体するときにどうしたらよいか、粉塵用の安全防具はどうしたらよいか、医学的にどう監視していくかなど、規制の実効性を高める具体的事項が盛り込まれています。このような広範な対応は、「アスベストという物質が人の健康および環境に有害である」という科学的事実を理解すれば、当然のことです。

スウェーデンでは、アスベスト問題は「環境の酸性化(日本では、酸性雨問題)」との関連でも議論されました。環境の酸性化とは、化石燃料の燃焼で生じた、硫黄や窒素の酸化物が環境に与える影響のことです。環境の酸性化の影響で、過去に使われたアスベスト・セメント中のアスベスト繊維が環境中に放出しやすい状況にあることが、科学者の間で指摘されたからです。



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