環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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待望の菅首相の「所信表明演説」、首相が追求する「第3の道」はスウェーデン型?

2010-06-12 20:29:26 | 政治/行政/地方分権
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6月11日に待望の菅直人・新首相の「所信表明演説」が国会で行われました。今朝の朝日新聞にその全文が掲載されています。私は昨日の国会での演説をテレビ見て、今朝、朝日新聞で演説内容を再確認しました。

日本の国会で内閣総理大臣(首相)が本会議場で行う演説には「所信表明演説」と「施政方針演説」があります。フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、両者の相違は次のように定義されています。

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所信表明演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が自分の考え(所信)を述べる演説で、以下の場合に衆議院と参議院の本会議で行われる。

   ●臨時国会の冒頭
   ●特別国会で内閣総理大臣が指名・任命された後
   ●国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合

施政方針演説は、政府の長(内閣総理大臣つまり首相)が年初における政府の方針を述べる演説で、通常国会(年に1回、予算編成のため必ず召集されることが憲法上義務づけられている国会のこと。憲法では「常会」という。1月末に召集、150日間の会期で6月まで行われるが、1回のみ両議院の議決で会期延長ができる)での冒頭で衆議院と参議院の本会議場で行われる。
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つまり、通常国会の冒頭において、内閣総理大臣が内閣全体での方針や重点課題を説明する演説を「施政方針演説」と呼ぶのに対して、その他の機会(今回の場合は上記の国会の会期途中で内閣総理大臣が交代した場合)に、内閣総理大臣の所信(個人としての自分の考え)として、国政についての方針や重点課題を説明する演説を「所信表明演説」とよぶのです。 

6月7日の私のブログ「菅直人新首相は、所信表明演説で『環境問題』について、何を語るか」で、私は、2001年の小泉純一郎首相から、安倍晋太郎首相、福田康夫首相、麻生太郎首相(以上は自民党政権)と民主党政権の鳩山由紀夫前首相の「所信表明演説」とそれに続く「施政方針演説」に期待し、そしてその結果にことごとく失望してきました、と書きました。

6月11日の菅新首相の「所信表明演説」は過去10年間の歴代の首相の「所信表明演説」よりもかなり期待できそうな気がします。また、この所信表明演説の背景として朝日新聞に掲載されたインタビュー記事「新政権 経済政策の課題 上中下」も、従来のインタビュー記事とは内容的にかなりの相違があるように思います。菅新政権の今後あるいは成果をしかるべき時に評価するときの背景資料として役に立ちそうですので、このブログに収録しておきましょう。

今日の朝日新聞によりますと、「菅首相は口述筆記で初稿を作り、その後官邸スタッフが整えた原稿に自身が手を加えるという作業を10回程度くり返した。最後は『おれが全部書く。1時間、時間を作れ』と自ら執務室にこもり、最終稿を書き上げた」のだそうです。

首相の所信表明演説 財政重視 筋道は不透明(朝日新聞 2010年6月12日)



菅首相の所信表明演説の構成は次のようになっています。
1.はじめに
2.改革の続行-戦後行政の大掃除の本格実施
3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し
4.責任感に立脚した外交・安全保障政策
5.むすび

私の関心事である環境分野の記述は2カ所あります。歴代の首相の「所信表明演説」よりも格段の期待が持てそうな記述です。一つは「3.閉塞状況の打破-経済・財政・社会保障の一体的な立て直し」のところで、次のように書かれています。

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第1の「グリーン・イノベーション」には、鳩山前総理が積極的に取り組まれ、2020年における温室効果ガスの25%削減目標を掲げた地球温暖化対策も含まれます。その他にも、生物多様性の維持や、人間に不可欠な「水」にかかわる産業など、期待される分野は数多く存在し、その向こうには巨大な需要が広がっています。運輸部門や生活関連部門、原子力産業を含むエネルギー部門、さらには、まちづくりの分野で新技術の開発や新事業の展開が期待されます。
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もう一つは「4.責任感に立脚した外交・安全保障政策」のところで、次のように書かれています。

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我が国は、地球規模の課題についても積極的な役割を果たしていきます。気候変動問題についてはCOP16に向けて、すべての主要国による、公平かつ実効的な枠組みを構築すべく、米国、EU、国連などとも連携しながら、国際交渉を主導します。この秋、愛知県名古屋市で開催されるCOP10では、生物の多様性を守る国際的な取り組みを先進させます。
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菅首相の「所信表明演説」(全文) 朝日新聞 2010年6月12日


また、朝日新聞は、6月10日から12日まで、菅新首相の経済政策に関連して「新政権経済政策の課題」と題するインタビュー記事を3回掲載しています。これらの記事も首相の「所信表明演説」を理解する助けとなるでしょう。



 

神野さんがおっしゃる「社会正義」 、言いかえれば、「格差是正」や「所得の平等な分配」などの観点などはスウェーデン型福祉国家の骨格をなす価値観です。21世紀にスウェーデンがめざしている「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)の概念でも、次の図に示したように、「社会正義」が明確にうたわれています。



首相の所信表明演説には、「スウェーデン」という言葉は一言も出てきませんが、これらの資料から判断しますと、菅首相は日本の望ましい将来像として、「スウェーデン社会」を念頭においているように思います。そうだとすれば、最近では、あの竹中さんでさえ雑誌のインタビュー記事やご自身の最新の著書で「スウェーデンに学べ」と書いておられますので、37年間日本とスウェーデンの「社会と環境分野」を同時進行でフォローしてきた私にとって、「時代の大きな変化」を強く感じます。

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