環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

環境問題と参院選挙

2007-07-31 10:59:46 | 政治/行政/地方分権


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


日本の大学では前期の授業が終わり、今、多くの大学が期末試験の最中でしょう。私が「環境論」を講じている大学で私の担当講義の期末試験が先日終わりました。昨年の受講者は135人、今年の受講者は397人でした。今年の試験問題として次のような出題をしました。

地球規模で起きている環境問題に対して、スウェーデンでは、国が「21世紀に持続可能な社会を実現する世界のモデルになる」という国家目標をたて、国民各セクターがその実現のために協力して行動に移している。一方、日本では「環境問題」は国政レベルの選挙の争点にもならない。また、行政レベルでも、例えば地球温暖化防止に対する「環境税」に対して環境省と経済産業省が対立している。両国の視点の相違を書きなさい。

今回の参院選との関連で、朝日新聞と毎日新聞が社説で「温暖化と選挙」をとりあげています。これらの社説のなかに、それぞれの新聞社の論説委員の日本の現状分析を垣間見ることができます。日本のマスメディアに私の学生と同じ出題をしたら、どのような回答が得られるでしょうか。

朝日新聞:2007年7月22日の社説
地球温暖化にどう立ち向かうか。これも参院選で問われるテーマの一つだ。脱温暖化の大切さは、だれも異論がない。だが、政党や候補者の公約を比べれば、力点の置き方や政策の違いがある。脱温暖化の流れを加速できるかどうかは、有権者の選択にかかっている。課題は3つある。・・・・・・・・・・・


毎日新聞:2007年7月27日の社説
事の重要性からみると、当然、参院選の争点になってしかるべきだ。にもかかわらず、盛り上がりに欠けているのが地球温暖化対策である。・・・・・・



スウェーデンの状況はこのブログで書き綴ってきました。読者の皆さんも日本の状況に対するご自身の分析結果をA4用紙1枚程度にまとめてみてはいかがでしょうか。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

再び、「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則の有効性

2007-07-30 11:39:17 | Weblog


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


今朝の朝刊各紙には、昨日の第21回参議院議員選挙の結果を報じる大きな活字が躍っています。手元の朝日新聞の一面の見出しは次のようです。

自民 歴史的大敗
首相は続投表明 公明も惨敗 政権運営厳しく
民主躍進 初の第1党
辞任に値する審判 
自民・片山氏落選 1人区で6勝23敗

昨日のブログ「温室効果ガス 総量規制で」を書いたあと、そして、今朝の朝刊を見たとき反射的に思い出したのは、 「私の環境論」の基礎認識の一つである次の「経験則]です。

今回は、特に、この図の

この経験則は環境問題だけでなく、 社会制度、インフラ、企業経営など、ほとんどすべての社会事象に適用可能である

というところにご注目ください。選挙結果その後の政治的な事象や決定にももちろん有効だと思います。皆さんはどうお考えですか。コメントをいただければ幸いです。



関連記事
今日の決断が将来を原則的に決める

政治が決める「これからの50年」



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

温室効果ガス 「総量規制で」

2007-07-29 22:01:13 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


7月26日の朝日新聞に次の記事がありました。

原発については、4月10日から4月23日まで12回にわたって私の考えを書き込みましたので、興味のある方はそれらを参照してください。とりあえず、4月22日のブログをあげておきましょう。

今回、私が興味を持ったのは「温暖化対策 原発頼み」という大きな見出しではなく、「温室効果ガス『総量規制で』 同友会代表幹事」という小さな見出しの記事です。この記事を拡大してみましょう。

経済同友会・代表幹事の桜井正光さんは、温室効果ガスの削減方法について、「絶対に総量規制。絶対に総量規制。絶対に総量規制。と述べています。そして、「・・・・・最初に総量があって初めて原単位(の削減)だ」と強調した、とこの記事は書いています。

この桜井さんのお考えはその通りなのですが、不思議なことに日本では、経団連も経産省(元通産省)も、そして多くの企業もその環境報告書を見れば明らかなように、「原単位を主に、総量を従」としてきました。

97年の京都議定書は実質的には「温室効果ガスの総量」を規制したものですが、産業界と通産省の強い意向で、政府は「原単位」を優先しました。その結果が現在の結果(90年比+8%弱)となってあらわれています。

関連記事

あの時の決定が日本の「地球温暖化対策」を悪化させた

緑の福祉国家15 「気候変動」への対応④


同じように、日本では「効率化」「省エネ」も混同しています。 




それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

家電リサイクル アジアへごみ輸出の危険性

2007-07-28 16:07:12 | 廃棄物


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


今朝の朝日新聞朝刊に、私が永らく懸念していた事態に大変よく答えてくれた意見/主張が掲載されていました。東アジア環境情報発伝所代表の廣瀬稔也(ひろせ としや)さんという方の投稿記事です。

この記事の赤で網をかけた部分を見やすいようにリライトします。そして、関連記事を添えて、コメントに替えます。

●日本で廃棄された廃電気・電子機器製品が中国に流れている。資源回収を目的としたリサイクルの過程で、作業に携わる人やその周囲の人びとの健康被害や環境汚染を引き起こしている。

関連記事
エコロジー的近代化論(環境近代化論) 

 「エコロジー的近代化論」の問題点

●昨年開催された有害廃棄物の越境を規制するバーゼル条約第8回締約国会議でも、この問題が焦点となった。

関連記事
私の環境論12 企業の生産条件の劣化

●昨年から家電リサイクル法の改正論議が始まった。私たちも改正に向けて政策提言をしている。これを議論する国の審議会で、毎年各家庭から廃棄されていると推定されるテレビなど廃家電4品目の半数約1100万台が行方不明となり、その1部が中国に流れていることが紹介された。

関連記事
家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入断念

●11年の地上デジタル放送移行で、ブラウン管テレビの大量廃棄が予想される。

関連記事
 「放送のデジタル化」と「ブラウン管テレビの行方」 


●この問題を引き起こすのは、家電リサイクル法対象の4品目だけではない。品目を拡大し、国内リサイクルの体制を作りあげることが必要だ。

関連記事
緑の福祉国家49 電気・電子機器に対する製造者責任制度② 

●数千円するリサイクルの費用を嫌い、行方が確認できない業者に渡してしまう消費者も多い。半分しかない廃家電の回収率を高めるために、現在のリサイクル費用の排出時支払い方式から購入時支払い方式への変更とデポジット(預かり金)制度を提案したい。廃棄時にリサイクル費用が要らず、一部のお金が返金されれば回収率も高まる。

関連記事
家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入断念

緑の福祉国家50 電気・電子機器に対する製造者責任制度③



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

21世紀前半社会:ビジョンの相違④ 2007年、安倍内閣の成果:成立した141本の法律 

2007-07-28 08:47:05 | 政治/行政/地方分権


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


安倍内閣が、小泉前政権が掲げた「持続的な経済成長」を引き継いでいることは、次のような事実から明かでしょう。

①昨年10月に出版された中川秀直・現自民党幹事長の著作「GDP1000兆円計画 上げ潮の時代」(講談社 2006年10月) の「はじめに-GDPが2倍になる必然」に、「改革」の小泉政権から、「成長」の安倍政権へ、と書いてあること。
②明日に迫った参院選挙の広報資料にある「成長を実感に!」とあること。
③今朝の朝日新聞が伝える安倍自民党総裁の発言録(次の図) 


それでは、今月5日に閉会した国会での安倍内閣の成果を検証してみましょう。




今国会で成立した法律の数は141本ですが、成立の背景には次の図が示すように、 「不正常な採決」が17本も含まれています。


いかがでしょうか。小泉政権が掲げた「持続的な経済成長」を引き継ぐ安倍政権の成果も、昨日の「21世紀前半に向けた法体系が未整備」の図で指摘したように 、 20世紀の法体系の改正にとどまっている ことは明らかです。

今、私たちの国「日本」が21世紀前半にめざすべき方向性を、私の環境論に基づいて示めせば、次のようになります。

この図の「③持続不可能な『財政赤字』」には注意する必要があります。

この図で注意すべきことは、小泉政権が掲げ、安倍内閣が引き継いだ「持続的な経済成長」の努力にもかかわらず、日本の財政赤字は基本的には改善されていない ことです。


関連記事

対照的な日本とスウェーデンの「財務残高」と「国民負担率」

対照的な日本とスウェーデンの「財務残高」、今後はどうなる

国の借金 832兆円、過去最悪を更新
 

いま、日本に求められているのは、「行き詰まった年金制度」を21世紀の社会の変化に耐えられる「持続可能な年金制度」につくりかえること、そして世界に先駆けて21世紀最大の問題である「資源・エネルギー・環境問題」の解決に道筋をつけ、21世紀前半にめざすべき日本独自の「持続可能な社会」を構築する勇気と強い意志、そして すばやい行動力です。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

21世紀前半社会:ビジョンの相違③ 2004年、小泉内閣の成果:成立した135本の法律     

2007-07-27 21:54:01 | 政治/行政/地方分権


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


昨日のブログで紹介した、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」で述べられている「持続的な経済成長」が、日本型企業経営をはじめ、日本のさまざまな社会制度(もちろん、年金制度や医療保険制度などの社会保障制度も含む)や慣行が、有効に機能するための必要条件の一つであったことは、疑いの余地もないところです。
 
最近では崩壊しはじめたようにも見える談合などの商習慣、系列関係、政官業の癒着、年功序列や終身雇用など、これまで日本社会の特徴とされ、評価されていた制度も、経済の持続的拡大が止まれば、立ちゆかなくなるのは間違いありません。
 
それでは、21世紀もこれまでどおりの経済の持続的拡大ができるかといえば、その可能性はほとんどないでしょう。これまでに何度か述べたように、「環境への負荷」を軽減することに配慮しなければならない21世紀には、これまでのように資源やエネルギーを無制限に使うことができなくなるからです。このことは、「環境論」こそ、21世紀の国家論であることを示唆しています。

小泉政権が2002年に掲げた「持続的な経済成長」というビジョンは、20世紀社会の延長上にある考えなので、21世紀社会を意識した大幅な法体系の変更は考えられません。必要に応じて新しい法律をつくることはあっても、多くの場合は既存の法律の改正にとどまるからです。


この私の観察と分析を実際の成果に基づいて、今日(小泉前政権)と明日(安部政権)の2回に分けて検証してみましょう。

2004年6月16日に、第159通常国会が閉会し、小泉政権下で政府提出の120本の法案と議員提出の15本の法案が成立、34本の法案が継続審議となりました。40年ぶりの法律の大量生産だそうです。



しかし、成立した法律のリストを見ますと、圧倒的に多いのが「改正年金法」や「改正所得税法」のように「改正○○法」と名づけられた法律です。




既存の法律が社会の変化に耐えられなくなったとき、現状に合うような改正を施すだけでは、現状肯定にすぎないと思います。社会を積極的に変えていくことにはならないでしょう。また、継続審議とは要するに、先送りということでしょう。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

21世紀前半社会:ビジョンの相違② 日本のビジョン「持続的な経済成長」

2007-07-26 10:14:29 | 政治/行政/地方分権


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


一昨日のブログの最後に掲げた図「21世紀前半社会:ビジョンの相違」を再掲し、このことについてすこし考えてみたいと思います。

スウェーデンのビジョンについては、1月11日に始めた市民連続講座「緑の福祉国家 1」 から、6月1日に終了した「緑の福祉国家 62」 まで、62回にわたって、私が理解したことを書き込ましたので、そちらを参照してください。  

それでは、日本の21世紀前半のビジョン「持続的な経済成長」はどうでしょうか。

日本の社会的・経済的仕組みは「経済規模の拡大」を前提につくられており、21世紀になっても、国の政策は経済拡大ばかりを考え、表面的には変化しているように見えても、「基本的な構造部分」にほとんど変化が見られません。


「持続的な経済成長」は、小泉純一郎・前首相が「2002年2月4日の施政方針演説」の「はじめに」で述べたものです。

新聞の一面を埋め尽くす1万2000字を超える施政方針演説のなかで、小泉首相は、このブログの基本テーマの一つである「社会の安心の持続性」と不可分の「年金問題」に対しては、「年金不安の解消に向けて、公的年金が、その役割をしっかりと果たしていくことができるよう、次期制度改正を平成16年(2004年)までに行うこととし、これに向けた本格的な検討を開始します」と述べ、セーフティ・ネットの改善を示唆しました。
 

けれども、このブログのもう一つのテーマである「環境問題」最重要キーワードである「持続可能な開発」については、たった一言、「9月に開催される『持続可能な開発に関する世界首脳会議』においては、環境保護と開発を共に達成すべきことを訴えてまいります」と述べたにすぎません。   




「我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには」「改革なくして成長なし」という表現に象徴されるように、小泉首相のビジョン(政治目標)は「持続的な経済成長」(つまり、20世紀の経済社会の延長上にある「経済の持続的拡大」)です。その意味で、21世紀初頭に発足した小泉・連立内閣は「行き詰まった20世紀経済を再生するための内閣」といえるでしょう。

2001年4月の小泉・連立内閣発足以来、政府の「経済財政白書」のサブタイトルが、2001年の「改革なくして成長なし」に始まって、2005年が「改革なくして成長なしⅤ」であったことからも、この内閣が従来の経済拡大路線を着実に踏襲していることは明らかです。さらに、2006年は「成長条件が復元し、新たな成長を目指す日本経済」です。


ここには、「経済」と「環境」は切っても切れない関係にあるという基本認識はまったくありません。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。


      

21世紀前半社会:ビジョンの相違① 社会的心理構造の相違

2007-07-25 07:46:45 | 社会/合意形成/アクター


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


一昨日のブログに掲げた5枚の図と昨日の6枚の図から想像していただけますように、私の環境論では「環境問題」こそ「21世紀の市場経済社会」にとって最大の問題と位置づけています。その理由は、21世紀の経済成長は資源・エネルギーの成長を抑えて達成しなければならないからです


私のブログのテーマは、 

「環境」「経済」「福祉(社会)」、不安の根っこは同じだ!
「将来不安」 こそ、政治の力で解消すべき最大の対象だ

です。

このテーマから考えると、日本とスウェーデンの現在の社会的心理構造には次のような相違があると思います。この相違は、人類史上初めての大転換期で直面した21世紀前半の2つの大問題「少子高齢化問題と環境問題」への基本認識と対応の差によるものです。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

「環境問題への対応」のために

2007-07-24 07:51:51 | 環境問題総論/経済的手法


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


今年1月1日にこのブログを立ち上げ、今日で7か月と24日が経過しました。私の環境論に基づいて、私が理解するスウェーデンと日本の環境分野の話題を皆さんに提供してきました。

私がこのブログを通して皆さんに一番お伝えしたいメッセージは、

「経済」と「環境」は切り離せない

という事実です。


このブログにこれまで使用したおよそ480枚の図表の中から、私が「環境問題への対応」の大枠を理解するのに最も重要だ考える図を6枚掲載します。皆さんからのコメントをいただければ幸いです。

関連記事
人類史上初めて直面する2つの大問題



関連記事
環境問題の解決とは


関連記事
 「環境」と「経済」は切り離せない
 


関連記事
今日の製品は明日の廃棄物


関連記事
今日の決断が将来を原則的に決める

   



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

あらためて、「環境問題」とは

2007-07-23 21:16:06 | 環境問題総論/経済的手法


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


今年1月1日にこのブログを立ち上げ、今日で7か月と23日が経過しました。私の環境論に基づいて、私が理解するスウェーデンと日本の環境分野の話題を皆さんに提供してきました。

私がこのブログを通して皆さんに一番お伝えしたいメッセージは、

「経済」と「環境」は切り離せない

という事実です。


このブログにこれまで使用したおよそ480枚の図表の中から、私が「環境問題」の大枠を理解するのに最も重要だ考える図を5枚掲載します。皆さんからのコメントをいただければ幸いです。

関連記事
戦後62年、立ち止まって考えてみよう


関連記事
私の環境論16 「環境問題」への対応」、輸入概念でよいのか


関連記事
私の環境論14 環境問題は経済の「目的外の結果の蓄積」


関連記事
私の環境論9 環境への人為的負荷


関連記事
「明日の方向」を決めるのは私たちだけだ




それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン③    21世紀はバックキャストが有効

2007-07-22 21:52:26 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック

フォアキャストする日本のビジョンは、2002年2月4日の施政方針演説で小泉前首相が掲げ、安倍現首相が引き継いだ「持続的な経済成長」です。小泉首相の「改革なくして成長なし」という表現は、相変わらず「金の流れ」に判断基準が置かれていて、20世紀型社会の発想の域を出ていません。 
 
バックキャストするスウェーデンのビジョンは、「エコロジカルに持続可能な社会の実現」、言い換えれば、20世紀の「福祉国家」から21世紀の「緑の福祉国家」への転換です。この意味するところは、判断基準を20世紀の「金の流れ」から21世紀前半の「資源・エネルギーの流れ」に切り替えたということです。
 
どちらのビジョンを選ぶかは、国民の選択の問題です。スウェーデンは、科学者の合意と政治家の決断によって、「エコロジカルに持続可能な社会への道」を選択したのです。

フォアキャストする日本は、技術で自然法則に挑戦しようとしているように見えます。バックキャストするスウェーデンは、人間がつくった仕組みを自然法則に合わせて変えていこうとしています。次の図は、3月16日のブログ「ドイツの環境政策を支えるエコロジー的近代化論」の記事にも掲載しましたが、私の環境論から見たスウェーデンと日本の「環境問題の社会的な位置づけの相違」を示したものです。日本とスウェーデンの「環境問題に対する基本認識の相違」のすべての根源がここにあります。 

スウェーデンは環境問題を、人間社会を支えている「自然」に生じた大問題(図の右下)と考えてきました。ですから、人間を大切にする「福祉国家」のままでは、環境問題には耐えられないことに気づいたのです。そこで、人間を大切にする「福祉国家」を、人間と環境の両方を大切にする「緑の福祉国家」へ転換していこうとしています。
 
一方、日本では、環境問題は「人間社会に起こる数多くの困った問題の一つ」として理解されてきたので、つねに環境問題よりも年金問題や景気回復、不良債権の処理といった経済・社会問題(図の左中に例示した社会現象)のほうが優先されてきました。
 
スウェーデンでは、ここに例示した「日本の経済・社会問題」はほとんど問題にならないか、あるいはすでに解決ずみといってよいでしょう。両国の間には、環境問題に対する認識や行動におそらく10~20年の開き があるといっても過言ではないでしょう




フォアキャストする日本は長期ビジョンを示すことが苦手な「現状追認主義の国」です。バックキャストするスウェーデンは、理想主義の国ではなく、理念に基づいた長期ビジョンを掲げ、行動するシステム思考の得意な「現実主義の国」(プラグマティズム)なのです。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン②     フォアキャストvsバックキャスト 

2007-07-21 12:37:03 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


今日は、昨日のブログで紹介した将来を考える2つの手法「フォアキャスト(Forecast)」「バックキャスト(Backcast)」について説明しましょう。

まず、次の図をご覧ください。



日本の政府や自治体から、そして多くの環境NPOから、さらにはマスメディアから提供される
;">「環境対策のメッセージ」のほとんどは

         「できること (ところ) からはじめましょう」 

というものです。これは現状から前(将来)をみる「フォアキャスト」と呼ばれる考えかたです。この方法では、最終的に到達すべき明確な目標を持たないままにそれぞれがバラバラに前進するため、労力、費用、時間をかけて努力したにもかかわらず、「報われない結果」を、あるいは、「現状よりもさらに困った状況」を招くことになりかねません。





これに対して、「バックキャスト」は最終的な到達目標である「持続可能な社会」の方向、その条件を明確にし、その目標を達成するための行動を現在から進めていくため、労力、費用、時間などの無駄を省き、「望まれる結果」を得る可能性が高い手法です。 “効率化”が大好きな日本政府や産業界が、なぜ「フォアキャスト的発想」から抜けられないのか不思議でなりません。





それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      
 

フォアキャストする日本、バックキャストするスウェーデン①     「未来社会」の構想

2007-07-20 23:01:33 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


スウェーデンの未来予測レポートでしばしば使われる「バックキャスト的手法」は、日本ではまだ耳慣れない言葉ですが、「将来のあるべき姿を想定し、それに基づいて、いま、何をしたらよいのかを判断する手法」といった意味で使われています。環境問題の解決にあたっては、この手法が有効です。
 
バックキャスト的手法で、近い将来の「主な環境問題を解決した持続可能な社会」を描いてみると、人間の経済活動のあり方を自然法則に逆らう度合いの少ない方向に変えていかなければならないことが見えてきます。このような、環境をこれ以上破壊しない、さらに、できれば人間が安心して暮らせる環境を創造するような技術開発や投資のあり方を、「持続可能な開発(Sustainable Development)」と呼んでいます。



現在の「持続不可能な社会」「持続可能な社会」に転換する手法があるのか、と問われれば、私は「ある」と答えます。

15年前に初めて「バックキャスト」という言葉に出会ったとき、私はたいへんとまどいました。いまだに適切な訳語が見つかりませんが、スウェーデン環境保護庁などの未来研究レポートではよく使われています。

このブログでは、「フォアキャスト」を「現在から将来を見る」または「長期ビジョンが不明確のまま現状を追認する」、 「バックキャスト」を「将来から現在を見る」または「長期ビジョン年次から方向を検証しながら現行の社会を段階的に変えていく」という意味で使います。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

再び年金制度:年金毎年通知 欧米が先行 

2007-07-19 10:16:26 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


7月15日のブログ「スウェーデンの年金制度に学ぶ④ 最終回」で一通りの制度の紹介を終わりました。日本では2004年に続いて再び「年金制度改革」の必要性が浮上しています。与野党問わず、7月29日の参院選挙の争点に掲げているからです。

マスメディアが報ずる記事に、「日本の困った現状」を伝えるとともに「海外では」あるいは「欧米では」と題してしばしば国際社会との比較記事が載ることがあります。この場合の「欧米」は21世紀に入って7年も経つというのに、相も変わらず具体的には英、独、仏、伊、米に限定されているといってよいでしょう。もっとも最近、「欧米」というときには「EUおよび米国」を意味する傾向が強まってはいますが。

このような国際比較の記事の中に、たまにはスウェーデンが登場する機会があります。これらの記事に登場するスウェーデン情報は断片的ではありますが、私がこれまで書いてきたブログと読み合わせていただければ、さらに一歩スウェーデンの現実に近付けると思います。そのような意味から、今後も断片的な記事を意識的に拾い集め、皆さんに提供しようと考えています。

さて、今日は昨日の日本経済新聞が掲載した「年金の現状を国民へ伝える通知」についてです。次の記事をご覧ください。

まず目に飛び込んでくるのは「欧米が先行」という見出しです。この記事は次のようなリードで始まります。
日本で明らかになった年金5000万件の記録漏れは世界的にも例のない異常な事態だ。欧米では個人に割り当てた番号による管理が浸透。ミスの早期発見とトラブルへの迅速な対応が可能で、大きな問題に発展するケースは少ない。参院選挙で各政党が制度の改革案を打ち出す中、海外の仕組みには今後の日本に役立つヒントが多い。

「欧州」のところにスウェーデンの状況が次のように書かれています。
●英国は納付不足の人だけが通知の対象となるが、スウェーデンはさらに情報提供を徹底。18歳以上の全国民に1999年から保険料納付記録や予測給付額を毎年、通知している。

「通知の仕組み 日本も導入を」と題する駒村康平・慶応大学教授のコメント欄には次のように書かれています。
●年金の加入歴について諸外国では、年に一度通知を受けて本人がチェックできる仕組みがある。こうした取り組みは1990年代後半から始まった。ドイツ、スウェーデン、米国、カナダなどで導入されており、過去の記録が正しいかどうか確認できる。・・・・・・さらにスウェーデンでは加入歴と併せて将来の給付見込みまで分かるようになっている。これは年金制度改革をすべて終えたからこそできることだ。・・・・・

関連記事

7月10日のブログ:誰でも参加したくなる「1999年施行の」新公的年金制度」③


日本で「不祥事」あるいは「困ったこと」が起こるたびに、マスメディアにはこの記事の見出しにあるような「欧米が先行」という趣旨の文字が踊る機会が多いように思います。ここでもう一度、ブログのカテゴリーとして掲げた「予防志向の国」と「治療志向の国」をおさらいしておくことにしましょう。

●スウェーデンと日本の違いは、「予防志向の国」と「治療志向の国」、言い換えれば、「政策の国」と「対策の国」といえるだろう。スウェーデンは公的な力で「福祉国家」をつくりあげた国だから、社会全体のコストをいかに低く抑えるかが、つねに政治の重要課題であった。そこで、政策の力点は「予防」に重点が置かれ、「教育」に力が入ることになる。
 
●一方、これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようである。90年代後半になって社会制度からつぎつぎに発生する膨大な社会コストの「治療」に、日本はいま、追い立てられている。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

家電リサイクル法 「リサイクル料金前払い」の導入を断念

2007-07-18 22:45:59 | 廃棄物


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な緑と福祉の国をつくる会(仮称)のブログは、ここをクリック


昨日、「放送のデジタル化」に伴うブラウン管テレビの行方を取り上げましたが、今日の朝日新聞は、「家電リサイクル法」の見直しが難航している と大きく報じています。


リード部分は次のように書かれています。
●家電4品目のリサイクルを義務付けている家電リサイクル法の見直し作業が難航している。焦点のリサイクル料金の支払い方式をめぐっては、現行の後払いか、それとも前払いにするか、賛否が分かれているからだ。廃家電が同法で定めたルート以外に流れる問題も課題だ。

次の図は上の図を拡大したものです。


朝日の記事に合わせて、今日の日本経済新聞の関連記事を読むと上の朝日新聞の内容をより具体的に知ることができます。



この記事のリードの部分は次のようです。
●経済産業省と環境省は消費者が家電の廃棄時に支払うリサイクル料金について、「前払い方式」の導入を断念する見通しになった。廃棄家電の半数が正式な再処理経路に乗っておらず、前払い方式にすると消費者の「払い損」になりかねないためだ。17日に開いた両省審議会の共同作業部会で現行の後払い方式を維持する意見が大勢を占めた。完全な家電リサイクルからほど遠い現状を追認した形で、両省は違法な処理をした業者に罰則を強化するといった是正策を打ち出す方針だ。

次の図は日本経済新聞の記事の中の図を拡大したもので、家電リサイクル法の対象となる4品目(テレビ、冷蔵・冷凍庫、エアコン、洗濯機)の年間廃棄台数およそ2300万台のうち、小売店からメーカーに還流する正式なルートを経て再処理される数は1160万台にすぎず、およそ半数の1100万台がこのルートに乗っていないこと を示しています。

このような日本の状況をスウェーデンの状況と比較してみますと、この問題でも両国の間にかなりの落差があることがわかります。

参考

電気・電子機器に対する製造者責任制度① 

電気・電子機器に対する製造者責任制度② 

電気・電子機器に対する製造者責任制度③ 

今日の決断が将来を原則的に決める



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。