環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年6月掲載のブログ記事

2010-06-30 19:18:42 | 月別記事一覧
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1.2010年6月掲載のブログ(2010-06-30)

2.G8開幕、成長の手法:米国は「景気回復」、欧州は「財政再建」、それでは、スウェーデンは、日本は?(2010-06-27)

3.スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決(2010-06-22)

4.現憲法下の通常国会で記録したという最低成立率55.6%の法律が示唆すること(2010-06-17)

5.今後20年の展望:スウェーデン vs 日本(2010-06-13)

6.待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?(2010-06-12)

7.菅直人新首相は、所信表明演説で「環境問題」について、何を語るか(2010-06-07) 


 

G8開幕、成長の手法:米国は「景気回復」、欧州は「財政再建」、それでは、スウェーデンは、日本は?

2010-06-27 22:04:17 | 経済
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6月26日の朝日新聞が25日、カナダのトロント郊外のムスコカで始まったG8の会議の初日に「各国の経済成長を持続させることが重要だとの認識で一致した。その手法を巡っては、財政出動による景気刺激策の継続を主張する米国と、財政再建を優先したい欧州の間で意見が分かれた。」と報じています。

この両者の間に、2020年度までに健全化させる「財政運営戦略」と、環境やエネルギー、介護などの産業を生かした雇用創出でデフレ脱却を図る「新成長戦略」との両立を強調した日本があるとの図式です。

この記事を読んだときに、すぐ思い出したのはちょうど20年前不況の時期に、欧州(ドイツおよびフランス)と日本、スウェーデンの行動でした。今回の状況下で参考になるかどうかはわかりませんが、経済の門外漢である私には類似の図式に見えますので、当時の状況を振り返っておきましょう。

90年代初めの不況は深刻な財政赤字の悪化を招き、スウェーデン経済に著しい打撃を与えました。1991年から93年にかけて、日本と同じような原因による「バブル崩壊」を経験したスウェーデンは、「経済のマイナス成長」「高失業率」「GDPの12%を超える財政赤字」「経常収支の大赤字」の四重苦に苦しみました。

事態を改善するためにスウェーデン政府は、野党との協力のもとに綿密なプログラムを組み、強い福祉を訴え、「歳出の削減」と「増税」を実施した結果、「景気回復」と「財政再建」を同時に解決するとともに、四重苦を克服したのです。迅速で大胆な公的資金の投入により、不良債権問題は1年で解消し、投入された公的資金も1996年にはほぼ全額返済されました。
 
この間の事情を、神野直彦さん(当時、東京大学経済学部教授)の著書『二兎を得る経済学――景気回復と財政再建』(講談社+α新書、2001年)を参考に再現してみます。

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「20世紀から21世紀への峠を、スウェーデンは『自信と楽観主義(confidence and optimism)』とともに越えた。スウェーデンの『予算説明書』は、そう胸を張って宣言している。これに対して日本は、20世紀から21世紀への峠を、『不安と悲観主義』とともに越えるしかなかった。この対照的な相違は、『人間を信頼した国』と、 『人間を信頼しなかった国』との相違だということができる」。
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スウェーデンと日本を鮮烈で対照的な表現で活写した神野さんはこの著書のなかで、世紀の変わり目に先進工業国が直面した「景気回復」「財政再建」を二匹の兎にたとえ、90年代の日本、ドイツ、フランス、スウェーデンの対応を財政学の立場から分析し、比較検討しておられます。それぞれの国が、それぞれの異なる社会制度のもとで、それぞれの選択をした結果、現在に至っている状況がわかり、たいへん興味深いものです。神野さんの分析を要約すると、次のようになります。




日本は景気回復という「一兎」を追ったが一兎をも得ずであった。ドイツ、フランスは財政再建という「一兎」を追い、一兎を得た。スウェーデンは景気回復財政再建という「二兎」を追い、二兎を得た。

1992年から知識集約的産業の成長を倍増させ、産業構造を転換させた。世界最強の「IT国家」をめざし、ストックホルムをして「IT首都」とまで賛美させる産業構造の転換こそ、スウェーデンが景気回復にも財政再建にも成功した鍵なのである。

90年代後半以降のスウェーデン経済のパフォーマンスを、「景気回復」という一兎から見ると、「一般財政収支の対GDP比」「GDPの推移」「一人当たりのGDPの推移」「経済活動指数」「失業率」「株価」「政策金利」「国債の格付け」「国際競争力」などのデータでは、きわめて好調です。
 
もう一つの「財政再建」という一兎についてはどうでしょうか。『中央公論』が2004年11月号で、「特集 国家破綻の足音」を組み、そのなかで、榊原英資さん(当時・慶應義塾大学教授、元財務官)は、「日本の財政悪化は政治の再編成を招くか」と題して米国の格付け機関S&Pが、現状のままの財政制度が将来も維持されたときの25カ国の累積財政赤字(一般政府累積赤字対GDP比率)を試算した表を掲げています。

 
これを見ますと、2000年のスウェーデンが55%(日本144%)、2030年が21%(日本399%)、2050年が59%(日本718%)。日本の状況は右肩上がりで、試算対象国のうち最悪です。欧米が判断基準としている累積財政赤字が60~70%であることを考えると、日本の深刻さが理解できるはずです。上の表から作成したのが次の図です。



そして、最新のスウェーデンの状況と欧州の状況を次の記事から知ることができます。

★景気回復


★財政再建 


スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決

2010-06-22 17:34:13 | 原発/エネルギー/資源
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6月19日付けの朝日新聞(朝刊)が「スウェーデン脱原発を転換 30年ぶり」と題する記事を掲載しました。


今回の報道は、前回(昨年2月6日)の報道に比べれば、かなり記事の内容の正確度が高くなりましたが、前回の日本の全国紙の各報道は日本社会をミスリードしたかもしれないほどのものでした。そこで、私は私の理解したスウェーデンの状況をこのブログにまとめておきました。今回の報道記事と前回の私のブログ記事の両方を合わせて読んでいただければかなり正確に「スウェーデンの原発に対する考え」を理解できるでしょう。

関連記事
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)


同じような趣旨の記事が同日の毎日新聞と讀賣新聞にも掲載されていましたが、日本経済新聞や産経新聞には関連記事がありませんでした。


日本ではなぜか「スウェーデンの脱原発政策」という表現が定着していますが、これは間違いではないものの、ことの本質を表現したものではありません。正しくは「スウェーデンのエネルギー体系転換政策」あるいは「スウェーデンのエネルギー体系修正政策」と呼ぶべきものです。私は20年前の1988年8月10日の朝日新聞の「論壇」(ここをクリック)で、このことを書きましたが、日本の学者も経済人も、一般市民もそして、マスメディアも「スウェーデンのエネルギー政策の本質」が見えず(あるいは、本質を見ず)、日本の関心事である原発だけに注目して、「スウェーデンの脱原発政策」という矮小化した認識で現在まで来てしまいました。

今回の記事は昨年2月6日の報道の続編で、その要点は「原子力と水力からなる現在の電力システム」(日本の発想で言えば“好ましい低炭素型発電システム”)に、今後第3の柱となるべき再生可能エネルギーを導入していく過程で、現在の電力のほぼ半分近くを供給している「既存の原発10基」(このうち4基は70年代に運転開始、すでに40年近く稼働している)のいずれかの更新が将来必要になったときに備えてあらかじめそれらの更新の道を開いておく用意をするというだけのことなのです。

スウェーデンの最初の商業用原子炉はオスカーシャム1号機(1972年運転開始)ですから、これが今後事故なく順調に稼働していけば、運転開始後50年になるのは2020年頃です。ですから、今回の「部分的な原発政策の修正(変更)」という決定が直ちに行動に移されるものではありません。

また、スウェーデンの福祉国家を築き、維持してきた比較第一党の社民党は、96年から20世紀型の「福祉国家」を21世紀型の「緑の福祉国家」へ転換しようと努力してきました。2006年の総選挙では現在の4党連立政権に僅少さで敗れ、下野しましたが、3ヶ月後に迫った9月の総選挙で政権奪還をめざしています。21世紀の「緑の福祉国」の構築」をめざす社民党の綱領には「エネルギーの使用には、環境的な配慮による制約がある。原子力は廃止し低下なければならないし、同時に化石燃料の使用は減少させなければならない。」と明記されています。

つまり、今回の現政権による「原発政策の部分的修正」は原子力の利用期間を延長し、最大10基までという現在の限定枠で既存の原発サイトでの更新を許可する。これにより、現在稼働中の原子炉が技術的および経済的寿命に達したときに、必要であれば、継続的に新設の炉で置き換えることができるようにするということなのです。
  
ですから、スウェーデンは「原発への依存」を今後さらに高めていく方針でもありませんし、ましてや「原発」を地球温暖化問題の解決策として位置づけたわけでもありません。地球温暖化問題の解決策としては「化石燃料の使用を削減する以外に有効な方法がないこと」が既に国民の間で共有されているからです。

スウェーデンの「この高齢化(老朽化)した原発の更新の問題」は、たとえ原発事故が起こらず、安全に運転されていても、これから20年間の「日本の原発推進政策」でも間違いなく再現される大問題です。ですから、今回スウェーデン国会で僅少さ(賛成174 対 反対172)で可決されたスウェーデンの「原発に関する新たな政策」、「原発ルネッサンス」だとか、「地球温暖化対策のために原発推進を!」などという日本の浮かれたお粗末な原発推進議論とは明らかに一線を画すものです。


ご参考までに、30年前の朝日新聞((1980年6月11日))の記事を掲げておきます。






現憲法下の通常国会で記録したという最低成立率55.6%の法律が示唆すること

2010-06-17 07:34:11 | Weblog
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6月16日に第174通常国会が閉会しました。今日、6月17日の朝日新聞は「内閣提出の審議は進まず、新規提出の63本のうち、成立したのは35本。55.6%の成立率は現憲法下の通常国会では最低だった。政権が重要視した法案の多くは成立せず、郵政改革法案、地球温暖化対策基本法案が廃案。政治主導確立法案、労働者派遣法改正案、地域主権改革推進法案は継続審議になった。」と報じています。

この記事からは成立したのがどんな法律で、廃案や継続審議になったのがどのような法案なのかはわからないので、読売新聞と日本経済新聞の記事から不明な部分を補い、「現憲法下の通常国会で最低だった法案成立率の実態」を明らかにしようと試みました。

★今国会で成立した主な法律

★今国会で成立した法律

内閣提出法案および議員立法、条約


★今国会で廃案・継続審議となった法案



これらの法案をご覧になるとおわかりのように、今国会で成立した法律も、今国会で廃案・継続審議となった法案でも、これまでの国会での状況と同じように「○○改正法案」あるいは「改正○○法案」という類の「改正」を冠した法案が多いことです。

つまり、これらの改正法はいずれも、現状に適応できなくなった古い法律を現状に適応できるように改正されたものです。法律の趣旨は20世紀の発想をそのまま引きずっている法律ですので、改正しないよりはましということです。

関連記事
混迷する日本②  臨時国会閉会 21世紀の新しい社会をつくる法律ができない(2008-01-16)

21世紀前半にめざすべき「持続可能な社会」の構築への法体系が未整備な日本(2007-12-19)


このことは日本の法体系が、21世紀に入って10年経ったにもかかわらず、20世紀の法体系を引きずっており、21世紀の新しい社会をめざす法体系が整っていないことを示しています。たとえ政権交代が行われても、政治の目標が「持続的な経済成長」である限り、21世紀の社会を意識した新しい法体系は必要なく、現行法を改正すれば対応できるということかもしれません。このような考えでは、ますます国際社会の大きな変化に対応できなくなるおそれが高まります。





14年前の私の想定が、今現実の問題となっているように思います。スウェーデンは当時よりも好ましい方向に進展し、日本は好ましくない方向に劣化してきたといっても過言ではないでしょう。




今後20年の展望:スウェーデン vs 日本

2010-06-13 20:24:45 | 政治/行政/地方分権
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昨日のブログで私は、6月11日に行われた菅直人・首相の「所信表明演説」から首相が追求する第3の道とは「スウェーデン型ではないか」と書きました。とは言っても、それは「1990年代のスウェーデンの社会および経済的側面」ということです。所信表明演説には「スウェーデン」という言葉はまったく出てきませんけれども・・・・・
この推測が正しいかどうかは別にして、2010年の現時点で両国の現状には大きな落差があります。

橘木俊詔さんの『家計からみる日本経済』(岩波新書873 2004年1月20日 第1刷発行)によれば、先進工業国のなかで公的部門の社会保障制度が小規模なのは、日本と米国で、日米両国は「非福祉国家」の典型国だそうです。この対極にあるのがスウェーデンで、ドイツ、フランス、英国などEUの主要国はその中間に位置します。

ここで注意を要するのは、スウェーデンの福祉は日本や米国、EU諸国の福祉とは概念を異にし、 「全ての国民を対象とし、国民の最低生活を保障するものではなく、一定の生活水準を保証する」というものです。日本や米国、EU諸国に比べて、スウェーデンが高水準の「育児サービスや高齢者福祉サービス」などを提供しているのはその具体例です。

スウェーデンと日本は、一見対極にあるように見えますがそれは20世紀後半の現実社会への対応の相違によるものです。60年代に表面化した「高齢化の急激な波」がスウェーデンの「高齢者福祉」を進展させ、世界が注目する「新公的年金制度」を生みだし、80年代に表面化した地球規模の環境問題が「福祉国家」から「持続可能な社会」)への転換を模索し始めたのです。そして、90年中頃には「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)への転換を決めたのです。

菅首相の「第3の道」が私が推測する「スウェーデン型」であるならば、日本のこれからを考えるときに役立ちそうな図を8点(いずれも10年以上前に作成したもの)と「過去60年間のGDPの推移」を示す図を提供しましょう。明確な政治的ビジョンとそれを行動に移す社会システム(社会制度)が既に構築されていることを知っていただきたいと思います。皆さんの参考になれば幸いです。  







 




関連記事
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待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?

2010-06-12 20:29:26 | 政治/行政/地方分権
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6月11日に待望の菅直人・新首相の「所信表明演説」が国会で行われました。今朝の朝日新聞にその全文が掲載されています。私は昨日の国会での演説をテレビ見て、今朝、朝日新聞で演説内容を再確認しました。

日本の国会で内閣総理大臣(首相)が本会議場で行う演説には「所信表明演説」と「施政方針演説」があります。フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、両者の相違は次のように定義されています。

X X X X X 
所信表明演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が自分の考え(所信)を述べる演説で、以下の場合に衆議院と参議院の本会議で行われる。

   ●臨時国会の冒頭
   ●特別国会で内閣総理大臣が指名・任命された後
   ●国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合

施政方針演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が年初における政府の方針を述べる演説で、通常国会(年に1回、予算編成のため必ず召集されることが憲法上義務づけられている国会のこと。憲法では「常会」という。1月末に召集、150日間の会期で6月まで行われるが、1回のみ両議院の議決で会期延長ができる)での冒頭で衆議院と参議院の本会議場で行われる。
X X X X X

つまり、通常国会の冒頭において、内閣総理大臣が内閣全体での方針や重点課題を説明する演説を「施政方針演説」と呼ぶのに対して、その他の機会(今回の場合は上記の国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合)に、内閣総理大臣の所信(個人としての自分の考え)として、国政についての方針や重点課題を説明する演説を「所信表明演説」とよぶのです。 

6月7日の私のブログ「菅直人新首相は、所信表明演説で『環境問題』について、何を語るか」で、私は、2001年の小泉純一郎首相から、安倍晋太郎首相、福田康夫首相、麻生太郎首相(以上は自民党政権)と民主党政権の鳩山由紀夫前首相の「所信表明演説」とそれに続く「施政方針演説」に期待し、そしてその結果にことごとく失望してきました、と書きました。

6月11日の菅新首相の「所信表明演説」は過去10年間の歴代の首相の「所信表明演説」よりもかなり期待できそうな気がします。また、この所信表明演説の背景として朝日新聞に掲載されたインタビュー記事「新政権 経済政策の課題 上中下」も、従来のインタビュー記事とは内容的にかなりの相違があるように思います。菅新政権の今後あるいは成果をしかるべき時に評価するときの背景資料として役に立ちそうですので、このブログに収録しておきましょう。

今日の朝日新聞によりますと、「菅首相は口述筆記で初稿を作り、その後官邸スタッフが整えた原稿に自身が手を加えるという作業を10回程度くり返した。最後は『おれが全部書く。1時間、時間を作れ』と自ら執務室にこもり、最終稿を書き上げた」のだそうです。

首相の所信表明演説 財政重視 筋道は不透明(朝日新聞 2010年6月12日)



菅首相の所信表明演説の構成は次のようになっています。
1.はじめに
2.改革の続行-戦後行政の大掃除の本格実施
3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し
4.責任感に立脚した外交・安全保障政策
5.むすび

私の関心事である環境分野の記述は2カ所あります。歴代の首相の「所信表明演説」よりも格段の期待が持てそうな記述です。一つは「3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し」のところで、次のように書かれています。

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第1の「グリーン・イノベーション」には、鳩山前総理が積極的に取り組まれ、2020年における温室効果ガスの25%削減目標を掲げた地球温暖化対策も含まれます。その他にも、生物多様性の維持や、人間に不可欠な「水」にかかわる産業など、期待される分野は数多く存在し、その向こうには巨大な需要が広がっています。運輸部門や生活関連部門、原子力産業を含むエネルギー部門、さらには、まちづくりの分野で新技術の開発や新事業の展開が期待されます。
xxxxx

関連記事
「グリーン・ニューディール」と呼ぶにふさわしい スウェーデンがめざす「緑の経済と社会」の変革(2009-04-08) 


もう一つは「4.責任感に立脚した外交・安全保障政策」のところで、次のように書かれています。

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我が国は、地球規模の課題についても積極的な役割を果たしていきます。気候変動問題についてはCOP16に向けて、すべての主要国による、公平かつ実効的な枠組みを構築すべく、米国、EU、国連などとも連携しながら、国際交渉を主導します。この秋、愛知県名古屋市で開催されるCOP10では、生物の多様性を守る国際的な取り組みを先進させます。
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菅首相の「所信表明演説」(全文) 朝日新聞 2010年6月12日


また、朝日新聞は、6月10日から12日まで、菅新首相の経済政策に関連して「新政権経済政策の課題」と題するインタビュー記事を3回掲載しています。これらの記事も首相の「所信表明演説」を理解する助けとなるでしょう。



 

神野さんがおっしゃる「社会正義」 、言いかえれば、「格差是正」や「所得の平等な分配」などの観点などはスウェーデン型福祉国家の骨格をなす価値観です。21世紀にスウェーデンがめざしている「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)の概念でも、次の図に示したように、「社会正義」が明確にうたわれています。



首相の所信表明演説には、「スウェーデン」という言葉は一言も出てきませんが、これらの資料から判断しますと、菅首相は日本の望ましい将来像として、「スウェーデン社会」を念頭においているように思います。そうだとすれば、最近では、あの竹中さんでさえ雑誌のインタビュー記事やご自身の最新の著書で「スウェーデンに学べ」と書いておられますので、37年間日本とスウェーデンの「社会と環境分野」を同時進行でフォローしてきた私にとって、「時代の大きな変化」を強く感じます。

関連記事
日本経済新聞 「経済教室」 スウェーデンモデルの核心学べ 安心確保 活力と両立を(2009-09-19)

あべこべの国:スウェーデンと日本「格差社会」(『消費者ニュース』 No.76 2008年7月)
 
希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も、  バックキャストが有効だ!(2008-03-30)


スウェーデンの「経済成長(GDP成長)と温室効果ガス(GHG)」の見事なデカップリング(相関性の分離)


関連記事
2008年の温室効果ガス排出量:スウェーデンは90年比11.7%減、日本は7.4%増(CO2)+α(2009-12-19)

日本の地球温暖化対策 もう一つの視点(2009-12-16)

スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出量の「デカップリング」がさらに明確に(2008-03-16)




菅直人新首相は、所信表明演説で「環境問題」について、何を語るか

2010-06-07 07:22:44 | 政治/行政/地方分権
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6月2日の鳩山由紀夫首相の辞任を受け、一連の党内手続きを経て、6月4日の衆参両院の本会議で菅直人・副総理兼財務相が第94代首相に指名されました。新首相の「今後の主な政治日程」では、7日に「新首相の所信表明演説」が行われる(?マーク付き)で報じられています。

私は、2001年の小泉純一郎首相から、安倍晋太郎首相、福田康夫首相、麻生太郎首相(以上は自民党政権)と民主党政権の鳩山由紀夫前首相の「所信表明演説」とそれに続く「施政方針演説」に示される「環境問題に対する認識」に期待し、そしてその結果にことごとく失望してきました。

関連記事
「所信表明演説」と「施政方針演説」(2007-10-03)

日本の社会を構成する「主なプレーヤー」の問題点(2)2000年以降の首相の「環境問題に対する認識」(2008-09-29)


とはいえ、まもなく衆参両議院で行われる予定の菅新首相の「所信表明演説」に、もう一度期待をかけ、注目したいと思います。

そこで今日は、2001年の小泉首相から2009年の鳩山首相までの歴代の首相が首相に指名されたときに行った「所信表明演説」とその後に首相として行った「施政方針演説」で何を語ったのか確認しておきましょう。

●小泉純一郎元首相
2001年5月7日の小泉首相の所信表明演説(米100表の精神)、9月27日に2回目の所信表明演説

2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説

●安倍晋三元首相
2006年9月29日の所信表明演説が示す安倍首相の「環境認識」

2007年1月26日の安倍首相の施政方針演説

2007年9月10日の安倍首相の所信表明演説 ハイリゲンダム 美しい星50

●福田康夫元首相
2007年10月1日の福田新首相の所信表明演説  なんと「持続可能社会」が4回も登場

混迷する日本⑤ 福田首相の施政方針演説: 「持続可能な社会」はどこへ行ったのか?

●麻生太郎元首相
2008年9月29日の「所信表明演説」

●鳩山由紀夫前首相
第173回臨時国会招集 鳩山首相の所信表明演説(2009年10月26日)

21世紀のキーワード 「持続可能な」 が、出てこない約1万3600字の 「鳩山首相の施政方針演説」



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政治が決める「これからの50年」(2007-01-05)