環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

緑の福祉国家61 都市再生(都市再開発)⑥ ディーゼル燃料、バイオ燃料

2007-05-31 07:58:44 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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ディーゼル車の排ガス対策でも、スウェーデンはEUをリードし、世界の最先端を走っています。ディーゼル車の排ガス対策では、排ガス浄化装置の能力が燃料中の硫黄分により劣化されるので、燃料である軽油中の硫黄分を低減すること が必須です。

次の図は、1994年時点(スウェーデンが95年1月1日にEUに加盟する直前)での軽油の品質規格を比較したものですが、スウェーデンの軽油中の硫黄分が米国、EU、日本に比べて一桁低い のがおわかりいただけるでしょう。


 



スウェーデンから遅れること10年、日本でも2005年1月から、超低硫黄自動車用燃料(硫黄分0.001%)が市販されています。


ストックホルム市では、市営バスの燃料を1990年頃からエタノールに切り替えてきた結果、2000年にはすべての市営バスがエタノール・バスとなりました。市の公用車の大部分が現在では電気、エタノール、バイオガスなどで動いています。スウェーデン第2の都市イェテボリィ市では、99年8月から菜種油を燃料とするタクシーも走っています。

スウェーデンから遅れること17年、日本でも2007年4月27日から「エタノール3%混合のバイオガソリン」が試験的に販売されることになりました。

日本が自動車排ガスによる大気汚染対策として「公害対策車(いわゆるエコカー)の開発」にしのぎを削っていたころ、スウェーデンは大気汚染対策として「自動車燃料の転換」を議論し、燃料転換のための開発プロジェクトを進めていました。

その結果、先進工業国の中では、早い時期にバイオ燃料の導入を実施しました。ですから、現在、日本でも始まっている「穀物を人間や家畜と自動車がとりあうのか」などという不思議な議論は現在スウェーデン国内にはないと思います。4月30日のブログ「スウェーデンのバイオ燃料に対する基本認識」 もう一度をご覧ください。

この分野でも「政策の国」スウェーデン vs「対策の国」日本の構造が垣間見えるような気がします。



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緑の福祉国家60 都市再生(都市再開発)⑤ アイドリング禁止

2007-05-30 10:07:32 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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都市の再開発を議論するときには、構造物だけでなく、都市機能を円滑にするアクセス手段である交通システムも考えなければなりません。

自動車の排ガス対策でも、スウェーデンは世界に先駆けています。私の手元に1972年6月5日の日本経済新聞の切り抜きがあります。この記事は、この年の6月にスウェーデンで開かれた第1回国連人間環境会議の開幕に合わせた関連記事で、来日中のスウェーデン技術開発庁長官にインタビューしたものです。

長官は「まだ自動車の乗り入れ規制に至ってはいないが、交差点で停止中の自動車はエンジンのキーを切るように義務づけられ、3分以上アイドリング(カラぶかし)をすると罰金を取られる」と答えています。30年以上前の記事ではありますが、まるで、2007年の今のインタビュー記事と錯覚してしまうような、新鮮な記事ではありませんか。



スウェーデンのアイドリング禁止の最近の状況はどうなっているのでしょうか。私は確認していませんが、スウェーデン系企業テトラパック社が先月、「Ohmy News」(2007年4月24日)に寄稿した記事の中で、スウェーデンの状況を次のように伝えています。

温室効果ガス排出抑制に対する取り組みは、人々の日常生活にも数多く見られます。例えば首都ストックホルム、中央駅のロータリーに来てみると、日本と比べて格段にクルマのエンジン音も無く静かなことに気付きます。これは条例によってアイドリングが厳しく規制されているため、1分以上の駐停車中はアイドリングを止めなければならないためですhttp://www.ohmynews.co.jp/news/20070424/10429

ちなみに、日本では1996年頃、一部の自治体でアイドリング禁止が導入されたに止まっています。



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緑の福祉国家59 都市再生(都市再開発)④ ストックホルム最大の再開発プロジェクト

2007-05-29 10:02:25 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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3月23日のブログ「2004年 五輪招致をめざしたストックホルム市」 で紹介した「ハンマビー・ショースタッド再開発プロジェクト」を続けましょう。

バルト海とメラーレン湖を結ぶ水路に沿ったハンマビー・ショースタッドを再開発する、ストックホルム市最大のプロジェクトは、再開発面積は約200ha、12年の工期と2000億クローナ(およそ3兆円)をかけて、旧工業団地を8000戸の住宅を有する「持続可能な街」につくりかえる、野心的なプロジェクトです。

2000年秋に最初のアパート群が完成しました。現在は8000戸の集合住宅の建設が終わり、約1万5千人が住んでいます。街の最終的な完成は2012年をめざしており、完成時の人口は約3万人とのことです。

このプロジェクトの目標は施設の建設時および建設後の使用期間中の環境負荷を、1989年から93年に建てられた建築物と比較して半減させることで、エネルギー、水利用、交通、建材など各分野の具体的な目標が設定されています。銅葺きの屋根や銅管の使用、塩ビ製品の使用は禁止されています。
ボルボ車のオーナーの会員誌「VOLVO FAMILY」(No.115 2005年 春季号)はこのプロジェクトを特集し、この街全体の設計を担当した建築家、ヤーン・インゲさん(ストックホルム都市開発局勤務)の次のようなコメントを掲載しています。

ストックホルム中心街にあった昔からの風景をここでも展開していくのが、この際開発の基本的なコンセプトでした。それがストックホルムの街全体の魅力を最も引き出せると考えたからです。

この大プロジェクトを貫く基本的な考え方は、市民に持続可能な街づくりに必要な環境情報を提供し、市民の選択条件を整えることです。

スウェーデンは、住環境・室内環境の分野でもさまざまな先駆的な試みを行なってきた国です。70年代から80年代にかけて、「シック・ビルディング」「ヘルシー・ビルディング」あるいは「室内気候」というキー・ワードで表現される、住環境・室内環境に関する国際会議やシンポジウムを多数主催してきました。こうして蓄積された研究成果や経験が、スウェーデンの都市再開発で活かされていることはいうまでもありません。

2004年1月15日の朝日新聞が、「市民の目から『都市再生』を考える」と題して、伊藤 滋さん(都市政策の専門家)と幸田シャーミンさん(ジャーナリスト)の対談記事を掲載しています。


この記事の中で、伊藤さんがスウェーデンの都市開発のプロセスについて触れています。赤で示した部分です。この部分をリライトすると次のようです。

伊藤 北欧の町、ストックホルムに行きますと、都市の地区ごとに都市計画の担当技師が決められています。その技師が、担当地域の住民と頻繁に対話しながら、将来像を描き、全責任をもってそれを実現していく。行政と住民の連携、そして、専門家を支えるコミュニティが確立しているのです。豊かな社会の実現のために一番重要なのは、「まちづくり」に関してはプロフェッショナリズムを尊重すること。住民は信頼できる専門家に、専門家は住民に対してきちんと対応することです。



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緑の福祉国家58 都市再生(都市再開発)③ 自然享受権  健全な環境は基本的人権

2007-05-28 04:46:04 | 市民連続講座:緑の福祉国家

 
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スウェーデンでは、環境を生物と無生物との両方から成り立つ複雑なエコシステム(生態系)としてとらえています。やさしくいえば、自然と調和した「住み良さ」あるいは「暮らし良さ」ということです。このような考え方は、スウェーデンの自然と人間との接点に生じた本能的な態度といえるでしょう。自然への恐れはまた、自然への愛着とも結びつきます。

スウェーデンの環境問題や都市計画などを考えるときの前提として、「土地自然の公共利用権」について触れておきましょう。これらの権利や義務がスウェーデンの都市景観の保全の背景にあるといえるでしょう。


アルメンシュレッテンは「自然享受権」とか、「万人権」などとも訳されていますが、この権利によって国民は誰でも、たとえ他人の所有地であっても、自由に野山を歩き、水にボートを浮かべ、泳ぐことができ、一時滞在して木の実や花やキノコを摘むことができます。もちろん、その所有者の財産(樹木、作物、庭園など)を損傷しない、という条件つきであることはいうまでもありません。
 
アルメンシュレッテン(土地自然の公共利用権)は山野や河川の風景の美しさは国民すべてにとって「共有の財産」だから大切にされ、享受されるべきものだという国民の合意があります。この考えは、1964年に制定された「自然保全法」の基本精神を形づくるものでした。この法律は1月17日のブログで紹介した「環境法典」(1998年6月成立、99年1月1日より施行) に統合されました。
 
こうした伝統が、スウェーデン国民を自然景観の保全へ、そして環境保護へ積極的に向かわせている大きな理由です。環境保護は社会に深く定着した価値観で、「健全な環境は基本的人権」の一つと位置づけられています。スウェーデンのすべての環境政策の策定は、この権利を根拠にしています。



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緑の福祉国家57 都市再生(都市再開発)② 都市景観の保全

2007-05-27 08:06:03 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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昨日のブログ「日本人観光客の最初の印象」で、「景観を支える北欧の認識」という10年前の投書を紹介しました。この10年、私はストックホルムを訪問していませんので、あくまで想像ですが、投書の方が見た10年前の風景は10年後の今でもほとんど変わらないと思います。

一方、東京では今年3月30日にオープンした東京ミッドタウン(六本木) や4月27日にオープンした新丸ノ内ビル(丸の内)に代表されるような巨大構造物の建設が相変わらず続いており、10年前とはだいぶ風景が変わってしまいました。

スウェーデンと日本の首都の風景の相違で思い出したのが、およそ30年前、1970年代の後半のことでした。当時のスウェーデンの国土計画担当者と私(当時、スウェーデン大使館の環境・エネルギー問題担当)は建設省(あるいは国土庁?)に下河辺敦さん(退官後NIRAの理事長)を訪問しました。スウェーデンの国土計画担当者がスウェーデンの国土計画用の大きな地図を広げて下河辺さんにスウェーデンの国土計画の説明を始めました。

一通りの説明が終わった後、下河辺さんが最初に発した一言を今でも鮮明に覚えています。「日本では、特に東京のような大都市では国土計画に地図が使えないのです。地図を作ってもすぐ改訂版を出さなければなりませんから」と。説明を終えたスウェーデン人の怪訝な表情と下河辺さんの自信に満ちた表情が妙に対照的でした。

30年前に私が目にしたスウェーデンと日本の相違は、そのまま、90年代に提示された
両国の「環境政策の包括的な目標」にも現れているように思います。スウェーデンの目標の中に「④自然景観および文化的景観を保全する」とあることに注目してください。その落差は、次の図に示すように、大変大きいと思います。


都市景観がほとんど変わらないスウェーデンのストックホルムやその他の地域も、実は時代の大きな流れに適合して大きくダイナミックに進化しています。決して立ち止まっているわけではありません。そのことは、すでにご紹介した次のブログや国際機関が公表する様々な分野の調査報告でも明らかです。

●3月30日のブログ「IT活用ランキング スウェーデン2位、日本14位」

●4月8日のブログ「IT革命と環境問題⑧ スウェーデンはどうなってる」




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スウェーデンの挑戦: 緑の福祉国家56 都市再生(都市再開発)① 日本人観光客の最初の印象

2007-05-26 08:15:54 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1996年8月4日付の朝日新聞の投書欄で、おもしろい話を見つけました。「景観を支える北欧の見識」と題する投書で、投稿者は50代の会社員の方です。

私はスウェーデンでこのような説明を受けたことはありませんが、この光景は、すぐ思い浮かべることができます。この高層ビルはヴェンナーグレン・センターという名のビルです。



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緑の福祉国家55 持続可能な農業・林業⑤ 十分な国際競争力を有するスウェーデンの林業

2007-05-25 09:08:26 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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国民一人当たりのGDPが1万ドル以上で、森林面積が60%を超える国は、日本、フィンランド、スウェーデンの3カ国だけです。

スウェーデンの林業は、スウェーデンを支える主要産業の一つで、十分な国際競争力を有しています。それは、国の「林業政策」や「エネルギー政策」と林業家の「経営の方向性」が、持続可能な社会を支える、という点で一致しているからです。

 
過去100年間に世界のほとんどの森林が半減したにもかかわらず、スウェーデンの森林は倍増しています。毎年6億本の苗木が植えられ、森林の成長と伐採の調和が管理されているからです。スウェーデンの森林は、2000年以降も拡大を続けています。「森林は持続可能システムだから、環境と調和のとれた条件下で適切に成長と伐採が行なわれていれば、森林は消失しない」というのが、この国の林業に対する基本的な考え方です。
 
70年代半ば以降、自然林の保護区面積は倍増しており、商業林を、多様性を持つ植生に転換させるプログラムが実施されています。この目的は、珍種の植物相や動物相の存続を保障することです。このような森林管理は森林生産の効率を低減させ、コスト増をもたらすにもかかわらず、林業関係者や森林のオーナーを含む関連団体の間で合意がなされています。

フィンランドの森林研究所の調査によりますと、北欧諸国の化石燃料の使用によるCO2排出量と北欧の森林のCO2吸収量はほぼ同じであるのに対し、ヨーロッパの大国のCO2排出量と森林のCO2吸収量には大きな相違があります。

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緑の福祉国家54 持続可能な農業・林業④ BSE(牛海綿状脳症)への対応

2007-05-24 07:39:27 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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2001年の時点で、EU科学運営委員会はBSE(牛海綿状脳症)汚染度が最も高い国を「レベル4」、最も低い国を「レベル1」とする4段階で評価しています。

レベル4:発生が確認され、高いレベルで汚染が確認されている。
          英国、フランス、ポルトガルなど。
レベル3:発生が未確認もしくはわずかに確認され、汚染の危険性がある。
          ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、デンマークなど
レベル2:発生の可能性は低いが、まったく危険性がないともいえない。
          スウェーデン、フィンランド、カナダ、米国など
レベル1:発生の可能性はほとんど考えられない。
          オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーなど


OIEの調査によりますと、1989年から2007年5月21日までの18年間の主な国の累積発生件数は英国が184,508、フランス984、ドイツ411、日本32、米国2、スウェーデン1となっています。

欧州委員会は2006年3月3日、スウェーデンで初めてのBSE感染牛がEUの参照研究所(CRL)により確認されたことを発表しました。この発表まで、スウェーデンは、旧EU加盟15カ国で唯一BSEの未発生国でした。


スウェーデンは1991年に牛などの反芻動物の肉骨粉を反芻動物に与えることを禁止しました。WHOが「牛の肉骨紛の牛への使用禁止勧告」を出したのが96年4月でしたから、この件についてのスウェーデンの行政措置は、WHOの勧告よりも5年も早かったことになります。予防志向の国としては当然のことだったのでしょう。
 
一方、日本では、2007年2月6日の毎日新聞が、2月5日に北海道で32頭目のBSEが確認されたと報じています。



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緑の福祉国家53 持続可能な農業・林業③ フード・チェーンすべてをカバーする研究

2007-05-23 08:47:29 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1986年春、国会は政府の「農業および野菜の新しい生産形態に関する研究プログラム」を承認しました。このプログラムでは、食品の原材料を提供する農業生産の改善に重点が置かれました。加えて、食品の原料となる農産物の生産から消費者に至る、フード・チェーンのすべてをカバーする研究も開始されました。食品生産の関係者にとっては、消費者に良質の食品を供給するために、それぞれの責任を分担することが要求されます。

農家は、人間、家畜および環境に危険性のある物質を生産に使用しないように注意を払わなければなりませんし、食品加工業者は食品の品質を保証するような生産活動を行なわなければなりません。

同時に、輸送会社や流通会社も、それぞれの責任を分担しなければなりません。公的な行政機関、研究者、消費者もこの計画に積極的に参加し、安全な食品を供給するために、それぞれの関係者がどのようなことに留意したらよいのかを示すことができれば、なおよいでしょう。

しかし、消費者から見れば、良質な原材料の確保と同時に、その後の食品製造工程も重要なことです。加工、流通、販売のそれぞれの部門でも、広範な研究開発が必要となります。これらをカバーするプログラムが、国会で承認されました。

政府がめざす、フード・チェーンのすべての部分に光を当てる政策の基礎が整備されたのです。この作業の出発点は当然のことですが、 「消費者の必要と要求」に基づくものでなければなりません。 国の行政機関はこれらの問題に関して、共同作業を開始しました。スウェーデン農業者連盟、スウェーデン労働者連盟、スウェーデン勤労者中央組織、生協/卸売業界などの民間団体も共同食品プログラムを策定しました。

プログラムの要点はスウェーデン国内で生産される食品の品質、食品生産について、これまで以上に良好な情報を提供することです。このように、労働組合、消費者団体、生産者団体が「スウェーデンの食品」という共通の課題のもとで情報改善作業に活発に参加していることは、非常に重要です。
 
80年代後半から90年代にかけて、農業の環境的側面に対する要求が消費者サイドから高まりました。この間に政府は、農業分野でつぎのような施策を実施してきました。


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緑の福祉国家52 持続可能な農業・林業② 抗生物質の使用禁止、家畜の飼養管理

2007-05-22 07:30:15 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1986年からスウェーデンは、成長促進用に飼料に添加する抗生物質の使用を禁止しました。これは、EUの「成長促進の目的での抗生物質使用禁止」を先導することになりました。

1988年7月1日から施行された「動物保護法」は、ペットの保護という観点だけでなく、家畜の飼養管理という観点からも興味深いものですので、簡単に紹介しておきましょう。
 
動物保護法は1944年の「動物愛護法」を現状に合うように全面的に見直したものです。この法律の基本的な考え方は、「動物は本来持っている自然行動を考慮した環境で飼育されなければならない」というものです。動物の飼育で大切なことは、「動物が健康で安心して生きていけるような環境を整えること」です。

さらに、この法律では、家畜の飼養管理にも、つぎのような点で注意が払われています。

①牛は放牧すること
②ケージ内の採卵鶏の羽数を減ずること
③繁殖用の母豚が自由に歩き回れるような十分なスペースを与え、寝床、餌場、排泄場所を別々にすること
④動物の飼育に要するさまざまな技術は動物の必要に適合するものであって、その逆であってはならないこと
⑤と畜は可能なかぎり動物に苦痛を与えないように行なうこと
⑥将来、家畜に異変を起こさせるおそれがある遺伝子工学の応用、成長ホルモンの使用を禁止することができる権限を政府に与えること


 
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スウェーデンの挑戦: 緑の福祉国家51 持続可能な農業・林業① スウェーデンの食料自給率

2007-05-21 07:12:16 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンの食料自給率は高く、主要産物はほぼ100%を上回っています。穀物や豚肉は輸出もしています。野菜・果物・油脂の自給率は気候の関係で低い状況にあります。
ご参考までに、2002年のスウェーデンの食糧自給率を日本の農林水産省の「食料自給表」からまとめてみました。


穀物自給率ほぼ120%(1961年:112%、2003年:122%)を誇る農業に関しても、スウェーデンは80年代後半から90年代にかけて、持続可能性を強く意識した政策を次々に打ち出しました。その大きな流れを見ていきましょう。 

スウェーデンの家庭が食品に対して支出する総額の50%以上が、スウェーデン国内の農業生産にかかわっているという調査報告を受けて、政府は「食糧生産一貫政策のガイドライン案」を国会に上程しました。1985年、国会はこれを承認しました。 

このガイドラインでは、「農業を食品原料の供給源である」と明確に位置づけ、これまでの農業政策に修正を加え、スウェーデン国内で生産される最終食品の質だけではなく、家畜への配慮、環境への配慮を優先する政策が、その第一歩を踏み出したのです。 

ガイドラインのなかで初めて、食糧生産の場となる「環境」と食糧生産の源となる「資源」に対する目標を掲げました。その要点は、農業と食品生産のためには、良好な環境が必要であると同時に、スウェーデンの天然資源を長期的にしかも計画的に管理していく必要があるというものでした。
1995年1月1日のEU加盟後、スウェーデンは、食料安全保障は国境措置の撤廃と自由貿易の推進によって得られるとの立場から、英国・デンマークと共に、EU共通農業政策の急進的な改革を提唱してきました。また、スウェーデンは2001年1月~6月、EU議長国でしたが、農業改革は環境戦略と結びつかなければならないことを強調しました。  



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緑の福祉国家50 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑭  電気・電子機器に対する製造者責任制度③

2007-05-20 07:53:50 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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同じ時期に同じような目的で導入された類似の制度でも、国により、制度そのものに、そして、その制度導入の背景に大きな相違があります。 


2001年春、製造業者は回収・リサイクル体制を主な業務とする株式会社「エールクレッエン」を設立し、回収・リサイクル制度を整備してきました。製造者(輸入業者および販売業者を含む)は、処理業者の求めに応じて、製品に使用されている化学物質に関する情報を提供する義務が生じました。

「リサイクル料金」や「収集運搬費」は、製品の販売価格に上乗せされています。たとえば、テレビや洗濯機は約85クローナ(約980円:2001年のレートでは1クローナは約12円)、CDプレーヤーは約4クローナ、蛍光灯は約3クローナ、携帯電話は約0.2クローナ程度、製品の価格が高くなるそうです。回収時に費用がかからないのであれば、消費者は使用ずみ製品の不法投棄をしないという考えに立っていますので、個人の不法投棄に対する罰則はありません。

EUの行動計画より先行していたスウェーデンの「電気・電子機器に対する製造者責任制度」は、EUの「電気・電子機器の廃棄物に関する指令(WEEE指令)」に連動させるため、2005年4月14日に改正案が国会で採択され、同年8月13日から施行されています。この改正により、対象品目が拡大され、製造者の責任も拡大されました。
 
EUの「WEEE指令」が定める廃家電回収量の目標は、「2006年12月31日までに、加盟国は居住者1人当たり4キログラムを分別収集しなければならない」としています。現在、スウェーデンの年間1人当たりの廃家電回収量はおよそ12キログラムで、ノルウェーに次いで世界第2位となっています。スウェーデンはすでに、EUのWEEE指令が定める目標の3倍量を収集していることになります。
 
これらの事実から、スウェーデンの施策がEUよりも4~5年先行していることがおわかりいただけるでしょう。同様流れが、先に検証した「新しい化学物質政策」についてもいえます。



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緑の福祉国家49 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑬ 電気・電子機器に対する製造者責任制度② 

2007-05-19 10:22:16 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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今日から、2001年4月施行の「日本の家電リサイクル法」より3ケ月遅れて2001年7月から施行された「スウェーデンの電気・電子機器に対する製造者責任制度」について、概観します。

この制度では、建物に固定されていない電動機器のほとんどすべて、具体的には、次の図に示す10の製品グループに属する製品が対象となります。
 
自治体と製造者の役割分担は次の図のようになります。

これは次の図が示す2003年2月13日に発効されたEU指令「WEEE(電気・電子機器の廃棄)」(Waste Electrical and Electronic Equipment)のスウェーデン・バージョンと考えてもよいのですが、もう少し正確に言えば、2001年7月1日の「スウェーデンの電気・電子機器に対する製造者責任制度」が2003年2月13日発効のEU指令「WEEE」の考えのもとになっていると考えた方が適切だと思います。

2003年2月13日発効のEU指令は発効18ヶ月後の2004年8月13日までに加盟国が指令に沿った国内法を整備・施行することを求めています。

この場合と同じような関係が、5月6日のブログで紹介したEUの新しい化学物質政策である「RoHS」「REACH」 にも認められます。

2001年4月に施行された「日本の家電リサイクル法」の対象が、冷蔵庫、洗濯機、エアコンおよびテレビの4品目であることを考えると、日本とEUの対象品目の相違、更に言えば、日本とスウェーデンの電気・電子機器廃棄物に対する考え方の広さ、深さの相違を実感していただくことができるでしょう。

日本とEU、あるいはスウェーデンの間に大きな技術的な相違があるわけではないことを考えますと、この大きな落差は技術的な問題ではなく、日本の基本認識に問題があると思われます。



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緑の福祉国家48 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑫ 電気・電子機器に対する製造者責任制度①

2007-05-18 08:51:51 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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1994年の「包装・古紙・タイヤ」から始まったスウェーデンの製造者責任制度は、98年の「自動車」を経て、2001年の「電気・電子機器」にまで発展してきました。

スウェーデンの電子機器の販売量は92年に対して99年は重量ベース(トン)で3倍以上となりました。電気・電子機器は人や環境に有害な多くの化学物質を含んでいます。スウェーデンのエコサイクル委員会は94年に、この制度の検討段階で調査されたスウェーデン製の電気・電子製品に含まれる有害物質の結果を公表しました。

スウェーデンでは臭素化難燃材(例えばPBDEs)が注目されています。PCBsの母乳中濃度は減少していますが、PBDEsの母乳中濃度は過去5年間に2倍となりました。ある電子機器の解体工場の作業員の血液サンプルからPBDEsの濃度上昇が認められています。


明日から数回にわたって、「電気・電子機器に対する製造者責任制度」の概要を紹介します。



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緑の福祉国家47 廃棄物に対する「製造者責任制度」の導入⑪  自動車に対する製造者責任制度

2007-05-17 22:27:23 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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さらに、1998年1月1日から、「自動車に対する製造者責任に関する政令」が施行され、すべての自動車メーカーと輸入業者は、新車の登録時に自社の廃車を引き取る義務を負うことになりました。

スウェーデンの車両廃棄システムは諸外国より、進んでいると考えられています。1975年、放置自動車の処理処分のために「車両廃棄法および同法施行令」が制定され、同年6月から施行されました。その後、修正が加えられました。98年に「自動車に対する製造者責任に関する政令」が施行されると、旧法は廃止されました。

75年の「車両廃棄法および同法施行令」のもとでは、金属、鋼材、アルミの回収に焦点が当てられ、車両重量のおよそ75%が回収され、素材として再利用されてきました。しかし、乗用車1台が廃車になりますと、およそ300キログラム(残りの25%に相当)のいわゆるシュレッダーダスト(プラスチック、ゴム、ガラス、タイヤなど)が排出され、これらの素材は埋め立てられてきました。

廃タイヤについては1994年10月に製造者の責任による回収システムが作られました。埋め立ている残りの25%のリサイクリングをめざして、1994年5月に、自動車メーカーのボルボ社、解体業者、素材供給会社などが出資して、廃車のリサイクル化プロジェクト「ECRIS(スカンジナビア環境適合自動車リサイクルの略)」をスタートさせました。イェンショーピン市にそのプラントがあります。

ちなみに、日本の自動車リサイクル法が施行されたのは、スウェーデンから遅れること7年、2005年1月1日のことでした。



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