環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2009年12月のブログ掲載記事 

2009-12-31 23:45:50 | 月別記事一覧
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12月のブログ掲載記事

1.12月のブログ掲載記事(2009-12-31)

2.鳩山首相が「成長戦略」の基本方針を発表、温室効果ガス削減との整合性は?(2009-12-31)

3.COP15が閉幕、この決断が将来を決める(2009-12-30)
 
4.2008年の温室効果ガス排出量:スウェーデンは90年比11.7%減、日本は7.4%増(CO2)+α(2009-12-19)

5.スウェーデンの新たな試み:2006年から「渋滞税」を段階的に導入、そしてその成果は?(2009-12-17)

6.日本の地球温暖化対策 もう一つの視点(2009-12-16)

7.第173回国会(臨時国会)が閉幕、成立した法案は?(2009-12-05)




鳩山首相が「成長戦略」の基本方針を発表、温室効果ガス削減との整合性は?

2009-12-31 22:12:50 | 経済
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私の環境論では、環境問題の解決は次のようになります。


そして、21世紀の経済には20世紀のような自由度はありません。


次の図は過去36年間(1971~2007)の一次エネルギーの総供給量の推移を示しています。


次の図は過去36年間のCO2の排出量とGDPの推移を示しています。


過去36年の実績では、日本は一次エネルギーの供給量もCO2の排出量も増加しています。また、CO2の排出量とGDPの成長も見事なまでの「カップリング(相関関係)」を示しています。

関連記事
日本の地球温暖化対策 もう一つの視点(2009-12-16)



さて、今朝の朝日新聞が「鳩山首相が成長戦略の基本方針を発表した」と報じています。2020年度までの国内総生産(GDP)の成長率を名目で平均3%、物価指数の影響を除く実質で2%成長させ、名目GDPは現在の1.4倍の650兆円に増やすのだそうです。記事の内容は次の通りです。

●成長戦略 年平均2% 20年度まで 政府が新目標 

●成長戦略、急ごしらえ


鳩山政権が掲げた「成長戦略」では、増加傾向にある「一次エネルギーの供給量」や「CO2の排出量」との関係はどうなるのでしょうか。民主党政権のキャッチフレーズである「コンクリートから人へ」は日本の「一次エネルギーの供給量」と「CO2の排出量」を減少傾向に反転させることができるでしょうか。

様々な問題を抱えながら、私たちはあと数時間で新しい年「2010年」を迎えようとしています。

それでは、皆さん、よいお年をお迎え下さい。 

   

COP15が閉幕、この決断が将来を決める

2009-12-30 15:56:27 | 温暖化/オゾン層
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コペンハーゲンで開かれていた「COP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)」が19日に閉幕と、20日付けの毎日新聞が伝えています。次の記事は一面トップの記事ですが、二面にはこの問題にかかわってきた方々のコメントがコンパクトにまとめられていますので、記録として保存し、次の議論の参考にしましょう。



●温室ガス削減 日本「25%」見直しも 「各国意欲的」の前提危うく(毎日新聞2面)


COP15を巡る海外の動向や日本のマスメデイアが伝える日本政府の対応や経済界の反応、さらには専門家の発言など大量の情報が発信されている割には、ほとんど「気候変動問題」の本質が語られていないような気がします。そこで、次の図をご覧下さい。





この図は米国の経済思想史家ロバート・ハイルブローナーの考えを示すもので、私の環境論に重なる部分です。私たちは12月19日に閉幕したCOP15で、ハイルブローナーが1993年に著書『21世紀の資本主義』で指摘していた状況(①生態学的障壁)を目の当たりにしたのです。
10日ほど前に、190を超える国と地域の首脳がコペンハーゲンに集まり、この問題の深刻さを理解しているにもかかわらず、その解決のための適切な枠組みに合意できませんでした。

関連記事
12月のCOP15で予定されていた「ポスト京都議定書の採択」を断念(2009-10-30)

21世紀の資本主義、その行方は???(2008-03-30)



そこで、 「環境問題」について、改めて私の考えをまとめておきます。
「環境問題は経済活動の目的外の結果の蓄積である」というのが私の環境論の根底をなす考えです。少々、説明が必要かもしれません。

私たちが行動すると、その目的が達成されようとされまいと、必ず「目的外の結果」が生ずることになります。20世紀後半に顕在化した「環境問題」の大半は、私たちが豊かになるという目的を達成するために行った「企業による生産活動」と「市民の消費活動」、そして両者による余暇活動があいまってつくりだした経済活動の「目的外の結果」が蓄積したものです。ですから、経済活動が大きくなれば「目的外の結果」も比例的に、あるいはそれ以上に大きくなります。つまり、「経済」と「環境問題」は切っても切れない関係にある、分かり易くいえば「コインの裏表」と表現してもよいでしょう。

21世紀に私たちが、20世紀のような「経済規模の拡大」ではなく、「経済の適正規模」への転換を模索しなければならないのは「資源やエネルギーの量的な不足や枯渇によって経済活動が制約される」という20世紀の懸念からだけではなく、自然科学者が明らかにした「有限な地球」に対して21世紀の新たな懸念があるからです。

それは、「20世紀の経済活動の結果、大気や水や土壌にすでに蓄積されている様々な環境負荷(温室効果ガスやオゾン層破壊物質、有害物質、廃棄物などの増加)」に加えて、「21世紀の経済活動にともなって新たに加わる環境負荷」の総和が、いよいよ環境の許容限度や人間の許容限度に近づくことによって、一部では超えたために、経済活動が制約されざるを得ないという、20世紀には想定されなかった新たな懸念です。

ですから、私たちがいま直面している「環境問題に対する最も重要な判断基準」は、 「社会全体のエネルギー消費量を削減することできるかどうかにかかっている」ということになります。本来めざすべきは 「低炭素社会」ではなく、 「低エネルギー社会」 、さらに言えば、 「エコロジー的に持続可能な社会」 なのです。  



2008年の温室効果ガス排出量:スウェーデンは90年比11.7%減、日本は7.4%増(CO2)+α

2009-12-19 20:18:48 | 温暖化/オゾン層
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まず、次の図をご覧下さい。



この図はちょうど1ヶ月前の11月19日のブログ「気候変動、もう一つの視点」(ここをクリック)のトップに掲げた「過去36年間のCO2排出量の推移の比較 1971-2007」の図(5年ごとに排出量をプロット)をさらに細かく見るために、年ごとのCO2排出量に加えてGDPをプロットし、京都議定書の基準年をそれぞれ100としてそれぞれの指標の増減を比較しやすいようにあらわしたものです。このグラフの作成に用いたデータは、エネルギーの専門家であれば誰でもご存じの国際エネルギー機関(IEA)が公表した報告「CO2 Emissions from Fuel Combustion Highlights 2009 Editon」から抜粋したものです。

スウェーデン環境省は12月15日、「Swedish greenhouse gas emissions at record low in 2008」と題するプレスリリースを出しました。プレスリリースによれば、スウェーデンは温室ガス排出量の削減を続けており、2008年には記録的な削減に達し、1990年比で220万トン、ほぼ12%の削減となったそうです。

このプレスリリースに合わせて、スウェーデン環境保護庁は同日、次のような図を公表しています。この図は京都議定書の基準年である1990年から2008年までの18年間のスウェーデンの温室効果ガスの内訳を示しています。温室効果ガス排出量の80%がCO2の排出量です。



二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素およびフッ化ガス(HFC,PFCおよびSF6)の温室効果ガスの排出量は変動しています。1990年以降の傾向は、二酸化炭素、メタンおよび亜酸化窒素は減少し、フッ化ガスは増加しています。

   ★二酸化炭素(CO2)は化石燃料の燃焼によって放出され、温室効果ガスの総排出量の80%を占めています。

   ★亜酸化窒素は農業、廃棄物および産業工程から放出され、温室効果ガスの総排出量の およそ11%を占めています。

   ★メタンは主に農業と埋め立てから放出され、温室効果ガスの総排出量の およそ8%を占めています。

   ★フッ化ガス(HFC、PFCおよびSF6)は産業工程からのみ放出され、温室効果ガスの総排出量の2%を占めています。


次の2つの図は日本の2007年度の温室効果ガスの排出量(CO2換算、環境省まとめ)および2008年度の「化石燃料を燃やしたときに出るエネルギー起源の排出量」 (CO2換算、経済産業省発表)です。日本の場合には、温室効果ガスの90%がCO2です。2007年度の温室効果ガスは過去最高の排出量を記録しました。





2007年度は「温室効果ガス」の総排出量ですが、2008年度は「CO2」の排出量となっておりますので、2008年度の最終的な温室効果ガスの総排出量(CO2+α)はさらに増えるはずです。この時点ではα分が未だ公表されていないからです。

これらの図はスウェーデンと日本の気候変動問題への対応の相違が結果としてはっきりあらわれたものです。正反対の結果が出ています。



上の図で注目してほしいのは、図の最後の注釈です。 日本はエネルギー分野は±0%、スウェーデンはエネルギー分野での削減をめざす」とあります。CO2の排出量を削減しなければいけないのであれば、温室効果ガスの90%(日本の場合)、同じく80%(スウェーデン場合)を占めるCO2の最大の排出源であるエネルギー分野に踏み込まなければならないことは自明の理ではないのでしょうか。

関連記事
●PDF 日本の温暖化対策 もう一つの視点(広領域教育 2009年11月号)

京都議定書の基準年である1990年以降、温室効果ガスの排出量を削減しつつあるスウェーデンの2020年の中期目標が 「90年比40%減」(ここをクリック)であるのに対し、温室効果ガス排出量を増加しつつある日本の2020年の中期目標は「90年比25%減」です。




スウェーデンが国際社会で「プラグラマティズム」の国、あるいは「リアリズム」の国、つまり「理想主義」の国ではなく、「現実主義の国」と理解されているのに対し、日本は「現状追認主義の国」だと言ってよいでしょう。

  

スウェーデンの新たな試み:2006年から「渋滞税」を段階的に導入、そしてその成果は?

2009-12-17 11:09:58 | 温暖化/オゾン層
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「私の環境論」では、20世紀後半に顕在化した「環境問題」の大半は、私たちが豊かになるという目的を達成するために行ってきた「企業による生産活動」と「私たち市民の消費活動」や余暇活動があいまってつくり出した経済活動の「目的外の結果」が蓄積したものです。ですから、経済活動が大きくなれば、「目的外の結果」も比例的に、あるいはそれ以上に大きくなります。つまり、「経済」と「環境問題」は切っても切れない関係にある、分かり易く言えば「コインの裏表」と表現してもよいでしょう。

環境問題解決への主な対応には、「技術的な対応」と「経済的手法」があります。スウェーデンは先進国のなかでも、とりわけ「経済的手法」については世界をリードしてきた国です。

関連記事
環境政策における「経済的手法」①(2007-03-26)

環境政策における「経済的手法」②(2007-03-27)


「気候変動問題」への経済的手法として、スウェーデンが世界に先駆けて導入した「二酸化炭素税」はよく知られているところですが、今日はその延長上にあるといってもよい「渋滞税」について、昨日(2009年12月16日)の朝日新聞が取り上げておりますので、この記事を紹介します。



この記事によりますと、

    ★2002年に「渋滞税」の導入が決まった時の抵抗は強く、世論調査では75%が反対。

    ★2006年から段階的に導入された「渋滞税」が交通量を激減さた。

    ★いまでは、「渋滞税」はすっかり定着し、世論調査では6割が支持する。

    ★英国が同様の税を導入し、効果を上げている。ドイツの自治体や米ニューヨーク州などでも導入が検討されている。

などの成果、波及効果が出ているそうです。


18年前の1991年にスウェーデンが「二酸化炭素税」を導入した時の状況(ここをクリック) を日本のメデイアが伝えていますので、参考までに紹介します。昨日の朝日新聞が伝えている「渋滞税」の導入状況と似たような状況が18年前にもありました。


関連記事
「国際機関への提案が多い国」と「国際機関からの勧告を受けることが多い国」(2007-06-06)

予防志向の国・治療志向の国 16年前に「CO2税」導入(2007-06-07)

スウェーデン発のCO2税に、日本の反応は?(2007-06-08)

スウェーデン発のCO2税に、EUの大国の反応は?(2007-06-09)

スウェーデン発のCO2税、企業のインセンティブを高めるのが目的(2007-06-10)


今朝の朝日新聞によりますと、「民主党の小沢幹事長が政府に示した要望18項目の最後に、環境税は『今後の検討課題とする』としただけで、
11年度以降への先送りをもとめられた
」そうです。これは国民の意識と政治家の意識の問題だと思います。

   

日本の地球温暖化対策 もう一つの視点

2009-12-16 18:50:06 | 温暖化/オゾン層
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12月7日(現地時間)にデンマークのコペンハーゲンで開幕したCOP15の会議は、18日に190以上の国や地域の代表が出席する首脳級会合で「拘束力のある政治合意」を採択して閉幕します。

このCOP15の会議の開幕の前日、私が寄稿した小論「日本の地球温暖化対策 もう一つの視点」を掲載した雑誌「広領域教育」の最新号(2009年11月 No.73)が、絶妙のタイミングで届きました。



「編集後記」には、「12月にコペンハーゲンでCOP15(気候変動枠組条約締約国会議)が開かれます。鳩山由紀夫首相は、先の国連総会で、2020年までに日本の温室効果ガスの排出量を90年比で25%削減する中期目標を公約しました。『日本の地球温暖化対策もう一つの視点』では、その実現に向けての課題について解説いただきました。」とあります。

編集者のご厚意で提供いただいた小論(PDF版)を掲載します。みなさんのお役に立てれば幸いです。

日本の地球温暖化対策 もう一つ視点(PDF版)(ここをクリック)
なお、この小論に出てくる関連事項は、次の項目をクリックして下さい。

●3月17日の意見広告 経済界の意見広告 第1弾 「考えてみませんか? 私たちみんなの負担額。」

●5月21日の意見広告 経済界の意見広告 第2弾 「考えてみませんか? 日本にふさわしい目標を。」

●原発の利用と温室効果ガスの排出量の関係

●ドイツの環境NGO「GERMAN WATCH」の「温暖化対策の実行ランキング」
     
     2008年:日本は対象57カ国中43位  
     2007年:日本は対象56カ国中42位、2006年:日本は26位   
  

●大和総研の経営戦略研究レポート「CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資):日本は環境先進国か?」(2008年3月10日)

●スウェーデンの「2020年の温室効果ガス排出量削減中期目標」:2009年2月5日の連立与党の合意文書 

●1990年代の「日本の温暖化政策」⑳最終回 温暖化議論を混乱させた「乾いた雑巾論」(2008-03-07)

●1990年代前半のもう一つの日本の議論「トリレンマ」 (2008-03-08)                                  


       

第173回国会(臨時国会)が閉幕、成立した法案は?

2009-12-05 12:29:59 | 政治/行政/地方分権
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鳩山政権にとって初舞台となった第173回国会(臨時国会)は10月26日に招集され、会期を4日延長して、12月4日に閉会しました。 成立した法案は次のとおりです。



この図からおわかりのように、国会に提出された15本法案のうち、10本が「改正法」であることがわかります。つまり、これらの改正法はいずれも、現状に適応できなくなった古い法律を現状に適応できるように改正されたのです。法律の趣旨は20世紀の発想をそのまま引きずっている法律ですので、改正しないよりはましということです。

関連記事  
21日の衆院解散で通常国会は閉幕、その成果は?  成立した法律は、廃案となった法案は?(2009-07-22)