環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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スウェーデンの「脱原発政策の歩み」② スウェーデンで大原発事故が起きたら・・・・

2007-10-31 08:15:32 | 原発/エネルギー/資源


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皆さんへのお願い:10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)がカバーする範囲は、1960年代から1990年頃までです。その頃を振り返りながら読んでください。その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。 
 
 
1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故のような大原発事故が起きた場合、事故による放射能汚染で身体、財産に損害を受けた市民に対する補償、継続的な健康診断に要する経費、放射能汚染地区からの移住や汚染された農地の管理に伴う経費、事故を起こした原発の処分に要する経費など事故後の対処のために必要とされる様々の諸経費の合計は莫大なものになるはずです。

さらに、利用できない農地や居住地などによる損失を考慮すれば、原発事故による損害あるいは影響はさらに大きくなります。1991年4月10日付けの朝日新聞によりますと、ソ連最高会議は480万人を対象とする「チェルノブイリ原発事故被害者救済のための補償法案」を採択したそうです。

補償対象が480万人と言えば、人口850万人(当時)の「福祉国家」スウェーデンでは人口の半分以上が補償の対象になるということです。これでは、国民の大多数が支持している安心で安全な「福祉国家」は崩壊してしまうでしょう。  

10月19日のブログ「20年前の日本の原発論争:スウェーデンの脱原発政策への関心」 の中で、1988年6月7日から89年10月までのおよそ1年半の間に、私が直接目にした、スウェーデンの「原発・エネルギー政策」に触れた、新聞、雑誌、単行本、テレビ番組の数は66本のリストを掲げました。そして、「その中には、私の視点や判断基準からみると、まさに誤解、曲解、世論をミスリードするために書かれたと判断せざるを得ないものなど様々でした」と書きました。

当時の日本の原発議論では、日本の高名な学者や学識者の一部の方々がテレビや書籍、雑誌などの公の場で、およそ学者ならぬ(あるいは、今考えると、それが学者の実態だったのかもしれませんが)「危険について一番の目安になるのは人身事故である。日本では原子力発電を始めて以来、一人も事故で死んではいない。それに対して自動車事故では年間1万人以上が死んでいる。事故死者の論理でいけば、自動車は大変危ないので乗るべきではないということになる。原発はそれくらい安全である」(竹内均・東大名誉教授の発言)という趣旨の発言がいくつかありましたが、このような発言は一見もっともそうに聞こえますが、統計の専門家から見れば滑稽そのものです。

たとえば、

(1)西部邁(評論家)、生田豊朗(日本エネルギー経済研究所理事長)、宮本みちこ、中村正雄、木元教子、夏樹静子氏による座談会での西部氏の発言と生田氏の応対
   第1章 最近の原子力情勢をめぐってp12~13
   フォーラム「エネルギーと原子力を考える」(財)日本エネルギー経済研究   所編日本工業新聞社(1989年10月25日 初版1刷)

(2)牧野昇、星野芳郎氏の対談での牧野氏の発言

   第9章 巨大技術の崩壊の兆しをどうみるか p267
   「牧野昇vs星野芳郎 対論 「技術」! チャンス&クライシス」
   (財)省エネルギーセンター(1989年10月23日 初版1刷)

(3)竹内均、加納時男、塩月修一氏の鼎談での竹内氏の発言と加納氏の対応
   特集 「原子力と人間」 p68
   月刊「経営コンサルタント」 1989年10月号
   (株)経営政策研究所
   
次の図は、(3)に登場する日本を代表する地球物理学者であられた竹内均・東京大学名誉教授(雑誌「ニュートン」の前編集長、2004年4月20日死去)の発言です。




この鼎談記事には、「科学技術と人間-今、原子力を考える・・・・・・・東京大学名誉教授 竹内均・東京電力取締役 加納時男」とあります。

事故の起こる頻度、事故防止対策の努力の程度などまったく比較にならない二つの事象を比較することは意味のない比較なのです。地球物理学を専門とする東京大学名誉教授と東京電力取締役との対談としてはあまりにひどいのではないでしょうか。このメディアが一般には知られていないものですから、あるいは本音の討論と言えるのかもしれませんね。

私に言わせれば、死者よりも被害を受け様々な不安を抱えながら生き続けなければならない多くの人々、つまり、チェルノブイリの事故で言えば補償の対象となった480万人の人々の「その後」のほうがもっと悲惨なはずです。このような発言をした日本の学識者の見識が問われます。





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スウェーデンの「脱原発政策の歩み」① 原発に対する考え方の相違

2007-10-30 11:58:16 | 原発/エネルギー/資源

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10月24日のブログ「持続可能な社会、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、これらを組み合わせた社会とは何だろう?」 のコメント欄にしゅとうさんという方から「ところで質問なんですが、スウェーデンで脱原発の方向性を決めた最も重要な理由とは何なのでしょうか?チェルノブイリの事故が大きく影響しているとある本に書いてありましたが。小澤先生はどうお考えですか?」というお尋ねをいただきました。

このお尋ねに対する、私のコメントはその日のコメント欄をご覧いただきたいのですが、その回答コメントの中で、私は「数日後から連続してスウェーデンの脱原発政策の歩みを改めてまとめておこうと考えております。ご期待下さい」というお約束をしました。

今日から少しずつ、私が理解したスウェーデンの「脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)を連続で書いていこうと思います。

この連続講座でカバーする範囲は1960年代から1990年頃までです。

現在のスウェーデンの「脱原発政策を含むエネルギー政策」(緑の福祉国家22~30 エネルギー体系の転換: 原発を新設しない・脱石油 4月22日開始 )は、この過去の基礎の上に成り立っているのです。

それでは、「「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(1960年代から1990年ごろまで)の第一歩を踏み出しましょう。今日のお話の背景は1980年代前半の頃をイメージして読んでいただければ幸いです。

「原発」に対する考え方に日本とスウェーデンとの相違がみごとに表れていると思います。スウェーデンはこれから長い時間をかけて原発をなくして行くという方向にありますが、逆に、日本は原発を増やして行く方向にあるようです。同じ原発という技術に対して両国を隔てる大きな考え方の相違は「原発事故が起こる可能性に対する認識とそれに基づく不安」 、「原発事故が起こった場合の対応すべき、あるいは補償すべき対象の幅」に対する考え方の相違であろうと思います。

過去の様々な事故や技術に対する教訓から、スウェーデンは自国の原発だけでなく他国のものも含めて、原発はたぶん事故を起こすであろうという立場に立っているため、これまでに自国の原発施設に対してできる限りの事故防止対策をとってきましたし、他国の要請に沿って事故防止対策の協力もしてきました。

そして、現在では、「可能であれば、スウェーデンの福祉社会の維持・発展のために、原発はないほうがよい」と考え、将来、なくすことができるかどうか、原発を含む現行のエネルギー体系を将来に向けて変えて行こうと模索しているのに対し、日本は「現在の社会システムを維持・発展させるために原発が必要である」と考えているようです。少なくとも、私たちがこれまでの新聞や雑誌で見る限り、原発を推進しようとする側は、原則的に、日本では原発の事故は起きないのだという立場に立っているかのよう思われます。

「事故が起こり得る」という認識に立って、対策を考えるのと「事故は起こらない」という認識で対策を考えるのとでは対策の幅に大きな相違がでてきます。このあたりに「原子力」という技術に対する大きな考え方の相違があるのではないかと思います。

スウェーデンには、絶対に何かが起こらないとか、絶対にこうなるという考え方はありません。ものごとのほとんどは「相対的である」という考えに立っています。







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男女の賃金格差の問題

2007-10-29 20:05:41 | 社会/合意形成/アクター
 
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10月26日の朝日新聞が「男女の賃金格差大国 日本」という記事を掲げています。この記事のリードの部分に、国際社会の中での日本の立場を示すいつもの見慣れたパターンが見えます。リードの部分には次のように書いてあります。

「同じ価値の労働なら性別に関係なく同じ賃金」を定めた国際条約をめぐり、国際労働機関(ILO)と日本政府の意見が合わない。この原則を定めた条約を日本は批准しているが、原則を規定した法律が日本にあるかどうかがあいまいで、男女の賃金格差も依然大きいからだ。ILOは日本政府に、来月までに原則実現のためどんな措置をとるかを報告するよう求めている。

この記事に添えられた次の図には日本と対称的な位置づけとなっているスウェーデンの状況があります。

この図はスウェーデンの男女間の賃金格差が他の国より小さいことを示しています。すでにこのブログでご承知のように、スウェーデンは「エコロジー的に持続可能な社会の実現」をめざしています。エコロジー的に持続可能な社会には「社会的側面」と「経済的側面」と「環境的側面」の3つの側面がありますが、この図に示された「男女間賃金格差」が少ないという事象は」エコロジー的に持続可能な社会」の「社会的側面」を表しています。

一方、ここに示された日本の政府の姿勢は過去にもしばしばみられた現象です。たとえば、次の例もその一例です。特に、労働分野でこの種の例が多いように思います。







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COP13:温暖化「適応も柱」

2007-10-28 18:27:11 | 温暖化/オゾン層


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10月24日の朝日新聞がCOP13の準備会がインドネシアのボゴールで始まったと報じています。私がこの記事に注目したのは、温暖化「適応も柱」という見出しがついていたからです。




私は10年以上前から21世紀前半の環境対策は、コスト的にも規模的にも20世紀の対策とは大きく異なると考え、つぎのように、主張してきました。



90年代の日本の環境庁や通産省や産業界はいわゆる「環境ビジネスなるもの」の拡大を主張していました


21世紀に入っても彼らは、「環境ビジネス」が21世紀前半に盛んになると想定していましたが、その中身をみると、50%以上が廃棄物対策でした。
 

さらに、2004年には政府は次のような試算もしていました。


しかし、2007年の今、私は改めて次のように主張したいと思います。


関連記事 

環境対策:過去、現在、そして未来(1/7) 






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平成19年版「環境・循環型社会白書」の不可解

2007-10-27 16:42:58 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 
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去る10月21日の第1回学習会では、「安心と安全な国づくりとは何か-スウェーデンに学ぶ持続可能な社会」と題して、この分野で最先端を行くスウェーデンの行動計画をお話しました。第2回の学習会が12月に予定されています。今回は日本のお話です。このブログの読者の皆さんと直接意見交換ができればと願っています。また、皆さんのお知り合いの方にお声をかけていただければ、幸いです。



10月24日のブログで、皆さんは「持続可能な社会」、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」、これらを組み合わせた社会とは何だかおわかりですか、私にはさっぱりわかりません と書きました。これらの言葉は、10月17日の環境新聞に寄せられた鴨下一郎・環境大臣の「バイオマス総合展 2007」開催へのあいさつ文に登場したものでしたね。

今日は次の図から始めましょう。この図は最新の「平成19年版 環境・循環型社会白書」の「刊行に当たって」から抜粋したものです。若林正俊・前環境大臣が書いたことになっています。図に示したように、最初の20行は省略してあります。


「刊行に当たって」に書かれることは、常識的には、刊行した本の著者がその本に託した最も重要な考えや主張やメッセージをまず読者に知っていただこうと真剣に力を入れて推敲したものであるはずです。この「刊行に当たって」で、私が注目した点が2つあります。

一つは、この短い文章の中に、なんと、私が10月24日のブログで指摘した「持続可能な社会」、「循環型社会」、そして「低炭素社会」という概念が異なる3つの用語が混じっていることです。

そこで、本文を読んでみました。この白書は「第1部 総説」と「第2部 環境・循環型社会の形成の状況と政府が環境の保全・循環型社会の形成に関して講じた施策」から成っています。「第1部総説」は「総説1」と「総説2」からなります。「総説1 進行する地球温暖化と対策技術」の中に、23ページから始まる「第3章 地球温暖化対策を進める技術」があります。この章建ては次のようです。

第1節 持続可能な社会への転換(p23)
第2節 対策の現状と技術の役割
第3節 技術による環境問題克服の経験
第4節 身近にある対策技術
第5節 対策技術の活用の方向性
むすび 低炭素社会を目指して(p50)

不思議なことに、本文23ページの「第1節 持続可能な社会への転換」で始まったこの章は、50ページの「むすび 低炭素社会を目指して」で終わっています。そして、「むすび」の中で「低炭素社会」という言葉が突如2度出てきますが、何の説明もありません。「第1節」から「第5節」までは一度も「低炭素社会」という用語は出てきませんでした。また、この白書の392ページから409ページに「語句説明」があるのですが、ここにも「低炭素社会」の説明はありません。つまり、この章では「持続可能な社会」と「低炭素社会」を結びつける説明が全くないのです。もちろん、「循環型社会」という言葉この章には全く出てきません。

51ページから「総説2 我が国の循環型社会づくりを支える技術-3R・廃棄物処理技術と変遷-」が始まり、107ページで終わります。「循環型社会」という用語はこちらに出てきます。

そこで、私は試しに平成18年5月の「平成18年版 環境白書」を調べてみました。この白書の「環境白書の刊行に当たって」は小池百合子・元環境大臣が書いています。ここでは「持続可能な社会を築いて、あるいは、持続可能な社会を構築する」という表現で、「持続可能な社会」という用語が3回登場します。

平成18年版白書も19年版白書と同じように、「第1部 総説」は「総説1 人口減少と環境」と「総説2 環境問題の原点 水俣病の50年」から成っています。「総説1」に「第2章 人口減少に対応した持続可能な社会づくり」があります。この章建ては次のとおりです。

第1節 持続可能な社会に向けての契機
第2節 始まった持続可能な社会づくり
第3節 持続可能な社会の姿
第4節 むすび

こちらは、19年版白書とは違って、「第1節」から「第4節」まで、「持続可能な社会」で統一されています。

つまり、混乱し、迷走し始めたのは最新の「平成19年版環境・循環型社会白書」からということのようです。


次は、私が「平成19年版環境・循環型社会白書」で注目したもう一つの点です。「刊行に当たって」には、「本年は、国民の皆様に環境問題や循環型社会形成の取組の全体像が一体的に見渡せるよう、2つの白書を一冊にまとめた形で公表することとしました。」と本書の目的が書いてあります。「国民の皆様に全体像が一体的見渡せるよう、2冊の白書を一冊にまとめた」とは、好ましいと思いましたが、本文は木に竹を無理に接ぎ木させたような違和感を感じました。





でも初めての試みなので、今後、改善されるだろうと思っていたところ、次のような記事に遭遇しました。どうやら2つの白書をひとつにした理由は、「国民の皆様に全体像が一体的に見渡せるよう、2冊の白書を一冊にまとめた」のではなくて、次のような理由、つまりコスト削減のためだったようです。どおりでね。これで合点がいきました。やはり、こんなことだったのですね。

いよいよ、日本の21世紀前半社会の概念形成がますます混乱し、ついに迷走し始めたのではないでしょうか。

関連記事
 「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本



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2021年のスウェーデン    我々はすでに正しい未来の道を選択した

2007-10-26 21:14:03 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト

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昨日のブログで、日本の「脱温暖化2050プロジェクト」とスウェーデンの「2021年のスウェーデン」の研究成果を検証してみると、私はスウェーデンのシナリオのほうが包括的で、現実的であり、すでに、8年前にその成果が「生態学的に持続可能な社会」をめざす現実の政策に生かされている、と書きました。

今、改めて、ヤフーで「2021年のスウェーデン」と入れて検索するとわずか37件しかヒットしないのですが、ダブリがあったりするため、この件についてある程度のまとまった情報が得られるのはたった1件であることがわかりました。しかもその1件というのはこれから紹介する記事の翻訳者古田さんの講演に関するものです。

スウェーデン環境保護庁の調査報告「Sweden in the Year 2021 toward a Sustainable Society」の要約が、日本の高級カラー雑誌「BIO-City」(2800円 株式会社 ビオシティ 2000年 No.18 p2~19)にかなり詳細に、カラフルに紹介されています。このように素晴らしい内容の情報が和文で入手可能なのですから、ご興味のある方は参考にするとよいでしょう。

この報告書の全体像がつかめるように、この雑誌の内容を紹介しましょう。






なお、「BIO-City」(No.33 2006年3月31日)には「特集 スカンジナビア」が組まれています。この号にも「2021のスウェーデン」のその後が書かれています。

BIO-City No.18 2000年6月

BIO-City No.33 2006年3月



関連記事

緑の福祉国家9  21世紀へ移る準備をした「90年代」⑤ 研究報告「2021年のスウェーデン」(1/19) 

環境公開講座2001.2.13 持続可能性のビジョン~2021年のスウェーデン~ 

講師 古田尚也 氏



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「2021年のスウェーデン・プロジェクト」 対 日本の 「脱温暖化2050プロジェクト」

2007-10-25 21:41:57 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 

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昨日のブログで、皆さんは表題に掲げた「持続可能な社会」、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」、これらを組み合わせた社会とは何だかおわかりですか。私にはさっぱりわかりません、と書きました。

そして、最近マスコミにしばしば登場する「低炭素社会」という用語の概念が十分議論されていないと思いました。そこで、今日はスウェーデンとの比較でこの言葉をすこし考えてみたいと思います。

まずは、いつものように、次の図をご覧ください。4日前の朝日新聞に掲載されていた記事の中の図です。



この図は「低炭素社会へ 選択の時」、「温室ガス 7割減らせるか」、「なぜ増加 車や家電 普及した暮らし一因」、「目標は 深刻な影響防止 上昇は2度まで」、「方法は エネルギー 集約型か分散型か」という記事で囲まれています。

2050年、日本の社会は?と題する図の上半分にシナリオA(技術志向)とシナリオB(自然志向)が示され、図の中央は「2つの道筋、比較すると・・・」、そして、一番下はそれぞれのシナリオのもとで「自動車」、「電力」、「家庭の暖房」のエネルギーをどのように供給するかが書かれています。

そこで、私は1996年にすでに「生態学的に持続可能な社会」のビジョンを掲げ、着々とその目標年次に向けて、国民一体となって努力しているスウェーデンと日本の研究レベルを比較してみました。次の図はその概要をまとめたものです。

スウェーデンの研究プロジェクトは1995年にスタート、日本のプロジェクトは2004年に始まりました。スウェーデンは「生態学的に持続可能な社会」を、日本は「脱温暖化」をゴールとしているようです。

興味深いのは、研究手法が両国とも「バックキャスト的手法」を用いていることです。そして、両国とも2つのシナリオを描いていることです。概念的にはスウェーデンの「シナリオA」(タスクマインダー:現実の経済社会の延長上で環境に配慮し、再構築したモデル)は日本の「シナリオA」と、スウェーデンの「シナリオB」(パスファインダー:望ましい経済社会をイメージしたモデル)は日本の「シナリオB」と対応していると考えてよいと思います。

両国の研究成果を検証してみると、いずれも「掲げた目標達成は可能」としていますが、私はスウェーデンのシナリオのほうが包括的で、現実的だと思います。また、研究のスタート時期が8年スウェーデンの方が早く、めざすゴールはスウェーデンが2021年で、日本が2050年となっています。


「日本の低炭素社会」のシナリオが「スウェーデンの生態学的に持続可能な社会(緑の福祉国家)」のシナリオと決定的に異なるのは、原子力エネルギーの役割です。スウェーデンのシナリオでは原子力エネルギーはなく、化石燃料は最小限の抑えられています。日本のシナリオAでは電力の87%を原子力と化石燃料に依存しシナリオBでも73%を原子力と化石燃料に依存しています。図には「電源構成」は書いてありますが、「総供給量(予測)」が表示されていません(他の項目も同じ) 。この電力供給システムは絵に描いた餅の可能性があります。次の関連記事を参照してください。

関連記事

原発を考える⑦ それでは高速増殖炉は? 核融合炉は?(07-04-16)



そして、スウェーデンはこの研究成果を現実の政策に応用し、すでに8年が経っています。今のところ上々の成果を上げています。詳細は、このブログの「緑の福祉国家1~62(1/11~6/2)」をご覧下さい。

ぜひ、皆さんもご自分で日本のプロジェクト「脱温暖化2050プロジェクト」を検証してみてください。私たちの近未来のために・・・・・そのとっかかりとして次の関連記事をあげておきます。

関連記事


スウェーデン

緑の福祉国家⑨ 21世紀へ移る準備をした「90年代」⑤ 研究報告「2021年のスウェーデン」(1/19)

2021年のスウェーデン 我々はすでに正しい未来の道を選択した(10/26) 

★希望の船出から11年、経済も、福祉も、環境も、 バックキャストが有効だ! 



日 本

★混迷する日本⑥ 福田首相の変心?(08-01-20) 


 「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ(平成19年2月15日) 

脱温暖化2050研究プロジェクト

2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガスj70%削減可能性検討

西岡PLによる報告書の背景解説

日英共同プロジェクト「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」の発足について




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持続可能な社会、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、    これらを組み合わせた社会とは何だろう?

2007-10-24 21:37:00 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
 

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日本の21世紀前半社会の概念形成がますます混乱し、いよいよ迷走し始めたのではないでしょうか。皆さんは表題に掲げた「持続可能な社会」、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」、これらを組み合わせた社会が何だかわかりますか。私にはさっぱりわかりません。

これらの言葉は、10月17日の環境新聞に寄せられた鴨下一郎・環境大臣の「バイオマス総合展 2007」開催へのあいさつ文に登場します。バイオマス総合展2007は今日から26日まで東京ビッグサイトで開催されます。

次の図をご覧ください。


検討したい部分は赤枠部分です。

これらの用語の組み合わせは、今年6月に閣議決定した「二十一世紀環境立国戦略」においては、地球規模での環境問題の深刻化を「人類が直面する最大の試練」として、社会経済活動を地球規模で持続可能なものへと築き直すに当たって、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の実現を求めています、という文脈の中で出てきます。 

環境分野について、少なくとも日本とスウェーデンを中心に30年近くフォローしてきたという自負がある私にとって「低炭素社会」という言葉を知ったのは比較的最近ですので、試みに今この時点でこれらの用語をヤフーの検索エンジンにかけてみました。その結果、

●「持続可能な社会」は約5,910,000件
●「低炭素社会」は約890,000件
●「循環型社会」は約4,590,000件
●「自然共生社会」は約3,310,000件

という驚くべき検索結果が出てきました。

「持続可能な社会」という概念は1987年の「ブルントラント報告」で定義づけられていますし、「循環型社会」の概念は2000年の「循環型社会形成推進基本法」で定義づけられていますが、「低炭素社会」と「自然共生社会」はどうでしょうか。

そこで、今度はウイキペディアで「低炭素社会」を調べてみました。次のような短い説明しかありませんでした。ということは、この用語の概念が十分に議論されていない、きわめて不確かなことを示しているのだと思います。

低炭素社会(ていたんそしゃかい, Low-carbon society、LCS)とは、二酸化炭素の排出が少ない社会のこと。低炭素型社会ともいう。低炭素経済(ていたんそけいざい, Low-carbon economy)は経済システムを重視した概念であるが、基本的には同じである。平成19年度(2007年度)の日本の環境・循環型社会白書において提唱された。これ以前の2005年ごろから使用されていた用語で、同じような概念があったが、日本では白書以降よく使われ始めた。 

この説明にあるように、 「低炭素社会」はきわめて新しい、概念の不十分な用語であることがわかります。

そこで、上の図の環境大臣の「バイオマス総合展 2007」開催のあいさつに戻るのですが、このような概念の異なる用語を3つも同時に組み合わせ、不用意に用いることは挨拶をする方自身が挨拶の内容を十分理解せずに寄稿しているのではないでしょうか。そうであれば、今年6月に閣議決定した「二十一世紀環境立国戦略」も、私には非常に心もとなく感じられます。

関連記事

 「治療志向の国」の21世紀環境立国戦略(6/4) 



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一人当たりのCO2 排出量の現状と将来の目標

2007-10-23 14:21:20 | 温暖化/オゾン層


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今日は少々息抜きをします。表題に掲げた「一人当たりのCO2の排出量の現状と将来の目標」に関する3つの図をご紹介します。あえてコメントもしません。3つの図を見くらべてご自身で考え、過去のブログ関連記事を見つければ新しい発見があると思います。




ドイツの首相が提示した「2050年の一人当たり温室効果ガスの排出目標(温室効果ガスとCO2は必ずしも同じではありませんが、CO2換算しますと温室効果ガスの90%以上がCO2ですので、おおよその目安としてCO2と考えてもよいと思います)2トン、先進国の排出量の現状、日本の9.7トン(2003年時)スウェーデンの5.9トン(2003年時)、途上国の排出量の現状などの数字を比較検討し、想像力をかき立てて見てください。2005年のCO2排出量をベースにすれば、日本はさらに2トンから遠ざかり、スウェーデンは2トンに近づくはずです。



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なぜ、スウェーデンの原発政策について「誤解、曲解」が生ずるのだろう

2007-10-22 23:35:05 | 原発/エネルギー/資源
 
 
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日本では、エネルギー問題を考える時に、エネルギーのことだけしか考えませんが、このような狭い考え方は問題です。環境政策、エネルギー政策など、国の重要な政策の背景には、必ず核になるその国の社会が存在します。ですから、エネルギー問題を議論する時にも、政治、行政、法制度などの社会システムを考慮に入れて考える必要があります。このような当たり前のことをすっかり忘れて、日本ではエネルギーの供給や研究開発という狭い枠の中での硬直した議論が盛んに行われています。 

現在、私たちが関心をいだいているスウェーデンは「福祉国家」を発展させてきた長い過程の中で様々な取捨選択を行いながら、社会制度の一つ一つに改良を加え、それらを成熟させてきた結果です。

こうした理解なしにはスウェーデンのエネルギー政策を理解することはできませんし、また、なぜスウェーデンがそのエネルギー政策の中で、安全対策、廃棄物処理対策、設備利用率、被ばく対策など多くの面で「世界の最高水準を行くといわれる原発」を廃棄し、自らに厳しい条件を課しつつ、現行のエネルギー体系を将来に向けて新しいエネルギー体系に変えて行こうと模索しているのかを理解できないでしょう。

10月19日のブログに掲載したリストに示しましたように、1988年6月から89年10月までのおよそ1年半の間に、私の目に触れたものだけでもおよそ70点を越える記事や番組がありました。これらはいずれも一般紙、市販の雑誌、単行本、テレビ、企業の広報資料などが取り上げたものですから、エネルギー問題に関心を持つ方ならば一般の方でも容易に入手可能なものばかりです。この中には業界の専門誌、報告書の類いは含まれていません。データ・ベースの力を借りて調べれば、さらに多くの記事が見つかると思います。

これらのマスコミに登場する記事の書き手の多くはジャーナリスト、フリーライター、技術評論家、エネルギー分野の専門家、経済評論家として積極的に発言している方々、原子力分野の専門家や技術者・研究者、関係省庁の担当者、企業や関連団体の原子力担当の技術者や原子力広報の担当者などで、一般の方々から見ればその道の専門家ということになるのでしょうが、残念なことに、彼等が書くスウェーデンのエネルギー政策(多くの場合、原子力の動向に関するものに限られていますが)に関する断片的な解説記事には、私の理解からすると様々な誤解、曲解、希望的観測、思惑、なかには意図的に一般の読者をある方向へ誘導させようとする試みではないかと思うようなものまであります。

その一例が10月19日のブログで紹介した89年2月14日付け毎日新聞の「提言」欄に掲載された国際原子力機関(IAEA)の前広報部長吉田康彦さんの投稿記事「原発推進は世界の大勢」です。この記事のスウェーデンの記述に明らかな誤りと読者の誤解を誘いそうな箇所がありましたので、私は同年3月13日付け毎日新聞の同欄に反論を書きました。

吉田さんはスウェーデンに関する部分で、「1991年に再度国民投票を実施する予定である」と述べています。私は「吉田さんの1991年国民投票再開催説」が誤りであることを指摘しておきました。問題の1991年はすでに過去となりましたが、スウェーデンでこの年に国民投票が開催された事実もなければ、はっきりした予定も組まれておりませんでした。吉田さんの記述は明らかに誤っていたのです。

吉田さんの問題の記事の中でスウェーデンに関する記述は17行ありますが、この記述は読者の誤解を誘うようなことばかりです。「スウェーデンの原子力問題」という共通のテーマに対して、私の理解と吉田さんの理解にはかなりの相違があることがおわかりいただけると思います。 

また、吉田さんの投稿記事の中に「最近の世論調査では46%が2010年以降も原発継続を希望しており……」とありますが、この数字にはコメントしておく必要があります。1980年の「原発に関する国民投票」の結果では、58%の人が「原発容認」に票を投じているのです。国民投票では「2010年まで」という原発の使用制限は付けられておりませんでしたので、58%の原発容認に投票した人々は2010年を越えて原発の寿命が来るまで使用するという考えに立っているはずです。

ですから、この46%という数字は原発容認の58%と比較しても小さい数字であると言えます。ですから、「46%が2010年以降も原発継続を希望しており……」などと言う表現は初めてこの数字を見せられた読者には一見もっともらしく思われるかも知れませんが、ほとんど意味のない数字だと言わざるをえません。
 
意図的な誘導は別ですが、誤解、曲解などの生ずる理由は簡単です。日本の関心事である「スウェーデンの脱原発」に焦点を合わせて、エネルギー政策の「原発の部分」だけを抜き出して報じたり、あるいは、日本とスウェーデンでは社会システムや価値観に様々な相違があるという事実にもかかわらず、それらを考慮せずにスウェーデンから入手した情報を、全体像を見ずにその関心のある一部分のみを「ある種の先入観あるいは期待感」と「日本の視点」あるいは「書き手自身の狭い視点」で分析しているからです。

そして、多くの場合、それらの記事の執筆者がその道の専門家であるために、その解説記事がそのまま他の人の記事に引用されていくからだと思います。外国の代表的なジャーナリズムの解説記事も同様で、しばしば誤りが認められます。その理由は日本の場合と大同小異です。

ですから、スウェーデンのエネルギー政策を分析する際にはエネルギー全体を広くとらえると共に、エネルギー政策が国の他の重要な政策と連動していることを理解し、その上で、「日本とスウェーデンは異なった価値観の上に立つ工業国である」という認識を持つことが必要なのです。


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原発論争 吉田康彦・元国際原子力機関(IAEA)広報部長との討論

2007-10-21 23:48:55 | 原発/エネルギー/資源
 

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ちょっと古い話が続いていますが、もう一つ、吉田康彦さん(元国際原子力機関広報部長)の投稿記事に対する私の反論を紹介しましょう。そのまま読んでいただけば、ご理解いただけると思いますので、特別のコメントは不要でしょう。



吉田さんの投稿記事は「原発問題はなぜウソがまかり通るのか」の一例です。吉田さんのお立場からして、事実を最もよく知る立場にある方でもなぜ? という感じが今でもします。

今改めて、吉田さんの投稿記事を読んでみて勝手な想像を巡らせば、この記事が1989年の記事ですので、昨日のブログで紹介しました槌田敦さんの1992年版の「環境保護運動のどこが間違っているのか」に書かれているスウェーデンの記述は、吉田さんのこの記事を参考に書かれたのかもしれません。



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槌田敦さんが理解するスウェーデンの原発事情

2007-10-20 08:29:20 | 原発/エネルギー/資源
 
 
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10月11日のブログ「同じ情報を与えられても解釈は異なることがある」で、槌田敦さんの著書「環境保護運動はどこが間違っているか」をとりあげました。1992年に発行された槌田さんのこの本は、同じ書名で当時の内容に増補(増補1~7)を28ページ追加して、2007年6月に再発行されています。

槌田さんの著作には賛同する箇所が多くあるのですが、私が槌田さんとまったく意見が異なるのは「スウェーデンの原発」に対する理解です。1992年版の「環境保護運動のどこが間違っているか」の見解と2007年版の表記が同一ですから、槌田さんのスウェーデンの原発に対する考え方は15年間変わらないということでしょう。2007年版の134~135ページに収録されている槌田さんのお考えを確認しておきましょう。


槌田さんは一貫して原発に反対する立場を堅持しておられますので、昨日の日本原子力文化振興財団の広告のように誤った情報を提供して世論をミスリードするという意図はなく、スウェーデンの脱原発政策をご自身が誤解し、曲解しているのだと思います。この15年間にスウェーデンの脱原発政策はかなり進んでいますが、槌田さんはその変化をフォローせず、92年の認識のまま現在に至っておられるのはたいへん残念です。このような記述は槌田さんの主張にときどき見られる「独断と偏見」の典型例だと思います。

関連記事

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20年前の日本の原発論争:スウェーデンの「脱原発政策」への関心

2007-10-19 12:01:03 | 原発/エネルギー/資源
 

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昨日のブログの最後に、私は次のように書きました。

つまり、この広告に書かれているスウェーデンに関する記述は事実を正しく伝えておらず、完全に間違っており、「ウソを書いて、日本の世論をミスリードしようとしている」と断定せざるを得ません。私は1988年6月から89年10月までの1年半にスウェーデンの「脱原発政策」について、多くの事実誤認とミスリードに悩まされました。もういい加減に世論をミスリードしないように・・・・・

私の初めての本「いま、環境・エネルギー問題を考える」(ダイヤモンド社 1992年7月発行)を私が書いた直接の動機は、1980年代に日本のエネルギー・原発の専門家や評論家、ジャーナリズムが報ずるスウェーデンの「脱原発政策」が私の理解とあまりに異なることから、私が理解するスウェーデンの状況を明らかにし、議論を通して共通の認識を築く参考にしてもらえるような資料を提供したいということでした。

次の図は1980年代当時の日本の混乱状況の中で、それぞれの立場を超えて、環境問題やエネルギー問題を考えてほしいという私の個人的な動機から書いた本の内容を示したものです。





次のリストは私の本の「巻末リスト」に掲げてあるものですが、原発に関心のあるかたでしたら、このリストの中に、20年近く前の懐かしいお名前を見つけることができるかもしれません。







1988年6月7日から89年10月までのおよそ1年半の間に、私が直接目にした、スウェーデンの「原発・エネルギー政策」に触れた、新聞、雑誌、単行本、テレビ番組の数は66本でした。その中には、私の視点や判断基準からみるとまさに誤解、曲解、世論をミスリードするために書かれたと判断せざるを得ないものなど様々でした。

けれども、20年近くたった今なお、原発を含めた日本のエネルギー問題についての議論は相変わらず堂々巡りをしている感をぬぐい去れません。それは、おそらく、この分野の専門家や政策担当者から提供される情報が、 常に「現状と課題」というタイトルに象徴されるように、その時々の「フローの情報」しか提供してこなかったからではないかと私は考えています。




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原発問題はなぜウソがまかり通るのか

2007-10-18 22:48:56 | 原発/エネルギー/資源
 
 
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10月11日のブログ「同じ情報を与えられても解釈は異なることがある」、武田邦彦著「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」(洋泉社 2007年3月)をとりあげました。武田さん流に表現すれば、今日のテーマは「原発問題はなぜウソがまかり通るのか」です。

次の図をご覧ください。これは日本原子力文化振興財団という原子力推進団体の最新の広告です。



この広告の中で私が問題にしたいのは、最後の2行、「スウェーデンも脱原子力政策を転換し,既設発電所の出力増強を進めることとしています。」というところです。

この部分は完全に事実に反しており、誤りです。この財団の主な任務が日本の原子力推進の広報活動であること考えれば、単に事実を誤認したというだけではなく、 「意図的にウソを書き、世論をミスリードしようとしている」と言わざるを得ません。

問題の部分は2つの主要な部分から成っています。ひとつは「スウェーデンも脱原子力政策を転換し、」という部分、もうひとつは「既設発電所の出力増強を進めることとしています。」です。

前者は「いつ脱原子力政策を転換したか」ということが明示されていませんが、広告全体の文章から推察すると、最近の(この数年の)世界の原子力の動向を背景に書いているようですので、そうであれば明らかに誤りです。

1980年6月にスウェーデン国会が決めた「脱原子力政策」では、「2010年までに12基の原子炉をすべて廃棄する」としていましたが、その後、紆余曲折を経て、1997年6月10日に国会で承認された「1997年のエネルギー政策」で、2010年までにすべて廃棄するという最終期限は公式に撤廃されました。しかし、 「12基の原発をすべて段階的に廃棄する」という国会決議は現在でも堅持されています。

1999年11月30日にバルセベック原発1号機(出力約60万キロワット)が、2005年5月31日にバルセベック原発2号機(出力約60万キロワット)が廃棄されました。2002年3月15日、スウェーデン政府は新たなエネルギー政策方針を策定しました。この新方針により事実上、スウェーデンの「脱原発政策」は「政治主導」から「電力会社主導」に変わりましたが脱原発政策そのものは変わっていません。ですから、既存の原発は従来通り段階的に廃棄する方向にあり、原発の新設の計画は現時点でありません。

もう一つの「既設発電所の出力を進めることとしています」も完全に誤りです。この文章は素直に読めば、「現在はまだ出力の増強を進めていないが、今後は出力の増強を行う計画がある」ということになるのでしょうが、実はそれは誤りで、すでに2基の原発を廃棄した時以来、既設発電所の出力増強は行われています。

つまり、この広告に書かれているスウェーデンに関する記述は事実を正しく伝えておらず、完全に間違っており、「ウソを書いて、日本の世論をミスリードしようとしている」と断定せざるを得ません。私は1988年6月から89年10月までの1年半にスウェーデンの「脱原発政策」について、多くの事実誤認とミスリードに悩まされました。もういい加減に世論をミスリードしないように・・・・・


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緑の福祉国家22 エネルギー体系の転換① 原発を新設しない・脱石油(4/22)

緑の福祉国家23 エネルギー体系の転換② 原発廃棄「政治主導」から「電力会社主導」へ(4/23)



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日本の温暖化対策:経産省 vs 環境省、日本経団連 vs 経済同友会

2007-10-17 21:46:27 | 温暖化/オゾン層
 
 
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京都議定書の約束期限2008~2012年を目前にして、日本の温暖化対策は、いまなお混乱し、迷走し続けています。今朝の朝日新聞に日本の温暖化対策に関連し3つの記事がありました。まず、次の記事をご覧ください。


この記事の数日前に、環境大臣と経産省事務次官がそれぞれの記者会見でそれぞれの省の主張を繰り広げていました。上の記事の表題にある「環境税バトル」とは下の記事で報じられているような内容のものです。


日本の経産省が懸念を示している「環境税バトル」について検証してみましょう。世界経済フォーラム(WEF、ダボス会議)は毎年「国際競争力のランキング」を調査し、公表しています。ここでは環境税を導入しているか否かにかかわりなく、多くの指標を用いて「国際的競争力」を総合的に判断しています。スウェーデンはスイス(5.81ポイント)、フィンランド(5.76ポイント)に次いで、世界3位(5.74ポイント)でした。ちなみに、米国は6位(5.61ポイント)で、日本は7位(5.60ポイント)でした。


もう少し詳しく、このランキングの推移を見てみますと、2003年の順位はスウェーデン3位日本11位、2004年はスウェーデン3位日本9位、2005年はスウェーデン7位日本10位、2006年はスウェーデン3位日本7位となっています。なお、世界経済フォーラム(WEF)は10月31日に「国際競争力報告書 2007-2008」を公表する予定です。  


つまり、1991年に二酸化炭素を導入したスウェーデンのほうが国際競争力の低下を懸念して二酸化炭素の導入に反対している日本よりも国際競争力が高くなっているのです。

なぜ、内閣府も、立法府も日本の行政すべてに関連する「行政の縦割り構造」を変えようとしないのでしょうか。この改革なしには、21世紀の新しい難問には対応できず、ますます迷走し、漂流することは間違いないでしょう。

二酸化炭素の削減に関するスウェーデンの基本的な考えをお知らせしましょう。この考えは産業界を含む国民各セクターの間で十分に共有されています。


ですから、次のような要求も出てくるのです。これは米国の環境経営コンサルタントのポール・ホーケンさんが京都のシンポジウムで発言したものです。環境経済・政策学会編「環境保全と企業経営」(東洋経済新報社、2002年10月発行)の45~46ページから引用しました。


このシンポジウムは「環境経営の革新-新産業革命とナチュラル・キャピタリズム-と題して、2001年9月29日/30日の両日、国立京都国際会館で開催された第6回環境経済・政策学会における市民公開シンポジウム(朝日新聞社・後援)で、その詳細な内容が上記の「環境保全と企業経営」に収録されています。

16年前の1991年1月1日に導入された二酸化炭素税はスウェーデンの二酸化炭素の削減に貢献しました。すでに、このブログでも紹介しましたように、1990年と2005年を比較するとスウェーデンの二酸化炭素の年間排出量は7%減少し、経済は36%上昇しています。日本の経産省が懸念するような事態はCO2の導入によって発生してはおりません。日本の国際競争力の低下にはもっと別な大きな要因があると思います。


次の2つの図も今朝の朝日新聞に掲載されていたものです。


ここでは、日本経団連と経済同友会が意見を異にしています。私の視点からは、経済同友会の主張のほうが正論だと思います。



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