環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2009年10月のブログ掲載記事

2009-10-31 20:46:54 | 月別記事一覧
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1.2009年10月のブログ掲載記事(2009-10-31)

2.日本の2008年度のCO2排出量は、90年度比7.4%増(2009-10-31)

3.12月のCOP15で予定されていた「ポスト京都議定書の採択」は断念(2009-10-30)

4.第173回臨時国会招集 鳩山首相の所信表明演説(2009-10-26)

5.判断基準を変えれば、別のシーンが見える、改めて 日本は世界に冠たる「省エネ国家」か?(2009-10-11) 

6.低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

7.難問山積、OECDが「Economic Survey of Japan 2009」を公表(2009-10-05)



日本の2008年度のCO2排出量は、90年度比7.4%増

2009-10-31 19:44:25 | 温暖化/オゾン層
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昨日の朝日新聞が、2008年度のエネルギー消費(原油換算)が、景気悪化の影響で2007年に比べて、6.8%減となったと報じました。それにもかかわらず、今日の朝日新聞は2008年度のCO2排出量は京都議定書の基準年である90年比で7.4%増加したと報じています。 


 


この2つの記事のもとになったデータの出所は同じで、いずれも経済産業省が所管する「エネルギー需給実績」(速報)です。

そこで、次の記事をご覧下さい。9月16日に発足した鳩山政権のもとで、環境省は「原発」に対してこれまで以上に積極的な姿勢を示したようにみえます。

●環境省、「アセスで原発推進」(2009-10-29)
 九電の川内で方針明示  CO2対策「最大限の活用を」

●環境省、「アセスで小名浜火力に反対」(2009-05-27)


「私の環境論」では、原発へのさらなる傾斜(依存)は国際社会が21世紀にめざすべき「エコロジカルに持続可能な社会」の構築をますます困難にすると考えますので、まず日本の原発は現状に凍結して、新規の原発を建設しないという選択がベストだと思います。

関連記事
原発を考える⑤ エネルギーの議論は「入り口の議論」だけでなく、「出口の議論」も同時に行う(2007-04-14) 


次の図を見れば、スウェーデンは原発を増やさずにCO2を削減できたのに、日本は原発を大幅に増やしたにもかかわらず、CO2を削減することが出来ていないのです。

 

なぜか数年前から国際社会では「原子力ルネッサンス」などという巧妙なネーミングで、原発の推進の動きが活発になってきたように思いますが、2002年に南アフリカのヨハネスブルクで開催された「持続可能な開発に関する世界サミット」(環境・開発サミット)までは、原子力エネルギーに対して国際社会は懐疑的で、積極的ではなかったのです。

関連記事
原発を考える⑥ 原発に否定的な国際評価の事例(2007-04-14)


2002年の「持続可能な開発に関する世界サミット」から今日までの7年間に、既存の原発に画期的なイノベーションがあったわけではありませんので、目の前の温室ガス対策のために日本が原発をさらに新増設するのは合理性があるのでしょうか、私はないと思います。

このブログでこれまでに何回も繰り返してきたように、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(具体的にはCO2)を排出しない発電装置ではありますが、原発は温室効果ガス削減装置ではないことです。ですから、原発の新規建設によって、CO2を事実上増やさずに電力の供給量を増やすことは可能です。しかし、原発を建設し、運転しただけでは、現状からCO2を増やさなかったというだけで、CO2の削減にはなりません。 

そこで、 「新規の原発」で「既存の石炭火力発電所」を完全に置き換えれば、CO2の削減は可能になりますが、その場合は、私たちは同時に、現在十分に解決できていない原発特有のマイナス面(安全性、核廃棄物、核拡散、労働者被曝、廃炉、核燃サイクルなどの放射線がかかわる問題や温排水などの難問)と、それに対処するための「新たな膨大なコスト」をさらに抱え込むことになります。環境省の「環境アセスメント」にこのような原発特有の項目があげられていないことは大問題だと思います。
   
関連記事
低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)



12月のCOP15で予定されていた「ポスト京都議定書の採択」は断念

2009-10-30 10:29:28 | 温暖化/オゾン層
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2009年7月1日は、スウェーデンが1995年1月1日にEUに加盟して以来、2回目のEU議長国になった日です。EUの議長国は持ち回りで、任期は半年。前回は2001年1月1日から半年間でした。

今年の議長国スウェーデンの任期は7月1日から12月31日までで、この半年間に課せられた大問題は今年12月にデンマークの首都コペンハーゲンで開催される「国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)」で、EUの議長国として、一定の成果を収めることです。COP15の目的は、京都議定書に定めがない2013年以降の「地球温暖化対策」の方向性を決定し、各国の同意を求めることにあります。

10月29日、30日の朝日新聞は、国連気候変動枠組み条約事務局長が28日、12月のCOP15での「ポスト京都議定書」(温暖化対策の新議定書)の採択を断念し、拘束力がなく各国の批准手続きも必要ない「締約国会議決定」をめざすことになったと報じています。





10月29日の記事によりますと、新議定書への合意が遅れている理由は、先進国と途上国の考え方の溝が埋まっていないことだそうです。

今日は、このような現実の「国際環境政治」のあり方と、私が賛同する「経済学者の懸念」を皆さんにお知らせすることによって、今後、この大問題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

(1)勝利につながる資本主義の戦略とは


(2)資本主義を揺るがす大問題
 

関連記事
21世紀の資本主義、その行方は???(2008-03-30)


              

第173回臨時国会招集 鳩山首相の所信表明演説

2009-10-26 21:36:18 | 政治/行政/地方分権
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鳩山政権にとって論戦の初舞台となる第173回臨時国会が、2009年10月26日に招集されました。鳩山由紀夫首相は本会議で所信表明演説を行いました。記録のために、全文を保存しておきます。

鳩山由紀夫首相の所信表明演説(全文)


私の期待に反して、この所信表明演説では21世紀のキーワードである「持続可能性」(Sustainability)という概念がまったく登場しません。わずかに「持続的な成長」というような言葉が「四 人間のための経済へ」という節でたった1カ所出てくるだけです。

また私が懸念している「低炭素社会」という日本の概念が「五 『架け橋』としての日本」という節に「世界規模での『環境と経済の両立』の実現、『低炭素型社会』への転換に貢献して参ります。」という文脈で、ここ1カ所だけ登場します。

鳩山首相の所信表明演説が「持続可能性」という21世紀のキーワードにまったく触れていない点は失望ですが、「一 はじめに」の「戦後行政の大掃除」の項と「六 むすび」の「これまで量的な成長を追い求めてきた日本が、従来の発想のまま成熟から衰退への路をたどるのか、それとも、新たな志と構想力を持って、成熟の先の新たなる飛躍と充実の路を見いだしていくのか、今、その選択の岐路に立っているのです。」という記述に大きな期待を込めて、来年1月の通常国会の冒頭に行われる「施政方針演説」を待つことにします。





判断基準を変えれば、別のシーンが見える、改めて 日本は世界に冠たる「省エネ国家か」?

2009-10-11 13:38:44 | 温暖化/オゾン層
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このブログの目的は、「私の環境論」に基づいて、私の関心分野に次々に登場する様々な現象や事象を分析し、解説し、皆さんにもう一つの視点を提供していこうという試みです。

まず、「私の環境論」に共通する「環境問題を考える際の7つのキーポイント」を掲げます。環境・エネルギー問題を議論するときの共通の出発点として共有していただければ幸いです。



今日は、21世紀の環境問題を考えるときには、上の図の「③総 量」が、「GDP当たり」や「原単位当たり」という「相対量」よりも重要かつ適切な指標であることを示し、皆さんの議論の材料とします。それでは、今日のテーマである「日本はほんとうに世界に冠たる省エネ国家なのか?」を考えてみましょう。まず、次の図をご覧下さい。



この図の上半分は日本の産業界が、IEA(国際エネルギー機関)の統計資料の数値をそのまま引用し、いかに日本が他の国に比べて省エネが進んでいるかを示す資料として作成した図です。下半分は、実体経済に近づけるために国際機関などの統計で使われている「物価水準」を反映させた「購買力平価」でGDP当たりの排出量を示したもの です。

同じGDP当たりのCO2排出量も、物価水準を反映させると、日本が必ずしも世界一ではないことを示しています。このように、判断基準を変えれば、別のシーンが見えてくるのです。

詳しくは次の記事をご覧下さい。
●「25%削減」きしむ産業界(朝日新聞 2009年10月6日 1面)

●揺らぐ「省エネ世界一」 計算法違えれば欧州以下に(朝日新聞2009年10月6日  2面) 

日本の内閣府の政策統括官室が2年前にまとめた報告書では、購買力平価方式でも計算していて、日本は70年代にはCO2排出効率がよかったものの、原油価格が低迷した80年代後半以降は足踏み状態が続いた。04年は米国よりはよかったが、英国やフランス、イタリアよりも劣っていた。報告書は「先進国の中で相対的に高い排出効率を維持するためには一層の努力が必要である」と指摘していた。・・・・・


関連記事
日本の産業界の環境自主行動計画、その成果は?(2009-01-07)

日本は世界トップレベルの低炭素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17)

経済界の意見広告 第2弾 「考えてみませんか? 日本にふさわしい目標を。」(2009-05-21)

日本はほんとうに「省エネ国家」なのか? 評価基準の見直しを!(2007-03-17)

不十分な日本の「省エネルギー」という概念、正しくは「エネルギー効率の改善」という概念だ!(2007-11-26)

●NHK解説委員室  視点、論点「“乾いた雑巾”は本当か」(2007-05-17)

●大和総研 経営戦略研究レポート CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)  日本は環境先進国なのか? 2008年3月10日
世界銀行が2007年10月に公表した温暖化対策を評価した報告書において、 日本は70カ国中62位、先進国では最下位という衝撃的な結果が示された。
洞爺湖サミットで環境立国日本を標榜し、世界のリーダーシップをとるのであれば、日本は環境先進国、という思い込みを捨てて積極的かつ大胆な温暖化対策を早急に進める必要がある。



大和総研の経営戦略研究レポートは、結論を導くまでに “エコノミストにわかりやすいように(?)” 複雑な論を展開しておりますが、そのようなことをしなくても「環境問題を考える際の7つのキーポイント」の「②経済活動 経済活動は金の流れではなく、資源/エネルギーの流れで見る」と「③総量」という原則で考えれば、簡単に、しかも正確に同じような結論を導くことが出来ます。

今私たちが理解しなければならないのは、京都議定書の規定も、ポスト京都議定書の規定も、温室効果ガスの「総量」削減であって、日本の産業界が求めてきた「原単位の改善」などの「相対量」の向上ではないのです。


   

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン

2009-10-08 14:35:21 | 温暖化/オゾン層
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古くて、新しい原発議論が「気候変動問題」への対応との関連で、再び高まってきました。ここで議論しておきたいことは、「原子力ルネッサンス」などという巧みなネーミングのもとに国際的にも国内的にも推進の動きが高まってきたように見える「原発のCO2削減効果に対する有効性」についてです。今日は皆さんと一緒に、もう一度、この大切な問題を考えてみたいと思います。私の考えに対するコメントは大歓迎です。


原発依存を強める「日本」、 原発依存を抑制する「スウェーデン」

「日本版グリーン・ニューディールで経済の活性化を」をめざして活動を続けている「環境政策フォーラム(Environmental Policy Forum)」という団体があります。

この環境政策フォーラムの「第66回モーニング・セッション」(2009年7月1日)で斉藤鉄夫(前)環境大臣は、「政府が2020年の中期目標では90年比での削減ではなく、2005年比15%削減とした理由について米国中期目標が2005年比であること、日本の2020年の中期目標である温室効果ガス15%の削減の手段の中には新規原発を9基建設することが含まれていること」を明らかにしました。

去る9月16日に発足した鳩山新政権が国際的に公約した「温室効果ガスを2020年までに90年比で25%削減する」という目標の達成計画の中に前政権が掲げた新規原発9基が含まれているかどうか現時点では不明ですが、民主党のマニフェストには「安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む」と書いてあります。

この機会に日本とスウェーデンの原子力エネルギーの利用に対する考え方の相違を確認しておきましょう。日本とスウェーデンでは原発の利用に対する考え方が正反対です。原発依存を強める「日本」に対して、原発依存を抑制する「スウェーデン」ということになります。なお、言うまでもないことですが、日本の、そして、スウェーデンの「原子力技術のレベルの高さ」や「最新の原発事情」について私よりも正確にご存じなのは、ほかでもない日本の原子力分野の専門家のはずです。


「原発の利用状況」 と 「温室効果ガスの排出量」 の関係

脱原発の方向性を定めた1980年3月のスウェーデンの「国民投票の結果」とその結果に基づく同年6月の「国会決議」以降の両国の原発の利用状況をまとめてみますと、次のようになります。



1980年から2008年の28年間に、スウェーデンが2基の原発を廃棄したのに対し、日本は33基の原発を増やしました。この間、スウェーデンは京都議定書の基準年である1990年以降漸次、温室効果ガス(このうちおよそ80%がCO2)を削減し、2007年の排出量は9%減でした。一方、日本では、1990年以降、温室効果ガス(このうち90%以上がCO2)の排出は増加傾向にあり、2007年には過去最悪(9%増)となりました。日本では90年以降15基もの原発を運転開始したにもかかわらず、CO2の排出量が増加している事実に注目して下さい。

関連記事
1970年代からCO2の削減努力を続けてきたスウェーデン(2009-06-02) 


ここで注意すべきは、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(具体的にはCO2)を排出しない発電装置と見なしてもよいと思いますが、原発はCO2削減装置ではないことです。しかも、原発利用のフロント・エンド(ウランの採掘から原発建設完成・運転開始まで)から、運転期間を経て、LCAという手法を用いて調べてみますと、原発はフロント・エンドとバック・エンドの作業工程で相当量のCO2を排出することがわかっています。ですから、たとえ正常に稼働している原発が運転時に事実上CO2を排出しないと見なしても、「原発がクリーンな発電装置である」というのは誤りだと思います。

関連記事
原発を考える⑪CO2削減効果はない「原発」(2007-04-22) 


ですから、原発を建設しただけでは温室効果ガスは増加することはあっても、減少することはないのです。日本政府が「2020年の中期目標である温室効果ガスの排出量を15%削減する」ために新規原発を9基建設するのであればその9基の原発がうみだす電力量と同じかそれ以上の電力を生み出す既存の運転中の石炭火力発電所を止めるという政策手段を取らなければ、いくら原発を9基建設しても、つまり、原発で石炭火力を代替しない限りはCO2の大気中への排出量を削減することはできないのです。
9基の原発の建設は、「CO2の発生を伴わない電力を既存の電力網に供給する」というだけの話です。

こうすることによって、CO2の削減は可能になるでしょうが、同時に私たちは、現在十分に解決できていない原発特有のマイナス面(安全性、核廃棄物、核拡散、労働者被曝、廃炉、核燃サイクルなどの放射線がかかわる問題や温排水などの難問)とそれに対処するための「膨大なコスト」をさらに抱え込むことになります。例えば一例ですが、

●核燃サイクル 総費用18兆8000億円(毎日新聞 2004-01-16)

●核燃サイクル 割高試算 経済性揺らぐ信頼(朝日新聞 2004-07-03)


「経済成長」と「温室効果ガスの排出量」の関係

2008年2月21日、スウェーデンのラインフェルト首相はEU議会で演説し、「スウェーデンは1990年(京都議定書の基準年)に比較して、2006年には44%の経済成長(GDP)を達成し、この間の温室効果ガスの排出量を9%削減した」と語りました。次の図が示しますように、「経済成長」と「温室効果ガスの削減」を見事に成功させたのです。



スウェーデンでは97年頃から「経済成長」と「温室効果ガス」(そのおよそ80%がCO2)排出量の推移が分かれ始めています。このことは、「経済成長」と「温室効果ガス排出量」のデカップリング(相関性の分離)が達成されたことを意味します。ここで重要なことは、温室効果ガスの削減が「原発や森林吸収や排出量取引のような日本が期待している手段ではない国内の努力によって(日本では“真水で”と表現します)達成されたもの」であることです。スウェーデンは今後も、独自の「気候変動防止戦略」を進めると共に、EUの一員としてEUの次の目標である2020年に向けてさらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。

一方、日本は1986年頃から、「経済成長(GDP)」と「CO2の排出量」とが、これまた見事なまでの相関関係を示しています。さらに困ったことに、日本では今なお、二酸化炭素税の導入がままならないばかりでなく、すでに述べたように、2007年度の温室効果ガスの排出量が過去最悪(およそ9%増)となったことです。

関連記事
原発を考える⑤ エネルギーの議論は「入り口の議論」だけでなく、「出口の議論」も同時に行う(2007-04-14)  

経済、エネルギー、環境の関係(2007-02-17) 
これまでの日本の状況は増大する電力需要に対応するために、火力も、原子力も、水力を含めた自然エネルギーもすべて増加させてきたことは、このブログの電事連の統計資料でも明らかです。

ここでは火力発電を原子力で置き換えていませんですから、原発を増やしてもCO2を削減できないことは自明の理だと思います。



スウェーデンの原発に対する最近の動き

現時点(2009年10月現在)で、スウェーデンには日本のように新規原発をつくり続けていこうとするようなエネルギー政策はなく、 「原発依存を抑制する方向性(脱原発の方向性)に変わりはない」と断言できます。ただ、今年2月にスウェーデンの脱原発政策にちょっとした動きがありました。

それは、既存の10基の原発の寿命(国民投票が行われた1980年のときに想定されていた原発の技術的寿命は25年でしたが、現在では60年程度と見積もられているようです)が近づいてきた場合に混乱がおこらないよう、「現在の原発サイト(フォーシュマルク、オスカーシャム、リングハルスの3個所)に限って、そして既存の10基に限って更新(立て替え)が可能になるように、更新の道を開いておく」という政治的な決定がなされたことです。

1996年に21世紀のビジョン「緑の福祉国家」を掲げた比較第一党の社民党は現在、野党の立場にありますが、2001年の党綱領で「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)には原発は不要であることを明記しています。


関連記事
民主党の原発原発政策に再考を促す投書(2009-09-27)



難問山積、OECDが「Economic Survey of Japan 2009」を公表

2009-10-05 04:14:45 | 経済
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去る9月30日、OECD(経済協力開発機構)は「Economic Survey of Japan 2009」を公表しました。この調査報告はOECD加盟国の経済政策状況を国ごとに1年半ないし2年の間隔で調査報告するもので、次回の日本の報告は2011年だそうです。

10月1日の日本経済新聞が9月30日に公表された「Economic Survey of Japan 2009」の概要を次のように報じています。




日本の経済に関する短期的・長期的難問が指摘されています。今回の日本の報告は日本にとって特別の意味があるのではないでしょうか。歴史的な政権交代が行われる直前の自民党政権下「最後の経済報告」であり、2011年の次回の報告は民主党政権下の「最初の経済報告」となるはずだからです。

2009年10月1日現在、OECDは次の30カ国の加盟国からなっています。

オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本(1964年4月28日加盟) 、韓国、ルクセンブルグ、
メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、
スロバキア共和国、スペイン、スウェーデン(1961年9月28日加盟) 、スイス、トルコ、イギリス、アメリカ(1961年4月12日加盟)

ちなみに、OECDは、個別の国ごとの経済報告に加えて、EUに関する経済報告書「Economic Survey of European Union 2009」も公表しています。こちらも、次回の報告書は2011年の予定です。