環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2009年7月のブログ掲載記事

2009-07-31 22:18:06 | 月別記事一覧
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 





「学習会」 と 「シンポジウム」 のご案内:下の図をクリック
      
 

7月のブログ掲載記事

1.国が管理する26空港のうち、22空港が営業赤字、 国交省の初の調査で判明(2009-07-31)

2.持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>からの「シンポジウム」のご案内(2009-07-30) 

3.持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>からの「学習会」のご案内(2009-07-29)

4.21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)

5.21日の衆院解散で通常国会は閉幕、その成果は? 成立した法律は、廃案となった法案は?(2009-07-22)

6.いよいよ衆院解散、総選挙(2009-07-21)

7.90年代前半に建設省や建設会社が考えていた「環境にやさしい都市」とは!(2009-07-20)

8.経済的な窮地にある関空と忘れてはならない環境問題(2009-07-18)

9.昨日に引き続いて巨大構造物の問題 今日は「巨額負債の関空 窮地」(2009-07-17)

10.テーマパーク 経営再建中の「ハウステンボス」の業績がまた悪化、 エッフェル塔は120年を祝う(2009-07-16)

11.「日本の借金 1日1260億円増」 これは一体どんな意味を持つのだろう(2009-07-06)

12.スウェーデンが「EUの議長国」としての活動を開始(2009-07-02)

13.環境政策フォーラム主催の2つの講演会 「低炭素社会」と「緑の経済と社会の変革」(2009-07-01)





国が管理する26空港のうち、22空港が営業赤字、国交省の初の調査で判明

2009-07-31 10:47:35 | 巨大構造物/都市/住環境
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 





「学習会」 と 「シンポジウム」 のご案内:下の図をクリック
      
 


7月17日のブログで、開港後15年経つ「関空」が巨額負債で窮地に立たされていることを取り上げ、18日のブログでは、そのような経済的難問に加えて,環境問題も同時に考慮すべきだと「私の環境論」に基づく考え方を示しました。 

空港などの巨大構造物が抱える「経済的問題」と「環境問題」はすべての巨大構造物が抱える問題ですので、関空の問題が理解できれば、それでは、他の空港は大丈夫なのかという疑問が湧いてくるでしょう。

図らずも、今日の朝日新聞がこの疑問に答えてくれています。

●記事の全文

なんと,この記事によりますと、国が管理する全国26空港のうち大阪(伊丹),鹿児島、熊本および新千歳の4空港だけが営業黒字だったそうです。そして、このことは7月6日のブログでお話した国の「累積債務残高」と関係してくるのだと思います。

●毎日新聞 2009年7月31日

これらの記事は環境問題には一切触れておりませんが、7月18日のブログ「経済的な窮地にある関空と忘れてはならない環境問題」で指摘したことはそのまますべての空港に当てはまります。


    

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>からの 「シンポジウム」 のご案内 

2009-07-30 17:42:11 | Weblog
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック    持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 






今日は私がスペシャル・サポーターとしてかかわっている「持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>」からの「シンポジウム」(予告)のご案内です。


この件に関に関するお問い合わせは、主催者のブログからお願いします。

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>







持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>からの 「学習会」 のご案内 

2009-07-29 11:24:17 | Weblog
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック    持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 






今日は私がスペシャル・サポーターとしてかかわっている「持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>」からの「学習会」のご案内です。

この件に関に関するお問い合わせは、主催者の次のブログからお願いします。

学習会のお知らせ:9月13日 13:00~ 大井玄 氏@新横浜










21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン

2009-07-27 22:35:45 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 





7月1日のブログに書いたように、環境政策フォーラムの「第66回モーニング・セッション」でゲスト・スピーカーとして招かれた斉藤鉄夫・環境大臣は「政府が決めた2020年の中期目標では90年比での削減ではなく、2005年比15%削減とした理由について米国中期目標が2005年比であること、日本の2020年の中期目標である15%の削減の手段の中には新規原発を9基建設すること が含まれていることを明らかにしました。

今日のブログのタイトルに掲げたように、日本とスウェーデンでは原発の利用に対する考え方が正反対です。今日は原発を利用している国であれば、 「原発推進国であろうと、なかろうと決して避けて通れない放射性廃棄物(核廃棄物)問題」について、両国の現状を比較し、考えてみましょう。難しい議論はまったく必要ありません。

原発から出る核廃棄物に対する両国の考え方の相違は、日本が「使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、原発の燃料として再利用する」のに対して、スウェーデンは「使用済み核燃料を再処理しない」(直接処分する)ことにあります。

まず日本の現状から。次の図をご覧ください。



この図は10日前の朝日新聞(2009年7月16日)に掲載されたものです。国内にある53基の原発から「毎年900~1000トンの使用済み核燃料」が排出されます。その貯蔵が限界に近づいており、最悪の場合、原発が運転できなくなる可能性もあり、電力会社は頭を悩ませているというのです。
50歳以上の方には「原発はトイレなきマンションだ」という懐かしい、そして言い得て妙な表現を思い出した方がおられるかもしれません。この状況は今なお、日本では変わっていないのです。


参考資料
●1996年9月18日 原子力政策円卓会議(第11回-最終回 議事録)
  招へい者
   内山洋司  財団法人 電力中央研究所技術評価グループグループリーダー (現在、筑波大学大学院教授)
   小沢太 環境問題ジェネラリスト (現在、環境問題スペシャリスト)
   近藤駿介  東京大学工学部教授 (現在、原子力委員会委員長)
   鈴木篤之  東京大学工学部教授 (現在、原子力安全委員会委員長) 
   十市 勉  財団法人 日本エネルギー経済研究所理事 (?)
   長谷川公一 東北大学文学部助教授(現在、東北大学大学院教授)
   平野良一  核燃をとめよう浪岡会代表 (?)
   松浦祥次郎 日本原子力研究所副理事長 (?) 



この機会に、スウェーデンの核廃棄物の現状を見ておきましょう。次の図はスウェーデンの「脱原発政策」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思います)の経緯を示したものです。



関連記事
スウェーデンの「脱原発政策」の歩み⑯ 1980年の「原子力に関する国民投票」(2007-11-14)


次の図は脱原発政策と並行して、1990年代前半にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の調査研究年報に掲載されていた「放射性廃棄物管理の一般ガイドライン」です。




次の図はスウェーデンの核廃棄物処理施設の関係ををわかりやすく図示したものです。




スウェーデンでは、低レベル廃棄物の最終処分場(SFR)は1988年に完成し、 高レベルの中間貯蔵所(CLAB)は1985年に完成して稼働しておりますので、あとは高レベル廃棄物の最終処分場(SFL)を完成させれば核廃棄物処分関連施設の基本的なプログラムは整います。SLFは地表のすぐ下から始まる強固な花崗岩層をくり抜いて、地表より500メートル下の岩盤の中につくられます。

●「脱原発」の備え着々、放射性ごみ処分に自信 後始末、現世代の責任(朝日新聞 1999-04-07)


ここで、もう一度、「放射性廃棄物管理ガイドライン」の⑥をご覧ください。「使用済み核燃料(高レベル廃棄物のこと)の最終処分場(SFL)の設計は2000年頃まで、決定してはならない」と書いてあります。そして、スウェーデンの核廃棄物処分施設の図では「SFLは2020年頃をメドに完成させる」とあります。

1990年の前半に作成した「放射性廃棄物管理ガイドライン」に沿って、SKBは着々とSFLの建設前の準備を進めてきました。2002年にフォーシュマルク(サイトはオストハンマー、エストハンマルと朝日新聞は書いている)とオスカーシャム(サイトはオスカーシャム)の自治体でサイト調査とボーリング調査が開始されました。2007年にはサイト調査が完成しました。そして、SKBの最新の計画ではSFLの建設サイトを決定し、2013年にSFLの建設が開始され、2018年頃にSFLの操業が開始される予定となっています。

●各国の核燃料サイクル政策(朝日新聞 2004年9月14日)

●放射性廃棄物、処分場どこに 鍵を握る情報公開 スウェーデン:住民が理解、最終選定へ(2004年12月9日)

このように、両国の核廃棄物処分に対するプログラムに実行上の大きな相違があることがおわかりいただけたと思います。



ご参考までに、1980年3月のスウェーデンの国民投票と同年6月の国会決議以降の両国の原発の利用状況をまとめてみますと、次のようになります。

 
 
この図が示しているのは、1980年から2008年の28年間の間に、スウェーデンが2基の原発を廃棄したのに対し、日本は33基の原発を増やしました。そしてこの間、スウェーデンは温室効果ガスの削減に成功しましたが日本は過去最高の温室効果ガスの排出量を記録したのです。ここで注意すべきは、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(CO2と言い換えても良い)を排出しない発電装置ではありますが、温室効果ガス削減装置ではないことです。したがって、原発を建設しただけではCO2は増加することはあっても、減少することはないのです。

関連記事
日本は世界トップレベルの低炭素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-27)


現時点(2009年7月現在)で、スウェーデンには日本のように新規原発を作り続けて行こうとするようなエネルギー政策はなく、「脱原発の方向性に変わりはない」と断言できます。

関連記事
市民連続講座:緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況(2007-04-26)


ただ、今年2月にスウェーデンの脱原発政策にちょっとした動きがありました。それは、既存の10基の原発の寿命(国民投票が行われた1980年のときに想定されていた原発の技術的な寿命は25年でしたが、現在では60年程度と見積もられているようです)が近づいてきた場合に混乱がおこらないように、「現在の原発サイト(フォーシュマルク、オスカーシャム、リングハルスの3個所)に限って、そして現在稼働中の10基に限って更新(立て替え)が可能になるように、更新の道を開いておく」という政治的な決定がなされたことです。

関連記事

またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)



1996年に21世紀のビジョン「緑の福祉国家」を掲げた比較第一党の社民党は現在、野党の地位にありますが、2001年の党綱領で「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)には原発は不要であること を明記しています。

21日の衆院解散で通常国会は閉幕、その成果は?  成立した法律は、廃案となった法案は?

2009-07-22 22:37:12 | 政治/行政/地方分権
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 





昨日の衆院解散によって通常国会は閉幕となり、成立した法律と廃案となった法案が明らかとなりました。私は2000年以降、次のような仮説を立てて「成立した法律」や「廃案となった法案」を見ておりますが、今回もこれまでと同じような傾向が認められます。



次の図は,今国会で成立した法律です。圧倒的に「改正○○法」と名付けられた法律が多いことがおわかりいただけるでしょう。

●麻生政権で成立した法律(日本経済新聞 2009-07-21)



次の2つの図は廃案となった法案に関する記事です。 「○○法改正法案」と名付けられた法案が多いことにもお気づきになるでしょう。






関連記事
混迷する日本② 臨時国会閉幕 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(2008-01-16)

21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本(2007-12-29)



いよいよ、衆院解散 総選挙

2009-07-21 21:34:42 | 政治/行政/地方分権
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 





6月27日のブログで書きました日本の「衆院解散 総選挙」のスケジュールが決まりました。8月18日公示、30日投開票だそうです。

●衆院解散、総選挙へ 政権選択が焦点(朝日新聞 2009年7月21日 夕刊)


解説記事によりますと、8月18日公示、30日投開票となる今回の総選挙は、戦後24回目、現憲法下で22回目。7月解散は史上初めて。暑さが過酷なため、避ける傾向の8月投開票は、これまで、帝国会議時代の1898年と1902年の2回会ったが,戦後は初めて。なんと107年ぶりの真夏の選挙になるそうです。

8月30日は衆院議員の任期満了(9月10日)のわずか11日前で、76年12月の任期満了選挙を除くと前回選挙との間隔が最も長い。選挙戦は事実上、21日から幕を開けるが、解散から投開票まで40日間ある。これは、憲法の規定による限度いっぱいで過去最長となるとのことです。

異例ずくめの今回の解散総選挙は政権選択が焦点ですから、日本にも異例の大変化が起こるかもしれません。「衆院解散、総選挙へ」という一面トップ記事のすぐそばにレイアウトされた「素粒子」というコラムが気のせいか輝いて見えます。






90年代前半に建設省や建設会社が考えていた「環境にやさしい都市」とは!

2009-07-20 21:35:08 | 巨大構造物/都市/住環境
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
  





7月16日の「ハウステンボス」17日18日の「関空」を例に巨大構造物は経済的側面だけではなく、環境的側面も大変重要であることをお伝えしました。私は1990年頃からこの問題を取り上げ、講演会や私の本などで問題を指摘し続けてきたのですが、役所も専門家も建設業界もあまり気にしている様子もないようです。

もうそろそろ、私が懸念を言い続けて20年近くなりますので、1990年代に建設省(現在の国土交通省の前身)が「環境にやさしい都市」とはどのようなイメージを持っていたのか振り返ってみましょう。あえて説明を加える必要はないでしょう。


「都市の大きさ」と、そこに描かれた「その都市を支えるエネルギーシステムの貧弱さ」というアンバランスに、都市問題の門外漢である私は笑ってしまうのですが、当時の方々は、ジャーナリズムも含めて、けっこうまじめに考えていたようです。20年近く前にこのような「環境認識」を持っていた建設省や建設業界の方々は今、「環境にやさしい都市」とは、と問われたらどのような都市をイメージしているのでしょうか。

関連記事
巨大構造物と環境問題 ① 90年代の建設業界の「環境意識」(2007-04-05)

年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)






経済的に窮地にある関空と忘れてはならない環境問題

2009-07-18 18:43:50 | 巨大構造物/都市/住環境
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
  




下の図をクリックしてください。
 


昨日の関空の記事の内容は経済面で、経済的視点からしか論じられておりませんでしたが、21世紀もほぼ10年経過した現在では経済的側面からだけでなく、環境的側面からの問題点も論じるべきものだと思います。そこで、一昨日のハウステンボスに関する記事で示した「巨大構造物に対する懸念」を再掲します。


上の図の環境的側面(③、④および⑤)を考えてみようと思うのです。次の図をご覧ください。




大量の電力消費、大量の水消費、大量の廃棄物、巨額の先行投資などの考え方は巨大構造物に共通するもので基本的には同じですが、空港の場合にはもう一つの新しい懸念材料が加わります。それは「今後の航空用燃料(ジェット燃料)の供給」がどうなるかということです。ある資料によりますと、航空用燃料の需要予測はみごとなまでに右上がりの傾向を示しています。この資料には2010年までの見通ししかありませんが、さらなる空港新設、既存空港の拡張・整備計画などがありますので、その後もジェット燃料の増加傾向は続くでしょう。


一方、次の図は化石燃料の可採埋蔵量を示しています。


現在のエネルギー体系のままで、世界がエネルギー資源を消費し続けると、一体どのくらいで地球上のエネルギー資源がなくなってしまうのか心配になりますが、この疑問に正しく答えられる人はおそらくいないでしょう。「神のみぞ知る」と答えるのが無難であり、また、正しい答えでもあるでしょう。しかし、私たちの地球が有限であること、私たちの生命の維持にかかせないエネルギーを地球のエネルギー資源に依存していることをはっきり認識すれば、この疑問に対する答えを探そうと考えるのは当然でしょう。エネルギーの専門家はとりあえずの手がかりとして「確認可採年数」を議論の参考にしています。

航空用燃料であるジェット燃料は石油製品の一つで、石油(原油)を常圧蒸留装置にかけて得られます。得られる各石油製品の割合は原油の種類によって異なりますが、ジェット燃料の生産割合は原油のおおよそ3%程度だそうです。エネルギーの専門家の中には灯油や軽油のようないわゆる白油(中間留分)が十分あり、これらの白油からジェット燃料が生成できるのでジェット燃料の供給の心配はないと言うのですが、果たしてそうなのでしょうか?

白油からジェット用燃料を生成できても、白油の元である原油の供給量に資源上の制約があるわけですから、このような説明は私には納得し難いものです。関西国際空港の社会的寿命は少なくとも50年はあるでしょう。はたして、開港50年後の関西国際空港では離発着便数の削減無しに離発着するジェット機の航空用燃料は供給可能なのでしょうか?

借入金の返済のためには離発着する便数を増やすことになりますが、そうすれば、航空用燃料の消費量が増加することは火を見るよりも明らかです。一方、水素を将来の航空機の燃料と考える専門家がいますが、どの程度の可能性があるのでしょうか?

1995年8月3日、運輸大臣の諮問機関、航空審議会の空港整備小委員会は関西国際空港二期工事、中部新国際空港、首都圏第三空港の三都市圏の空港整備を三大プロジェクトと位置づける第7次空港整備5カ年計画(1996~2000年度)の骨格を決めました。日本のみならず、東南アジアの発展途上国は経済成長に合わせて空港の整備や新設など様々な巨大プロジェクトを計画しています。

私のような素人はこのようなプロジェクトを決めるにあたって、完成後のエネルギーの供給の可能性などが十分考慮されているのかどうか疑問に思います。もう一度、「今日の決断が数十年後の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則を思い起こしてください。

私の疑問に対しては、エネルギー関係者からは次のような回答がかえってきそうです。「化石燃料と言えば、これまで利用し続けてきた石炭、石油、天然ガスがあとどのくらい残っているかばかりが話題になるが、まだ、豊富な未利用資源が眠っているではないか」と。

ここで言う未利用のエネルギー資源とは、南ベネズエラのオリノコ河流域に広い範囲で存在が確認されている「オリマルジョン」(C重油、石油残さ油のようなもの)や「メタン・ハイドレート」のようなものです。一説では、オリマルジョンの埋蔵量は約1兆2千億バレル、サウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵する量だそうですし、メタン・ハイドレートは天然ガスがシャーベット状になったもので、水深約300メートル以上、26気圧以上の海域に天然ガス埋蔵量の数十倍から千倍の賦存量が見積もられているそうです。このメタンハイドレートを石炭・石油に変わる21世紀の主要エネルギー源になると期待する人もいます。

このような可能性を秘めたエネルギー源の存在が確認されていても、その商業的な利用までにはかなりのリードタイムが必要となります。エネルギーの供給の可能性よりもさらに重要なことは、環境への負荷の更なる増大であることは言うまでもありません。



昨日に引き続いて巨大構造物の問題、今日は「巨額負債の関空 窮地」

2009-07-17 13:59:40 | 巨大構造物/都市/住環境
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 




下の図をクリックしてください。
 



7月17日の朝日新聞が「巨額負債の関空 窮地」と報じています。




昨日のハウステンボスの記事同様、この記事の内容は経済面で、経済的視点からしか論じられておりませんが、21世紀もほぼ10年経過した現在では、当然環境的側面からも論じるべきものだと思います。







●倒産寸前 500億円超す初年度赤字(1994-09-03) 開港10年 膨らむ赤字、競争も激化(2004年9月9日)

●単年度 黒字達成にメド

そして、今日の冒頭の記事となるのです。


以上は、経済的な視点から見た関空の大問題ですが、明日は関空を環境問題の視点から考えてみたいと思います。

テーマパーク 経営再建中の「ハウステンボス」の業績がまた悪化、 エッフェル塔は120年を祝う

2009-07-16 09:02:50 | 巨大構造物/都市/住環境
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 




下の図をクリックしてください。
 


今日の朝日新聞朝刊が「ハウステンボスの業績債悪化」を伝えています。


●朝日新聞 2003年2月26日 ハウステンボス倒産へ 負債総額2200億円


これらの記事は経済紙面で、しかも、経済の視点からしか報じられていませんが、私はこれまでハウステンボスに象徴されるような巨大構造物を環境的側面から論じてきました。次の図をご覧になりながら、もう一度上の2つの記事を読んでいただけると私の指摘がご理解いただけるでしょう。


関連記事
年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)       


今日のブログとは直接関係ありませんが、フランスはパリの歴史的巨大構造物「エッフェル塔」が2日前の7月14日に塔の建設120年を祝ったそうです。人間の最長寿に迫ったわけですね。


「日本の借金 1日1260億円増」、 これは一体どんな意味を持つのだろう

2009-07-06 21:17:25 | 経済
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 




下の図をクリックしてください。
 


「日本の借金 1日1260億円増」、????? 1週間前の毎日新聞朝刊の1面トップの見出しを見て大変驚きました。



国と地方の長期債務残高の推移が「日本の大好きな右肩あがり」の状況にあることは知っておりましたし、私がこのブログを始めた2007年にはたびたびこのブログでもこのテーマを取り上げました。このように比較的馴染みのある図に含まれているが通常見えない情報の一部を「日本の借金1日1260億円増」という形で提示されたのは私にとっては初めてのことでしたので、あまりの数字の大きさに驚きました。同時に、この事実が日本の国や国民にとってどのようなことを意味しているのかを改めて知りたいと思いました。

次の図は同じ日の毎日新聞に掲載されていたGDPに対する債務残高の推移を示す国際比較の図で、最近はかなり見慣れた図です。



この図にはスウェーデンは登場しませんが、スウェーデンの状況は日本に比べたら、非常に健全です。
この図を見ながら、私は元大蔵相の財務官であられた榊原英資さんが月刊誌『中央公論』(2004年11月号)に「日本の財政悪化は政治の再編成を招くか」というタイトルでお書きになった論文を思い出しました。この論文に添えられた表「各国の累積財政赤字の予想」では2000年から2050まで10年ごとに「各国の累積財政赤字」の推移が予想されています。この表にはスウェーデンが含まれています。

この表とその表の数字をもとに私が作成した図を紹介します。日本の状況はダントツで、日本が大好きな右肩上がりとなっています。この表に登場する25カ国の中で、右肩上がりを示す国はチェコ1カ国しかありません。欧米が「健全な累積財政赤字」のメドにしているのは60~70%であることをお伝えしておきましょう。 





関連記事
国の借金 832兆円、過去最悪を更新(2007-03-24)

またまた更新、3つの指標(2007-08-26)  

またまた過去最高を更新、2つの財政指標(2008-03-11)




スウェーデンが「EUの議長国」としての活動を開始

2009-07-02 07:33:40 | 温暖化/オゾン層
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 




下の図をクリックしてください。
 


昨日のブログで、日本政府が6月10日に決定した「日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標」に対する考え方に基本的な問題点があることを確認しました。この中期目標は7月のラクイラ・サミット(イタリア)や12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の議論を経て、おそらく修正された上、正式な日本の中間目標として決定されることになっています。

さて、昨日、7月1日はスウェーデンがEUの議長国になった日です。EUの議長国は持ち回りで、任期は半年。今回の議長国は1995年1月1日にEU加盟して以来、2回目となります。前回は2001年1月1日から半年間でした。このことに関する私の個人的な関心事は、スウェーデンがEUの議長国として「世界的な同時経済危機の解決」「2013年から始まるポスト京都議定書の次の枠組みづくり」に政治的リーダーシップを発揮してどのような好ましい道筋をつけるかを見とどけることです。

●Swedish Presidency of the European Union


今日の日本経済新聞と毎日新聞が、スウェーデンがEUの議長国になったことを伝えています。
          

次の図は両大使の発言の背景にある日本とスウェーデンの経済成長(GDP)と温室効果ガス(GHG)の排出量の推移を示しています。


日本の場合は政府や企業や市民の削減努力(?)にもかかわらず、GDPとGHGが見事なまでにカップリングしている(相関性がある)のに対し、スウェーデンでは京都議定書の成立の前年の1996年あたりから、GDPとGHGのデカップリング(相関性の分離)が始まり、年々その状況が顕著になってきたことがわかります。このような顕著な成果の相違は「京都議定書の位置づけ」と「京都議定書への対応策」の相違にあります。 

●京都議定書の位置づけ

●京都議定書への対応策

●CO2の削減の有効な手法

毎日新聞が伝えているリチャードソン大使の「日本の中期目標が不十分」という発言やノレーン大使の「温室効果ガスを排出量を9%減らしつつ、経済成長率46%を達成した」という説明は、すでにこのブログでも取り上げました。

関連記事

2020年時点で90年比4%増が大勢、いよいよ混迷の度を増してきた日本の温室効果ガスの中期目標(2009-05-15)

日本はトップレベルの低炭素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17)

ドイツとポーランドが「今日の化石賞」受賞、欧州のNGOが環境政策ランキングを発表: スウェーデン1位、日本43位
(2008-12-11)
 


気候変動への対応: 「米国のブッシュ大統領の演説」と「スウェーデンのラインフェルト首相の演説」の落差(2008-04-18)

スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出の「デカップリング」がさらに明確に(2008-03-16)

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン1位、日本42位(2007-12-09)



また、この日の日本経済新聞は、スウェーデンが議長国となったことと関連させて、次のような記事を掲載しています。

●バルト海沿岸活性化戦略 EU6.4兆円投入-環境対策やエネルギー



環境政策フォーラム主催の2つの講演会   「低炭素社会」 と 「緑の経済と社会の変革」

2009-07-01 11:44:48 | Weblog
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック          持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

アーカイブ(公開論文集)
 




下の図をクリックしてください。
 


「日本版グリーン・ニューディールで経済の活性化を」を掲げる環境政策フォーラム主催の講演会に2回続けて参加しました。 1回目は「第65回モーニングセッション」で、2回目は「第66回モーニングセッション」です。講演後の質疑応答のセッションで、それぞれの講師に基本的な質問を行い、回答を得ました。今後の環境政治のあり方、考え方について重要なことですので、将来の議論のために記録にと止めておきます。

第65回モーニング・セッション
日時:2009年5月29日(金) 08:30~10:30
場所:帝国ホテル 雅の間
    ゲスト:衆議院議員 小杉 隆さん
    参加者:参加者名簿に記載されている参加者 66人

講演内容(小杉さんの講演メモから)
●政治家としての原点
 政治家小杉隆を衝き動かしたものは何か?、公害問題との直面、国政での挑戦、GLOBE体験
低炭素社会を目指せ
 京都議定書、IPPC 気候変動に関する政府間パネル、スターンレビュー、2050年までの60~80%削減、COP15(コペンハーゲン)に向けた中期目標、低炭素社会基本法:社会構造、産業構造をいかに変えるか?
自然共生型社会を世界に示せ
 生物多様性国家戦略の目指すものは何か?、COP10(名古屋)10/18~、里山イニシアティブ、生物多様性の経済価値
循環型社会を構築せよ
 3R Reduceリデュース=廃棄物を出さない、Reuseリユース=再使用するRecycleリサイクル=再資源化する、地球規模の循環をどこまで構築できるのか?、東アジア循環型地域圏
●環境と経済の統合を目指して
 課題先進国の経験と環境技術の戦略的活用、経済危機対策 低炭素革命と成長戦略、
 ①太陽光発電 ②低燃費車 ③省エネ製品 ③交通機関・インフラ ④資源大国


講演後の私の質問
私の質問は2つありました。

①私は日本が「公害対策先進国」で、「公害対策技術」は世界的なレベルにあると思うが、一般に「公害(問題)」と「環境問題」がほとんど同義語として用いられているように思う。小杉さんのお考えはどうか。

②安倍首相を引き継いだ福田首相が最初に行った「所信表明演説」の中で、21世紀のキーワードである「持続可能社会」を4回も使かっていたにもかかわらず、その後の「施政方針演説」では、「持続可能社会」はすべて消え、「低炭素社会」に置き換えられたのはなぜか。

関連記事

私の環境論7 「環境問題」は「公害問題」ではない(2007-01-17)

2007年10月1日の福田新首相の所信表明演説 なんと「持続可能社会」が4回も登場(2007-10-02)

混迷する日本⑥ 福田首相の変心?(2008-01-20)



小杉さんの回答
「公害問題」と「環境問題」はかなりの部分で重なっていると思う。②の質問についてはよくわからないが、「低炭素社会」という言葉に新鮮さがあったからではないか。

私はこの2つの回答には納得できません。公害と環境問題は部分的には重なる部分がありますが、両者が大きく異なる概念だから、1967年の「公害対策基本法」に代わって、1993年に「環境基本法」が成立したのです。

1987年に公表されたブルントラント報告の中で提唱された「持続可能(な)社会」はしっかりした概念であり、1992年の地球サミットで合意された概念だからです。「環境の小杉」と称され、しかも自民党地球環境委員長であられる小杉さんの環境分野の基本認識を疑わざるを得ません。

関連記事

「環境基本法」成立から14年② 不十分なので、このままでは私は反対だ!(2007-12-07)

持続可能な社会、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、これらを組み合わせた社会とはなんだろう?(2007-10-24)

低炭素社会は日本の政治主導による「持続可能な社会」の矮小化か?(2009-01-12)



第66回モーニング・セッション
日時:2009年7月1日(水) 08:30~10:30
場所:帝国ホテル 欄の間
   ゲスト:環境大臣 斉藤鉄夫さん(第2次福田内閣に続く麻生政権でも環境大臣)
     参加者:参加者名簿に記載されている参加者 75人

講演内容:緑の経済と社会の変革

講演後の私の質問
斉藤さんは技術がよくおわかりの環境大臣ですので、安心して質問ができ、また、明快なお答えがいただけるものと期待しております。私の質問は基本的なもので、YesかNoでお答えいただけるものです。3つあります。

①京都議定書の目標では、日本は90年比で6%の削減を約束しました。京都議定書の目標は温室効果ガスの「総量」を削減することになっていますが、日本が努力したのは「総量の削減」ではなく、 「原単位の向上(効率化)」を高めることでした。その結果、排出総量は増加してしまいました。この理解でよろしいでしょうか。

関連記事

温室効果ガスは「総量規制」で(2007-07-29)

松下、CO2排出量の目標を「原単位」ではなく、「総量」に!(2007-10-06)

日本の温暖化対策: 経済産業省vs環境省、 日本経団連vs経済同友会(2007-10-17)

日本は世界トップレベルの低酸素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-27) 


②日本の中期目標では、2005年比で温室効果ガスを15%削減することになっています。この目標を達成するために「太陽光発電の導入量を2020年に20倍に拡大する」とありますが、私の考えでは、太陽光や風力に代表される自然エネルギーは稼働中にCO2を発生しない発電装置ではありますが、CO2削減装置ではないので、これらの装置を設置しただけではCO2はまったく削減できないのではないでしょうか。CO2をほんとうに削減するには、これらの装置の設置に併せて実際に石炭火力発電所を停止する必要があるのではないでしょうか。

関連記事 

自然エネルギーにCO2削減効果はあるだろうか?(2008-01-14)


③気候変動(地球温暖化)問題では「現世代の公平性」も必要ですが、その本質は「将来世代との公平性」にあるのではないでしょうか。先月麻生首相が決定した日本の中期目標の決定の際の判断基準や経済界の判断基準である「国際的な公平性」「国民の負担」「実現の可能性」などは、現世代だけの判断基準ではないでしょうか。

斉藤さんの回答
①、②、③の質問に対する斉藤さんの回答はいずれも「Yes」でした。斉藤さんは誠実にコメントも加えてくださいました。


私の質問とは別に、斉藤さんは政府が決めた2020年の中期目標では90年比での削減ではなく、2005年比15%削減とした理由は米国の中期目標が2005年比であること、また15%の削減の手段の中には新規原発が9基建設することが含まれていることを明らかにしました。

私の考えでは、原発も自然エネルギーと同様、稼働中にはCO2を排出しない発電装置ではありますが、CO2削減装置ではありません。ですから、原発を設置しただけでは、CO2はまったく削減されないことは明らかです。原発を設置したら、火力発電所の石炭使用量を削減しなければなりません。つまり、火力発電所を原発で置き換える必要があります。日本では、次の図が示すように、これまで原発を増設しつつ、石炭火力発電も増設してきたのです。



関連記事

原発を考える⑪ CO2削減効果はない「原発」(2007-04-22)

再び、原発と温暖化対策の議論 また、18~20年に逆戻り?(2008-03-21)