環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

日本政府が温室効果ガスの排出枠をハンガリーから購入

2007-11-30 21:06:20 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


11月26日の朝日新聞が一面トップで「政府が温室効果ガスの余剰枠を購入」と報じています。


そして、記事の解説で、「CDMなどが新しい削減に結びつくのに対し、今回のような排出枠の購入はすでに余っている分を買い取るだけで、削減に後ろ向きだ」との批判を受ける可能性があるとしています。


今日はこのことをスウェーデンとの対比で検証してみましょう。11月20日に気候変動事務局が公表した温室効果ガス(GHG)排出量をみますとスウェーデンと日本の2005年までの結果は正反対です。

スウェーデン:京都議定書の目標(90年の排出量比+4%) 2005年の成果(-7.3%)

日本:     京都議定書の目標(90年の排出量比-6%) 2005年の成果(+6.9)


皆さんもご承知のように、京都議定書ではEU15カ国(京都議定書採択当時)で1990年(基準年)のEUのCO2排出量を8%削減するという約束になっていました。そこで、EUはEU内で国別に15カ国の排出量の目標を配分しました。


この新配分でEUは、スウェーデンに1990年比で「4%の温室効果ガスの排出量増加」を認めていますが、これは、スウェーデンが70年以降およそ30年間にわたって、「CO2の排出量を少しずつ削減してきた実績」と、「原発の段階的廃止をめざす計画を保持していること」に配慮したからです。

関連記事

緑の福祉国家14 「気候変動」への対応③ (1/24)
 

スウェーデンと日本の2005年までの結果が正反対なのは、「京都議定書の位置づけ」と「削減の手法」が全く異なるからです。



関連記事

緑の福祉国家15 「気候変動」への対応④ (1/26)

緑の福祉国家16 「気候変動」への対応⑤ (2/3)

緑の福祉国家17 「気候変動」への対応⑥ (2/4)





関連記事
緑の福祉国家29 エネルギー体系の転換⑧ 「気候変動」への有効な対応策






それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      
      

再び「科学者」と「政治家」の役割

2007-11-29 21:49:46 | 温暖化/オゾン層
 

私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


このところ、地球温暖化に関する報道が急増してきました。来月3日からインドネシアのバリ島で開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP13)でそのピークを迎えることになるでしょう。

COP13は科学者の会議ではなく、政治家の会議です。11月24日の朝日新聞の社説がこのことをわかり易く解説しています。

この社説の結論は最後の2行の「次は政治家の出番だ。予防原則に立った政策をつくるときがやってきた」に凝縮されています。このことは日本にとっては大変目新しいことかもしれませんが、スウェーデンにとっては、35年前の1972年の「第1回国連人間環境会議」以来実行してきたことです。スウェーデンは72年の国連人間環境会議でも、そして京都議定書でも、他の先進工業国に先駆けて、確実に結果を出しています。 

関連記事

UNFCCCが公表した温室効果ガス排出量 1990-2005年(11/23) 

一人当たりのCO2排出量の現状と将来の目標(10/23)

日本経済新聞 「経済教室から」 低炭素社会構築の道筋 成長・福祉と同時対処を(10/4) 


これまでも折に触れ、この「科学者」と「政治家」の役割を紹介してきましたが、ここで再度確認しておきましょう。

1972年6月に第1回国連人間環境会議がスウェーデンの首都ストックホルムで開かれてから、35年が経ちました。この会議の開催中に、当時のパルメ首相が述べたこの言葉は、35年経ったいま、ますます輝きを増してきたように思います。この言葉には、スウェーデンの「環境問題」に対するアプローチがみごとに凝縮されているとともに、民主主義社会のもとで自由経済を享受してきた私たち日本人が、21世紀前半に抱えているさまざまな問題を解決し、21世紀の新しい社会「持続可能な社会」をつくる際に必要な、普遍性の高い手がかりが含まれているからです。 

関連記事

社会的合意形成⑥ 科学者と政治家の役割(3/5)






それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      
     

供給サイド・需要サイド、双方からのアプローチの必要性

2007-11-28 21:58:57 | 原発/エネルギー/資源


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


次の図は日本のGDPと一次エネルギー消費の推移を示したものです。この図は日本のエネルギー関連で仕事をしている方であれば誰でも知っている有名な図書「EDMC エネルギー・経済統計要覧 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編」(省エネルギーセンター 2007年2月)の最新版に掲載されている図です。

この図は明かに、日本の「経済成長(GDP)」と「一次エネルギーの消費」の推移が強い相関関係をもっていることを表しています。しかも、日本の1次エネルギー消費費は1970年代のオイルショックの時期を除けば確実に増加の一途を辿っていることは明かです。そこで、再び、私の本「いま、環境・エネルギー問題を考える 現実主義の国スウェーデンをとおして」(ダイヤモンド社 1992年7月)から「省エネに対する当時の私の考え方」を紹介します。 

X X X X X 
東京大学の平田賢教授が作成された図をもとにして、わが国のエネルギー・フローを見ておきましょう。


この図によりますと、わが国のエネルギー・フローは1986年の場合、100投入されたエネルギーに対し様々なロスにより最終的に使われたエネルギーは35であったということになります。1989年のエネルギー・フローも1986年と同じです。「投入されたエネルギーの35しか利用されていなかった、つまり、65が捨てられていた」というのであれば、その35をたとえば50にすることができれば、投入された100のうち50が有効利用されることになります。


総エネルギーの需要量が少々増えても、その分だけエネルギーの供給量を増やさなくてもすむわけです。つまり、エネルギーの供給サイドの研究ばかりでなくエネルギーの需要サイドの研究開発が今後ますます必要とされるのです。大変残念なことに、わが国のこれまでのエネルギーの研究開発は「供給サイド(サプライ・サイド)」の研究開発がほとんどでした。わが国では1989年頃から、DMS(Demand Side Management:需要サイドの管理)という言葉がエネルギー関係者の間でも聞かれるようになったことからわかりますように、「需要サイド(デマンド・サイドあるいはエンド・ユースという言葉も用いられます)」の研究開発はその緒についたばかりです。

エネルギー政策の中で、特に環境への配慮、つまり、「環境への負荷の低減」を考えたときには、エネルギーの総供給量が伸びないことが望まれます。わが国では環境への配慮というと「排ガスの処理設備を設置すること」といった認識が定着しておりますが、かならずしも、それだけが環境への配慮ではありません。もっと大切なことは供給エネルギーの総量を抑え、利用可能なエネルギーを増やすことです。つまり、DMS・アプローチあるいはエンド・ユース・アプローチと呼ばれる研究開発が重要なのです。 

一方、スウェーデンの一次エネルギーの総供給量ならびに総消費量が過去20年間ほとんど増えなかったということは、この間に福祉社会を維持するために必要な経済発展があったわけですから、国全体としての省エネルギーが進んでいるのだと思います。





それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

「省エネルギー」の考え方

2007-11-27 07:59:46 | 原発/エネルギー/資源


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


 「私自身の環境論」から私は、常々このような日本の考え方に疑問を持ってきました。国連環境開発会議(リオの地球サミット 1992年6月)が終わった翌月に、私は私の初めての本として「いま、環境・エネルギー問題を考える 現実主義の国スウェーデンをとおして」(ダイヤモンド社 1992年7月)を上梓しました。その中で、「省エネに対する当時の私の考え方」を書きました。15年前のことでややためらいがありますが、今でも基本的な考えは変わりませんので、ここに紹介して、15年経った今、皆さんのご意見を伺おうと考えました。

X X X X X 
このような観点に立って、わが国とスウェーデンの最終エネルギーの消費量の推移を比べて見たのが表15です。 

わが国の推移は通産省の「総合エネルギー統計:平成2年度版」に基づく数値ですし、スウェーデンの推移は1991年2月に国会に上程された政府の『エネルギー政策案』から拾い出したものです。この表からはっきりわかることはわが国の最終エネルギー消費は確実に増加しており、環境への負荷を高めていることです。また、この表には示しませんでしたが、わが国の一次エネルギーの総供給量を調べて見ますと、1970年(3197兆キロカロリー)、1980年(3972兆キロカロリー)、1989年(4619兆キロカロリー)とこれまた確実に増大しています。

ここで、一つ注意しておきたいことはエネルギーの消費量を経年的に比較する時にどの年を「基準年」とするかということです。私は1970年を基準年としましたが、たまたま第一次オイル・ショックの1973年を基準年にとりますと、その年の最終エネルギー消費は2652兆キロカロリーで、産業部門のエネルギー消費は1656兆キロカロリーですから、産業部門のエネルギー消費は1973年に比べて1980年、1989年には数字の上では減少していることになります(表16)。 

一方、スウェーデンはどうかと言いますと、最終エネルギーの消費量は1970年から1989年のおよそ20年間増加しておりません。 
X X X X X

関連記事

日本はほんとうに「省エネ」国家なのか? 評価基準の見直しを!(3/17) 







それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

不十分な日本の「省エネルギー」という概念、  正しくは「エネルギー効率の改善」という概念だ!

2007-11-26 23:18:26 | 原発/エネルギー/資源
 

私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


日本のエネルギー関係者、産業界の技術者、経済評論家、最近になっては政治家にまで、「わが国の省エネは世界の最高水準にある」とか「世界に冠たるわが国の省エネ技術を世界に!」という方々がおります。そして、その傾向は、地球温暖化への対応とともに、最近再び高まってきています。
 
そこで今日は、日本の「省エネルギー」という概念について少し考えてみましょう。日本で省エネルギーというときには個々の部門、たとえば、鉄鋼業では原単位当たり、これだけの消費量が少なくできたとか、あるいは家電製品で言えば10年前の冷蔵庫よりも現在の冷蔵庫は消費電力が3分の1ですむようになったとか、どちらかと言うと、「ある特定の産業部門や製品個々の技術による省エネルギー」が中心になっているように思います。











「環境への負荷」を考えるときには、このような「個々の省エネルギー化」、言い換えれば「技術による省エネルギー化」というのは生産規模が拡大したり、製品の使用量が増えればせっかくの省エネルギーのための努力がエネルギーの消費量と相殺されてしまい、結果的には日本全体のエネルギー消費は増大し、「環境への負荷」は高まってしまうのです。



同じようなことがすでに日本の「窒素酸化物低減対策」の中で言われています。日本の自動車1台当たりの窒素酸化物の排出量削減技術は世界最高水準を達したとは言うものの、日本の保有台数が同時に増えてしまったので、窒素酸化物の年間総排出量は逆に増えてしまったと言うわけです。

このような観点からすると、日本は省エネ技術を持った国で「エネルギーの効率化」は改善されていますが、省エネルギーは不十分であることがわかります。つまり、日本でいう「省エネルギー」というのは「エネルギーの効率化」を意味しているのです。このことは、次の図からも明らかなように、日本企業における「省エネ意識」がコスト論では論じられてきましたが環境論では論じられてこなかったことからも明らかです。



このように環境問題を視野に入れた時に重要な省エネルギーとは日本が国内が国際社会に向けて主張している「技術による省エネルギー」(エネルギー効率の改善)という狭義の省エネルギーではなくて、まずは個々の企業の、そしてそれらの企業が属する産業部門の、そして産業界全体の、そして最終的に「国全体のエネルギー消費量を削減する省エネルギー」なのです。ですから、地球温暖化対応としての省エネは「日本の発想のようなコスト削減のための省エネ」ではなく、「国全体のエネルギー消費を削減することをめざした省エネ」でなければならないのです。

関連記事

日本はほんとうに「省エネ」国家なのか? 評価基準の見直しを!(3/17) 

日本の国づくりの議論を混乱させる2つの指標 「国民負担率」と「環境効率」(3/16) 





それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

第2回学習会のご案内  日本は「エコロジー的に持続可能な社会」に向かっているか?

2007-11-25 21:04:26 | 市民連続講座:環境問題


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


「平成19年版 環境・循環型社会白書」の「刊行に当たって」を、若林正俊・前環境大臣が書いておられます。 私が注目したのは、全文33行の最後の13行になんと「持続可能な社会の形成」、 「低炭素社会の構築」、そして「循環型社会の構築」という概念が異なる3つの言葉が混じっていたことです。

「刊行に当たって」を読んだ私の最初の感想は、これから日本はどのような社会をめざそうとしているのか、さっぱりわからないということでした。多くの人がそれぞれに努力しているにもかかわらず、日本はますます「混乱の状況」を呈してきたように思います。皆さんのご感想はいかがでしたか?

そこで、「持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>」主催の第2回学習会では「日本は『エコロジー的に持続可能な社会』に向かっているか?」というテーマでお話することにしました。

                                   第2回学習会のご案内


2006年2月に出版された私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全な国づくりとは何か」(朝日新聞社 朝日選書792)がこの春、3刷となりました。この本は「私自身の環境論」に基づいて、スウェーデンと日本の現状と将来を総合的に分析し、日本の将来に関心のある方々に必要な情報を提供し、一緒に考えていただこうという趣旨で企画したものです。

そして、今年8月、この本がきっかけで、 「持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>」という小さな組織が誕生しました。この持続可能な国づくりの会は「会の目標」に沿って定期的な学習会を計画しているそうですが、私は最初の2回の学習会の講師の依頼を受けました。初回の学習会は10月21日(日)に行われました。内容は「私自身の環境論」に基づいて、スウェーデンの挑戦「20世紀の福祉国家を21世紀の緑の福祉国家に変えていくための政策的なアプローチ」を検証してみました。

さて、今回2回目の学習会では、「私自身の環境論」に基づいて「日本の現状と将来」について具体的なお話します。日本の問題点と21世紀前半に日本がめざすべき方向をはっきりと示すことができると思います。質疑応答の時間を2時間とりました。質疑を通して新しい発見ができればと期待しています。

私は、私の本の「第6章 予防志向の国」で、次のように書きました。


スウェーデンと日本の違いは、「予防志向の国」と「治療志向の国」、言い換えれば、「政策の国」と「対策の国」といえるだろう。スウェーデンは公的な力で「福祉国家」をつくりあげた国だから、社会全体のコストをいかに低く抑えるかが、つねに政治の重要課題であった。そこで、政策の力点は「予防」に重点が置かれ、「教育」に力が入ることになる。

一方、これまでの日本は、目先のコストはたいへん気にするが、社会全体のコストにはあまり関心がなかったようである。90年代後半になって社会制度からつぎつぎに発生する膨大な社会コストの「治療」に、日本はいま、追い立てられている。



お問い合わせ、参加ご希望の方は、下記メールまでご連絡をお願いいたします。



それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      


 WMOの「大気中のCO2濃度」調査 史上最悪

2007-11-24 20:39:59 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


11月23日、世界気象機関(WMO)が昨年の世界の大気中CO2の濃度が史上最悪を観察したと報告しました。このニュースを今日の読売新聞と朝日新聞が伝えています



この結果は12月3日からインドネシアのバリ島で開催されるCOP13に報告されるそうです。






それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      
      

国連気候変動事務局(UNFCCC)が公表した温室効果ガス排出量 1990-2005年

2007-11-23 22:10:12 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


11月20日、気候変動事務局はドイツのボンで、気候変動に関する国連枠組み条約(UNFCCC)締約国のうち先進工業国から提出された温室効果ガス(GHG)排出量を公表しました。


また、11月6日の朝日新聞は06年度の日本の温室ガスの排出量を報じています。






それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      
             

総務省の「高齢者推計」と厚労省の「労働力推計」

2007-11-22 21:34:48 | 少子高齢化/福祉/年金/医療
 

私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


今年1月1日に開設したこのブログの記事が、今日(326日)で400本目となりました。私の主な関心事は日本が「持続可能な社会(平たく言えば、安心と安全な希望のある社会)」に向かうにはどうしたらよいかを考える材料を多くの方に提供することです。具体的には、ブログのタイトルが示しますように、「環境」「経済」「福祉」、不安の根っこは同じだ!、つまり、「将来不安の解消」こそ、政治のターゲットだ、という視点から日本を見ていこうということです。

今日の朝日新聞の朝刊には総務省の「日本の75歳以上の高齢者の推計人口」が、夕刊には一面トップで「労働力人口推計」が報道されています。いずれも「日本の将来の不安」を暗示するようなデータで、政治の総合力が必要とされる案件です。


この記事の赤網をかけた部分に、「労働人口は、15歳以上で働くか職を探している人の数で、減少すると経済成長にマイナスの影響を与える」とあります。この種の推計結果をみると私がいつも思い出すのは、縦割り行政の下で策定される 「時の政権が策定する経済政策」との整合性です。近いところでは、2005年に竹中平蔵・経済財政大臣の下で策定された「日本21世紀ビジョン」との整合性です。このビジョンの目標年次は2030年です。この種のデータが十分な整合性を持って考慮されていない21世紀ビジョンであるなら、何のためにこのようなビジョンを策定するのでしょうか。



詳細は政府の経済諮問会議のHPをご覧ください。


関連事項

治療志向の国の「21世紀環境立国戦略」(6/4) 





それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

IPPCが 「気候変動に関する統合報告書」を承認-その2

2007-11-21 12:42:11 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


昨日、11月17日の朝日新聞(夕刊)掲載に掲載されたIPPCの「統合報告書」承認のニュースと18日の同紙(朝刊)から関連記事をとりあげました。今日は18日の毎日新聞で、このニュースがどう取り上げられていたかをお知らせします。 

両新聞のニュース源は同じで、11月17日にスペインのバレンシアで開かれていた国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第27回総会で採択された「地球温暖化に関する第4次統合報告書」でした。しかし、記事の印象はまったく違います。昨日のブログの朝日の記事と今日のブログの毎日の記事を比較してみてください。




上の毎日の記事(一面トップ)では、 「政治」がドーンと躍り出てきています。昨日の朝日の記事では「政治」という言葉が一言も出てきません。よく言えば、「科学の朝日(?)」ということかもしれませんが、今回のIPPCの「統合報告書」の最も重要なメッセージは、 「科学的知見に基づいて、政治的な行動が今こそ必要だ」ということではないでしょうか。朝日の読者と毎日の読者は「IPPCの統合報告書」という共通の資料の前に、異なった印象を持ってしまわなければよいのですが。

科学者と政治家の役割については、35年前の1972年の第1回国連環境会議でスウェーデンの故パルメ首相が次のように述べています。私はこの言葉を機会あるごとに、私の著書で、そして、講演で紹介してきました。



関連記事

社会的な合意形成⑥ 科学者と政治家の役割(3/5)

さらに、今日の毎日の記事と次の2つの図を合わせて見ていただくと、「地球温暖化問題」を理解し、対応するにはどうしたらよいのかがわかるはずです。




そして、これらのことが理解できれば、スウェーデンがめざしている方向と対応策(緑の福祉国家1~63を参照してください)は現実的で、「希望と実現の可能性」があり、日本が今進んでいる方向には現実性がないことは明らかでしょう。

関連記事

21世紀前半社会 ビジョンの相違② 日本のビジョン「持続的な経済成長」(7/26) 

 




それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      


IPPCが 「気候変動に関する統合報告書」を承認-その1

2007-11-20 21:42:13 | 温暖化/オゾン層


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


11月17日の朝日新聞(夕刊)が、IPPCが16日夜、スペインのバレンシアでの総会で、地球温暖化についての科学的知識を広くまとめた「統合報告書」を承認したと報じています。



この報告書で重要なことは、最初の記事の最後の部分「今後20~30年の削減努力と投資が、長期的リスクの低減、回避、遅延をかなりの割で決定づける」という点です。このことは、私の環境論の主要な考えの一つである「現在の決断が原則的に将来を決める」という経験則が適応される事例だと思います。

関連記事

今日の決断が将来を原則的に決める(4/4)

再び、今日の決断が将来を決める」という経験則の有効性(7/30)


そして、11月18日の朝刊ではその概要を大きく紹介しています。この記事の中に非常に印象的なグリーンランドの氷床の季節変化を示す図が掲載されています。インターネットに掲載されている原文にはこの図がカラーで示されているので、紹介しておきます。

また、この記事には、統合報告書の要旨が掲載されています。実際の報告書は英文で540ページにおよぶものですので、この要約は私たちのレベルで大変役立つものだと思います。


12月には、インドネシアのバリ島で、「ポスト京都議定書」の枠組みを議論する国連気候変動枠組条約締約国会議(COP13)が開催されます。


関連記事
フロン規制:モントリオール議定書採択から20年(11/11)







それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      


スウェーデンの「脱原発政策の歩み」21(最終回) 「国会決議」、「国会の承認」

2007-11-19 05:20:27 | 原発/エネルギー/資源
私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


皆さんへのお願い:10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)がカバーする範囲は、1960年代から1990年頃までです。その頃を振り返りながら読んでください。その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。 
 

スウェーデンの民主主義政治にとって最も重要なのは国会です。この国の政策決定プロセス(レミス手続) の中で重要なことは、日本の政策決定システムと違って、各省がその所管事項に関する政策を独自に決定できない仕組みになっていることです。

国の基本的な政策はすべて政府(日本で言えば「内閣」)が立案し(ただし、実際の事務作業はその担当省が中心となります)、政策案を国会に上程して、その承認を受けなければなりません。政府は承認された政策を遂行する責任を国会に対して持つことになります。ですから、「国会(の)決議」「国会(の)承認」はこの国の政策決定の上で最も重要な意味を持つものです。

日本にも、スウェーデンにも「国会決議」と呼ばれるものがあります。同じ「国会決議」という言葉を使いながら、その言葉の意味するところが同じではないことは「福祉」や「国民投票」のところで述べました。

「国会決議」という言葉にも、日本とスウェーデンでは、その重要性の程度に相違があります。日本の「国会決議」には法的拘束力がありませんが、スウェーデンの国会決議は政府を法的に拘束する力を持っています。

関連記事

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国家の1位はスウェーデン  


このような国会決議に基づいて、スウェーデン政府は「環境政策」や「エネルギー政策」を進めているわけですから、もし将来、さまざまな理由により予定どうりの行動計画の実施が難しいと判断された場合には、政府は国会に対して必要な手続きを経て、計画変更の承認を取りつけることになります。 

この具体的な例の一つが1990年秋から1991年春にかけての「早期原子炉廃棄の延期」に関する与野党間の交渉(社民党大会での結論とそれに基づく三党合意)であり、その合意に基づくエネルギー政策案の国会上程です。このように見てくると、同じ「国会決議」という言葉を用いながらも、その意味するところは両国で大きく相違することがご理解いただけるでしょう。

同時に、国の意思決定における国会の役割と政府の役割、言い換えれば、国会と政府の力関係の上でも両国間に相違のあることがおわかりいただけるでしょう。



10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(1960年代から1990年頃まで)は今日が最終回です。いかがでしたか。
その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。







それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

スウェーデンの「脱原発政策の歩み」⑳ 「国民投票」と「ガイドライン」

2007-11-18 20:52:25 | 原発/エネルギー/資源


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


スウェーデンの「エネルギー体系の修正のための政策」(日本では「脱原発政策」という見方が強い)を見ていると、「国民投票」と「ガイドライン」という言葉に出会います。
しばしば、これらの言葉は、日本で誤解や曲解の原因となっていますので簡単に説明しておきます。

●国民投票
 
1980年年3月23日(日)に実施された「原子力に関する国民投票」は、日本に民投票という制度がなかったために、その解釈をめぐって、多くの誤解を生みました。スウェーデンの国民投票は過去に6回しか行われていません。

①禁酒(アルコール飲料の禁止)問題(1922年)、
②右側通行問題(1955年)、
③年金問題(1957年)、
④原子力問題(1980年)
⑤EU加盟問題(1994年)
⑥ユーロ導入問題(2003年)

スウェーデンの国民投票はある案件について国会議員が要求し、国会がその実施を決議したときに限って実施されるもので、「原子力に関する国民投票」スウェーデンの国民投票はその頻度と拘束力の点で、直接民主主義の国、スイスの国民投票とは異なるところです。

しかし、「原子力に関する国民投票」の際には政党間でその結果を尊重するという申し合わせがあったそうです。議会制民主主義の国、スウェーデンでは90%前後の投票率の総選挙で選ばれた国会議員からなる国会が十分機能しておりますので、国民投票は国民の考え方の方向性を知り、国会の機能を補完するものと言えます。

●ガイドライン
 
これまでに各種の古い法律の整理統合を積極的に進めてきた結果、環境・エネルギー関連の法律の数は極めて少なくなりました。スウェーデンでは、現実に即すように絶えず法律の見直しと改正が行われてきました。

近年は、法律の制定に代わって、ガイドラインの策定が国の政策を遂行する上で重要になってきました。ガイドラインを強化するために、政府は予算その他の措置をガイドラインに盛り込んでいます。ガイドラインは「レミス手続き」を踏んで策定される「国会決議」ですので簡単には変えられません。ガイドラインの実質的な効力は従来の法律によるものと同程度で、その変更には所定の手続きが必要です。






それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

      

IEAの「2007年版 世界エネルギー見通し」

2007-11-17 21:53:02 | 原発/エネルギー/資源


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


11月8日の朝日新聞が、国際エネルギー機関(IEA)が「07年版の世界エネルギー見通し」を発表したと報じています。2月2日に公表されたIPCCの「第4次評価報告書」10月25日に公表されたUNEPの「第4次地球環境概況」に加えて、この報告書により、いよいよ、科学者の間で懸念されていた事態が現実のものとなりつつあることが明らかになってきました。



上の2つの記事と次の図を参考に、日本の現状(政府や自治体の政策、マスコミの報道、企業の意識と行動、市民の意識と行動など)をじっくり考えてみてください。





それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。

 
      


スウェーデンの「脱原発政策の歩み」⑲ 学校での原子力教育はこれだと思った!

2007-11-17 09:51:16 | 原発/エネルギー/資源


私のプロフィールや主張、著書、連絡先は、ここをクリック

持続可能な国づくりの会<緑と福祉の国・日本>のブログは、ここをクリック


皆さんへのお願い:10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)がカバーする範囲は、1960年代から1990年頃までです。その頃を振り返りながら読んでください。その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。 
 

1993年に日本原子力研究所が企画した「原子力の安全性と危険性」と題する学校の教職員用ビデオがあります。そのビデオの中で、スウェーデンを取材した信州大学教育学部教授の飯利雄一さんは“学校での原子力教育はこれだと思った”と次のような趣旨のことを述べておられます。

X X X X X 
電力会社の人私は原子力なしでスウェーデンがやっていけるとは思わないけれど、国民がいらないというものを押し付けるわけにはいかない。でも、いろいろやってみて、なかなかうまくいかないということがわかれば、また、「国民投票」をやることになるでしょう。いずれにしたって、それは国民が決めることです。

学校の先生: 私は原発反対だからこの決定はいいと思うけど、どうしても電力がたりないとなったらまた「国民投票」をやりゃいいんです。どっちにしても国民が決めることですから。

学校が行う原子力教育は生徒に判断の基準を与えるというところにポイントをおくことが重要である。かって、寺田虎彦は「あるものを怖がりすぎたり、怖がらなさすぎたりすることは易しい。難しいのは正当に怖がることだ」と名言を残し、正当に怖がるにはそのものをよく知る以外に方法はないことを指摘した。
X X X X X  

この話は極めて象徴的です。国の経済を支えるエネルギー源に対して立場が違っても、「国民の意志を確かめつつ目標を定め、それに向かって努力をし、それでも目標通りにいかなければ、もう一度原点(国民投票)に戻ればよい」と考え、最後は国民が決めるのだと言っています。まさに民主主義の原点を見るようです。

昨日のブログの結論をもう一度繰り返します。
スウェーデンのエネルギー政策における原発の扱いはそれを技術的な観点から否定したというよりも、むしろ、それを越えた政治的な判断でした。ここで注目すべきことは科学者が原発の抱える問題点を早い時期に指摘し、それを政治家が取り上げ、政治の場で議論し、政府が国民の意見を吸い上げながら、それを国の政策に反映してきたことです。
 


関連記事

社会的な合意形成⑥ 科学者と政治家の役割(3/5) 

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義の国の1位はスウェーデン(8/18) 







それぞれのマークをクリックすると、リアルタイムのランキングが表示されます。お楽しみください。