環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2011年1月のブログ掲載記事

2011-01-31 12:05:36 | 月別記事一覧
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック



          



1.2011年1月のブログ掲載記事

2.昨年11月29日の講演「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」の動画配信のお知らせ(2011-01-29)


3.読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告(2011-01-26)

4.菅首相の施政方針演説(2011-01-25)

5.菅第2次改造内閣(菅再改造内閣)の発足(2011-01-15)

6.朝日が報じた「転機の原子力 『ルネサンス』に黄色信号」と、「スウェーデンの最新の原発に関する政策」(2011-01-09)

7.皆さんは本当にそう思うのですか!(2011-01-03)

8.2つの大問題――「少子・高齢化問題」と「環境問題」、日本社会に求められていることは何か?(2011-01-02)

9.今朝の朝日の社説:「人類史上で初の体験」、私の環境論では「環境問題」と「少子高齢化」が・・・・・(2011-01-01)

       

昨年11月29日の講演「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」の動画配信のお知らせ

2011-01-29 23:03:06 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          


この1月に原子力に関するブログ記事を2本書きました。

①朝日が報じた「転機の原子力 『ルネサンス』に黄色信号」と、「スウェーデンの最新の原発に関する政策」(2011-01-09)

②読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告(2011-01-25)

今日は、昨年11月29日に、東京のスウェーデン大使館で行われた私の講演「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」のご案内です。この講演の動画が(財)ハイライフ研究所のHPを通して配信されています。

ご関心のある方は次のURLにアクセスしてご覧下さい。

講演 スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力の捉え方 


講演要旨は次の通りです。

日本ではなぜかスウェーデンの脱原発政策という表現が定着しています。これは間違いではないもこのの、事の本質を正しく表現したものではありません。正しくはスウェーデンのエネルギー体系修正政策と呼ぶべきものです。日本の政策担当者、学者、経済人も一般市民もそしてマスメディアもスウェーデンのエネルギー政策の本質が見えず、日本の関心事である原発だけに注目して、スウェーデンの脱原発政策という矮小化した認識のままで現在に至っています。今年9月19日にはスウェーデンで総選挙が行われました。この機会にスウェーデンのエネルギー政策に関する現在までの経緯を検証し将来を展望します。

会場 :スウェーデン大使館オーディトリアム
日時 :2010年11月29日(月) 18:00-20:30
主催 :(社)スウェーデン社会研究所
撮影・配信協力 :公益財団法人ハイライフ研究所  


追記:この講演のおよそ3か月半後の2011年3月11日午後2時50分頃、東北大震災が発生し、福島第一原発で炉心溶融の大事故が発生しました。 2011年3月20日 記す)

 

読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告

2011-01-26 10:48:13 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          


私は、1月9日のブログで、次のように書きました。

スウェーデンが80年6月に「脱原発」の方針を打ち出してから30年が経過しました。スウェーデンの「エネルギー体系修正のための計画」を構成する「原発の段階的廃止をめざす電力の供給体系の修正計画」は当初の予定通り進んできたとは言い難いものでしたが、「原発から排出される放射性廃棄物の処分計画」は着実に進んでおり、この分野でもスウェーデンは世界の最先端にあります。

まるで、このブログの記事と呼応するかのように、1月25日の讀賣新聞が、オバマ政権により米国がユッカ-マウンテン計画を撤回した現在、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「高レベル核廃棄物処分場」の訪問記事を掲載しています。資料として保存しておきましょう。ぜひご覧下さい。

解説スペシャル環境先進地・北欧を歩く

核最終処分場 建設着々と
●対話重ね、情報公開徹底
●「地道な説明必要」 日本の現状、


日本の原発推進派も、原発反対あるいは脱原発派もスウェーデンの「原発の廃止の動向」には興味を示します。この観点から見れば、この30年間で稼働していた12基の原子炉のうち2基を廃棄したに過ぎないのですから、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という1980年の当初の目標からすれば大幅な後退であることは間違いないでしょう。

しかし、スウェーデンの「原発廃止の動向」に強い関心を持つ人々がおそらく気づいていないのは、 「脱原発」という政治決断により投じられた予算と企業の努力により、 「省エネルギー」や「熱利用の分野」では大きな成果があったことです。特に「熱利用の技術開発の分野」ではスウェーデンはまさに世界の最先端にあります。

このような努力の結果から次のような成果が生まれています。 

脱原発の方向性を定めた1980年3月のスウェーデンの「国民投票の結果」とその結果に基づく同年6月の「国会決議」以降の両国の原発の利用状況をまとめてみますと、次のようになります。


1980年から2008年の28年間に、スウェーデンが2基の原発を廃棄したのに対し、日本は33基の原発を増やしました。

この間、スウェーデン京都議定書の基準年である1990年以降漸次、温室効果ガス(このうちおよそ80%がCO2)を削減し、2007年の排出量は9%減でした。一方、日本では、1990年以降、温室効果ガス(このうち90%以上がCO2)の排出は増加傾向にあり、2007年には過去最悪(9%増)となりました。日本では京都議定の基準年である90年以降15基もの原発を運転開始したにもかかわらず、CO2の排出量が増加している事実に注目して下さい。



スウェーデンでは96年頃から「経済成長」と「温室効果ガス」(そのおよそ80%がCO2)排出量の推移が分かれ始めています。このことは、「経済成長」と「温室効果ガス排出量」のデカップリング(相関性の分離)が達成されたことを意味します。ここで重要なことは、温室効果ガスの削減が「原発や森林吸収や排出量取引のような日本が期待している手段ではない国内の努力によって(日本では“真水で”と表現します)達成されたもの」であることです。スウェーデンは今後も、独自の「気候変動防止戦略」を進めると共に、EUの一員としてEUの次の目標である2020年に向けてさらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。

一方、日本は1986年頃から、「経済成長(GDP)」と「CO2の排出量」とが、これまた見事なまでの相関関係を示しています。さらに困ったことに、日本では今なお、二酸化炭素税の導入がままならないばかりでなく、すでに述べたように、2007年度の温室効果ガスの排出量が過去最悪(およそ9%増)となったことです。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家15 「気候変動」への対応 ④(2007-01-26) 


ここで注意すべきは、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(具体的にはCO2)を排出しない発電装置ではありますが、原発はCO2削減装置ではないことです。しかも、原発利用のフロント・エンド(ウランの採掘から原発建設完成・運転開始まで)から、運転期間を経て、<バック・エンド(運転終了から原発廃棄処分まで)までの全過程をLCAという手法を用いて調べてみますと、原発はフロント・エンドとバック・エンドの作業工程で相当量のCO2を排出することがわかっています。

ですから、たとえ正常に稼働している原発が運転時に事実上CO2を排出しないと見なしても、「原発がクリーンな発電装置である」というのは誤りだと思います。

このブログ内の関連記事
低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)



菅首相の施政方針演説

2011-01-25 22:14:41 | 政治/行政/地方分権
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          


1月24日、通常国会が開会され、菅首相の施政方針演説が行われました。首相の施政方針演説は非常に重要な資料ですので、将来の議論のために保存し、いつでも参照できるように保存しておきます。

菅首相の施政方針演説(全文)

1.はじめに
2.平成の開国-第1の国づくりの理念
3.最小不幸社会の実現-第2の国づくりの理念
4.不条理をただす政治-第3の国づくりの理念
5.地域主権改革の推進と行政刷新の強化・徹底
6.平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策
7.結び



菅第2次改造内閣(菅再改造内閣)の発足 

2011-01-15 21:15:11 | Weblog
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          


1月14日、第2次改造内閣が発足しました。菅首相は改造内閣発足後の記者会見で「安心できる社会保障制度のあり方と持続可能な財源について、国民的な議論を高めたい」と述べ、税と社会保障の一体的改革に意欲を示した」と1月15日の朝日新聞は報じています。

まずは、資料として「菅再改造内閣の顔ぶれ」(朝日新聞は「菅第2次改造内閣」の顔ぶれという言葉を使用)を保存しておきましょう。

菅第再改造内閣の顔ぶれ(毎日新聞 2011年1月15日)

内閣改造が行われ、閣僚の顔ぶれが変わっても、対応すべき諸問題はいっこうに変わりません。ここ当分は、マスメディアの報道を静観しましょう。

ただ1つ、今回の改造内閣でのビッグサプライズは与謝野さんの入閣でした。私は昨年3月に、与謝野さんがお書きになった『民主党が日本経済を破壊する』(文藝春秋 2010年1月20日第1刷)をざっと読んでいましたので、なぜこのような結果になったのかまったく理解できません。



この本の中には、私が30年以上にわたってウオッチしてきたスウェーデンに関する与謝野さんの認識を示す記述が数カ所出てきます。その1つに、与謝野さんが“衝撃を受けた”という下りがありますので、そこの部分を紹介しておきましょう。


私はこれまでの経験から、エコノミストの「将来の見通し」に対して多くの場合懐疑的なのですが、1月15日の毎日新聞に「菅再改造内閣に対するエコノミストの評価と注文」という表と「欧州より日本の方が財政赤字は深刻」と題する興味深い(私にとってはわかりやすい)フランスの経済学者の意見を伝える記事を見つけましたので、今後の検証のために保存しておきます。




さあ、閣僚の皆さん、日本の近未来のためにぜひ真剣に考え、議論し、行動して下さい。
  

朝日が報じた「転機の原子力 『ルネサンス』に黄色信号」と、「スウェーデンの最新の原発に関する政策」

2011-01-09 12:52:03 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック
 



          



フィンランドでは、現在、4基の原子炉(ロビーサ原子力発電所で2基、オルキルオト原子力発電所で2基)が稼働しており、4基の合計出力は276万kWです。今日取り上げるのは建設中のオルキルオト原発3号機で、完成すればフィンランドで5基目の原子炉となります。

2日前の朝日新聞が科学欄で、フィンランドで建設中の「オルキルオト原発3号機」(EPR:欧州加圧水型炉、出力は世界最大の160万キロワット)が2005年に着工し、2009年5月に完成する予定だったが、相次ぐトラブルなどで3年半遅れる見通しだと報じています。当初約30億ユーロ(3244億円)だった建設費が、相次ぐ工事の遅れで27億ユーロ(2920億円)の追加費用が必要になったそうです。同記事はまた、米国では「カルバート・クリフス原発」の新設で採算がとれないとして計画の凍結を決めたとも報じています。

何はともあれ、この記事をご覧ください。

●転機の原子力 「ルネサンス」に黄色信号 新設の動き、各地で難航(朝日新聞 2011-01-07)

そして、次にネット上で見つけた次のブログをご覧下さい。

●「効エネルギー日記」 フィンランドの原発建設(2009-05-30)

このブログによれば、2日前の2011年1月7日の朝日新聞が報じた「フィンランドのオルキルオト原発3号機」のトラブルの様子がすでに、およそ1年半前の2009年5月29日付けの「ニューヨークタイムズ」紙で報じられていたことがわかります。内容はほとんど同じで、このブログの文脈から推測すれば、「ニューヨークタイムズ」紙のほうが2日前の朝日の記事よりも内容的にさらに詳しく報道されているような感じがします。


2009年5月29日の「ニューヨークタイムズ」紙がフィンランドの原発建設中のトラブルや米国の原発計画が必ずしも順調に推移していないことを報じて以来この1年半の間に、日本のマスメディアは原発についてどのような報道をしていたのでしょうか。朝日新聞は科学欄で「転機の原発 ルネサンス」および「転機の原子力 廃棄物処分場」をそれぞれ4回シリーズでまとまった記事を連載しておりました。

転機の原子力 ルネサンス① 原発導入、高まる機運(2010-04-02)

転機の原子力 ルネサンス② 燃料管理も処分も課題(2010-04-09)

転機の原子力 ルネサンス③効率と信頼性 どう両立(2010-04-16) 

転機の原子力 ルネサンス④中国、人材育成に躍起-最終回(2010-04-23)


転機の原子力 廃棄物処分場① 原発のごみ わが町に 「スウェーデン方式」(2010-11-05)

転機の原子力 廃棄物処分場② 候補地選び、信頼築く道は(2010-11-12)

転機の原子力 廃棄物処分場③ 数万年の安全、どう確保(2010-11-19)

転機の原子力 廃棄物処分場④ 千年以上先へ 伝える責任-最終回(2010-11-26)


次に、私のブログ内の原発関連記事からふり返ってみます。

またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

米、核再処理を断念 政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針(2009-04-23)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)

日本の原発も高齢化、そして、「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)

「今こそ推進と規制の分離を」、元原子力安全委員会委員長代理が語る日本の原子力行政の問題点(2009-09-24)

民主党の原発政策に再考を促す投書(2009-09-27)

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)

スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決(2010-06-22)



この機会に改めて、スウェーデンの「最新の原発に関する政策」をまとめておきましょう。

2009年2月5日、ラインフェルト連立政権を支える与党中道右派の4党連合は「環境、競争力および長期安定をめざす持続可能なエネルギー・気候政策」と題する4党合意文書を発表しました。

この合意文書の原発関連部分の要点は「水力と原子力からなる現在の電力供給システム」に今後、第3の柱となるべき再生可能エネルギーを導入していく過程で、電力のほぼ半分近くを供給している既存の原発10基(このうち4基は70年代に運転開始、すでに40年近く稼働している)のいずれかの更新が将来必要になったときに備えて、更新の道を開く用意をすること」でした。

合意文書には「原子力利用期間を延長し、最大10基までという現在の限定枠の範囲で既存の原発サイトでのみ更新を許可する。これにより、現在稼働中の原子炉が技術的および経済的寿命に達したときに継続的に新設の炉で置き換えることができるようになる。」と書かれています。
 
スウェーデン国会は2010年6月17日、「2009年2月5日に与党中道右派4党の合意に基づく原発更新法案」を賛成174票、反対172票の小差で可決しました。

スウェーデンの最初の商業用原子炉は1972年運転開始のオスカーシャム1号機ですから、この原子炉が今後事故なく順調に稼働していけば、運転開始後50年(1980年の国民投票の時には、当時の原発の技術的な寿命は25年と見積もられていた。現在では原発の技術的寿命は60年程度とされている)、つまり更新時期を迎えるのは2020年頃なのです。

ですから、今回の「部分的な原発政策の修正(変更)」という決定が直ちに原発の新設という行動に移されるわけではありませんし、日本の原子力推進派の人たちが期待するような「原子力ルネサンスだ!」「地球温暖化対策にのために原発を推進」などという考えで、スウェーデンは原発依存を今後さらに高めて行くわけでもなければ、ましてや、「原発を温暖化問題の解決策」として位置づけているわけでもないのです。

一昨日の朝日新聞の記事「米国 新資源で競争力下がる」の最後に、「ルネサンス」とはいえ、米国ではもともと、実際に新設される原発は10基以下と見られており、当面は「延命」でしのぐところが多そうだとあります。そうであれば、スウェーデンの今回の行動は、「原子力エネルギーに対する世界最先端の考えに基づく現実的な行動」と言えるかも知れません

世界の原発の歴史を振り返れば、この分野でもスウェーデンの独自性は際立っています。西堂紀一郎/ジョン・グレイ著『原子力の奇跡』(日本工業新聞社 1993年2月発行)によれば「軽水炉技術を独自に開発したのはアメリカ、ソ連、スウェーデンの3カ国である。ドイツ、フランス、日本、そしてイギリス等の先進工業国が軽水炉の導入に当たり、アメリカから技術導入したのに対し、スウェーデンは果敢にも独自開発路線を選び、最初から自分の力で自由世界で唯一アメリカと競合する同じ技術を開発し、商業化に成功した。」と書かれています。つまり、スウェーデンは「原発先進国」であり、 「脱原発先進国」でもあるのです。

スウェーデンが80年6月に「脱原発」の方針を打ち出してから30年が経過しました。スウェーデンの「エネルギー体系修正のための計画」を構成する「原発の段階的廃止をめざす電力の供給体系の修正計画」は当初の予定通り進んできたとは言い難いものでしたが、「原発から排出される放射性廃棄物の処分計画」は着実に進んでおり、この分野でもスウェーデンは世界の最先端にあります。

日本の原発推進派も、原発反対あるいは脱原発派もスウェーデンの「原発の廃止の動向」には興味を示します。この観点から見れば、この30年間で稼働していた12基の原子炉のうち2基を廃棄したに過ぎないのですから、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という1980年の当初の目標からすれば大幅な後退であることは間違いないでしょう。しかし、忘れてはならないことは、「脱原発」という政治決断により投じられた予算と企業の努力により「省エネルギー」や「熱利用の分野」では大きな成果がありました。特に「熱利用の技術開発の分野」ではスウェーデンはまさに世界の最先端にあります。

このブログ内の関連記事
原発を考える ⑤ エネルギーの議論は「入口の議論」だけでなく「出口の議論」も同時に行う(2007-04-14)

原発を考える ⑩ 「持続可能な社会」のエネルギー体系とは(2007-04-19)

原発を考える ⑪ CO2削減効果はない「原発」(2007-04-22)


2010年9月19日の総選挙の結果、中道右派政権が2014年まで政権を続投することになりました。今後4年間の政権与党の「エネルギー政策」をウオッチしていく必要があります。

皆さんは本当にそう思うのですか!

2011-01-03 11:17:52 | 社会/合意形成/アクター
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          



今日は、昨年12月にネット上で「ドラッカーの環境問題に対する認識」を検索していた時に、検索結果として出てきた次の2つ記事について考えてみましょう。これら2つの記事は、入力したキーワード「ドラッカーの環境問題に対する認識」でヒットした約480,000件のうち、現在の順位(2011-01-03 午前10時現在)では11位、12位となっています。

いずれも「日本人の環境問題に対する認識」を調べたものです。前者は日本の大手広告会社博報堂の生活総合研究所、後者は内閣府大臣官房政府広報室の調査によるものです。最新の調査ではありませんが、その傾向を知る手がかりにはなりそうです。とにかく、ざっと、目を通してみてください。

Business Media 誠:環境問題への意識は高いが、知識不足&行動しない ...
2008年5月20日 ... 環境問題に対する意識や行動は、国によってどれほどの違いがあるのだろうか。東京在住の人は「地球温暖化への危機感」(88.4%)や「経済発展より環境保護を優先」(90.2% )の回答が世界8都市でトップになるなど、危機感を抱いている人 ...
bizmakoto.jp/makoto/articles/0805/20/news014.html - キャッシュ - 類似ページ

環境問題に関する世論調査
環境問題全般に対する関心・意識について (1) 家庭における環境保全の取組 (2) 環境に関する情報の入手方法 (3) 環境保全活動への参加状況 (4) 今後の環境保全への取組 ア 環境保全行動に際して必要になるもの (5) 環境保全と経済の関係についての考え方 ...
www8.cao.go.jp/survey/h17/h17.../index.html - キャッシュ - 類似ページ

皆さんのご感想はいかがでしたか。敢えて、調査方法の問題などの妥当性を無視して、結果だけを見れば、「日本人の環境問題に対する認識」と「ドラッカーの認識」や「私の認識」との間にはとんでもなく大きな落差があることがおわかりいただけるでしょう。

そこで、今日は、上記の2つの調査結果を意識しながら、4年前にとりあげた「出来ること(ところ)から始めることの危険性」再度とりあげます。「日本の将来社会」の議論の参考にしていただければ、幸いです。


出来ること(ところ)から始めることの危険性

上の2つの調査報告が示すような状況下では、市民の草の根的な運動だけでは環境問題の解決はおぼつきません。私たちが今なすべきことは、経済拡大を目的とした古い考えや社会制度や法制度をそのままにして「身近なところ(こと)から始める」「できるところ(こと)から始める」ではなく、「現状をよく知ること」です。

「私たち一人一人の力は本当にささやかであるが、そのささやかな力でも無数に集まれば、社会を動かすことができる。いままでの社会の変革はすべて、ささやかな一歩の上に築かれたものであり、『そのささやかな思い』と『行動の集積の結果』がやがて、大きなうねりとなって社会に変化が起こる」 

こうしたメッセージには、「異議なし」といいたいところです。しかし、こと日本の環境問題に関しては、あえて異議を唱えなければなりません。このような発想からは、「環境問題の規模の大きさについての認識」「時間の観念」が抜け落ちているのではないでしょうか。

 各人が「ことの重要性」に気づき、 「できるところから始める」という考えは、日本ではきわめて常識的で合理的で一般受けする穏便な考えですので、とくに市民団体から好まれます。日本の社会の仕組みはきわめて強固で、目の前には困った状態が迫ってきているので、とりあえず「できるところから始める」とか、「走りながら考える」とかいった発想になりがちです。この発想だと、むずかしいことを先送りすることになりかねません。 このことはマスメディアが「政府の決定の先送り」を頻繁に報じていることからも明らかです。


では、どうしたらよいのでしょうか。環境問題に対して、個人にできることはないのでしょうか。

 私は、個人にできることはたくさんあると思いますが、「対処すべき環境問題の規模の大きさ」と「残された時間の短さ」を考えると、この種の発想に基づく行動は問題の解決をいっそうむずかしくすると思います。

「現行経済の持続的拡大」という国民の暗黙の了解で進められている日本の産業経済システムのもとで、個人のレベルでできることは、「一歩前進」あるいは「しないよりもまし」と表現されるように、いくらかは「現状の改善」には貢献するかもしれませんが、「21世紀の日本の方向転換」には貢献できないでしょう。いま、私たちに求められているのは方向転換のための政治的な第1歩であり、1歩前進だからです。

1992年6月の「国連環境開発会議(=地球サミット)」や97年の「地球温暖化防止京都会議」、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(=環境・開発サミット)」、最近ではCOP16(気候変動)やCOP10(生物多様性)なとで世界各国の首脳や代表が集まって議論したのは、もはや環境問題の解決が国民一人一人の心がけではどうにもならないところまで来ているからではないのでしょうか。

21世紀の明るい社会は、現行の産業経済システムをさらに量的に拡大した延長上、すなわち、右肩上がりの統計で示される方向にはあり得ないので、私たちは社会の一員として、まず「環境問題の本質」を理解し、その共通の認識のもとに、それぞれの職業分野の知識を総動員して、環境問題解決のための行動に参加しなければなりません。 

このブログ内の関連記事
「出来ること(ところ)から始めること」の危険性①(2007-09-08)

「出来ること(ところ)から始めること」の危険性②(2007-09-09)


「出来ること(ところ)から始めること」の危険性③(2007-09-10)


私たちの社会では、さまざまな経済・社会問題が同時進行しています。そのほとんどは「相対的」であり、「絶対的」ではありません。ですから、これらの経済・社会問題の把握には、次のような考え方が必要となります。


個人が最もその力を発揮できるのは、自分の「職業分野」「専門分野」あるいは「得意な分野」を通じて行動するときだけだからです。


2つの大問題――「少子・高齢化問題」と「環境問題」、日本社会に求められていることは何か?

2011-01-02 08:36:55 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック
お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック




          



人類の歴史はつねに「経済規模の拡大」の歴史でした。 「経済発展(成長)」は、自由主義者や新自由主義者、保守主義者、民族主義者、ファシスト、ナチ、レーニン主義者、スターリン主義者など、イデオロギーにかかわりなく「共通認識」として共有していた考え方で、その必要性については、イデオロギー間にまったく意見の相違がありませんでした。つまり、20世紀には、「経済発展(成長)」は疑問の余地がないほど当然視されていたのです。

しかし、これら2つの大問題、「少子・高齢化問題」と「環境問題」はともに、この「経済発展(成長)」という考え方と無条件に同調するものではありません。

まず、米国を除くすべての先進工業国が共通にかかえる「少子・高齢化問題」から派生する問題のなかでは、「年金制度の持続性」が緊急の課題です。年金はいうまでもなく、生産活動から離れた世代への支払いですから、経済的にはコストでこそあれ、発展に寄与する要因ではありません。
 
つぎに、「環境問題」。この解決のために、経済規模の「拡大」から「適正化」への大転換と、現在の「持続不可能な社会」から21世紀の「持続可能な社会」への大転換が必要であることは、すでに昨日のブログで述べたとおりです。

サミット参加8カ国(G8)のなかで、これら2つの大問題の影響をいちばん強く受けるのは、私たちの国、日本であることは明らかです。
 
なぜなら、日本は先進工業国のなかで少子・高齢化の速度がいちばん速い国であるにもかかわらず、対応がたいへん遅い国だからです。そして、日本のあらゆる社会的・経済的な仕組みが経済規模の拡大を前提につくられ21世紀になっても、国の政策は経済拡大ばかりを考え、表面的にはさまざまな分野で変化しているように見えても、基本的な部分にほとんど抜本的な変化が見られないからです。

いま、日本に求められているのは、「行き詰まった年金制度」を21世紀の社会の変化に耐えられる「持続可能な年金制度」につくりかえること、そして世界に先駆けて21世紀最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」の解決に道筋をつけ、21世紀前半にめざすべき日本独自の「持続可能な社会」をつくる勇気と強い意志、そしてすばやい行動力です。


このような視点から今年も、国際的に、そして日本社会に起こる様々な事象について、もう一つの視点を提供していきたいと考えています。   
 

今朝の朝日の社説:「人類史上で初の体験」、私の環境論では「環境問題」と「少子高齢化」が・・・・・

2011-01-01 19:49:56 | 政治/行政/地方分権
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック         持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

お問い合わせはここをクリック   アーカイブ(公開論文集)      持続可能な国づくりの会のホームページ(HP)は、ここをクリック





          


    
新年明けましておめでとうございます。

いよいよ、今日から新しい年「2011年」が始まりました。今朝の朝日新聞の社説から「人類史で初めての体験」という小見出しが目に飛び込んできました。私は2000年頃から「私の環境論」で「環境問題」と「少子高齢化問題」の2つを人類史上初めて直面する大問題と位置づけてきたからです。

このことは昨年暮れに取り上げたドラカーの『ネクスト・ソサエティ』のサブタイトル「歴史がみたことのない未来がはじまる」は、私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となると書きました

大変残念なことに、今朝の朝日新聞の社説は、 「環境問題」にはまったく触れていません。まずは、この社説をご覧ください。

●今年こそ改革を 
人類史で初の体験、もう財政がもたない、民主は公約を白紙に


そして、その背景資料の1つとして、最新の人口減少の側面が次のように報じられています。

21世紀の日本が初めて直面する「2つの大問題」

これからの50年、私たちは否応なしに人類史上初めて直面する2つの大問題を経験することになるでしょう。どちらも、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、つぎの世代に引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっています。

その一つは、日本でも関心の高い「少子・高齢化問題」です。少子化も高齢化も、人類にとって初めての経験ではありません。しかし、少子化と高齢化が手を携えてやってきたことは、これまでにはありませんでした。これは「人間社会の安心」を保障する年金、医療保険、介護保険、雇用保険などで構成される「社会保障制度の持続性」にかかわる問題です。つまり、人間社会の安心と安全が保障されるかどうか、という意味において「社会の持続性」にかかわる大問題なのです。

もう一つはいうまでもなく、「環境問題」です。これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる大問題です。環境問題の根本には人間の経済活動が原因として横たわっているわけですから、この問題を解決するための具体的な行動は、経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。

先進工業国がさらなる経済規模の拡大を追求し、途上国がそれに追従するという20世紀型の経済活動の延長では、経済規模は全体としてさらに拡大し、地球規模で環境が悪化するにとどまらず、これからの50年間に人類の生存基盤さえ危うくすることになるでしょう。
 
この2つの大問題は、私たちが今まさに、 「人類史上初めての大転換期」に立たされていることを示しています。
 
地球的規模で生じている環境問題は人類共通の重大事であり、世界のほぼ全域に広がった21世紀の「市場経済システム社会(資本主義社会)」を揺るがす最大の問題ですから、国際的な環境問題の解決とは、「人間社会を含めた生態系全体のセーフティ・ネット」を地球規模で張り替えることを意味します。
 
20世紀後半に明らかになった「少子・高齢化問題」と「環境問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていませんでした。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることのできない問題です。 

このことは、「経済規模の拡大」を大前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになります。自然科学が(具体的には「資源・エネルギー・環境問題」)が、「これから50年後の社会のあるべき姿はいまの社会をそのまま延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからです。

このことから、昨年暮れに取り上げたドラカーの『ネクスト・ソサエティ』のサブタイトル「歴史がみたことのない未来がはじまる」は、私の環境論で翻訳すると「人類史上初めて直面する2つの大問題(具体的には「環境問題」と「少子高齢化問題」)を抱えた未来がはじまる」となるのです。ドラッカーはこの著作の中で「2030年の社会」を想定しています。この点でも私はドラッカーの考えに賛同します。

今年こそ、 日本の社会が自然科学が示唆している「エコロジカルに持続可能な社会」の方向に舵を切れるように、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。皆さんからの真剣なコメントを期待しています。