環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年2月のブログ掲載記事

2010-02-28 20:34:46 | 月別記事一覧
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1.2010年2月のブログ掲載記事(2010-02-28)

2.日本がめざすべき「エコロジカルに持続可能な社会」の理念とビジョン(2010-02-27)

3.新刊書のお知らせ『北欧学のすすめ』、21世紀型社会、北欧とはどんな国々?(2010-02-20)

4.雑誌『WiLL』にも、「スウェーデンの“高レベル放射性廃棄物”処分を語ろう」 という記事が(2010-02-18)

5.日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?(2010-02-17) 

6.「私の環境論」、後期13回の講義を受けると、90%の大学生の考えがこう変わった!(2010-02-08)

7.「鳩山首相の施政方針演説」と「持続可能な国づくりの会の理念とビジョン」の共通認識(2010-02-03)




日本がめざすべき「エコロジカルに持続可能な社会」の理念とビジョン

2010-02-27 09:50:17 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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昨年9月16日のブログで指摘しましたように、国、自治体を問わず、行政には「総合性」、「整合性」、「柔軟性」、「継続性」などが要求されますが、日本は「官僚主導の政府」ですので、よく言われるように行政組織は、いわゆる「縦割り行政」です。ですから、「総合性」、「整合性」、「柔軟性」に欠ける傾向があります。ただ、「継続性」だけはありました。その結果 “困った状態” が今なお継続しています。

本来、行政の最も重要なことは「継続性」ですから、「継続性」があって、しかもスウェーデンのように、政治主導の政府で「総合性」も「整合性」も「柔軟性」もあることが望ましいのですけれども、日本はそうではありません。

民主党政権が発足して5ヶ月が経ち、民主党政権による初めての通常国会が1月18日に開会しました。6月16日の会期末まで建設的な議論が展開されるのを大いに期待しますが、特に、私は日本が向かうべき中長期の方向性に関する議論に関心があります。会期中にどの程度の議論がなされるのでしょうか。

日本には「経済成長の議論」はあふれていますが、「21世紀に日本をどのような国にするのか、ビジョンや理念がない」という批判が高まっています。今に始まったことではないのですが、この時期にそのような議論が高まってきたのは好ましいことだと思います。なぜなら、現在は「20世紀型の経済規模の拡大」から「21世紀の経済規模の適正化」への大転換期だからです。

今年1月22日のブログで、持続可能な国づくりの会が21世紀前半にめざすべき「日本の姿の理念とビジョン(試案)」を公表したことをお知らせしました。そして、2月3日からは、事務局による「試案の背景」に対する解説記事の連載が始まりました。2月3日から24日までに、9本の解説記事が掲載されています。

解説記事は易しく、しかも現実的です。早い時期に、政治家や官僚が本気で「この理念とビジョン」の内容をしっかりと理解し、これを手がかりに日本の現状からどうすれば日本の望ましい社会を実現できるかをここに示された方向で積極的に議論し、決断していけば、日本の閉塞感を突破できると思います。同時に、この種の議論は政治家や官僚だけでなく、広く一般に行われる必要があることはいうまでもありません。


 

新刊書のお知らせ 『北欧学のすすめ』、21世紀型社会 北欧とはどんな国々?

2010-02-20 21:02:49 | Weblog
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今日は、今日2月20日に東海大学出版会から発行された新刊書『北欧学のすすめ』(東海大学出版会 317ページ横書き 本体2600円+税)のご紹介です。私も第3部「第6章 EUの環境政策をリードする北欧-“持続可能な社会に最も近い国”スウェーデンの環境政策」を担当しました。この本は混迷する国際社会の中で特に、「持続可能性(サスティナビリティ)」の分野で先を行く北欧諸国の背景資料として、北欧諸国を総合的に理解する手がかりを提供していると思います。



まえがきから

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 北欧とは一般的にデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、そしてアイスランドの5カ国のことを指しています。近年では北欧の取り組みや文化について雑誌などで特集が組まれることもあり、日本語で読むことのできる書籍もかなり増えてきました。その背景には「実験国」という語で表現される北欧の姿があります。北欧諸国はいずれも小国ながら、さまざまな分野で先駆的な取り組みをおこない、「実験」をくり返してきたと考えられています。 
 そのことは福祉に加え環境保護や男女の平等、あるいは外交や教育の分野についても当てはまります。このような取り組み・実験をおこなってきた結果として、北欧は私たちの住む日本とは多くの点で異なる社会となっています。だからこそ、北欧は私たちに多くのことを教えてくれる可能性があるのだと思います。・・・・・・・
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目 次

第1部 「北欧」 とは何か?
第1章 北欧とは(池上佳助)
第2章 北欧文化を支える価値観-「共生」と「想像」「創造」-(吉田欣吾)

第2部 北欧のあゆみ
第3章 統合と分離-デンマーク・スウェーデン・ノルウェー(清原瑞彦・佐保吉一・池上佳助)                               
第4章 フィンランドのあゆみ-「フィンランド」と「フィンランド人」の誕生(吉田欣吾)

第3部 共生の北欧
第5章 再評価されつつある北欧型福祉モデル(内藤英二)
第6章 EUの環境政策をリードする北欧-「持続可能な社会に最も近い国」スウェーデンの環境政策(小澤太)
第7章 北欧の地域協力と国際貢献(池上佳助)
第8章 未来を向く北欧の教育-フィンランドの教育・学力・持続可能な発展(ヘイッキ・マキバー著、高瀬愛監修・吉田欣吾訳)
第9章 北欧における多言語・多文化共生-ことばの役割・環境・権利(吉田欣吾)

第4部 想像と創造の北欧
第10章 北欧文学の流れ-北欧5カ国を代表する作家たち(山崎陽子)
第11章 北欧の児童文学-北欧5カ国の多彩な子ども本(福井信子)
第12章 北欧の児童青少年演劇(上倉あゆ子)
第13章 北欧の神々-北欧神話(森信嘉)
第14章 北欧のデザイン-「北欧らしさ」の作られ方をめぐって(伊藤大介)

第5部 言語の北欧
第15章 北欧におけるゲルマン語―北ゲルマン語(森信嘉)
第16章 北欧におけるウラル語族の言語-フィンランド語とサーミ語(吉田欣吾)
第17章 入門北欧語
デンマーク語入門(福井信子)
スウェーデン語入門(上倉あゆ子)
ノルウェー語入門(森信嘉)
フィンランド語入門(吉田欣吾)

コラム:グルントヴィ■福井信子
コラム:ロンネビーの血浴―歴史に何ら影響を与えなかった大虐殺■清原瑞彦
コラム:フィンランドを読み解く鍵「3つのS」■吉田欣吾
コラム:統計から見る北欧■池上佳助
コラム:フィンランド教育は万能薬?■吉田欣吾
コラム:レースのペチコート-私の素敵なクリスマスの思い出■奥田ライヤ-
コラム:フィンランドに伝わる叙事詩集「カレワラ」■荻島崇
コラム:ノルウェーの巨星-フリチョフ・ナンセン■池上佳助

各章の推薦図書

図書案内
   

関連記事
進化してきた福祉国家⑩ スウェーデンについて、私たちが知っていること(2007-09-05)

進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて、私たちが最近知ったこと(2007-09-06)

雑誌 『WiLL』 にも、「スウェーデンの“高レベル放射性廃棄物”処分を語ろう」 という記事が

2010-02-18 15:20:28 | 原発/エネルギー/資源
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 昨日のブログで、2月14日のテレビ東京の番組「日高義樹のワシントン・リポート」で、スウェーデンの高レベル廃棄物(使用済み核燃料)の最終処分施設SFLが取り上げられていたことをご紹介しましたが、今日はもう一つ、雑誌 『WiLL』 の2010年1月号のp154~158の5ページに同じテーマが取り上げられていたことをお伝えしておきましょう。



 この記事は、2009年10月27日に浜離宮朝日ホール・小ホールで開催されたシンポジウム「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンの取組から学ぶ~」(主催:経済産業省資源エネルギー庁、後援:スウェーデン大使館)の内容を、取材協力:電気事業連合会で誌上録画したものです。

 内容的には、昨日紹介した「日高義樹ワシントン・リポート」と同じテーマですが、「日高リポート」が現地取材であるのに対し、こちらは、「スウェーデンの高レベル放射性廃棄物」の処分事業を行うスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の社長クラース・テーゲシュトローム氏と最終選定に残った2つの自治体から責任者を日本に招いて、最終処分場がエストハンマルに決まるまでの経緯を話してもらうという趣向です。スウェーデンからの3人の出席者は、そのまま、第2部のパネルディスカッションに参加しました。第1部の3人による基調講演は次のとおりです。

●スウェーデンにおける地層処分事業とサイト選定手続きについて
 クラース・テーゲシュトローム氏(SKB社長)
●エストハンマルオスカーシャム自治体における理解促進及び地域共生の取組
 ヤーコブ・スパンゲンベリ氏(エスロハンマル市長)
 ラーシュ・ブロムベリ氏(オスカーシャム副市長)

この誌上録画では、掲載趣旨を次のように述べています。
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 CO2の排出削減による“低炭素社会”の実現は、いまやグローバルな目標となった。

 発電にあたってCO2の排出が少ない主要電源の代表と言えば原子力。このため、原子力発電によって発生する放射性廃棄物の行方は、どの国にとっても重要な課題といえる。

 そのなか、世界に先駆けて高レベル放射性廃棄物の最終処分地を決定したのがスウェーデンだ。そして、この国から、処分事業に関わる事業者と自治体、その双方の代表者が来日。彼らを囲む形で「放射性廃棄物に関するシンポジウム」(10月27日・東京)が開かれた。

 サイトの選定はどのように行われたのか、候補地の周辺に住む人々に、“放射性廃棄物処分”の実態はどのように伝えられたのか。原子力立国をめざす日本として、知っておきたいことは多い。シンポジウムの内容を紹介しよう。
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 この「地層処分 スウェーデンの“高レベル放射線廃棄物”処分を語ろう」の誌上録画の前後を構成している15本以上の政治・経済関係の記事(たとえば、総力大特集:小沢一郎とヒットラーなど)の騒々しさと比べると、この誌上録画には一服の清涼感が漂っているとさえ感じられる妙な違和感があります。どのような意図で、この誌上録画が編集されているのでしょうか。その意図がまったくわかりません。この誌上録画のテーマが地層処分ですから、他の威勢のいい記事の中に埋没されていて当然なのかもしれません。何か不思議な気がします。
 
関連記事
日本の原発も高齢化、そして「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)   

21世紀の低炭素社会をめざして、原発依存を強化する日本vs原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)



 

日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力? 

2010-02-17 18:37:46 | 原発/エネルギー/資源
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 今日は、去る2月14日(日)に偶然目にしたテレビ東京の「日高義樹のワシントン・リポート 」(16:00~17:15)の概要をお知らせしましょう。テーマは「次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?」。バンクーバー五輪の熱戦を見ようとチャンネルを選択していましたら偶然、この番組に出会いました。チャンネルをテレビ東京(12チャンネル)に合わせたのが16:10ぐらいでしたので、リポートの導入部分がどのようなものだったかは不明です。番組終了後、ネット検索しましたら、この番組の概要が次のように書かれていました。

番組概要

 原油の値段が上がりつづけ、1バレル200ドルを超すという予測まで現れるなかで、世界的に原子力発電所の建設ラッシュが始まろうとしている。地球温暖化の原因になる物質を放出せずに大容量の電気を得ようとすれば、いまや原子力しかないという考え方が強くなり、急進的な環境保護勢力のグリーンピースまでが賛成に回っている。いっぽうアメリカのオバマ政権は、長期的なエネルギー源として太陽熱発電を、全力をあげて推進している。将来のエネルギーについて世界の指導的な国々がどう考えているか伝える。
 
 このリポートは5部構成で、各部の冒頭に、それぞれのテーマに関する最新の映像が数分映し出され、その後にインタビューがあり、最後はインタビューのまとめで締めくくられています。スウェーデン、ドイツ、米国の3カ国が登場します。


第1部 スウェーデンが地下岩盤に核廃棄物貯蔵所(約7分) 



1時間ほどかけて、発電所をみて回りましたが、地震がまったくないと言っていいスウェーデンで、地震に対する備えをしていることに気がつきました。この部分が建物の割れ目になっています。地震で建物が大きく揺れても、それぞれの部分が別に動いて崩壊することがないように作られています。(この部分は日高さんの語り)


(フォーシュマルク原発3号機の建屋内の1時間の視察を終えた後、建屋の屋上で)

 2009年6月4日、スウェーデン政府はこのバルト海に面した森林地帯に核廃棄物の貯蔵施設を建設することを正式に認可しました。このあたり、地下1kmのところにある幅が3km、長さ8km、高さが10kmの大きな岩盤をくり抜いて、廃棄物の貯蔵施設にするのが最も良いと判断されたからです。工事は2012年から始まり、2020年に完成する予定です。(この部分は日高さんの語り)

フォーシュマルク発電所のアンダース・マークグレン広報部長。

日高:なぜこの場所が選ばれたのですか?
マークグレン:岩盤が最適だからです。ほとんどヒビがない。水も含まれていない。核廃棄物を貯蔵する場所として最適なのです。

日高:調査に25年かけたと聞いています・・・
マークグレン:25年以上前に調査を始め、スウェーデン中を探して8カ所を選び、さらに2カ所に絞りました。ここフォーシュマルクとオスカーシャムです。その後、約10年調査を重ね、去年の6月ここフォーシュマルクに決まりました。岩盤が最も優れているからです。

日高:何年ぐらいここを使うのですか?
マークグレン:将来ずっと・・・核廃棄物は長期間危険です。10万年は貯蔵しておかねばなりせん。

日高:周辺住民から反対がありましたか?
マークグレン:ほとんどありませんでした。地域の住民にたずねましたが、80%以上が「岩盤が安全なら問題はない、建設しなさい」と答えました。

日高:反対のデモなどはなかった?
マークグレン:ありません。原子炉を建設した時にはありましたが・・・そのときにもこう言いました。「どうか何でも聞いて下さい。よく見て下さい。説明します。何を恐れているのか聞かせて下さい、説明します」と・・・

(建屋内に戻って、使用済み核燃料棒を納める銅製キャニスターを前にして)



マークグレン:これの重さは25トン・・・
日高:廃棄物が全てここに入る・・・?

マークグレン:そうです。重さが25トンあります。
日高:全体で25トン?
マークグレン核廃棄物を入れて・・・
日高:12ありますね・・・、核廃棄物が12個・・・

マークグレン:まとめて入れます。長さは4メートル・・・
日高:4メートル?



マークグレン:お見せしましょう。使用済み燃料が入っています.4メートルあります。パイプが見えますね・・・?
日高:核燃料・・・?

マークグレン:高放射性の使用済み燃料です。長期間、放射性を持つ廃棄物です。



ここまででインタビューは終わりです。インタビューのまとめはありません。


第2部 アメリカは太陽発電(約13分)

米太陽発電協議会会長 ジュリア・ハム会長

インタビューをまとめてみます。
●太陽エネルギー産業は大企業を巻き込んで急速に拡大している。
●太陽エネルギーからつくる電気の貯蔵技術の開発が望まれている。
●太陽エネルギー電気は2015年には1キロワット6~8セントになるだろう。


第3部 ドイツ人はいまだに核嫌い(約11分)

EU委員長エネルギー政策顧問 クロディア・ケムフェルト

インタビューをまとめてみます。
●ドイツの人々はチェルノブイリなどで起きた原子力発電所の事故を怖がっている。
●ドイツの人々は何にでも反対するという習慣がついてしまっている。
●ドイツの人は核を怖がって感情的になり過ぎている。


第4部 原子力発電政策がないアメリカ(約11分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は原子力エネルギー開発に冷淡で研究費用などを減らしている。
●オバマ政権の原子力エネルギー施策は明確でない。
●オバマ政権の支持勢力であるグリーンピースも原子力発電に賛成している。


第5部 原油高をもたらすオバマ・エネルギー政策(約13分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は石油や天然ガスの開発に熱心でない。
●石油企業に新たに800億ドルの税金をかけたのは間違っている。
●オバマ大統領は他のエネルギー源の開発を犠牲にして再生可能エネルギーの開発に力を入れている。
●経済を回復させるにはエネルギーを安くしなければならない。

 以下は、このリポート全体のまとめの部分です。日高さんの発言を忠実に再現しました。日高さんは、次のように、このリポートを締めくくっています。
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 経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました。

 登場と共に、太陽エネルギーを提唱いたしましたオバマ大統領は画期的、そして野心的なエネルギー政策を打ち出したとして世界中から歓迎されました。しかしながら、1年たった今、太陽エネルギーの開発には予想以上に長い時間がかかる、そして、一方では石油企業との関係が芳しくないうえに、原子力発電政策についてもはっきりした態度を明らかにしておりません。

 こういったオバマ大統領のやり方は、かつてのカーター政権の石油危機の時代と同じであります。当時アメリカは石油が不足し、経済が混乱し、政治が大きく揺れました。オバマ大統領はエネルギー政策に失敗した結果、これから当分アメリカの景気も、そして政治も、私は回復が難しいだろうと思います。

 残念ながら、この経済すべてをアメリカに頼ってきた日本としては抜本的な政策の変更、世界のどこを相手にするか、どういうエネルギー政策をとるのか、新しいやり方を考えなくてはならなくなっていると思います。
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関連記事
米、核再処理を断念、政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針(2009-04-23)


日高さんのこのリポートは5部構成ですが、このリポートの第1部になぜスウェーデンが登場するのか、そして、第1部で取り上げたスウェーデンの「着実な高レベル廃棄物(使用済み核燃料)処分計画」が第2部以下とどうつながっているのかよく分かりませんでした
 
 スウェーデンは、日本と違って、「使用済み核燃料の再処理」を行わず、「直接処分」の方式を選択していますので、原発からの核廃棄物処分施設としては低・中レベル廃棄物の最終処分場(SFR)、高レベル廃棄物の中間貯蔵所(CLAB)および高レベル廃棄物の最終処分場(SFL)の3つの施設が必要となります。SFRは1988年に完成、CLABは1985年に完成、あとは、SFLを2020年頃をメドに完成させる計画となっていました。
 
 日高さんがリポートしたのは、スウェーデンの核廃棄物の処分施設のうち、最後に残っていたSFL(高レベル廃棄物処分場)の建設を当初の計画通りのスケジュールで着実に進めているという話です。SFLが完成すれば、原子炉から取り出されて数十年間CLABに貯蔵されていた高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)は順次SFLに移されます。

 マークグレンさんと日高さんの会話が何となくしっくりいかないのは、マークグレンさんが最初から「Spent Fuel(使用済み核燃料)」といっているのに、この言葉を聞いた日高さんが、銅製のキャニスターに入れるべき 「高レベル廃棄物」 の形状(使用済み核燃料集合体)を正確にイメージできていなかったからだと思います。

 私の環境論では、現在は「20世紀の経済規模の拡大」から「21世紀の経済規模の適正化」への転換時期ですので、このリポートの締めくくりに示された日高さんの判断基準 「経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、「アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました」 は、20世紀の発想の域から一歩も抜け出ていないと考えざるを得ません。



「私の環境論」、後期13回の講義を受けると、90%の大学生の考えがこう変わった!

2010-02-08 19:00:16 | 環境問題総論/経済的手法
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 1月14日のブログ「この10年、ほとんどかわらなかった「環境問題」に対する大学生の基本認識」で、次のように書きました。

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 1月12日は、私が環境論を講じているある大学の2009年後期の試験日でした。回収された答案には、私の13回の講義を受けた受講者224人の「気づき」や「感想」がふんだんに盛り込まれています。答案の内容がどのようなものだったかは別の機会に譲るとして、今日は私の講義を受ける前の「環境問題に対する大学生の基本認識」ついて触れておきましょう。

 環境問題にある程度の関心を持っておられる方々に「環境問題とは何か」と問えば、おそらく、90%以上の方々から「地球温暖化」、「オゾン層の破壊」、「酸性雨」、「大気汚染」、「水質汚濁」、「騒音・振動」、「海洋汚染」、「有害廃棄物の越境移動」、「熱帯林の減少」、「野生生物種の減少」、「砂漠化」、「ごみ・廃棄物問題」などの答えが返ってくるでしょう。

 私はこれまで複数の大学で「環境論」を講じて来ましたが、2000年から毎年講義の初日に、「環境問題という言葉を聞いたときに思い浮かぶことを3つ書きなさい」という質問をしてきました。2009年後期のある大学の受講生は初日の174人から最終的には224人が私の講義を履修することになりました。

 次の図は、授業の初日(2009年9月22日)に大学生174人(1~4年生)から得た回答をまとめたものです。



 私はこの結果に、今更ながら驚きを禁じ得ませんでした。私の期待に反して、1人として「経済活動」との関連を示唆する言葉を挙げた学生が今年もいなかったのです。つまり、このことは2000年の頃の大学生の認識と10年後の学生の認識がほとんど変わっていないことを示しています。この現象は2000年の最初の試みからほぼ10年経った現在でも、学部、学年、性別、学生数などにかかわりなく、同じ傾向が見られます。おそらく社会人の方々の認識もここに示された大学生の認識とほとんど同じなのではないでしょうか。皆さんのお考えはいかがでしたか。
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 今日(2月8日)は、224人の学生が私の13回の講義を受けた後に書いた感想文の中から、典型的な次の4つの感想文を紹介しましょう。

2年 女子
 まず、他では聞けないような環境についての真剣で、切実なお話をありがとうございました。私はこの授業を履修し始めてすぐに、「ああ、この話は環境についての知識教養といったレベルの話ではないな」と感じました。
 今までで一番環境問題についてリアルに、危機感を持って考えることのできた時間だったと思います。私は真の理解には“実感”が必要だと考えています。今まで受けてきた環境問題についての講演や授業は、私に実感を伴った形で環境問題の恐ろしさを教えてくれませんでした。しかし、この環境問題Bという授業は「北極の氷が溶け出している写真」や「森林が伐採されている場面の映像」などは持ち出すこともせずに、私に初めて環境問題とは何たるかを実感とともに教えてくれた授業でした。この点で、私は先生に感謝したいと思います。
 「経済と環境は不可分である」という先生の主張は、初めて出会ったタイプの主張として新鮮な感覚であったと共に、大いに共感、納得できるものでした。先生の話は面白いものでしたが、構造的な欠陥を抱えた日本の未来を思うと、冷や汗がでるような恐ろしいものでありました。「では、私はどうすれば?」と何度も考えさせられました。
 結論はまだ出てきません。しかし、唯一確立された私の考えは、この授業で展開された環境論を、もっと多くの人々に伝えるべきだということです。こういった考えの環境論に初めて触れる人々は、とても多いのではないでしょうか。1人でも多く、実感として日本の危機的状況を理解する人が増えてほしいです。もう時間はなく、のんびりしているヒマはありませんが、まずはそこからだと思います。


4年 男子
 この講義を通して、今まで生きてきた中で養った視点とは異なった視点で環境や経済をみられるようになったと思う。初回の授業から、経済成長はいいものだという私の常識は見事に論破された。地球は閉鎖的な空間で、環境やエネルギーには限界がある。それなのに、環境のことをかえりみずに二酸化炭素を排出し続けたり、有害な化学物質を使い続けたりするのは確かにおかしい。まるで未来のことを考えていない。
 有史以来、人類は急速な成長を遂げてきた。特にこの何世紀かの成長には目を見張るものがあった。しかし、その一方で環境汚染が顕著になりだしたのも近年である。今現在、我々はある程度の豊かさを手に入れた。今後は少し落ちついて、未来のことを考え、環境やエネルギーへの配慮をしていくべきである。そうしなければ、急速な発展を遂げてきた人類は、もしかしたら急速に滅びの路をたどってしまうかもしれない。
 また衝撃を受けたのは、スウェーデンのGDPと二酸化炭素の排出量を示したグラフである。見事なまでのデカップリングを実現していた。日本のそれはカップリングのまま右肩上がりである。経済成長するためには二酸化炭素やそのほかの環境に有害な物質を排出してしまうのはしょうがないことだ、といった私の常識はここでも打ち砕かれた。環境への配慮を持ったままでも成長することはできるのだ。少し方法を変え、この国に住む人の意識が変わればきっと日本も同じことができる、いや、していかなければならないのだと痛感した。
 人は皆、様々な視点を持って生きていて、国家もまたそれと同様だ。スウェーデンのような思想を持った国家はまだ数少ないだろうが、これからの日本を生きていく上で、スウェーデンのような思想、考え方を持つ国がスタンダードになっていくべきだと感じた。
 自分の脳に新しい風を吹き込まれたような有意義な講義でした。短い間でしたが、ありがとうございました。


3年 女子
 私はこの授業を受けるまで、日本は環境分野において先進的だと思っていました。京都議定書の採択は意義あるものであったし、国内でもクールビズやエコポイント制などと環境対策を次々にうちだしているように思えたからです。
 しかし、講義を履修して、思い違いをしていたことが分かりました。環境を国家の生存基盤として考えているスウェーデンと比べ、日本は環境問題を諸問題の一つとして重大には考えていませんでした。また、日本が行っている環境政策はスウェーデンやEUの政策を踏襲したものにすぎませんでした。日本は様々な政策を行っているのですが、政策一つ一つに関連性がないように思います。
 そもそも、日本は環境の位置づけからして明確さがなく、しっかりとしたビジョンを抱いていないと感じました。京都議定書を採択したときに、スウェーデンは「議定書の内容では不十分で、独自政策の展開が必要」という立場だったのに、日本は「議論の出発点」としか考えていませんでした。しかし、そこから具体的に議論が進んでいるようには思えません。それは先にも書いた通り、日本は環境問題を国家の生存基盤であるとみなしていないからだと思います。
 これから日本は持続可能な社会のために、環境問題を社会の基盤としてとらえるべきだと思います。そして、環境についての議論を深めていく必要があります。議論した上で日本としてのビジョンを持ち、対策を進めていってほしいと考えます。また、全てEUやスウェーデンの真似をするということがいいとは思いませんが、化学物質や生態系保全など世界的に遅れていることには、すぐ世界基準に追いつかなくてはならないと思いました。


3年 女子
 この講義を通して、日本がどのように環境問題をとらえているのかを知ることができた。新聞などでは日本は積極的に環境問題に取り組んでいて、環境先進国であると思われていても、実際には他の国と比較してみるとあまり違いはなく、むしろスウェーデンなどの国々からだいぶ遅れをとっていることがわかった。
 日本は積極的に取り組んでいるように見えてもやっているつもりが多く、何か政策を行っても短期的な面でしかみていないために、長期的に見ると負担となってしまうことばかりであった。原子力エネルギーについての考えを見てもヨーロッパの国々と考え方や取り組みに大きな違いがあり、本当に環境のことを考えているのかと思うような内容だった。
 スウェーデンが行っている取り組みを知るにつれて学ぶことの多さに驚いた。スウェーデンは経済活動と環境のことをつながりのあるものだと考え、どの国よりも早く様々な政策を行っていた。それとは逆に日本は、経済活動ばかりに目を向け、環境のことはあまり考えず、政策の面でも、他の国々がやっているからやるというような印象を受けた。また、日本は短期的にしか考えていないために、後になって環境の負担となることが多いため、バックキャスト的な考え方は大切なのだと感じた。これからはこの考え方で日本はどの国を目指していくのかをはっきりさせ、人任せにするのではなく国民全体で考えていく必要があるのではないかと思う。
目指す国をはっきりさせたら、日本に合う方法を考えながら取り入れ、本当の意味で環境に積極的に取り組んでいる国になれたら良いと思う。


 私の環境論に、学生は敏感に反応します。そのことは、履修後に提出された感想文によくあらわれています。この10年間に、私の授業を履修した複数の大学のおよそ3000人の学生の90%以上が反応する共通点は、「環境問題に対する考え方が大きく変わった」というものでした。また、「スウェーデンの考え方と行動を知って、絶望していた日本や世界の将来に希望が持てるようになった」という積極的な感想もありました。
 判断基準や見方を変えれば、「新しい可能性と希望」が生まれることを、学生は私の講義からくみとってくれたようです。

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前期試験の答案から②(2007-08-03)

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「鳩山首相の施政方針演説」と「持続可能な国づくりの会の理念とビジョン」の共通認識

2010-02-03 19:01:14 | 政治/行政/地方分権
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 1月30日のブログで、首相主導で練り上げたと言われる1万3600字におよぶ「鳩山首相の施政方針演説」に「持続可能性」(Sustainability)という21世紀のキーワード がまったく登場しなかったことを指摘しました。

 今回の鳩山首相の施政方針演説は、自民党政権下の歴代の首相演説と比べると、非常に型破りで新鮮ですので、これまでの発想や考え方や判断基準では「理念先行」とか「演説の中で『いのち』を24回も連発した」などと、揶揄せざるをえないのかもしれませんが、首相は、この演説の中で「私は、来年度予算を『いのちを守る予算』に転向しました。」とまで語り、演説の一貫性を整えているようですので、私は評価したいと思います。その内容が十分かどうかは大いに議論の余地がありますが。

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 施政方針演説は「①はじめに」で「いのちを、守りたい。いのちを守りたいと願うのです」と始まっています。守りたい「いのち」は次のようです。

●生まれくるいのち、そして、育ちゆくいのちを守りたい。
●働くいのちを守りたい。
●高齢者のいのちを守りたい。
●世界のいのちを守りたい。
●地球のいのちを守りたい。

 それぞれの「いのち」に説明があり地球のいのちの説明には、なんと「この宇宙が生成して137億年、地球が誕生して46億年。その長い時間軸から見れば、人類が生まれ、そして文明生活をおくれるようになった、いわゆる『人間圏』ができたこの1万年はごく短い時間に過ぎません。しかし、この短時間の中で、私たちは、地球の時間を驚くべき速度で早送りして、資源を浪費し、地球環境を大きく破壊し、生態系にかってない激変を加えています。・・・・・」と続きます。ここに鳩山首相の「世界観(コスモロジー)」が見えてきます。この認識は「環境問題の本質」を理解する上で非常に重要な視点で、目の前に山積する問題の解決に終始する傾向が強い日本の政治家の中で極めてまれな政治的資質だと思います。

 この記述によって、私たちの会「持続可能な国づくりの会」は首相/政権与党と21世紀のあるべき日本の姿を議論するときの大前提で、「共通認識」を共有できる(あるいは、できている)のかもしれないという淡い期待を感じます。この共通認識こそ、私たちが提唱してする「エコロジカルな持続可能性」(Ecological Sustainability)であり、国際社会が模索している「エコロジカルに持続可能な社会」の基盤だと思うのです。ですから、この「①はじめに」の項に(あるいは別の項でもよいのですが)明確に「持続可能な」という言葉が登場してほしかったのです。

 「②目指すべき日本のあり方」では、インドのマハトマ・ガンジー師が、80数年前に記したとされる「7つの社会的大罪」に触れておられます。

●「理念なき政治」
●「労働なき冨」
●「良心なき快楽」
●「人格なき教育」
●「道徳なき商業」
●「人間性なき科学」、そして
●「犠牲なき宗教」

 そして、 「まさに、今の日本と世界が抱える諸問題を、鋭く言い当てているのではないでしょうか」と述べておられます。この部分は、私たちの会が提唱する日本の「エコロジカルに持続可能な社会」の社会的側面に対応するといってよいでしょう。

 続く、「③人のいのちを守るために」、「④危機を好機に-フロンティアを切り開く」、「⑤課題解決に向けた責任ある政治」、「⑥世界に新たな価値観を発信する日本」では、前述の「②目指すべき日本のあり方」とあいまって「日本が直面している解決すべき課題」と「日本がめざすべき社会の社会的側面および経済的側面」について語られているようです。そして、「⑦むすび」では、「人のいのちを守る政治、この理念を実行に移すときです。子どもたちに幸福な社会を、未来にかけがえのない地球を引き継いでいかねばなりません。・・・・・」と述べられています。この「⑦むすび」に示された認識も私たちの会は共有しています。 

 そこで、もう一度、私たちの会の「理念とビジョン」に掲げた次の図を見ていただきたいと思います。


 「協力社会で8つの安心!」の8番に「豊かな自然と平和の永続という安心」とありますが、この8番目の柱が中央に位置し、しかも、他の7つの柱より太くなっていることにお気づきになりましたか。この柱こそ、人を含めた生態系の「いのちの持続性」を支える最も重要な要因「環境の持続性」なのです。鳩山首相のおっしゃる「地球のいのち」と置き換えてもよいでしょう。

 私たちの会が提唱した「エコロジカルに持続可能な社会」の概念の源は、1987年4月に国連の「環境と開発に関する世界委員会」(WCED、通称ブルントラント委員会)が提唱した「持続可能な開発」(Sustainable Development)で、1992年の地球サミットで合意され、国際社会でも認識されている概念です。

 「持続可能な開発」という概念が公表された当時から90年代半ばにかけて、国内外で多くの議論があり、この概念に様々な解釈が生まれました。意外に知られていないのですが、この概念はもともとスウェーデン発の概念なのです。スウェーデンと日本のこの概念に対する解釈は大きく異なっています。スウェーデンが考える「持続可能な開発」とは社会の開発であって、日本が考える経済の開発、経済の発展、あるいは、経済の成長ではないのです。このことは次の図で明らかでしょう。 



最近では、「循環型社会」に加えて「低炭素社会」という十分議論されていない概念がマスメディアに頻繁に登場します。

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 私たちの会が「21世紀の日本の望ましい社会の構築」の参考になると考え、検証したスウェーデンの「エコロジカルに持続可能な社会」は、スウェーデンでは「緑の福祉国家」と表現されています。スウェーデンでは、「20世紀の福祉国家」から「21世紀の緑の福祉国家」への転換計画(1996年に始まり、2025年を目標年度とする野心的な国家の近代化計画)が、ほぼ順調にその中間点まで来ました。スウェーデンが考える「緑の福祉国家」には、

①社会的側面(人間を大切にする社会であるための必要条件)
②経済的側面(人間を大切にする社会であるための必要条件)
③環境的側面(環境を大切にする社会であるための必要条件)

の3つの側面があります。スウェーデンは20世紀に「福祉国家」を実現したことによって、これら3つの側面のうち、「人間を大切にする社会であるための必要条件」つまり「社会的側面」と「経済的側面」はすでに満たしているといってよいでしょう。しかし、今後も時代の変化に合わせて、これまでの社会的・経済的な制度の統廃合、新設などの、さらなる制度変革が必要になることはいうまでもありません。

 90年代には、21世紀前半社会を意識して、1999年の「年金制度改革」(「給付建て賦課方式」から「拠出建て賦課方式」への転換)をはじめとするさまざまな社会的側面の変革が行なわれました。

 経済的側面では、1970年以降、「エネルギー成長」および「CO2の排出総量」を抑えて経済成長(GDPの成長)を達成してきました。

 環境的側面とは、「エコロジカルに持続可能かどうか」ですが、この点では、スウェーデンは世界の最先端を行っているとはいえ、まだ十分ではありません。20世紀後半に表面化した環境問題が、「福祉国家の持続性」を阻むからです。そこで、21世紀前半のビジョンである「緑の福祉国家の実現」には、環境的側面にこれまで以上に政治的力点が置かれることになります。

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 このように見てくると、1万3600字におよぶ鳩山首相の施政方針演説に盛り込まれた「日本とスウェーデンに共通する個別の課題の大部分」は、すでにスウェーデンでは解決済みですからスウェーデンの考え方や解決方法を真剣に検証することによって、「日本の向かうべき方向性」がかなり明らかになってくると思います。目標が定まれば、その目標を達成するために、現状からの道筋を考えることになります。簡単に言えば、これが「バックキャスト的手法」です。ここに、政治のリーダーシップと優秀な官僚との協力関係(コラボという言葉が大好きな方は多いと思います)が必要になります。

 まったくの偶然だと思いますが、現在、発売中の雑誌「財界」(2010年2月9日号)のインタビュー記事で、経済学者の神野直彦さんが「スウェーデンなどの北欧の福祉経済学に学ぶべき点は多い。しかし今こそ日本独自の経済モデルをつくる時」とおっしゃっています。



 私もその通りだと思います。このことを私の言葉で表現すれば、次のようになります。
 

 「日本のこれからを議論する手がかり」として、そして、「エコロジカルに持続可能な社会の方向性を知る手がかり」として、「持続可能な国づくりの会」がまとめた「理念とビジョン」がきっと皆さんのお役に立てると思います。

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック

 そして、最近、次のような記事もありましたね。

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