持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

持続可能な国づくりの会 理念とビジョン(画像をクリック)

  「理念とビジョン」全文                   ダイジェスト版                    当会HP

                    

現職の国会議員様や識者・市民の皆様より賛同を得てきました。

賛同の輪を更に広げ、「持続可能な国づくり」に資することが私たちの目標です。 

学習会のお知らせ 3月17日(金)@高田馬場

2017年02月14日 | 学習会

長年「世界の警察」であり、自由主義市場経済のグローバリゼーション」の先頭を切ってきたアメリカが大きな方向転換をするかもしれないという歴史の曲がり角に来ています。

 これまで私たちは主に持続可能な「国」づくりについて様々な識者のアイデアと私たちのアイデアを突き合わせながら学んできましたが、そうした状況のなか、今回はさらに大きなスケールの持続可能な「世界」の可能性について、フランスの経済学者・思想家ジャック・アタリの著作を手がかりに、ご一緒に考えていきたいと思います。

 アタリは経済学者・思想家でありつつ、政界・財界でも重責を負って発言・行動を続けており、すでに2006年の『21世紀の歴史』(邦訳2008年、作品社)で世界金融危機を予見して言い当て、またさらにアメリカ帝国の終焉と世界の多極化を予見しています。

 そして、国家を超える〈超帝国〉の出現、さらにグローバルな紛争や地球規模の動乱すなわち〈超紛争〉の可能性も指摘しながら、その先に「人類が自らのアイデンティティが破壊される前に、世界の連帯の必要性を意識」し〈超民主主義〉に到達する可能性をも語っています。

 その驚くべき博識と展望力は、これからの世界を考えるうえで大きな指針になるのではないかと思います。ご一緒に学びましょう。

         (持続可能な国づくりを考える会運営委員長・岡野守也)


 テーマ:J・アタリ『21世紀の歴史』から何を学ぶか

 メンバーの増田満氏が内容を要約・紹介し、運営委員長岡野がコメントした後、参加者のみなさん全員と話し合いの時間を持ちます。本を読んでいなくても参加していただけます。かなり大部の本なので、概要を知った後さらに詳細に学びたくなったら読むという方法もいいと思われます。

 日時:3月17日(金)19時―21時

 会場:新宿区戸塚地域センター 5階会議室2(JR高田馬場徒歩3分)

 参加費:無料

 申込先:「持続可能な国づくりを考える会」事務局申込担当:増田満
      FAX 042-792-3259 E-mail:mit.masuda@nifty.com

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学習会のお知らせ 12月16日(金)

2016年12月12日 | 学習会

事務局の松原です。学習会のお知らせです。

ご参加をお待ちしております。

●テーマ 持続可能性の条件を再確認・共有するために

       ~つながりに関する深い気づきとは~

●日時 12月16日(金) 19:0021:00

●場所 戸塚地域センター 地下1階 集会室2

    JR高田馬場 徒歩3分

     http://www.tcc-tokyo.net/access/

●参加費無料 (当日参加も可能ですが、事前申し込みいただけると助かります。)

 申込先 「持続可能な国づくりを考える会」事務局申込担当:増田満

     FAX. 042-792-3259 E-mail : mit.masuda@nifty.com

 

アメリカ大統領選は大方の予想を裏切った大番狂わせでした。予備選でのサンダースの健闘とも対応した、現状への大きな不満から来た、何であれ「変化」を求める声の現われでしょう。

確かに間違いなくそれぞれの国も世界全体も大きな変化が必要な時代だと考えられますが、言うまでもなく変化すればいいわけではなく、いい・適切な・つまり持続可能な、国、世界の新しい秩序に向けた変化が必要です。

 大河の水源がごくささやかな湧き水であるように、私たちの活動は今はささやかであっても、そうした持続可能な国づくりに向かう社会潮流の水源としての湧き水になりうると信じたいと思います。

 さて、今回はこれまで学んできた、資本主義が必然的に格差社会を生み出すことを明らかにしたピケティの著作、スウェーデン・福祉国家の基礎となったミュルダールの業績、持続可能な社会に向けた広井氏、正村氏の提案とも対照しながら、私たちの『理念とビジョン』で語られている持続可能性の必須の条件である「つながりへの深い気づき」の意味を再確認する学習会にしたいと思います。

岡野守也

 

おかの・もりや  当会運営委員長。サングラハ教育・心理研究所主幹。長年にわたり、内面・心と外面・社会の変容に向けた探究とメッセージの発信を続けている。著書『「金剛般若経」全講義』『コスモロジーの心理学』『日本再生の指針』『仏教とアドラー心理学』『唯識の心理学』他。

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第三回学習会のお知らせ

2016年08月02日 | 学習会

「持続可能な国づくりを考える会」関係者のみなさん

 運営委員長の岡野です。久しぶりの記事投稿です。

 少し間が空きましたが、第三回目の学習会を行ないます。

 9月16日(金)19時〜21時

 会場:東京ボランティア・市民活動センターA会議室(セントラルプラザ10階)
    JR線・東京メトロ各線 飯田橋駅より徒歩1分

 テキスト:正村公宏『日本をどう変えるのか――ナショナル・ゴールの転換』(NHKブックス) 

 筆者は、これまで正村氏の本を何冊も読んできましたが(『戦後史』『現代史』『日本近現代史』『マルクス主義と現代社会』『経済学のすすめ』など)、そのたびに「早く(70年代初め)から、こんなに的確な(混合経済による福祉国家からさらに持続可能な社会へという)日本の向かうべき方向性の指示をしている論客がいたのに、耳を傾ける政治家・政党はほとんど現われなかったんだなあ(いまだに現われていない)」と、自分も70年代に発見できなかったことは棚上げにして、とても惜しい・残念だと思っています。

 今回取り上げる本は、15,6年も前の本ですが、内容の大筋は少しも古くなっていないので、「今からでも遅くない。学んで、その方向に向かう必然性を理解して、その理解を多くの人に伝えて共有し、そういう潮流を生み出したいものだ」と願っています。 

 大河も水源はほんのわずかの湧き水であるように、時代を変える潮流も小さな集まりから始まるものです。この会が、そういう集まりになるといいと思っています。 

どうぞ、問題意識のある友人、知人とお誘いあわせしてお出かけください。 

 参加費:無料

 申込み先:「持続可能な国づくりを考える会」事務局申込担当:増田満

 Fax.042-792-3259、E-mail : mit.masuda@nifty.com

 

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参院選挙の結果について思うこと

2016年07月11日 | 政治

 

 今回の参院選の結果は、きわめて残念なものでした。

 それは、これで当面数年間日本の進む方向が、私たちの願っている「エコロジカルに持続可能な福祉国家」からも、「持続可能な福祉国家」からさえもいっそう遠ざかることになる、と思われるからです。

 しかし、エコロジカルに持続可能な国家からエコロジカルに持続可能な人類社会という方向は、私たちの学びえたデータと理論を元にできるだけ統合的に検討してみて、全地球的文明崩壊を避けるため・生き残ための唯一の道だと考えられるので、今後も「バタフライ効果」を期待しながら、方向提示・提案の発言を続けていきたいと思っています。

 今後も、ぜひ、みなさんのご理解・ご協力・ご参加をお願いしたいと思います。

                   運営委員長 岡野守也

 

 

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第二回学習会のお知らせ

2016年06月08日 | 学習会

 夏の参議院選挙に向けて、政治の世界はあわただしい動きを見せています。

 国民の多数が、憲法の改正という名前の改悪を見過ごして許してしまうのかどうか、戦後史のある種の瀬戸際と言ってもいい重要な選挙だと思われ、これはもちろん当面きわめて重要なことです。

 しかし、残念ながらどの政党からも今後の日本と世界にとって基本的で最大といっても中長期のテーマである、持続可能な国づくり、持続可能な世界づくりの理念やビジョンは聞こえてきません。

 そうした状況のなかで、たとえ少人数でも共に考え、ささやかでも声をあげるために、当会では学習会を再開し、今回は第二回になります。

 諸般の事情でお知らせが間際になってしまいましたが、関心がおありの方はぜひ参加してご一緒に考えてください。

日時:六月二十四日(金)午後七時〜九時

テーマ:「持続可能な福祉社会の条件を考える」

広井良典『持続可能な福祉社会』(ちくま新書)を題材に、まず会のメンバーである増田満氏にその要点とコメントをお願いし、続いて運営委員長の岡野もコメントをします。その後、参加者全員で討議しましょう。

場所:新宿区・戸塚地域センター5階会議室1(JR高田馬場徒歩3分)

参加費:無料

申込み先:「持続可能な国づくりを考える会」事務局申込担当:増田満

Fax.042-792-3259、E-mail : mit.masuda@nifty.com

 

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民進党の綱領へのコメント

2016年03月28日 | 政治

 

 「民進党」が結成され、3月27日のHPに綱領全文が掲載されていました。      

 「持続可能な国づくりを考える会」の運営委員長として会の「理念とビジョン」を踏まえているつもりで、しかし現段階では全体討議を経ていないという意味であくまでも個人的な、コメントをしておきたいと思います。 

 何よりも憲法改悪を阻止するために、それから建前という意味ではこの綱領に大筋合意できるので、私個人としては少なくとも夏の参院選までは「注文の多い暫定的支持者」になるつもりです。 

 しかし、「持続的支持者」になるかどうかは、1つはこれからの行動に現われる本音と実行力・実績、もう1つは中期的に綱領に不足している視点が訂正・増補されるかどうかを見きわめてから決めたいと思っています。 

 まず、結党の理念の「自由」「共生」「未来への責任」は全面的に賛同できるものです。 

 (私たちの目指すもの)の一、「自由と民主主義に立脚した立憲主義を断固として守る」、二、「共生社会をつくる」、五、「専守防衛を前提に外交安全保障における現実主義を貫く」なども異議なしです。 

 次からは「注文」です。

 三の「未来への責任を果たす」のなかで、「原発に頼らない社会を目指す」という表現は原発の危険性に対しては悠長だと感じられ、せめて「原発のない社会を現実的に可能な限り早急に実現する」といった表現にしてほしかったと思います。 

 四の、「公正な分配による人への投資なくして持続可能な成長は達成できない」という視点は私たちの会の「理念とビジョン」と基本的に一致しています。

 ただいっそう明快に「福祉と経済を相互促進関係にすることはできる」「高度な産業を育てるような福祉を実施する国家=ワークフェア国家を目指す」という点が表現されているとよかったのではないかと考えます。 

 さらに、四に「市場経済を基本とし、地球環境との調和のもと、経済成長を実現する」とあるのも賛同ですが、理念として「自然との共生」が謳われるのではなく、(目指すもの)の4番目に置かれているところが私たちの会の「理念とビジョン」と比較してきわめて不十分だと考えます。

 この点は、人間と自然のつながり・一体性への本質的理解と「環境(への配慮)と経済は相互促進関係にできる」ことへの理解が不十分なためではないかと推測されます。 

 まとめて言えば、より意識的に「エコロジカルに持続可能なワークフェア国家」を目指すようになってもらいたい、という注文付きで、民進党を暫定的にしかし強く支持したい、と私は考えています。 

 運営委員、会員のみなさんのご意見をお聞かせください。 

 また会員でない方からもご意見をいただけると幸いです。

 

 以下長くなりますが、参考に民進党綱領の全文を転載します。 

****************************** 

        民進党綱領

                                                                              2016年03月27日 

 我が党は、「自由」「共生」「未来への責任」を結党の理念とする。
 私たちは、「公正・公平・透明なルールのもと、多様な価値観や生き方、人権が尊重される自由な社会」「誰もが排除されることなく共に支え、支えられる共生社会」「未来を生きる次世代への責任を果たす社会」を実現する。 

(私たちの立場) 

 我が党は、「生活者」「納税者」「消費者」「働く者」の立場に立つ。
 未来・次世代への責任を果たし、既得権や癒着の構造と闘う、国民とともに進む改革政党である。 

(私たちの目指すもの) 

一. 自由と民主主義に立脚した立憲主義を守る

 私たちは、日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持し、自由と民主主義に立脚した立憲主義を断固として守る。象徴天皇制のもと、新しい人権、統治機構改革など時代の変化に対応した未来志向の憲法を国民とともに構想する。 

二. 共生社会をつくる

 私たちは、一人一人がかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな共に生きる社会をつくる。
 男女がその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画を推進する。
 「新しい公共」を担う市民の自治を尊び、地方自治体、学校、NPO、地域社会やそれぞれの個人が十分に連携し合う社会を実現する。
 正義と公正を貫き、個人の自立を尊重しつつ、同時に弱い立場に置かれた人々とともに歩む。 

三. 未来への責任 改革を先送りしない

 私たちは、未来を生きる次世代のため、税金のムダ遣いを排するとともに、国の借金依存体質を変える行財政改革、政治家が自らを律し身を切るなどの政治改革、地方の創意工夫による自立を可能とする地域主権改革を断行する。
 原発に頼らない社会を目指すとともに、東日本大震災からの復興を実現し、未来への責任を果たす。 

四. 人への投資で持続可能な経済成長を実現する

 私たちは、市場経済を基本とし、地球環境との調和のもと、経済成長を実現する。安全・安心を旨とした上で、市場への新規参入を促し、起業を促進する規制改革を実行する。
 経済成長は幸福をもたらすものでなくてはならない。公正な分配による人への投資なくして持続可能な成長は達成できない。持続可能な社会保障制度の確立、生涯を通じた学びの機会の保障など人への投資によって、人々の能力の発揮を阻んでいる格差を是正する。それによって支え合う力を育み、幸福のための成長を実現する。 

五. 国を守り国際社会の平和と繁栄に貢献する

 私たちは、専守防衛を前提に外交安全保障における現実主義を貫く。我が国周辺の安全保障環境を直視し、自衛力を着実に整備して国民の生命・財産、領土・領海・領空を守る。日米同盟を深化させ、アジアや太平洋地域との共生を実現する。
 国際連合をはじめとした多国間協調の枠組みを基調に国際社会の平和と繁栄に貢献し、核兵器廃絶、人道支援、経済連携などにより、開かれた国益と広範な人間の安全保障を実現する。 

以上

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スウェーデン・モデルと混合経済

2016年03月23日 | 学習会

 3月18日(金)、再開第1回目の学習会を行ない、どうすれば持続可能な国づくりができるのかについて、これまでの合意点の確認を行ないました。

 運営委員長岡野がかつて2014年8月〜9月にこのブログにも掲載した「持続可能な国づくりの条件」(18)の要点を述べ、新旧の参加者と話し合いました。

 そこで、二つ興味深い発言がありましたのでご紹介しておきたいと思います。

 1つは、最近、会に関わるようになってくださった方から、「まわりの人にスウェーデンの話をすると、『あそこは小さい国だからできたんじゃないか』と言われるのですが」という話がありました。前からの会員は顔を見合わせて、「またか」と苦笑いしました。あまりにもよくある質問だったからです。

 それに対して、かつて私は「小さいからできたのではなく、優れた社会システムを創り出せたからできたんです」といった答えをしていましたが、今回はより具体的に「社会システムのなかでも特に「『混合経済』という巧みな経済システムを創案できたからです」というより具体的でわかりやすい(かもしれない)説明をしました。

 市場経済の効率は十分に生かしつつ、努力や能力や運によるある程度の差は認めながら、政府が関与して、貧困層において不満が鬱積し社会的な統合がゆらぐことがない程度に、なるべく格差の少なめの公平な分配をするという、自由主義経済と計画経済のいいところを混合した経済システムは、国の規模にかかわらずこれからすべての国そして世界全体が向かうべき(すでにヨーロッパなどはかなりの程度向かっている)方向ではないかと思います。

 もう1つは、会の創設の時から関わってくださっているスウェーデンの環境問題の専門家・小澤徳太郎先生の、「さすがのスウェーデンも最近の難民問題などで行き詰るのではないか」という趣旨の発言でした。

 筆者は、「うーむ、そうかもしれないが……これまで社会科学者と政治家の連携による統合的な知恵で多くの困難を乗り切ってきたように、今回もスウェーデンはみごとに乗り切って見せてくれるのではないか」と希望的な観測をしています。

 たとえスウェーデンや他の北欧3国、さらにはEUが失敗したとしても、持続可能な国づくりと持続可能な世界づくりがこれからの日本人と人類の避けられない課題であることに変わりはありませんから、それらの国々のこれまでの先駆的な成功(と失敗?)のケースは、これからそこに向かうための基本的で大きな参考になることはまちがいない、と考えられます。

 次回の日程や場所はまだ決まっていませんが、テーマは「混合経済という選択肢――その有効性について」です。

 決まり次第、またお知らせします。ぜひ、ご一緒に考えていきましょう。

 

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『ミュルダールの経済学』を読む 8

2016年03月14日 | 経済

 

緑の福祉国家をミュルダールの枠組みで分析してみる 

 緑の福祉国家とは

 ミュルダールあるいはピケティが理想とするような古典的福祉社会では、人は理性と良識を持つ合理的な個人で、そのような個人が互いに連帯して、誰もが人間らしい生活を保障される共同体を構築しています。また、市場経済と私有財産は社会を構成する重要な要素で、自由に発揮した能力と努力に応じて得られた富の所有も、そしてそのために生じる格差も、共同体の利益に反しない限りは認められます。そのため、均一な生き方を強いられて活気をなくしてしまうような社会ではありません。これらのことだけを見ると、古典的福祉社会は文句のつけようのない社会だと思えます。

 しかしエネルギーの有限性、急激な気候変動、有害物質による環境汚染、開発による急激な自然破壊、核廃棄物の増加などによって、現在のような大量生産・大量消費の社会が持続するのは困難だと明らかになることで、古典的福祉社会をかなりの程度確立したスウェーデンは、持続可能な社会を実現するための新たなヴィジョンを創造しました。それが、『スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」』 (小澤徳太郎著、朝日新聞社、 2006)で紹介されている「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)」というヴィジョンです。

 この「緑の福祉国家」には、①社会的側面、②経済的側面、③環境的側面という三つの側面があります。①と②は、合理的な個人としての人間を大事にする、古典的福祉国家としての側面です。③は、新たに加わった環境を大切にするという側面であり、その背景には、「健全な環境は基本的な人権の一部」なのだという考えがあります。人という概念に、土台としての自然生態系(環境)の一部であることが明確に含まれています。人は、合理的存在ではあるけれども、より基本的なレベルでは自然生態系の一員である動物なのです。小澤徳太郎氏が次のように述べていることが的確にそのことを表現していると思えます。 

 人間は動物である。ある範囲の温度・湿度・気圧・重力のもとで、光を浴び、空気を吸い、水を飲み、動植物しか食べられない!(『スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」』、p.74) 

 古典的な福祉社会のメンバーである人間は理性と良心を持つ合理的な個人でしたが、緑の福祉国家のメンバーである人間には、自然生態系の一員たる動物であることも加わります。すなわち、 

 人間=理性と良識を持った合理的存在+動物 

なのです。そして環境権は動物の部分での権利ですから、人間だけでなく、動物一般にも賦与されるべき権利なのです。 

 緑の福祉国家をミュルダール経済学で分析する

 ピケティの考えと同様に、ミュルダール経済学を表している図1の形式にそって緑の福祉国家の考えを見ていきます。通常の福祉国家の部分に関しては、スウェーデンで古典的福祉国家を建設する際の中心人物の一人であったミュルダールの考えがそのまま当てはまりますから省きます。環境的側面だけにしぼってみますと次のようになりそうです。 

 Ⅰ 方法論的考察 生態学的に持続可能な社会の実現を価値前提とする

 Ⅱ 実践的考察  多くの先進諸国では大量生産大量消費の体制が続いており、低開発国も同じ体制を築こうとしている。そのためほとんどの国で環境負荷を伴うエネルギー消費を継続あるいは拡大しており、逆流効果>波及効果となり、環境に関して悪循環が生じている。

     少数の「緑の福祉国家」的政策を履行しつつある国からそれ以外の国への逆流効果はない。

 Ⅲ 理想 世界レベルの好循環を起こし持続可能な世界へ

    政策 大量生産大量消費の体制はやめる。

        先進国での生活の質素化と効率化。環境に負荷を与えないテクノロジーを先進国が低開発国へ積極的に伝搬し普及させる。

        二酸化炭素排出量削減など、環境の健全化に関する国際条約を締結し、その取決め内容を実施する。進行状況について国際機関による客観的な評価を行いその知識を世界中で共有し啓発する。そして人々の思考様式・価値観を環境健全化に強く同調するようなものに変える。 

 福祉国家の国民主義的限界による福祉国家と低開発国との間の悪循環のようなメカニズムは、緑の福祉国家とその他の国々とのあいだでは成り立ちません。環境問題は、温暖化問題で顕著に見られるように、本来的にグローバルなものですから、もし緑の福祉国家と呼べるような国があれば、国民主義的障害などあるはずもなく、率先して他国に波及効果を及ぼそうとするはずだからです。

 また価値前提は、人々の平等が最高の価値だとは言えなくなっています。人々の平等が論じられる人間社会を越えて、生態系の持続が価値前提に置かれるからです(あるいは、人々と動物両者の環境権における平等が価値前提なのだと言うことはできるかもしれません)。ミュルダール経済学の形式に従えば、生態学的な持続性を価値前提として波及効果を強め、環境問題を深刻化させる悪循環を食い止める政策を実施し、人々の考えを変えていくということになるのです。

 2015年12月、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で世界中の国が参加する協定ができました。1992年の地球環境サミットから23年もたってようやく達成したのです。ミュルダールが述べているように人々の内面の変容には時間がかかるということがよくわかります。ただ、各国の目標達成は義務づけられたわけではなく、内面の変化はまだ不足している状況なのだと思います。今後も協定による取り決めの実施に向けて国際的に制度の改善(義務化など)を追求し続ける必要があるのでしょう。

 

 *以上で連載は完結しました。

 

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『ミュルダールの経済学』を読む 7

2016年03月13日 | 経済

 

ピケティの格差解消論を本書の解釈によるミュルダール経済学で分析してみる 

ピケティの格差解消論

 「サングラハ」誌141号と142号で紹介しましたピケティの考えは、没収的な最高税率を持つ累進課税を所得に課すと同時に、資産そのものにもグローバルな累進課税を課すことで、拡大しつつある富の格差を解消させるということでした。その際目標とされるのは、1970年代~1980年代北欧で実現されていた福祉社会を資産格差においてある程度改善したもの(このような社会を古典的福祉社会と呼ぶことにします)が、グローバルな規模で実現することです。

 ピケティは能力主義による富の格差の正当性を認めていますから、格差を完全になくすことなどは考えていません。ただ、その能力主義的正当性には民主主義的な条件がつくのだと、フランス革命の際の人権宣言にからめて次のように述べています。 

 フランス人権宣言(1789年)第1条もまた「人は自由に生まれ、自由のまま権利において平等な存在であり続ける」と宣言する。でもこの一節の直後には次の宣言がある。「社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない」 (『21世紀の資本』p.498 以下断りがなければ引用のページ数は同書のものです) 

す なわち、格差は共同体の利益に基づかなければならないのですから、社会不安を生じさせたり、能力と努力の成果という正当性をもつことが疑われたり、金融危機の誘因になったり、あるいは福祉社会の維持に反するようなものになってはいけないのです。

 しかし、資本税については、その実現性に大問題があり、彼自身が次のように述べています。 

 世界的な資本税というのは空想的な発想だ。世界各国がこんなものに同意するなど、当分の間はなかなか想像もできない。この目的を果たすためには、世界中のあらゆる富についての税率表を作り、それからその歳入をどう山分けするか決めねばならない。でもこの発想が空想にすぎなくても、いくつかの理由で役に立つものではある。まず、この理想に近いものすら当分の間は実施できないにしても、有益な参照点として使える。これを基準にして他の提案を評価するわけだ。もちろん世界的な資本税には、たしかにきわめて高い、そしてまちがいなく非現実的な水準の国際協調を必要とする。でもこの方向に動こうとする国々は、段階的にそちらに向かうことも十分できる。まずは地方レベル(たとえばヨーロッパなど)から始めるといい。(p.539) 

 真にグローバルな資本税を実施するには、高度な国際協調を実現し、誰が世界中でどんな資産を持っているかを明確にするという困難があるわけです。 

ピケティの考えをミュルダール経済学で分析する

 ミュルダール経済学の全体像を表している図1を見てください。そこにある形式にそってピケティの考えを眺めますと次のようになるのではないでしょうか。 

 Ⅰ 方法論的考察 格差是正ということを価値前提とする

 Ⅱ 実践的考察  現実は逆流効果>波及効果となっており、格差が拡大する悪循環の傾向がある。先進諸国では福祉国家の体制が弱化している。

 Ⅲ 理想 世界レベルの好循環を起こし福祉世界へ

    政策 所得に対する没収的な最高税率、資本に対する直接の課税、それらを伴うグローバルな累進課税の実施。そしてその世界規模の分配。 

 ピケティの場合には価値前提は格差是正です。これは、現状の大きすぎる格差がさらに拡大しつつあり、社会不安を起こしたりしているから、共同体の利益に反しないようにより平等に直すべきだということです。格差をなくせというのではなく、自由・平等・連帯という民主主義の理念における平等を今は優先的な価値とするということです。一方ミュルダールは最高の価値は平等だとしていますが、彼とて市場経済での自由な活動を自らの経済学体系の基本にしていますから、やはり民主主義の理念「自由・平等・連帯」の一環としての平等を価値前提にしているのです。したがって、ミュルダールが最高の価値を平等に置くということと、ピケティが格差是正を目指すことは、現時点においては同じだといってよいでしょう。

 実践的考察においては、二人には時代的な相違があります。ミュルダールの当時、福祉国家はより充実していく過程にありました。それに対しピケティの現在、理想的な福祉国家に近づきつつあるように思われた多くの西側先進国においてでさえ、レーガンやサッチャーの登場以来の格差拡大の傾向が継続しているのです。今や低開発国のみならず、多くの先進国においても悪循環が起こっているという違いがあります。しかし世界全体での悪循環ということではピケティもミュルダールも一致しています。そうして世界レベルで好循環を起こし、福祉世界を目指すことにおいても両者は一致しているので、もし今ミュルダールがいれば、ピケティの税制案に基本的には賛成したことでしょう。

 ピケティは格差を是正するための税制に主要な関心があるわけですが、そのような税制をグローバルに実施するには、高度な国際協調を実現するという困難もありますし、またその便益を各国同士や各国の中でどうやって公正に分配するのか考えるという困難もあります。それら困難を克服していくには、すでに福祉国家の体裁をある程度整えている先進国と、そうでない発展途上国との相違や関係についてなんらかの妥当な見解を持っている必要があると思いますが、そのようなことに関しての考察をピケティはあまりしていません(と私は思います)。

 その点ミュルダールの場合、制度派経済学者として、先進国と低開発国それぞれの状況分析と政策提案がなされていて、ピケティの議論にはない包括性をもっています。なによりも特筆すべきは、ミュルダールが人々の思考様式や価値判断の変容という内面的なことを極めて重視していることで、それはピケティの議論にはほとんど見られない部分です。ピケティの議論は極めて明快で得難い価値があると思いますが、それをミュルダールの枠組みで考えることで、より現実に適した議論に発展させることができるのではないのかと私は思いました。

 

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『ミュルダールの経済学』を読む 6

2016年03月12日 | 経済

 

             ミュルダール経済学の全体像 

 以上のように、累積的因果関係論の逆流効果・波及効果概念によって先進諸国と低開発諸国とを総体としてとらえることで、ミュルダールは両者の格差拡大という世界レベルでの悪循環を認識し、そして悪循環を好循環へと転換させることで、グローバルに福祉が行き届いている理想の世界(「福祉世界」)が構築され得るとしたのです。本書は、このように累積的因果関係論を中心に据えてこそ、ミュルダールの遠大な考えが統一的な経済体系として理解され得ると主張するのです。その経済体系を図式化したものが、図1です。 

  図1の一番上の部分は、「価値前提の明示」の方法論と累積的因果関係論が不可分で一体であることを表現しています。それは、累積的因果関係論において、状況が「好循環」と「悪循環」のいずれであるかを判断するには前提とされる価値が明らかであることが必要ですし、また逆に累積的因果関係論によって得られた科学知識が啓蒙されることで大衆の価値判断は変化し得るという相互循環性があると考えたからです。ただし、最高の価値が平等であることは不変であるとミュルダールは確信していました。 

なぜいまミュルダールなのか? 

 本書でまとめられたミュルダール経済学についての私なりのレビューはこれで終えます。彼の経済学を通して現実世界を見ると、例えば中国は軟性国家から脱しようとしている最中なのだろうとか、日本は福祉国家としての国民主義的傾向がまだまだ強いので移民をほとんど受け入れないのだろうとか、各国の状況把握に役立てることができそうだと私には思えます。それにしても何故今ミュルダールなのか?それに対する著者の回答が本書冒頭にあります。 

 なぜいまミュルダールなのか。それは、彼が主力を傾けて取り組んだ経済学上の諸問題が、現在の諸問題にまちがいなく通じていると考えられるからである。さまざまな格差が問題視されている現代、経済面に偏ったグローバル化が危惧されている現代、社会の価値観が多様に変化している現代である。彼の問題提起を受け止めるべき時代が到来しているのであり、少なからぬ人々が彼の思想を再発見すると思われる。(p.4) 

 また、本稿ではミュルダール経済学の体系化ということに集中し触れませんでしたが、ミュルダール夫妻(彼の妻は1982年にノーベル平和賞を受賞したアルヴァです)には人口問題論に関する業績があり、本書でも詳しく扱われています。現在日本は少子化の問題を抱えており、彼らが主張する消費の社会化(育児補助をお金ではなく現物で支給する)などは非常に参考になると思いました。

 

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