環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2009年4月のブログ掲載記事

2009-04-30 11:41:56 | 月別記事一覧
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1.2009年4月のブログ掲載記事(2009-04-30)

2.日本の現実 「エコ偽装で露呈、意識の低さ」という投書の的確さ(2009-04-29)

3.現在の「大不況」、経済学者、小宮隆太郎さんなら?(2009-04-26)

4.米、核再処理を断念 政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針(2009-04-23)

5.グリーン・イノベーション・ジャパン:2020年をメドに、120兆円の市場と280万人の雇用を(2009-04-22)

6.日本の温室効果ガス削減中間目標 これはもうどう考えたらよいのだろう???(2009-04-18)

7.なぜ、スウェーデンにそれができたのか、~人も自然も幸福な国~(2009-04-17)

8.「安心社会実現会議」の発足と初会合、 私の期待に応えてくれるだろうか?(2009-04-15)

9.企業の07年度の温室効果ガス排出量(CO2)換算上位10社(2009-04-14) 

10.あれから40年、2010年は混乱か?-その3(2009-04-11)

11.あれから40年、2010年は混乱か?-その2(2009-04-10)

12.あれから40年、2010年は混乱か?-その1(2009-04-09)
 
13.「グリーンニューディール」と呼ぶにふさわしい スウェーデンがめざす「緑の経済と社会の変革」(2009-04-08)

14.炭素税 神奈川県の県地方財政等研究委員会が導入検討を促す報告書を松沢知事に提出(2009-04-06)

15.07年度温室効果ガスの排出 鉄鋼・セメント業界が上位(2009-04-04)

16.日本政府の中期目標検討委員会が受賞した「化石賞」(2009-04-03)

17.2008年のODA実績 総額:スウェーデンはおよそ日本の半分、GNI比:1位、日本は21位(最下位)(2009-04-02)


18.新年度の初日はこうして始まった:3月 日銀短観 景況感 過去最悪(2009-04-01)



日本の現実 「エコ偽装で露呈、意識の低さ」という投書の的確さ

2009-04-29 21:36:17 | 環境問題総論/経済的手法




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今日は、3日前の朝日新聞の投書欄に掲載された至極まっとうなご意見を紹介します。まずじっくりとお読みください。


最初に出てくる事例は次の“省エネ冷蔵庫”です。

次に出てくる事例は昨年1月の“製紙会社のリサイクル率水増し”事件です。

●混迷する日本④ 20世紀の企業倫理・企業観が招いた「低い古紙配合率」(2008-01-18)

そして、近年のレジ袋や冷暖房に関するエコ(クールビズやウォームビズなど環境省が提示した国民一人一人にできることなど)は、行っている人の自己満足にはなるかもしれませんが、社会全体のレベルで考えれば企業の行動(具体的には、資源やエネルギーの消費量など)が市民の行動より遙かに強力なので、効果はまったくない思います。たとえば、次のような例です。

●アクアラインの通行量値下げは、環境負荷を増大する(2009-03-24)



2007年、2008年には、こうした「市民の不安定なエコ意識の状況」に、さらに混乱をもたらすような、一群の識者らの「エコ批判本」 も相次いで出版されました。こうした動きに対して、批判された側からの反応が十分にないまま、うやむやのうちに時間が経過し、現在に至っています。以下の記述は、当時の私の認識です。今も私の考えに基本的な変更はありません。

●判断基準を変えれば、別のシーンが見えてくる(2007-10-10)

●同じ情報を与えられても解釈は異なることがある(2007-10-11)

●武田さんの「環境問題はなぜ嘘がまかりとおるのか」と槌田敦さんの「環境保護運動はどこが間違っているか」(2007-10-14)

●日本「温暖化懐疑論」という現象(1)(2008-09-24)

●日本「温暖化懐疑論」という現象(2)(2008-09-25)

●槌田敦さんが理解するスウェーデンの原発事情(2007-10-10)

次の「低燃費の新車や省エネ家電に買い換えることは本当に地球に優しいのだろうか。買い換え自体が無駄な消費で、宣伝に利用されるだけなら何の意味もない」とあります。これは、個人の意識と努力に基づいたレジ袋や冷暖房に関するエコとは違って、日本政府が「日本版グリーンニューディール」と名付けた政策のもとでかなりの予算をつけて実施する大規模な国民的行動ですから、ある程度の予測はできますが、結論を急ぐのではなく、少なくとも1~2年後に判断すべきでしょう。そのときの私の判断基準は次の通りです。




さて、この投書の中で最も重要な部分は次の部分です。

----------
世界は今、食糧、水、石油の供給、温暖化、移民格差など様々な危機に瀕しているのに、リーマン・ショック以降、話題に上るのは金融危機ばかりだ。環境問題は、金融サミットに飲み込まれてしまったようだ。未曾有の経済危機の克服は急務だが、景気回復のメドが立った後でも解決の終わらぬ問題からは、たえず意識をそらすべきではないと思う。
----------

私の環境論から見ると、この部分は核心をついていると思いました。私も同じ考えですので、日本の経済学者やエコノミストの「環境問題に対する意識」を探るため、経済分野の週刊誌を購入し、詳しく調べてみました。そこに登場する識者(その多くがマスメディアで知 られた方々です)の主張はまさに、投稿者の岡村一生さんのおっしゃるとおりで、「環境問題に対する認識」はほとんどゼロに等しいものでした。この状況は経済学者やエコノミストの意識の問題であると共に、これらの経済誌の内容を企画する編集者の意識の低さでもあると思います。大変恐ろしいことだと思います。

●週刊『エコノミスト』 2008年11月25日号   新ニューディールなるか 危機vsオバマ

●週刊『エコノミスト』 2009年2月3日号   日本経済処方箋 経済「戦時」克服のためのチェンジ

●週刊『東洋経済』 2009年2月14日号   世界経済危機 特別講義 これから起こる大激変

●週刊『ダイヤモンド』 2009年4月4日号   入門 「大不況の経済学」 日本を襲う危機の正体

●週刊『東洋経済』 2009年4月4日号   経済「超」入門 危機後の世界がすべてわかる!

●週刊『エコノミスト』 2009年4月28日号   最速で景気回復、日米欧がすがる中国一極経済

●週刊『エコノミスト』 2009年5月5・12日合併号   世界不況が迫る経済の構造転換 産業大革命 日本のものづくりは死ぬのか 

●週刊『エコノミスト』 2009年5月26日特大号 (2009年5月20日追加)    環境先進国の嘘


結局、これらの記事に目を通して得られたことは、私の期待に反してというか、予想通りというか、次のようなものでした。


①上記の週刊誌に登場する経済学者やエコノミストには、それぞれのよって立つ基盤が比較的明らかである。

②経済学者が10人集まると11通りの処方箋がある。ということは、経済学者や、さらに拡大解釈して、エコノミストにこの未曾有の大不況の解決を期待するのはもともと無理があった。

③そして、最も失望したのは「経済成長」の議論ばかりで、「経済活動の当然の帰結である環境問題」を意識して発言している経済学者やエコノミストがほぼゼロに等しかった。


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現在の「大不況」、経済学者、小宮隆太郎さんなら?

2009-04-26 23:46:47 | 経済
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私の環境論が他の多くの日本の環境分野の専門家の議論と異なるのは、「環境問題」と「経済(活動)」を最初から関連づけて考えていること、そして、環境問題の解決のためには「民主主義の考え方」と「その実践」が必須なこと、具体的には環境問題の解決は従来の公害とは違って技術的な対応だけでは不十分で、経済社会の制度の変革をともなうこと、21世紀に主な環境問題を解決した「エコロジカルに持続可能な社会」の創造のためには、さまざまな「政策」とそれらの政策を実現するための「予算措置」が必要なこと、つまり、環境問題の解決に当たって、「技術の変革」と「政治と行政のかかわり」を強く意識していることです。

20世紀の安全保障の議論は「軍事的側面」に特化されていましたが、21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロ活動がなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」といえるでしょう。

皆さんはご存じだと思いますが、私は今年の1月11日のブログで、「大不況」、ドラッカーなら、ケインズなら、ではなくて、現在のスウェーデンに学んでみたら、と書きました。そこで、今日のブログは、現在の「大不況」、小宮隆太郎さんなら、としてみました。


今日は、日本の経済学界を代表するお一人である小宮隆太郎さんが10年前の日本経済新聞に書かれたお考えを紹介します。私は、これまでにこのブログで何回も書きましたように、経済学やその関連学問とは無縁の門外漢ですから、小宮さんがどのような方であるかは存じませんが、幸いにも私たちはウイキペディアを通じて私たちにとって今必要な情報は得ることができます。ウイキペディアには次のように書いてあります。

----------
元来の専攻は国際経済学であったが、その枠にとどまることなく、金融論から産業政策論まで幅広く戦後の経済学並びに経済論壇をリードし続けた。
理論と政策提言の乖離が甚だしい日本の経済学界において「理論」と「実践」の両面で長らく第一線の地位を占め続けた小宮は、極めて例外的な存在である。東京大学退官後、1989年には青山学院大学国際政治経済学部教授に就任。この間、1964年~1965年にはスタンフォード大学客員教授、1988年~1997年には通商産業省通商産業研究所長を兼ねた。1990年日本学士院会員。1972年には松永賞、2002年には文化勲章を授与されている。弟子には、須田美矢子、岩田規久男、斎藤精一郎、堺屋太一、太田房江、中馬弘毅、中曽宏らがいる。
----------
現在の経済分野の議論でマスメディアを賑わしている経済学やエコノミストの方々の多くが小宮さんのお弟子さんであったり、小宮さんに学び、あるいは影響を受けた方々であることがわかります。最後の部分に「小宮ゼミ出身者」という欄があって、ここには、榊原英資さん、現日銀総裁の白川方明さん、日本経団連副会長の三村明夫さん、八代尚宏さん、岩井克彦さんなどのお名前などが見受けられます。


さて、小宮さんのお考えを伝える10年前の日本経済新聞です。

この論文記事のタイトルは「日本経済の課題 中長期の視点から 悲観主義の克服」とあります。記事の上段は10年前の日本の状況と考えてよいでしょう。そして、下段は当時の北欧諸国やスイスの状況分析です。

なぜか私には、小宮さんがお書きになった10年前の分析が現在の日本や北欧の状況と大差ないように思えるのです。そうであれば、当時よりもさらに深刻な「大不況」の現在を、「ドラッカーなら、ケインズなら、」ではなく、「小宮さんなら、どうお考えなのか」、お尋ねしたいものだと思います。

小宮さんの記事が掲載された20日後、1999年1月21日の日本経済新聞は「経済教室」の欄で北欧の成功の背景を掲載しました。当時、日本大学経済学部教授であられた丸尾直美さんが書かれたものです。そのポイントは次のようです。日本の対応とは大きく異なります。

●国民の不安解消、北欧を参考に

●資産重視の不況対策


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時代に取り残される経済学(2007-02-22)

成長一辺倒の戦後60年①(2007-02-15)

成長一辺倒の戦後60年② そしてこれからも?(2007-02-16)

米、核再処理を断念 政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針

2009-04-23 21:39:39 | 原発/エネルギー/資源
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4月21日の朝日新聞が「米エネルギー省(DOE)は20日、原発の使用済み核燃料の商業施設や高速炉の建設計画を取りやめる方針を明らかにした」と報じました。

22日の朝日新聞は、「米国が再処理工場を断念した背景と日本の原発政策への影響」を解説しています。 



22日の読売新聞も同様な趣旨の記事を掲載しています。



これらの記事が伝える内容は大変重要ですが、私はこれまで、日本やスウェーデンの原発のあり方についてこのブログでかなり発言してきましたので、ここではこれらの記事を記録しておくに留めます。更に事態が何らかの発展をしたときに、この記事を振り返り必要なコメントをしたいと思います。

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原子力円卓会議(第11回) 核燃料サイクルの問題 議事録
私も招へい者として円卓会議に参加しました。

またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

グリーン・イノベーション・ジャパン:2020年をメドに、120兆円の市場と280万人の雇用を

2009-04-22 16:29:11 | Weblog
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今日の環境新聞が環境省が中心となって「2020年をめどに、グリーン・イノベーション」(日本版グリーン・ニューディール)をまとめたと報じています。


記事によれば、この施策は、1月より斉藤鉄夫環境相が提案し、麻生太郎首相が本格的な策定を指示していまもので、有識者との意見交換やパブリックコメントなど国民の意見を広く求めながらとりまとめたとのことですが、私にはまったくコメントできません。

ここでは、日本の環境省がこの日にこのような名称の「緑の経済と社会の変革」なるものを策定して、発表したと記録に留めておくだけにします。数年後に振り返ってみることにしましょう。

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「グリーン・ニューディール」と呼ぶにふさわしい、スウェーデンがめざす「緑の経済と社会の変革」(2009-04-08)


日本の温室効果ガス削減中間目標 これはもうどう考えたらよいのだろう???

2009-04-18 09:49:06 | 温暖化/オゾン層
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昨日のブログで、「このような、人類の歴史的会議の流れの中で、スウェーデンがまさに最先端の考えを国際社会に提示してきたのと対照的に、世界第2位の経済大国を自認する日本は、 実質的には1992年の議論「環境と開発のかかわり」のレベルに止まっているかのようです
と書きました。

偶然にも、この状況は、次の二つの記事を読み比べるだけで確認できます。私のコメントなどは一切不要でしょう。最初は一昨日の日本経済新聞です。次は今日の朝日新聞です。


関連記事
日本政府の中期目標検討委員会が受賞した「化石賞」(2009-04-03)

企業の07年度の温室効果ガス排出量(CO2換算)上位10社(2009-04-14)

低炭素社会は日本の政治主導による「持続可能な社会」の矮小化か?(2009-01-12)



追加

なぜスウェーデンにそれができたのか ~人も自然も幸福な国~

2009-04-17 18:41:21 | Weblog
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5月17日(日)に開催される、持続可能な国づくりの会が主催する「連続公開講座」の今年3回目のご案内です。




このパネル討論会から皆さんへの私のメッセージは次のとおりです


スウェーデンがホスト国となった37年前の1972年の第1回国連環境会議(ストックホルム会議)のテーマは「環境」でした。20年後の1992年のリオの地球サミットのテーマは「環境」と「経済行為である開発」とのかかわりを確認した国連の2回目の環境関連の会議でした。そして、その10年後の2002年のヨハネスブルグ会議は前二つの環境に関する国連の会議の結果を踏まえて、人類の将来の安心と安全のための「持続可能性」を議論した最初の会議でした。そして、3年後には2012年(1972年の「第1回国連人間環境会議」から40年)となります。

このような、人類の歴史的会議の流れの中で、スウェーデンがまさに最先端の考えを国際社会に提示してきたのと対照的に、世界第2位の経済大国を自認する日本は、実質的には1992年の議論「環境と開発のかかわり」のレベルに止まっているかのようです。  







(注)ここでいう「スウェーデン版グリーン・ニューディール」というのは、私が勝手にそのように呼んでいるだけで、スウェーデン政府やスウェーデンのマスメディアが使用することによってスウェーデン社会の中で相当の共通認識がえられている概念ではありません。

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「グリーン・ニューディール」と呼ぶにふさわしいスウェーデンがめざす「緑の経済と社会の変革」(2009-04-08)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1(2009-01-08)

私の環境論 「経済危機」と「環境問題」のとりあえずのまとめ(2008-11-29)

「安心社会実現会議」の発足と初会合、私の期待に応えてくれるだろうか?

2009-04-15 08:40:34 | 政治/行政/地方分権
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このブログを見てくださっている方々はご存じでしょうか。このブログのタイトル(画面の上部をご覧ください)が

「経済」「福祉(社会」「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ 

であるということを。

ひょっとすると、私のブログのテーマに対する「この国の答え」が出てくるかもしれないという淡い期待を抱かせるような会議「安心社会実現会議」(いつになく目的を明確にしたストレートなネーミングの会議ですが)が内閣官房に設置され、その初会合が4月13日に開かれたそうです。

「治療志向の国」日本の政府が唐突に設置を決めたわけですから、事態が大変に深刻なのでしょうけれども、会議のメンバーを見るとその多くが  「これまでの成長路線を支えてきたような方々」とお見受けするのですが、ここは、とにかく、大いに期待し、「6月のまとめ」を待ちましょう。

今回の会議の委員の方々の中で、注目されるのは宮本太郎さんかもしれません。宮本さんは、今やスウェーデンの福祉制度を語る第一人者で、私のこのブログでも宮本さんの研究の一端を紹介したことがあります。

関連記事
スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1(2009-01-08)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その2(2009-01-09)

スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その3(2009-01-10)

「自由民主党の党綱領」と「スウェーデン社民党の党綱領」の大きな落差(2009-01-05)

自由民主党の「旧綱領」には、「公共の福祉を規範とし、福祉国家の完成を期する」と書いてあった(2009-01-06) 


そして、4月13日にこの会議の初会合が開かれました。

●安心社会実現会議の初会合



ここでもう一度この会議の議題を確認しておきましょう。

上の記事によれば議題には、
①日本が目指す安心社会の全体の姿、見取り図を示す
②雇用、医療、年金、介護、子育て支援のあり方や政策の優先順位を提示する―
を挙げたと、妙に具体的です。

6月のまとめでは、この会議の委員の方々の「これらの議題に関する基本認識」が明らかになるでしょうし、麻生首相、与謝野財務・金融・経済財政担当相、河村官房長官など「政府のリーダーの基本認識」も知ることができるでしょう。麻生首相の持論とも思える「中福祉・中負担」という概念がどのような(どの程度の)ものかも明らかになるかもしれません。



以下は余談です。

戦後60年余の歴史の中で、ドイツ共に、日本とスウェーデンは経済的に大成功をおさめた代表的な国だったと思います。経済的な成功の原動力はそれぞれの国の歴史や文化、社会に対する考え方などの相違により、一様ではありません。

ここで、両国が経済的に成功した原動力を考えてみましょう。いろいろな理由が考えられますが、私は両国の発展の原動力は同じではなく、むしろ正反対だったと思っています。キーワードは「不安」です。スウェーデンは公的な力によって、つまり社会システムによって、国民を不安から解放するために安心・安全・安定などを求めて経済的発展を進め、「生活大国」をつくり上げたのに対し、日本は不安をてこに効率化・利便さをもとめて「世界第2位の経済大国」と呼ばれるまでに経済的発展をとげたと私は考えています。

●長期単独政権の成果:社民党44年、自民党38年

 ヨーロッパで最貧国であったスウェーデンは社民党が1932年に政権についてから福祉国家の建設をめざし、1976年の連立政権誕生までの44年間、社民党の長期単独政権を維持してきました。ですから、現在の福祉国家は社民党政権の下で築かれたものです

この福祉国家ははやりの言葉で言えば、「生活大国」と呼んでもよいと思います。スウェーデンは、1813年のナポレオン戦争以来、200年近くまったく戦争に参加してきませんでした。この事実は今日の先進工業国の歴史を返りみる時、おどろくべきことと言わざるをえません。

一方、日本は「富国強兵」「殖産興業」を旗印に、アジアの一農業国から欧米に追いつくことを目標に努力を重ね、“アジアの大国”になりました。そして、1945年に太平洋戦争(第二次世界大戦)に突入しました。戦後は官民挙げての努力の結果、世界が賞賛する現在のような経済大国となったのです。戦後の日本の経済発展は自民党の38年間にわたる長期単独政権の下でなされたものでした。要約すれば、社民党の44年にわたる長期単独政権が「福祉国家スウェーデン」をつくり、自民党の38年にわたる長期単独政権が「経済大国」日本をつくったのです。

スウェーデの社民党政権が党の綱領に掲げた「福祉国家の建設」を見事な形で実現したのに対し、日本の自民党は「福祉国家の完成」を党の旧綱領」(1955年に制定され、2005年の小泉政権で新綱領に改訂されるまで50年間)で掲げておきながらなんと 「非福祉国家」を完成させたのです。そして、今、再び「中福祉・中負担の社会」を築こうとしているかのようです。  
 
●これからの20~50年

 今後50年を展望すると、この2つの国の将来は大きく異なるでしょう。日本はスウェーデンと技術面では大差がありませんが、 「将来の社会に対する考え方」では、両国の間に大きな落差があるからです。私たちの行く手には、「大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される20世紀型産業経済システム」の根幹を揺るがす“資源・エネルギー問題”や“環境問題”という世界共通の巨大な壁が立ちはだかっています。この壁を乗り越えるには、技術的な対応に加えて、社会システム、慣習、価値観の変更などの社会科学的な変革が必要となります。

技術一辺倒できた日本にとって、社会科学的な変革は最も苦手とするところです。
その前提となる「社会的な合意形成」は制度的にも、意識的にも不得意な部分です。逆に、日本の不得意なところはスウェーデンが得意とするところでもあります。
  

企業の07年度の温室効果ガス排出量(CO2換算)上位10社

2009-04-14 12:18:19 | 温暖化/オゾン層
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4月11日の毎日新聞が次のような記事を掲げています。


この記事は、私が4月4日のブログ「07年度の温室効果ガスの排出 鉄鋼/セメント業界が上位」で疑問を呈した問題にみごとに答えてくれています。今日掲げた記事の表では、東京電力をトップに、なんと排出量上位10社に電力会社7社が入っているではありませんか。

参考までに、4月4日のブログに掲げた朝日新聞の記事を再掲します。
 
今回の事例によく似た事例があります。岡田幹治さん(朝日新聞ワシントン特派員、論説委員を歴任されたあと、東京経済大学非常勤講師)は、雑誌『世界』(2007年9月号)に寄稿した論文「日本の国家戦略? 美しい星50 徹底批判 日本経団連の主張を丸呑みした安倍内閣の総合戦略」(p170~175)の「日本経団連の思惑」という項で、経団連と経産省の主張のうち、次の「三つの誤り」を指摘しておられます。

誤りその1 CO2削減には「業務」「家庭「運輸部門」の努力こそが必要だ。
誤りその2 日本産業の効率は高く、「乾いた雑巾」のように、削減の余地は少ない。
誤りその3 京都議定書は「不平等条約」であり、その過ちを繰り返してはならない。

この三つの誤りのうち、「誤り その1」が今日のブログの問題点の説明になると思います。岡田さんは、温室効果ガスの排出量の表現方法には「直接排出量」「間接排出量」があり、多くの国では、「直接排出量」が使われているが、日本では「間接排出量」が使われる傾向が強いことを指摘されておられます。そして、直接排出量でみると、日本の全家庭から排出されるCO2は6780万トンで、日本の総排出量の5.2%(ちなみに、間接排出量では日本の総排出量の13.5%)にすぎず、東京電力1社の総排出量約9700万トンより少ないとのことです。

岡田さんは、この論文で「部門別排出量といえば、多くの国では直接排出量の数字が一般に使われているのに対し、日本の環境省の発表では『参考データ』としてしか扱われていない。マスコミも間接排出量だけを報じている。このようにして、電力業界に有利な情報操作が行われているのである。」と書いておられます。

この件もまた、昨日の経験則「今日の決断と将来の問題」の応用例といえるでしょう。つまり、最初の出発点が不十分であると、やがて不十分な結論を導く結果となるということです。

私が思うに、記事の内容から見て、この二つの記事の情報源(環境省と経済産業省が地球温暖化対策推進法に基づいて公表したとありますので、)は同じだろうと思います。しかし、興味深い情報がマスメディアを通じて読者に提供されたとき、情報の受け手である私たち一般読者は通常、もとの情報に当たることはほとんどないのではないでしょうか。ですから、ある意図のもとに提供されるデータはほとんど検証されることなく、そのまま通過し、次の議論のときにはあたかも検証済みの、議論に耐えるデータであるかのように利用され、その結果として議論の方向を誤るということになりかねないのです

●経済産業省のニュース・リリース 2009年4月3日
 地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度におけ る平成19年度温室効果ガス排出量の集計結果の公表について 

ただし、このニュース・リリースを参照してもよくわかりませんでした。       

あれから40年、2010年は混乱か?―その3

2009-04-11 13:53:30 | 政治/行政/地方分権
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次の図は「私の環境論」の基本となっている考え方の主なものをまとめたものです。



今日は上の7つのキーワードの「⑦獲得した経験則」から「今日の決断と将来の問題」をとりあげ、4月2日に採択された「G20の首脳会議のグローバルな政治的決定」の報道を考える際の手がかりにしたいと思います。

今、私たちが本気で「環境保護のための行動」と「持続可能な社会の実現をめざした行動」を起こさないと、私たちの子供や孫が生きる世界が大変なことになりますし、対応を先に延ばせば延ばすほど、社会的なコストが増大することになります。

私たちが、今、直面している環境問題は「今に原因があるというよりも、私たちが数十年前に決断したことに原因がある」ということです。私たちが「経済成長」を求めて投資した生産設備やそこから生産された生産物、インフラ・ストラクチャーとしての巨大ビルや高速道路などの構造物から生ずる「環境の人為負荷の蓄積」が今起こっている環境問題の主な原因なのです。

このことがはっきり理解できれば、「今日の決断が数十年先の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則が理解されるはずです。この経験則は人口の大小や生産規模の大小にかかわりなく、すべての国に共通する普遍の原理・原則です。この原理・原則は環境問題だけでなく、社会システム、インフラ・ストラクチャー、経営などほとんどすべての社会事象に適用可能だと思います。

さて、次の報道記事は、4月2日から3日にかけて報じられた金融危機サミットに関する記事から抜粋したものですが、いずれも「経済と環境問題のかかわり」を意識した記事はまったくありません。経済と環境問題はコインの裏表のような関係にあるわけですから、G20に参加した世界のリーダーが意識しようとしまいと、国際社会で協力してGDPを2%増やそうとすれば、環境負荷も増えることを理解しなければなりません。

その意味でここに掲げた以下の記事は、「世界の首脳が4月2日に決めた決断」 (今日の決断)が、2010年末にどのような結果(将来の問題)を生んだかを検証するさいに重要な資料となるでしょう。

●経済回復「来年末までに」 金融サミット 目標明記へ調整 (朝日新聞 2009年4月2日 夕刊)

●1900万人雇用創出 G20合意 成長2%超目標(朝日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●時時刻々 G20正念場 財政出動、各国の重荷(朝日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●クローズアップ G20 財政出動と金融規制 「自国優先」応酬 (毎日新聞 2009年4月3日 朝刊 )

●保護主義阻止で一致 G20声明 実効性確保が課題(毎日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●経済悪化止まらず 問われる存在意義(毎日新聞 2009年4月3日 朝刊)

●G20首脳宣言 財政出動500兆円 成長4%押し上げ(朝日新聞 2009年4月3日 夕刊)



さて、こちらはG20の緊急金融サミットと同じ時期にドイツで開催されていた国連の温室効果ガスの目標値を決める作業部会の活動を報じたものです。こちらの記事にも「経済とのかかわり」がまったく書かれていません。

●温室ガス 途上国に削減計画促す 日本の分類案には否定的(朝日新聞 2009年3月19日)

●温暖化交渉 米巻き返し 長期目標に力点移す(朝日新聞 2009年4月9日 朝刊)

●国連の作業部会閉幕 温暖化対策原案 6月までに提示(朝日新聞 2009年04月9日 夕刊)

これらの報道記事からおわかりのように、「経済活動と環境問題は深くかかわり合っている」、さらに言えば、経済活動の拡大が環境への負荷を高めている事実にもかかわらず、マスメディアでは、あたかも別物を扱っているかのようです。
もっとも、マスメディアの基本的な使命が、時々刻々と変化している世界の事象をタイミングよく社会に伝えることであるとすれば、マスメディアが報ずる情報がフローで断片化するのもやむを得ないことかもしれませんが、報道記事のほかに、解説記事もあるわけですから、解説記事で「経済と環境問題のかかわり」がわかるように書いてほしいと思います。そうなると、「記者の基本認識の問題」ということになってきますね。


米国発の金融危機に端を発したグローバル経済の危機に対してエコノミストや評論家が好んで用いる「ピンチはチャンス」という発想に立てば100年に一度と言われる「世界同時経済不況」という大ピンチへの対応は4月8日のブログで書きましたように不況以前の経済状況に戻すことではなく、人類史上初めて経験する「経済規模の拡大から適正化へ世界経済が大転換する千載一遇のチャンス到来」と据えるべきだと思います。 




あれから40年、2010年は混乱か?―その2

2009-04-10 20:13:16 | 政治/行政/地方分権
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このブログの読者の皆さんにはもうお馴染みだと思いますが、再び次の図を掲げます。


(注)この図は「平成13年版環境白書」の11ページに掲載されていたもので、 図の原題は「問題群としての地球環境問題」となっています。

この図は私の環境問題に対する基本認識を十分裏付けてくれるものです。

★この図で、経済成長(GDPの成長)を支える「経済活動の拡大」とは「企業活動」+「消費活動」です。ですから、マスメディアが伝える「エコ」がきわめて矮小化された活動であることがわかります。
★この図から私たちが直面している環境問題は多岐にわたって同時進行おり、決して「地球温暖化」だけではないことがわかります。ですから、「持続可能な社会」という国際的な概念に取って代わったように、2006年頃から日本で多用されるようになった「低炭素社会」という概念のもとでの日本の環境対策はあたかも「いびつな環境認識」のあらわれだと思います。 
★この図でいう「経済活動の拡大」とは、具体的には「資源とエネルギーの利用の拡大」を意味します。
★注意しなければならないのは、上のような明確な図を環境白書に掲載しておきながら、実際の国や地方の行政の行動はこの図に示された理解とは別の方向を向いていることです。


関連記事
私の環境論3 矮小化された日本の環境問題(2007-01-13)

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★人類史上初めて直面する二つの大問題

2050年までに、私たちは否応なしに人類史上初めて直面する二つの大問題を経験することになるでしょう。どちらも、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、次の世代に引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっています。

その一つは、日本でも関心の高い「少子・高齢化問題」です。少子化も高齢化も、人類にとって初めての経験ではありません。しかし、少子化と高齢化が手を携えてやってきたことは、これまでにはありませんでした。これは「人間社会の安心」を保障する年金、医療保険、介護保険、雇用保険などで構成される「社会保障制度の持続性」にかかわる問題です。つまり、人間社会の安心と安全が保障されるかどうか、という意味において「社会の持続性」にかかわる大問題なのです。
 
もう一つはいうまでもなく、「環境問題」です。冒頭の図が示すように、これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる大問題です。しかも、環境問題の根本には人間の経済活動が原因として横たわっているわけですから、この問題を解決するための具体的な行動は、経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換であり、社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。

このような問題意識にもとづいて、最近の国際社会の動きを注意深く検証してみましょう。


★G8は依然、成長志向のまま

21世紀前半の社会は、歴史的には過去および現在の延長線上にありますが、現在をそのまま延長・拡大下方向にはあり得ないことを資源・エネルギー・環境問題が示唆しています。

先進工業国がさらなる経済規模の拡大を追求し、途上国がそれに追従するという20世紀型の経済活動の延長では経済規模は全体としてさらに拡大し 、地球規模で環境が悪化するにとどまらず、これからの50年間に人類の生存基盤さえ危うくすることになるでしょう。この二つの大問題は、私たちがいままさに、「人類史上初めての大転換期」に立たされていることを示しています。

●経済活動と環境問題

1997年6月に米国のデンバーで開催された第23回主要国首脳会議(サミット)の焦点は、世界のGDPの約65%を占めるサミット参加8カ国(G8)が、どれだけ地球全体を考えたシナリオを示すことができるかにありました。ところがサミットは依然として成長志向のまま、21世紀像をはっきり示すことができずに終わってしまいました。この状況は、その後のサミット(バーミンガム、ケルン、九州・沖縄、ジェノバ、カナナスキス、エビアン、シーアイランド、グレンイーグルズ、サンクトペテルブルグ、ハイリゲンダム、そして昨年の北海道洞爺湖後もほとんど変わっていません。
 
●過去26回のサミットの歩み

●1997年の第23回サミットデンバーサミット 依然、成長志向のまま

国連をはじめとするさまざまな国際機関も20世紀の価値観で維持されているものが多く、21世紀の社会を展望し始めたばかりです。このことは、20世紀の政治・経済をリードしてきたG8の国々がいまだ20世紀の発想から抜けきれないでいるのですから、むしろ当然のことです。


★それでは、G20は・・・・・

こうした中で、昨年秋の金融危機に端を発した世界同時経済不況に対応するためにG20の第2回緊急首脳会議(金融サミット)が去る4月1日、ロンドンで開催されました。この会議で採択された首脳宣言では、2010年末までに5兆ドル(約500兆円)の財政出動で、世界経済の成長率を4%分拡大する意思を表明しました。

冒頭の図は、これまでの経済成長が今私たちの直面している環境問題の主因であることを示唆しています。ですから、私の環境論からも4月2日に採択された「G20の首脳会議のグローバルな政治的決定」が2010年にどのように経済的な、そして、環境的な影響をもたらすのか懸念のあるところです。 

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環境問題を忘れた「早急な金融危機の解決策」は、更なる大危機を招く?(2008-12-13)



あれから40年、2010年は混乱か?―その1

2009-04-09 17:22:48 | 政治/行政/地方分権
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このブログの読者の皆さんには、もうお馴染みだと思いますが、再び次の図を掲げます。



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明日の方向を決めるのは私たちだけだ(2007-01-04)


この図は、環境問題とその対応のために私たちがどうしなければいけないかを考える際の基礎資料の一つとして、私が2000年に作成したものです。この図の中で、2010年は「混乱」と書きました。私の環境論に基づいて、当時の状況から判断すると必然的にそのような状況になると考えたのです。

その2010年まで、あと1年を切るまでになりました。昨年秋以来の国際社会の動きや日本の慌ただしい動きをみておりますと、ますますその感を強くします。今日のタイトルに掲げた「あれから40年」というのは、大阪万博が開催された1970年から40年という意味です。1972年は『成長の限界』が公表された年です。奇しくも、今年1月15日に、この本の著者デニス・メドウズさんが「09年の日本国際賞」を受賞しました。

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『成長の限界』の著者、メドウズ名誉教授に09年の日本国際賞授与(2009-01-16)


そして、同年(1972年)6月にスウェーデンの首都ストックホルムで、 「第1回国連人間環境会議」が開催されました。今日は、1970年から40年間、今日に至るまでの国際社会の環境問題を巡る動きを、大雑把に振り返ります。


(1)1970年の大阪万博

3月15日(日)から9月13日(日)までの183日間開催。テーマは人類の進歩と調和

●北欧5カ国が協力して建てたスカンジナビア館

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1970年の大阪万博のスカンジナビア館(2007-03-18)



(2)1972年、ローマクラブが『成長の限界』を公表

●成長の限界 三部作

●成長の限界がやってくる

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『成長の限界』の著者、メドウズ名誉教授に09年の日本国際賞授与(2009-01-16)



(3)1972年6月の第1回国連人間環境会議」(ストックホルム会議)

1968年12月の国連総会で会議の開催が決定。会期は1972年6月5日から2週間。

●ワルトハイム国連事務総長:経済発展の転換点

●パルメ・スウェーデン首相:資源の消費押さえて 経済力を世界的に再調整 

●大石・環境庁長官:“GNP至上”反省、悲惨な経験説明

●ベトナム戦争めぐり論戦 環境問題か否か 米とスウェーデン対立

●第2回の誘致撤回 日本は“恥さらし”恐れる

●科学者と政治家の役割

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第1回国連人間環境会議(2007-03-28)



(4)1992年6月の「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)

会期は6月3日から2週間。

●「地球サミット」本委員会議長 トミー・コー 日本の役割 国際交渉の触媒・指導者に

●1992年の地球サミット 宮沢首相欠席

●日本は赤ん坊の国 ゴールデン・ベビー賞を受賞

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「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(2007-12-04)

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」(2007-09-28) 


(5)2002年6月の「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルグ会議)

会期は2002年8月26日から9月4日まで。

●ヨハネスブルグサミットと原発



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35年間のむなしさ:1972年の「GNP至上反省」と「2007年の偽」、でも、まだ希望はある!(2008-12-31)

「グリーン・ニューディール」と呼ぶにふさわしい スウェーデンがめざす「緑の経済と社会」の変革

2009-04-08 21:05:18 | Weblog
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京都に本部を置くNPO法人「環境市民」が、月刊会報誌『みどりのニュースレター』の2009年4月号 No.191で特集「環境が生む雇用―社会に吹く新しい風」を組みました。編集部の依頼で小論を寄稿しました。「特集の趣旨」と植田和弘さんの「巻頭提言」に、私が寄稿した小論を掲載します。なお、植田さんは、私も会員である「環境経済・政策学会」の現会長でもあります。




皆さんは、植田さんの「巻頭提言」に示されているようなイメージと方向性を持って、スウェーデン社会が21世紀の社会に向かって、自信をもって前進していることがおわかりいただけたでしょうか。緑の福祉国家へ向かう主要な変革や転換政策についての詳細は、このブログの「市民連続講座:緑の福祉国家1~63」を参照してください。

なお、ここで言う「スウェーデン版グリーン・ニューディール」というのは、この小論の最初と最後でお断りしましたように、私が個人的に“そう呼ぶにふさわしい”と勝手に思っているだけのことで、スウェーデン政府や政策担当者が、米国や日本のように、「世界同時不況」への緊急対策と打ち出したものでもなければ、スウェーデンのマスメディアが政府の政策を反映してそのように報じているものでもありません。


関連記事
スウェーデンの「グリーン・ニューディール」は1996年に始まっていた!-その1(2009-01-08)
 
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

★「希望の船出」から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・(PDFファイル) 


●追加記事 朝日新聞 2009年5月11日
 経済危機インタビュー 
 ケベック大学教授 ジル・ドスターレルさん 「政治が制御」へ改革を 



炭素税 神奈川県の県地方税制等研究会が導入検討を促す報告書を松沢知事に提出

2009-04-06 11:02:04 | 温暖化/オゾン層
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4月1日の朝日新聞の「さがみ野」版に掲載された次の記事を読みました。


報告書では、「低炭素社会を目指し、国が全国一律の環境税(炭素税)導入に向けて議論を加速化させる必要がある。県が独自に炭素税を導入することは、議論を促進させるフロントランナーの意義がある」しているそうです。この記事によれば、東京都は厳しい経済状況を踏まえて、導入見送りを決めているそうです。

●県が初めて排出量の速報値を公表 CO2排出量10%増


ともあれ、東京、大阪に続く人口第3位の神奈川県の松沢知事にはこの報告書の提案を前進させるために強いリーダーシップを発揮してほしいと希望しますが、私は知事がこの問題に対する十分な基本認識をお持ちなのか非常に疑問を持っています。およそ1年前に松沢知事が行った次のようなパフォーマンス的な、私には無意味に思える決断を行ったからです。今はやりの「カーボン・オフセット」の一例です。


松沢知事の説明に対して、当時の高村外務大臣が「7月の北海道洞爺湖サミットに向けていい前例になる。同様の取り組みが他の都道府県にも広がることを期待したい」と応じたそうですが、そうなりますと、外務大臣の基本認識も疑わざるを得ません。

カーボン・オフセットについては、2008年2月7日に環境省が公表した「わが国におけるカーボン・オフセットのあり方についての指針」というのがあります。この指針のなかに「カーボン・オフセットが実現されるまでの期間」という項目があります。

●カーボン・オフセット

●カーボン・オフセットが実現されるまでの期間

県の説明では「横浜で開催されるアフリカ会議に伴って排出される1万3000トンのCO2を30年かけて吸収するために約8300万円の予算で県有林の整備や植林を行う」とありますから、県も知事もそして、外務大臣も3ヶ月前に出されていた「環境省のカーボン・オフセットのあり方についての指針」の存在さえ、知らなかったということなのでしょうか。

皆さんは、ここに示された県、知事、外務大臣の「気候変動に関する基本認識」をどう考えますか。私には、「世界に冠たる環境技術や省エネ技術を有し、世界第2位の経済規模を持ち、環境立国をめざす日本」と言ってはばからない「政治家と行政のお粗末な基本認識」が垣間見えたとしか言いようがありません。

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07年度の温室効果ガスの排出 鉄鋼・セメント業界が上位

2009-04-04 17:00:40 | 温暖化/オゾン層
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経済産業省と環境省は、地球温暖化対策推進法に基づいて、排出量の多い企業など9260社の排出量をまとめたと、今日の朝日新聞が報じています。
 
この記事に掲載された2007年度の温室効果ガス排出量上位10社は、当然のことではありますが、去る3月17日付の全国紙の1面を使って「日本はトップレベルの低炭素社会です」という意見広告を打った業界団体の代表的な企業です。しかし、私はこの表に疑問を持っています。なぜ、この表には電力会社の姿が見えないのでしょうか。その理由は「発電に伴う排出量は、実際に電力を使った企業に割り振られて算出されている。割り振り前の排出量は東京電力が最も多い」という説明に現れています。


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そして、京都議定書で義務づけられている90年比6%削減のために、チェコから温室効果ガス排出枠を購入するのだそうです。



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