環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

「ESDの10年」の最終年2014年に向けて、6年前の私の懸念が、今明らかに

2013-06-12 11:50:09 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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「ESDの10年」の最終年2014年まで残すところ1年足らずとなりました。国内外の経済的な激変の中で突然、「ESDの10年」と言われても何のことやらわからない方が多いかもしれません。

 「ESDの10年」とは「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)の10年」のことで、2002年に日本が国際社会に向けて提案し、採択されたプロジェクトです。私は2007年9月27日のブログ「「持続可能な開発」の概念⑤ 日本が国連に提案した「持続可能な開発のための教育(ESD)」の行く末は?」で、とりあげ、次のように書きました。

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 1992年のリオの地球サミットから10年後の2002年に、南アフリカのヨハネスブルクで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD。環境・開発サミット)」で、日本は「持続可能な開発のための教育(ESD)」を提案しました。この提案は採択され、2005年から2014年までの10年間、国連が中心となって推進されることになっています。

 持続可能性という概念は、環境だけでなく、貧困、人口、健康、食料の確保、民主主義、人権、平和、文化的多様性などを含む広範囲な問題を含む概念です。はたして日本は、この概念を十分理解して自ら提案した「持続可能な開発のための教育」の成果を上げることができるでしょうか。大いに疑問があります。XXXXX


 私のこの懸念に対する回答が、図らずもおよそ1ヶ月前(2013年5月15日)の参院予算委員会で明らかになりました。質問に立った谷合正明委員(公明党)と安倍総理大臣との質疑応答からです。


2013年5月15日 参議院予算委員会

谷合(たにあい)正明(まさあき)議員(公明党)の総理への質問
 公明党の谷合正明です。総理、連日の集中審議大変お疲れ様です。

 私もいただきました10分でですね、まず、質問させていただきますのは、これまでですね、わが国が国際社会でイニシアチブを発揮してまいりました「ESDの取り組み」、また「人間の安全保障の取り組み」について伺いたいと思います。

 来年の11月にですね、名古屋、岡山市におきまして、「ESD(国連持続可能な開発のための教育)の10年」が最終年を迎えることを受けまして、ESDに関するユネスコ世界会議が開催されます。「ESDの10年」というのは、2002年ヨハネスブルグ・サミットにおきまして当時の小泉総理が提案したもので、持続可能な開発のために、何と言いましても教育がきわめて重要であるというものであります。 で実は、岡山の京山地区では、1人の100歩より、100人の1歩を合い言葉に、公民館を拠点とした地域密着型の環境教育活動などが展開されています。また、被災地でも、東日本大震災の経験や教訓をESD推進に生かす試みもあります。

 このポストESDをにらみましてですね、日本が独自の取り組みというのを積極的に、今後、国際社会にアピールする必要もあると考えています。

 しかしですね、そうした一部自治体で積極的に行われているんですが、「ESDという言葉」自体がほとんど国民に浸透していないというのが実情であります。わが国がサミットにおいてこのESDを提案した時に、安倍総理は当時官房副長官として実際に現地に行かれて、このESDの実現に尽力されたというふうに承知をしております。

 そこで、質問いたします。
 来年のESD世界会議におきまして、名古屋、また岡山会合におきましては関係閣僚の出席を要請するとともに、総理のリーダーシップのもと、広報、啓発等、国民の関心を高めるなど、これまで以上に政府一丸の取り組みをすべきであると考えておりますが、総理の同会議成功に向けた決意を伺いたいと思います。


安倍総理大臣の答弁
 今、委員が、谷合委員がご指摘になったように、確かに2002年、ヨハネスブルグ・サミットに私もですね、同行しておりまして、「EDSの10年」という提案を会場で聞いておりました。

 そのときにはですね、確かに報道もされたわけでございますが、残念ながら現在では認識が高いとは言えない状況を、残念なことだと思います。

 「持続可能な開発のための教育の10年」はわが国が提唱して、国連総会決議が採択されたものでありますが、その最終年となる来年わが国で開催される名古屋市、岡山市で開催される世界会議に向けて今後とも引き続き政府をあげて、周知・普及活動にしっかりと取り組んでいく考えでございます。

 来年の世界会議ではこの10年間を総括をし、その先の取り組みの進め方について議論を行う予定でございます。会議を主催するわが国として指導的な役割を果たせるように、関係大臣の出席も含め、しっかりとした対応をしてまいります。


谷合委員の答弁
 動きをですね、ぜひ加速化していただきたいと思います。

 人間の安全保障について伺います。

               以下 省略


 経済成長を力強く語り、総理就任後海外歴訪を精力的にこなしてきた安倍総理の答は、一転してこの件では、私の6年前の想定どおり、紋切り型で期待できないものでした。テレビに映し出された安倍総理は答弁書を読みながらの答弁でした。来年11月に名古屋と岡山で開催されるという「EDS世界会議」では、日本からの報告よりも海外からの報告や提案に期待せざるを得ません。

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懸念される、今年6月に開催予定の国連の「持続可能な開発会議(リオ+20)」(2012-01-01)


名古屋市の関連HP
名古屋市:持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議の開催(最終更新日:2013年6月5日)

海図なき21世紀のグローバル市場経済の荒波に「スウェーデン・モデル」は有効か 持続可能な社会へむけて

2012-04-06 14:40:55 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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 今年2月1日にノルディック出版社からレグランド塚口淑子編「スウェーデン・モデル」有効か 持続可能な社会へむけてというタイトルの本が出版されました。

 私のこのブログでも、これまでに「スウェーデンの経済パフォーマンスが好調であること」を書いてきましたが、この本の「第2章 スウェーデンの経済と経済政策―経済・福祉・環境の共生」のはじめにで、経済学者の丸尾直美さんは次のように述べておられます。
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はじめに
スウェーデンをはじめとする北欧諸国は、福祉と環境を重視し公的資金をこれらの分野に多く割くという意味では「大きな政府」の小さな国である。それでいて、「小さな政府」の大きな国のアメリカに並ぶ、あるいはそれ以上の成果を経済面でも挙げている。福祉と環境面では、スウェーデンをはじめとする北欧諸国のほうがはるかに成績が良い。
 こうした事実を説明する一つの解釈は、アメリカ型と北欧型の二つの経済成長方式があるとの論である。それは規制緩和と企業活動の自由化で、利潤と投資を増やして企業を中心に経済成長し、その成果のおこぼれ(trickle down)で国民が豊かになるというアメリカ型経済成長と、福祉・分配・環境主導の北欧型成長方式である。
                          ―中略―

 スウェーデンのよい政策を日本で紹介しても、小さい国だからできたが、日本のような大国では無理だといわれたものである。しかし、スウェーデンで成功した政策が10~20年遅れで日本でも導入されることが多い。スウェーデンは小さい国だからこそよく見えるので、合理的な政策がとれるのである。スウェーデンはいわば「社会科学の実験工場」だと自覚してスウェーデンの良き政策から日本ももっと真剣に学ぶべきである。
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ついに、あの中谷さんも、竹中さんも「北欧の成長戦略に学べ」と ???(2010-01-05)


 ところで、私は編者の求めに応じて、「第4章 環境問題への対応は 『フォアキャスト』か、『バックキャスト』か」を執筆しました。そして、人類の歴史の中で初めて直面する「2つの大問題」というタイトルのもとで次のように書きました。
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 21世紀の半ば(2050年頃)までに、私たちは数百万年の人類の歴史の中で初めて直面する二つの大問題を否応なしに経験することになるであろう。どちらの大問題も、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、次の世代に「安心で安全な社会」を引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっている。
 一つは日本でも関心の高い「少子・高齢化問題」である。これは「人間社会の安心」を保障する年金、医療保険、介護保険、雇用保険などで構成される「社会保障制度の持続性」にかかわる問題である。つまり、人間社会の安心と安全が保障されるかどうか、という意味において「社会の持続性」にかかわる大問題なのである。しかし、この問題は基本的には国内問題である。
 もう一つはいうまでもなく、「環境問題」である。これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる、さらに大きな大問題なので、すべての経済活動の大前提として常に考慮しなければならない。
 環境問題の根本には経済活動が原因としてあるわけだから、この問題を解決するための具体的な行動は経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味する。
 先進工業国がさらなる経済規模の拡大を追求し、新興国(中国やインドなど)や途上国がそれに追従するという20世紀型の経済成長の延長では経済規模は全体としてさらに拡大し、地球規模で環境が悪化するにとどまらず、これから2050年までの40年間に人類の生存基盤さえ危うくすることになるであろう。
 この二つの大問題は私たちが、今まさに「人類史上初めての大転換期」に立たされていることを示している。
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 そして、この章の「おわりに」を次のように結びました。

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 21世紀のグローバルな市場経済の荒波を、先頭を切って進むスウェーデン丸は「精巧なコンパス」(科学者の合意)と「強力なエンジン」(政治主導の政府)を搭載した新造船で、「最新の海図」(自然科学的な知見)をたよりに、みごとな「操船術」(「社会科学的な知見」と「社会的な合意形成」に支えられた実現のための政策)を駆使して、2025年頃に、最終目的地である「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)をめざしている。
 現在は、国際的に20世紀の「経済規模の拡大」から21世紀の「環境に十分配慮した経済規模の適正化」への大転換期なので、判断基準の変更によって、20世紀の経済大国(具体的には日本を含めたG8の国々)が、様々な分野で相対的に国際ランキングの順位を落とす現象がみられるようになってきた.
 2000年以降に公表された様々な分野の国際ランキングをみると、21世紀の社会を模索するようなデータ(少子・高齢化、年金・医療保険・雇用保険などの社会保障や労働環境を含めた福祉、教育、ITなどの先端技術、環境・エネルギー分野など)の国際ランキングでは、スカンジナビア3か国(ノルウェー、スウェーデンおよびデンマーク)にフィンランドやアイスランドを加えた北欧5か国の活躍が目立つ.たとえば、2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の過酷事故後に再浮上した「日本国内の電力市場の自由化問題」がある。この問題でも、10年以上先を行く北欧諸国の経験は日本のこれからの議論に大いに役立つ情報を提供できるであろう。

・・・・・・・・(中略)・・・・・

 気候変動に象徴される21世紀最大の問題である「環境問題」への対応は、個々の環境問題の現象面に技術で対応するのではなく、拡大し続ける経済活動の規模を適正化して新しい社会を築くことである.めざすべき社会は日本で提唱されている「低炭素社会」ではなく、「低エネルギー社会」、さらには「エコロジカルに持続可能な社会」である。
 大阪万博からおよそ40年、北欧の国々が再び、私たちに続く21世紀後半の「まだ見ぬ世代が住む人間社会の明るい未来」のための舵取りを担うことになったのは、単なる偶然なのだろうか・・・・・ 
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 私たちがいま直面している「環境問題」に対する最も重要な判断基準は、「社会全体のエネルギー消費量を削減できるかどうかにかかっている」ということになります。「環境問題の根本的な原因は経済活動にある」「21世紀の経済成長はエネルギー・資源の消費を抑えて達成されなければならない」、これらの事実は「環境問題について私たちがみな共通に持つべき認識」のはずですが、残念ながら、日本ではまだ十分には共有されていません。

 フォアキャストする日本の政策決定にかかわる人々の「本音」としての危機意識およびそれに必然的に伴うはずの適切で有効な対応は、致命的といってもいいほど遅れているといわざるをえません。バックキャストするスウェーデンは、理想主義の国ではなく、理念に基づいた長期ビジョンを掲げ、行動する現実主義(プラグマティズム)の国なのです。

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フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン② フォアキャストvsバックキャスト(2007-07-21) 

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン③ 21世紀はバックキャストが有効(2007-07-22)


 この本のタイトルにある「持続可能な社会」には

①社会的側面(人間を大切にする社会であるための必要条件)
②経済的側面(人間を大切にする社会であるための必要条件)
③環境的側面(環境を大切にする社会であるための必要条件)

の3つの側面があります。スウェーデンは福祉国家を実現したことによって、これら3つの側面のうち、「人間を大切にする社会であるための必要条件」つまり「社会的側面」と「経済的側面」はすでに満たしているといってよいでしょう。しかし、今後も時代の変化に合わせて、これまでの社会的・経済的な制度の統廃合、新設などの、さらなる制度変革が必要になることはいうまでもありません。

 この本は第1章から第10章までの10章で構成されています。10章のうち、私が担当した第4章を除いた各章が①社会的側面あるいは経済的側面の最新の情報を提供しています。90年半ば以降、スウェーデンの社会的側面および経済的側面が新たな展開をしていることに注目してください。

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21世紀のモデル探し-スウェーデンは21世紀のモデルたり得るだろうか-(2010-10-31) 




  

懸念される、今年6月に開催予定の国連の「持続可能な開発会議」(リオ+20)

2012-01-01 10:46:27 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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新年あけましておめでとうございます。

2007年1月1日に開設した私のこのブログは今年で6年目を迎えました。

 国際的には昨年から引き続く経済的、社会的な混乱と今年予定されている政治的なリーダーの交代、日本ではそれらの国際状況の混乱に加えて、東京電力福島第一原発事故の混乱で、国内外ともに、上の図で示した混乱の予想が現実化して、誰の目にもわかるようになってきました。

 この機会に、ともすれば忘れがちな国際社会の環境・エネルギー分野の大きな潮流を思い起こしておきましょう。 私の環境論では環境/エネルギー問題は、目の前の国内外の経済的・社会的問題よりもさらに大きな 「市場経済を揺るがす21世紀前半の最大の問題であるはず」だからです。

 私は、1972年にスウェーデンの首都ストックホルムで開催された「第1回国連人間環境会議」(ストックホルム会議)の翌年の1973年からおよそ40年にわたり日本とスウェーデンの環境・エネルギー政策を同時進行でウオッチしてきました。

 この過程で、およそ30年前の1983年に、初めて「持続可能な開発」という言葉に出会い、それ以来、私は「持続可能性(Sustainability)」という概念に強い関心を持ち続けてきました。

この言葉を初めて目にする方もおられるかもしれません。英語では「Sustainable Development(SD)」というのですが、1980年に国際自然保護連合(IUCN)、国連環境計画(UNEP)などがとりまとめた報告書「世界保全戦略」に初めて使われ、以来広く使われています。

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「持続可能な開発」の概念① この言葉との初めての出会い(2007-09ー22)


 おおよその意味は、 「現在ある環境を保全するだけではなく、人間が安心して住めるような環境を創造する方向で技術開発し、投資する能動的な開発」、「人間社会と、これまで人間の経済活動によって破壊されつづけてきた自然循環の断続を修復する方向の開発」ということです。

 1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年で25年が経ちました。

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「持続可能な開発」の概念② 日本の意外なかかわりかた(2007-9ー24)

「持続可能な開発」の概念③ 日本でも翻訳された「ブルントラント報告」(2007-09ー25) 

「持続可能な開発」の概念④ ブルントラント報告の要点(2007-09-26)

「持続可能な開発」の概念⑤ 日本が国連に提案した「持続可能な開発のための教育(ESD)」の行く末は?(2007-09-27)

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」、1992年の「地球サミット」は、その後は?(2007-09-28)

「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本(2007-09-30)



 21世紀にめざす「持続可能な社会」が大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される現在の社会を延長・拡大した方向にはあり得ないという、このブログでこれまで述べてきた議論は、1992年6月の「地球サミット」での議論と、その結果まとめられた数々の合意文書でも明らかです。

 地球サミット=国連環境開発会議(UNCED)=は、20年前の1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された、国連主催の環境と開発に関する国際会議です。「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」「森林原則声明」「環境と開発に関するリオ宣言」(ここで、「持続可能な開発/社会」という考え方が提案されました)や、「アジェンダ21」などが採択されました。翌年には、地球サミットの合意の実施状況を監視し、報告するために、国連経済社会理事会によって「持続可能な開発委員会」が設立されました。

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あれから40年、2010年は混乱か?―その1(2009-04-09)




 そして、20年を経た今年2012年、国連は、1992年の「地球サミット」の20周年を記念して、6月20~22日に再びブラジルのリオデジャネイロで 「持続可能な開発会議」(リオ+20)を開催する予定です。私の懸念は、日本のマスメディアが昨年から引き続くグローバル社会における国際的、国内的な政治、経済、社会の混乱や東日本大震災とそれによって引き起こされた福島第一原発過酷事故のフォローに忙しく、さらに大きな、そして、もっと基本的な「人間社会の持続可能性」という重要性に、今なお思いを馳せる想像力が欠けてきているのではないかということです。

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地球サミット20年:日本とスウェーデンの対応の相違(2011-02-26)

2つの大問題――「少子・高齢化問題」と「環境問題」、日本社会に求められていることは何か?

2011-01-02 08:36:55 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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人類の歴史はつねに「経済規模の拡大」の歴史でした。 「経済発展(成長)」は、自由主義者や新自由主義者、保守主義者、民族主義者、ファシスト、ナチ、レーニン主義者、スターリン主義者など、イデオロギーにかかわりなく「共通認識」として共有していた考え方で、その必要性については、イデオロギー間にまったく意見の相違がありませんでした。つまり、20世紀には、「経済発展(成長)」は疑問の余地がないほど当然視されていたのです。

しかし、これら2つの大問題、「少子・高齢化問題」と「環境問題」はともに、この「経済発展(成長)」という考え方と無条件に同調するものではありません。

まず、米国を除くすべての先進工業国が共通にかかえる「少子・高齢化問題」から派生する問題のなかでは、「年金制度の持続性」が緊急の課題です。年金はいうまでもなく、生産活動から離れた世代への支払いですから、経済的にはコストでこそあれ、発展に寄与する要因ではありません。
 
つぎに、「環境問題」。この解決のために、経済規模の「拡大」から「適正化」への大転換と、現在の「持続不可能な社会」から21世紀の「持続可能な社会」への大転換が必要であることは、すでに昨日のブログで述べたとおりです。

サミット参加8カ国(G8)のなかで、これら2つの大問題の影響をいちばん強く受けるのは、私たちの国、日本であることは明らかです。
 
なぜなら、日本は先進工業国のなかで少子・高齢化の速度がいちばん速い国であるにもかかわらず、対応がたいへん遅い国だからです。そして、日本のあらゆる社会的・経済的な仕組みが経済規模の拡大を前提につくられ21世紀になっても、国の政策は経済拡大ばかりを考え、表面的にはさまざまな分野で変化しているように見えても、基本的な部分にほとんど抜本的な変化が見られないからです。

いま、日本に求められているのは、「行き詰まった年金制度」を21世紀の社会の変化に耐えられる「持続可能な年金制度」につくりかえること、そして世界に先駆けて21世紀最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」の解決に道筋をつけ、21世紀前半にめざすべき日本独自の「持続可能な社会」をつくる勇気と強い意志、そしてすばやい行動力です。


このような視点から今年も、国際的に、そして日本社会に起こる様々な事象について、もう一つの視点を提供していきたいと考えています。   
 

8年前に 日本の若手国会議員が示した日本の「モデル国家」

2010-11-01 20:55:31 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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10月25日のブログで、現在の日本は「持続可能な社会」を構成する3つの側面、①経済的側面、②社会的側面、③環境的側面のいずれもが不十分で、先進工業国の中で21世紀にめざすべき「持続可能な社会」の実現が極めて困難な国であることが明らかとなりました。

10月31日のブログでは、そのような日本が21世紀のさまざまな問題を解決し、「21世紀に求められる持続可能な社会」をめざすのに、どんな国が日本のモデルとなるかを考え、私はスウェーデンが日本のモデルになりうるという考えを示しました。

ただし、私がここで考えているスウェーデン・モデルというのは、いわゆる「高福祉高負担」として知られている20世紀の「福祉国家」スウェーデンではなく、21世紀の「エコロジカルに持続可能な社会」の構築をめざしている「現在のスウェーデン」の方向性です。



今日のブログでは、日本の若手国会議員が8年前の2002年8月に示した見方(願望?)を紹介しましょう。次の記事をご覧ください。


この記事が報じる「日本がモデルとするべき国」をまとめたのが次の図です。

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希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!(2008-03-30)

希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)


 

21世紀のモデル探し-スウェーデンは21世紀のモデルたり得るだろうか-

2010-10-31 22:34:37 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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10月25日のブログでは、 「2010年の日本の混乱」を検証するために今年4月以降に出版された著名人による一般向けの本3冊を取り上げてみました。辛坊治郎さん兄弟による『日本経済の真実』(幻冬舎)、田原総一朗責任編集による『絶対こうなる! 日本経済』(アスコム)、そして、辛坊治郎さんの『日本の恐ろしい真実』(角川SSコミュニケーションズ)です。

大変困ったことに、上記の3冊の本が明らかにしたことは現在の日本が「持続可能な社会」を構成する3つの側面のうち①経済的側面(辛坊さんの「日本経済の真実」および田原さんの「絶対こうなる日本の経済」)でも、②社会的側面(辛坊さんの「日本の恐ろしい真実」)でもひどい状況にあるということです。さらに加えて、私がこれまでにこのブログや本で言い続けてきた①や②よりもっと重要な③環境的側面でも極めて不十分なこと、つまり、日本は先進工業国の中で21世紀にめざすべき「持続可能な社会」へ転換することが極めて困難な国であることが証明されたことです。

そして、この3冊の本に共通の致命的な欠陥は、他の多くの21世紀論と同様に、「資源・エネルギー・環境問題」がほとんど(まったくと言ってよいほど)考慮されていない上に、従来型の(20世紀型の)経済成長が前提になっていることです。21世紀の市場経済を揺るがす最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」を考慮しない経済論などは絵に描いた餅です。

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「経済学者」と「工学者」の見解の相違(2007-12-30)

「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本(2007-09-30)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-22)
 
低炭素社会と原発の役割 再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)


国際社会の動きにたえず振り回されている感がある日本の「21世紀前半のビジョンづくり」のために、モデルが必要でしょうか。日本は20世紀には欧米をモデルにしてきたわけですが、21世紀は果たしてモデルなしでいけるかどうか、おそらく、上記の結果に加えて、今までの経緯から考えますと、日本にはモデルが必要だと思います。

そうであれば、どこがモデルたり得るでしょうか.今までの私の経験からすると、おそらくスウェーデンが21世紀のモデルになるだろうという感じがします。

ちょうど10年前の2000年3月10日に、(財)スウェーデン交流センターが主催した私の講演会1999年9月18日 北海道石狩郡当別町のスウェーデン交流センターで開催) を収録したブックレットが発行されました。



この66ページのブックレットから、当時の私が将来をどう考えていたかということと、講演の結論を抜き出しておきます。10年後の今、読んでみてもまったく違和感はありません。


 

関連記事
希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!(2008-03-30)

希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDF)


 

1992年の 「地球サミット」 当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違

2010-09-13 13:44:47 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年で23年となります。

ブルントラント報告が公表される以前から、発展途上国への援助を通して「持続可能な開発」を試みてきたスウェーデンが描く「持続可能な社会」の環境的側面の要約が、92年の地球サミットの前年(91年10月)に、スウェーデン環境保護庁から公表されています。


10月に名古屋市で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議=国連地球生きもの会議)との関連で言えば、上の図の⑧がわかりやすいと思います。この判断基準に従えば、70年代頃までは、日本のどこにでもいたメダカやドジョウ、タナゴなどの魚、フジバカマのような野草は、今絶滅が危惧されていますし、日本の普通の風景であった里山や棚田の現状を見れば、日本の状況の厳しさが実感できるでしょう。

最近の状況は、日本では3155種が 「絶滅危惧種」 になっているそうです。



次の図はスウェーデンと日本の環境政策の長期目標を比較したものです。

スウェーデンの目標は1991年、日本の目標は1995年に公表されたもの。両国には明らかな認識の相違がみてとれます。スウェーデンの長期目標は翌92年の「地球サミット」で署名された「生物多様性条約」の一歩先を行くものでした。ここに、スウェーデンの先見性を見ることができます。「生物の多様性」に対するスウェーデンの認識は92年の地球サミット以前からのものですが、これがスウェーデンが現在めざしている「エコロジカルに持続可能な社会」(緑の福祉国家)を実現する必要条件の1つとして認識されていることにご注目下さい。

この認識は2003年8月にスウェーデン環境保護庁によって16番目の「環境の質に関する政策目標」として提案され、国会の承認を得て、2005年11月から正式に16番目の「環境の質に関する政策目標」となりました。政策目標の達成期限は2020年です。この目標は16の環境の質に関する目標のうち最も達成が難しい目標の1つと見なされています。


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私の環境論10 生態系の劣化(2007-01-20)

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10月の 「COP10」 議論される2つの主要テーマ 「名古屋ターゲット」 と 「名古屋議定書」

2010-09-12 10:21:39 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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9月9日のブログで、

21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロがなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」であり、「生物多様性の保全問題」と言えるでしょう。

と書きました。

これら2つの問題は「増加する人口とそれに伴う経済活動の拡大」と「有限な地球の許容限度」との関係の厳しさを示しています。「気候変動問題」が先進国と新興国や途上国、あるいは先進国間での思惑の違いから十分な成果があげられないままに、それでも、一定の共通認識が国際社会で共有されるところまできましたが、もう一つの「生物多様性の保全問題」はどうでしょうか。

気候変動問題は1997年に「京都議定書」が策定され、現在に至っていますが、「生物多様性の保全問題」については、来月に名古屋市で開催される「生物多様性条約第10回締約国会議(国連地球生きもの会議=COP10)」で、「名古屋ターゲット」「生物資源の利益配分」についての国際ルールとなる「名古屋議定書」の策定が期待されています。


今日は、来月名古屋市で開催される「COP10」の議論についてまとめておきます。

次の記事が示しますように、「生物多様性条約」は、1972年の「第1回国連人間環境会議」(ストックホルム会議)の20周年に当たる1992年に開催された「地球サミット」(環境と開発に関する国連会議)で、「気候変動枠組み条約」と共に署名されたものです。ですから、署名からすでに18年が経っています。



9月4日の朝日新聞に掲載された記事「いちからわかる 地球いきもの会議」によりますと、「生物多様性条約には193カ国・地域が参加しており、10月に開催される生きもの会議はその総会で、150カ国以上の閣僚が出席する国際会議だ。開催国・日本の環境相が議長になる。会場では自然保護に携わるNGOや企業も、取り組みを紹介するイベントを開く。政府は、期間中に約8千人の来訪を見込んでいる」とのことです。

まったくの余談ですが、私がこの記事を読んだときに真っ先に思い出したのが2008年5月20日の朝日新聞が「会議で出るCO2相殺 1万1300トン 30年かけ吸収」という見出しで報じた松沢成文・神奈川県知事のお粗末な「CO2削減対策」と、その説明を聞いた当時の高村外務大臣の認識でした。 


本題に戻ります。5月11日の朝日新聞は、この条約が2002年に掲げた「2010年目標」が達成されず、失敗に終わったと報じています。


生物多様性条約には、次の図が示すように、

①生物多様性を守る
②生態系の恵みは、回復が追いつく範囲で利用していく
③植物や微生物などの生物資源(遺伝資源)を採取して利用したときは、その利益を原産国にも適切に配分する

という3つの目的があります。

来月10月に名古屋市で開催される「COP10」で話し合う基本テーマは2つあります。

1つは2020年までに達成すべき世界目標「名古屋ターゲット」(条約事務局の原案では、世界の海に占める海洋保護区の割合や増すべき資金の規模など20項目の目標が挙がっている)をまとめること。

もう1つは目的の3番目「生物資源(遺伝資源)の利用と利益分配」(ABS:ABSは植物や微生物などの遺伝資源を使って開発した商品の利益を、資源提供国にも還元すること。これまでは任意の国際ガイドラインで各国の国内法に従い事前契約を結ぶように求められていた)のための国際ルール「名古屋議定書」を策定すること
 


さて、10月に開催されるCOP10のルーツは1992年の「地球サミット」であったことがわかりました。それでは、18年前の地球サミットおよびその後の国際社会での日本の振るまいや環境問題に対する基本認識はどのようだったのでしょうか。次の関連記事をご覧ください。

このブログ内の関連記事
1992年の地球サミット:「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(2007-12-04)

私の環境論4 21世紀も「人間は動物である」(2007-01-14)

私の環境論5 動物的な次元から逃れられない人間(2007-01-15)


明日は、地球サミットの前年、つまり、1991年当時のスウェーデン政府の環境に対する基本認識を探ってみます。




ニューズウィーク誌 の 「世界のベスト・カントリー 100」  スウェーデン3位、 日本9位

2010-09-05 20:50:16 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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ワールドカップ、オリンピックを忘れよ、ミス・ユニバース・コンテストも。
Newsweekはブローバルな真のチャンピオン国家を検証するために、経済、政治、健康、生活の質で国家をランク付けする。



こんな書き出しで、3週間前の2010年8月16日、米誌『Newsweek』(電子版)「THE WORLD‘S BEST COUNTREIS」と題して、上位100カ国のランク付けの結果を公表しました。

次の表は、私がこの調査報告の上位100カ国の中から、「上位10カ国」および「その他の先進国・新興国9カ国」を抜き出し、総合順位とスコアおよび各分野ごとの順位とスコアをまとめたものです。



●ニューズウィーク誌:世界の「ベスト・カントリー」 ランキングでフィンランドが1位!


8月20日の朝日新聞はこの調査報告を次のように伝えています。



また、『ニューズウィーク日本版』(2010年9月1日号)も、この調査に基づいて「世界の成長力&幸福度ランキング」と題する、26ページの特集「本誌初の『ベスト・カントリー』ランキング 健康で安全で裕福に暮らせる国の意外な条件とは」(ラーナ・フォルーハー:ビジネス担当)を組んでいます。
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現時点では、どの国に生まれれば、最も健康で安全に、裕福に、そして生活水準を高めやすい環境で生きられるか――この問いに答えるため、本誌は初めて「生長力&幸福度国別ランキング100」を作成した。

このランキングでは、国民の幸福にかかわる5つの側面――教育、健康、生活の質、経済活力、政治的環境――に着目し、それぞれの項目について100カ国の点数を算出。それを指数化して総合ランキングを割り出した。このランキングはあくまで08年と09年の状況を切り取ったものだ(今回のランキングでは、できる限り最新のデータを使用した)。歴史的な推移を明らかにするものでもないし、未来を予測するものでもない。

ランキング上位には、実にさまざまなタイプの国が並んでいる。活力があり、健全で、幸せな社会を築く方法は、1つではないのだ。この点は、世界の国々の政治指導者や政策担当者が頭に入れておいたほうがいいだろう。
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この特集に掲載されている10本の記事のうち、私のこのブログのテーマに直接関連する次の記事を紹介します。

●尺度 国の経済状況を測るには有効だが環境破壊などは示せないGDPは時代遅れ?
 いま求められている繁栄の新たな指標とは、GDPに代わる「幸福度」という指標
 クリストファー・ディッキー(パリ支局長)

また、この特集にはこの調査で使われた「ランキングの評価方法」が示されています

しかし、このランキングの評価方法の項目を見る限り、Newsweekのこの特集記事は未だに「20世紀の発想の域」を出ていないように思います。21世紀の国際社会はには20世紀の発想では解決できない難問が山積しています。その最大の問題が「地球規模の環境問題」だからです。

このブログ内の関連記事
私の環境論14 環境問題は経済の「目的外の結果の蓄積」(2007-01-24)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-09)


これらの山積する問題は技術では到底解決できない問題です。これらの問題をコントロールするために、経済成長を各国間で分かち合わなければならなくなったとき、これらの問題に対して技術的にではなく、経済的、政治的にどう対処すべきを考えると、民主主義に基づいた組織機構が何よりも重要な手段となります。

このブログ内の関連記事
21世紀の資本主義、その行方は???(2008-03-30)


ですから、総合ランキングの第3位に位置づけられたスウェーデンが「政治的環境」の分野で、第1位にランクされていること(この分野は日本の最も弱い部分。日本は25位) は特筆すべきことだと思います。この分野で菅首相がお手本にしているとマスメディアが報ずる英国は、今回のNewsweekの調査結果でも、また、3年前の次の関連記事でも日本より評価が低いことが気になるところです。 

このブログ内の関連記事
EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)


     

「21世紀型経済の持続性」が現時点でEU内で最も高いと判断されたスウェーデン

2010-08-09 20:02:07 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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8月1日の朝日新聞の社説の「菅直人首相が、スウェーデンの名をよく口にする。目標に掲げる『強い経済、強い財政、強い社会保障』を実現した国としてだ。この北欧の国は、日本のモデルになるのだろうか」という問いかけに対する、私の個人的な回答は「21世紀に日本が進むべき方向を知るモデルになり得る」というものでした。


その1週間後の8月7日付けの日本経済新聞は、欧州の独立系シンクタンク「欧州政策センター(EPC)」が今年6月16日に公表したEU加盟27カ国の「中長期的な経済持続可能性」のランキングを、次のように報じています。


この記事の出典は「European Economic Sustainability Index June 2010 By Fabian Zuleeg」で、EU加盟27カ国のランキングと判定は次のとおりです。


この調査に用いられた6つの分野の判断基準は「20世紀型経済の持続可能性」を検証する判断基準であっても、「21世紀型経済の持続可能性」を検証する判断基準ではありません。ですから、今日は、この調査の判定結果をもうすこし広く、私の専門分野である「資源・エネルギー・環境の視点」を加味して、「21世紀型経済の持続可能性」を考えてみましょう。「私の環境論」では、2010年1月18日のブログで書きましたように「経済活動と環境問題の関係」を次のように考えています。

端的に言えば、環境問題は経済活動の「目的外の結果」の蓄積である。つまり、現在私たちが直面している「地球規模の環境問題」の主因は、人間の意志でコントロールできない自然現象を除けば、人為的な経済活動(企業による生産・流通・販売活動および消費者による消費活動)である。

これが「私の環境論」の基本認識の一つで、多くの日本の環境問題の学者や専門家、政策担当者、環境NPO、そして、企業人との認識と表現方法を異にする点なのです。
 

関連記事
この10年、ほとんどかわらなかった「環境問題」に対する大学生の基本認識(2010-01-14)

この10年、ほとんど変わらなかった「環境問題」に対する行政の基本認識(2010-01-15)

この10年、ほとんど変わらなかった「環境問題」に対する企業の基本認識(2010-01-16)

この10年、ほとんど変わらなかった「環境問題」に対する一般市民の基本認識(2010-01-17)

「私の環境論」、後期13回の講義を受けると、90%の大学生の考えがこう変わった!(2010-02-08)



欧州政策センター(EPC)の評価は、その判断基準(6分野のデータから算出した指数)に環境問題への視点をまったく考慮に入れていない国際エコノミストの「中長期的な経済持続可能性」に対する評価結果です。この評価結果に、私のブログですでに紹介した次のような環境分野の評価を加えてみます。

★緑の福祉国家2 なぜスウェーデンに注目するのか:国家の持続可能性ランキング1位はスウェーデン(2007-01-12)

★混迷する日本⑬ ダボス会議から 国別環境対策ランキング スウェーデン 2位、日本 21位(2008-01―27)

★温暖化対策実行ランキング:スウェーデン 1位、日本 42位(2007-12-09)


こうすることによって、「経済の中長期的な持続性」および「環境問題への対応」の両分野から見て、スウェーデンがEU加盟27カ国の中で「経済と環境」のバランスが最もよくとれている国であり、 「21世紀型経済の持続可能性」ランキングでもトップにランクされることは明らかでしょう。米国や日本、それに中国やインドに代表される新興国やそれに続く途上国と比べても、その優位性はかわらないでしょう。

このことは8月1日のブログにも掲載した次の図が示す「経済成長」と「CO2排出量」のデカップリングが何よりの裏付けといえるでしょう。左の図は日本の場合ですが、京都議定書の基準年である1990年以降両者の関係は見事なまでのカップリングを示しています。このことは景気回復のために高い経済成長(GDPの成長)を設定すれば、CO2排出量も増加する可能性があることを示唆しています。




次の図は京都議定書の基準年である1990年から2008年までのスウェーデンの温室効果ガスの排出量の推移を示しています。2008年、スウェーデンは6400万トンの温室効果ガスを排出しました。これは、2007年に比べて220万トンの削減で、1990年比11.7%の削減となります。ちなみに、スウェーデンの国民1人当たりの温室効果ガスの排出量はOECD加盟国の中で最も少ない状況にあります。



関連記事
希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・


これまでに、何回もくり返して来ましたように、「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)には「社会的側面」、「経済的側面」および「環境的側面」の3つの側面があります。今日のブログでは、緑の福祉国家の「経済的側面と環境的側面のかかわり」を検証しました。

21世紀前半のビジョンとして、「緑の福祉国家」を掲げたスウェーデンは、2008年9月のリーマンショックからも早急に回復し、その目標年次である2020~2025年をめざして今のところ比較的順調に歩を進めているように見えます。


日本がめざすべき「エコロジカルに持続可能な社会」の理念とビジョン

2010-02-27 09:50:17 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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 下の図をクリックして下さい。     ゼロ・ウエィストワークショップのご案内        2010年は混乱、大混乱は2030年頃かも?  
                               



昨年9月16日のブログで指摘しましたように、国、自治体を問わず、行政には「総合性」、「整合性」、「柔軟性」、「継続性」などが要求されますが、日本は「官僚主導の政府」ですので、よく言われるように行政組織は、いわゆる「縦割り行政」です。ですから、「総合性」、「整合性」、「柔軟性」に欠ける傾向があります。ただ、「継続性」だけはありました。その結果 “困った状態” が今なお継続しています。

本来、行政の最も重要なことは「継続性」ですから、「継続性」があって、しかもスウェーデンのように、政治主導の政府で「総合性」も「整合性」も「柔軟性」もあることが望ましいのですけれども、日本はそうではありません。

民主党政権が発足して5ヶ月が経ち、民主党政権による初めての通常国会が1月18日に開会しました。6月16日の会期末まで建設的な議論が展開されるのを大いに期待しますが、特に、私は日本が向かうべき中長期の方向性に関する議論に関心があります。会期中にどの程度の議論がなされるのでしょうか。

日本には「経済成長の議論」はあふれていますが、「21世紀に日本をどのような国にするのか、ビジョンや理念がない」という批判が高まっています。今に始まったことではないのですが、この時期にそのような議論が高まってきたのは好ましいことだと思います。なぜなら、現在は「20世紀型の経済規模の拡大」から「21世紀の経済規模の適正化」への大転換期だからです。

今年1月22日のブログで、持続可能な国づくりの会が21世紀前半にめざすべき「日本の姿の理念とビジョン(試案)」を公表したことをお知らせしました。そして、2月3日からは、事務局による「試案の背景」に対する解説記事の連載が始まりました。2月3日から24日までに、9本の解説記事が掲載されています。

解説記事は易しく、しかも現実的です。早い時期に、政治家や官僚が本気で「この理念とビジョン」の内容をしっかりと理解し、これを手がかりに日本の現状からどうすれば日本の望ましい社会を実現できるかをここに示された方向で積極的に議論し、決断していけば、日本の閉塞感を突破できると思います。同時に、この種の議論は政治家や官僚だけでなく、広く一般に行われる必要があることはいうまでもありません。


 

持続可能な国づくりの会の理念とビジョン 「協力社会で8つの安心!」 が完成

2010-01-22 21:52:57 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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21世紀前半にどのような社会ができあがっていれば、私たちや私たちに続く世代が安心して生活できるのでしょうか。政権交代から4ヶ月、民主党の鳩山新政権は「コンクリートから人へ」という共通の認識のもとに、自民党が推し進めてきた路線を変更しようと試みています。 

私はこの路線変更に期待をかけていますが、どのような社会が日本の将来にとって望ましい社会なのかなかなか見えてきません。政治家も、政府の政策担当者も識者も、学者も今のところ、私の知る限りでは、そのような日本の望ましい姿を提示できないでいるようです。

そんな中、私もかかわっている「持続可能な国づくりの会」が発足4年目に、「理念とビジョン」をまとめた冊子を完成しました。今日はこの冊子の紹介です。






「持続可能な国づくりの会―理念とビジョン」の全文は 、ここをクリック


冊子 『持続可能な国づくりの会―理念とビジョン』
(A5判40頁、2010年1月9日発行、頒価500円) 

冊子をご希望の方は事務局あてにご連絡ください。事務局(jimukyoku@jizokukanou.onmicrosoft.com)から入手可能です。


持続可能な国づくりの会のご案内
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民主主義の国では、本来ならば、各政党がそれぞれの党の理念や基本方針を「党綱領」で明らかにした上で、総選挙で国民の支持を取り付け、望ましい社会を構築する努力を続けるのが筋ですが、4ヶ月前に初めて政権についた民主党には「党綱領」がないと言われています。それでは、戦後64年にわたる日本社会を事実上築いてきた自民党の「党綱領」とは何だったのでしょうか。この際に勉強しておきましょう。答えは、極めてシンプルです。
にわかには信じがたいのですが、「福祉国家を作ること」でした。

 
昭和三十年十一月十五日
一、  わが党は、民主主義の理念を基調として諸般の制度、機構を刷新改善し、文化的民主国家の完成を期する。

一、  わが党は、平和と自由を希求する人類普遍の正義に立脚して、国際関係を是正し、調整し、自主独立の完成を期する。

一、  わが党は、公共の福祉を規範とし、個人の創意と企業の自由を基底とする経済の総合計画を策定実施し、民生の安定と福祉国家の完成を期する。


1955年(昭和30年)11月15日に制定された、この「旧綱領」2005年(平成17年)11月22日に、小泉純一郎元自民党総裁によって改訂された「新綱領」ができるまで、50年間日本の社会の支えとなってきたのです。
そして、2010年1月24日の第77回自民党大会では「平成22年(2010年)綱領」が採択されました(1月31日追記)。



皮肉を込めて言えば、「民生の安定と福祉国家の完成を期する」という壮大の目標を掲げて出発した自民党政権は50年の歳月を費やした結果日本は米国と共に、“非福祉国家”となり、貧困率も先進工業国で最大の現在となってしまったのです。そして、国と地方の財政赤字も800兆円を超え、これも先進工業国の中で問題視されています。

この間、唯一ブレることなく追求したきたのが「経済の持続的拡大」であり、「改革なくして、成長なし」と主張し続けた小泉政権の表現を借りれば「持続的な経済成長」 でした。しかも、小泉政権を引き継いだ、安倍政権、福田政権、そして麻生前政権も「経済成長」一点張りでした。この「持続的な経済成長」も先ゆきが怪しくなってきました。「政治は結果責任だ」という言葉を好む政治家はこの言葉をどう解釈しているのでしょうか。

4ヶ月前に発足した鳩山政権は、「コンクリートから人へ」を共通認識として、これまでの自民党政権とは異なる路線をめざそうとしていますが、どのような社会が日本の将来にとって望ましいのか今のところはっきりしません。私たちの会が描き出した「理念やビジョン」が日本の将来を本気で考えたい方々の議論の出発点となることを望んでいます。
 

関連記事
自由民主党の「旧綱領」には、公共の福祉を規範とし、福祉国家の完成を期する」と書いてあった。(2009-01-06)

スウェーデン社民党党綱領に示された「環境認識」と私が理解した「スウェーデンの行動原理」(2008-12-30)

「自由民主党の党綱領」と「スウェーデン社会民主党の党綱領」の大きな落差(2009-01-05)

ついにあの中谷さんも、あの竹中さんも「北欧の経済成長に学べ」と、???(2010-01-05)



希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!

2008-03-30 12:16:15 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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私は2006年2月、朝日新聞社から 「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」(朝日選書 792) を上梓しました。そして、その「おわりに」で次のように書きました。

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1996年9月17日、乗員・乗客884万人を乗せたスウェーデン号は、「21世紀の安心と安全」を求めて、周到な準備のもとに目的地である「緑の福祉国家」(生態学的に持続可能な社会)へ向けて出港し、現在、順調に航行を続けています。航行中、予期せぬ難問に遭遇し、場合によってはグローバル化の荒波に呑み込まれ、沈没してしまうかも知れませんが、順調に行けば、目的地に到着するのは2025年頃とされています。
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出港からおよそ11年を経た2008年3月30日、スウェーデン号の乗員・乗客は、出港時より34万人増え、918万人(2008年1月31日現在)となり、船は目的地までのほぼ中間点まで順調に航行してきました。この間、経済も、環境も、福祉も、想定通りの成果を得ているようです。その行動計画成果の一部は、日本の現状と比較しながら、このブログでも既に紹介しきました。


関連記事  

北欧はここまでやる。週刊東洋経済1月12日号が特集(08-01-07) 

進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて私たちが最近知ったこと(07-09-06) 

進化してきた福祉国家⑫ スウェーデンを軽視する日本(07-09-07) 

★環境問題こそ、安全保障の中心に位置づけられる(07-03-12)




★バックキャストが有効だ!

21世紀に国際社会がめざす「持続可能な社会」が大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される現在の社会を延長・拡大した方向にはあり得ないという、これまで述べてきた議論は、「地球サミット」での議論と、その結果まとめられた数々の合意文書でも明らかです。地球サミット=国連環境開発会議(UNCED)は、15年前の1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された、「国連主催の環境と開発に関する国際会議」です。「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」「森林原則声明」「環境と開発に関するリオ宣言」(ここで、「持続可能な社会」という考え方が提案されました)や「アジェンダ21」などが採択されました。翌年1993年には、地球サミットの合意の実施状況を監視し、報告するために、国連経済社会理事会によって「持続可能な開発委員会」が設立されています。 

持続可能な社会を展望しようとする時、「現行の産業経済システムが持続可能ではなさそうだ」ということは何となく、わかるような気がするとしても、それではどのような産業経済システムが望ましいのかは、今のところ誰にもわかりません。

それでは、現在の「持続不可能な社会」を「持続可能な社会」に転換する手法があるのか、と問われれば、私は「ある」と思います。将来の方向を考え、行動する手法として、「フォアキャスト(forecast)」と「バックキャスト(backcast)」という2つの手法があります。

スウェーデンの未来予測レポートでしばしば使われる「バックキャスト」は、日本では耳慣れない言葉ですが、「将来のあるべき姿を想定し、それに基づいて、いま、何をしたらよいのかを判断する」といった意味で使われています。環境問題の解決にあたっては、この方法が有効だと思います。

バックキャストの方法で、近い将来の、主な環境問題を解決した持続可能な社会を描いてみると、人間の経済活動のあり方を、自然法則に逆らう度合いの少ない方向に変えていかなければならないことが見えてきます。このような、環境をこれ以上破壊しない、さらに、できれば人間が安心して暮らせる環境を創造するような技術開発と投資のあり方を、「持続可能な開発」(Sustainable Development)と呼んでいます。

スウェーデンが考える「持続可能な開発」とは、 「社会の開発」であって、日本が考える「経済の開発、発展、あるいは成長」ではありません。


次の図はこのブログに幾度となく登場した図ですが、スウェーデンと日本の21世紀前半のビジョン(政治目標)の相違を示したものです。スウェーデンのビジョンはバックキャスト的手法で日本のビジョンはフォアキャスト的手法で考えられ、策定されています。最近日本が国際社会に提案した「地球温暖化対策としてのセクター別アプローチ」はまさに、20世紀型のフォアキャスト的手法の典型です。

関連記事

 ★「2021年のスウェーデン・プロジェクト」 対 日本の「脱温暖化プロジェクト2050プロジェクト」(07-10-25) 

 ★2021年のスウェーデン 我々はすでに正しい未来の道を選択した(07-10-26)
  

2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説(07-09-12)

緑の福祉国家⑤ 21世紀へ移る準備をした「90年代」(07-01-15) 

緑の福祉国家⑥ 21世紀へ移る準備をした「90年代」(07-01-16) 


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 「経済学者」と「工学者」の見解の相違(07-12-30) 





スウェーデンと日本の違いは、  「予防志向の国」 と 「治療志向の国」 、言い換えれば、 「政策の国」「対策の国」といえるでしょう。スウェーデンは公的な力で「福祉国家」をつくりあげた国ですから、社会全体のコストをいかに低く抑えるかが、つねに政治の重要課題でした。そこで、政策の力点は「予防」に重点が置かれ、 「教育」に力が入ることになります。一方、これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったといってよいでしょう。90年代後半になって「20世紀の経済成長を前提につくられ、21世紀の今なお続く社会制度」から次々に発生する膨大な社会コストの「治療」に、日本はいま、追い立てられているのです。90年後半から始まったように見える「マスメディアを通じて知らされる日本社会の劣化」は止まることなく、さらに進行を続けているかのようです。私にとってはスウェーデンのことよりもこの日本の将来がほんとうに気がかりです。

日本の21世紀前半社会を明るく豊にするか暗く貧しくするかは、2007年から定年が始まったおよそ700万人ともいわれる団塊の世代の「少子・高齢化問題」と「環境問題」に対する認識と行動とその子供たちの行動にかかっていると言えるでしょう。


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スウェーデン大使館のシンポジウム「環境問題と持続可能な社会」 ただし、12年前のこと

2008-02-04 11:46:48 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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1995年8月25日、東京のスウェーデン大使館で「環境問題と持続可能な社会」を基本テーマに、一日がかりのシンポジウムが開かれました。このシンポジウムは戦後50年の節目の年に、過去を振り返るのではなくて、これからの50年に向けて、「環境問題に対する共通の認識」と「持続可能な開発/持続可能な社会に対する認識」を高めるために、話題提供者と参加者(特に企業人)の間で活発な意見交換をしようと企画されたものでした

このシンポジウムでは、

① 「持続可能な開発/社会」の概念 
② 「持続可能な開発/社会」が必要とする技術
③ 産業活動にとつて環境問題とは何か
④ 産業界への期待

などを話題提供者の講演を踏まえて、参加者の間で自由に討論し、私たちの子供や孫が生きる2050年の世界を大胆にイメージするというものでした。


参加者は日本を代表する建設、化学、金属、電気、流通、自動車、紙・パルプ、エネルギーなどの企業の環境担当の役員および環境担当責任者、ジャーナリスト、政治家などおよそ70名でした。コーディネーターは日本経済新聞社論説副主幹の三橋規宏さん(当時)、話題提供者は東京大学教授(生産技術研究所)の山本良一さん、京都大学教授(大学院工学研究科環境地球工学専攻)の内藤正明さん、それにでした。

このシンポジウムで示されたコーディネーター、話題提供者に共通の認識は、それぞれ濃淡はありますが、「このまま事態が進めば、2050年頃には大混乱になるであろう。とにかく方向を変えなければならない」というものでした。


当時のシンポジウムの概要を知ることができる資料がありますので、ご覧ください。




このブログの読者の皆さんには、話題提供者やコーディネーターの12年前の発言の内容12年後の今とを比較し、ご自身で12年後、つまり2020年頃の将来を思い描いてほしいと思います。



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混迷する日本⑨ 「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本、環境分野も

2008-01-23 16:25:24 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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「日本には21世紀のビジョンがない」という大方の識者やジャーナリズムの見解とは異なって、私は日本には「21世紀のビジョン」はあると思っています。小泉首相が掲げていた「持続的な経済成長」は安倍前首相に引き継がれ、そして、福田首相にも引き継がれているようです。ですから、少なくとも現時点では、「持続的な経済成長」という目標は21世紀前半の日本のビジョンと考えてよいと思うのです


この私の主張を検証するために、これまでのブログでいかに「○○改正法」「改正○○法」が多いかを示してきました。既存の法律が社会の変化に耐えられなくなったとき、それらの法律を現状に合うような改正を施すだけでは、現状肯定にすぎないと思います。20世紀型の社会を21世紀型の新しい社会に変えていくことにはならないでしょう。また継続審議とは要するに、先送りということでしょう。

確認のために、もう一度、過去3年間に成立した主な法律を復習しておきましょう。

小泉政権:135本の法律
安倍政権:141本の法律
福田政権:26本の法律

今朝の朝日新聞が報じている環境分野の2つの法案も、ともに改正法案です。しかも、後者は先送りです。


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