環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

2010年9月掲載のブログ記事

2010-09-30 23:44:56 | 月別記事一覧
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1.2010年9月掲載のブログ記事(2010-09-30)

2.常に時代の最先端を歩むスウェーデン:上海万博の 「スウェーデン館」、大阪万博 「スカンジナビア館」(2010-09-25)

3.スウェーデン総選挙の開票結果:「連立与党が勝利、172議席獲得、過半数には3議席届かず」(2010-09-21)


4.今日はスウェーデンの総選挙、 ドイツは原発回帰に猛反発デモ(2010-09-19)

5.昨夕、菅改造内閣が発足。 明日はスウェーデンの総選挙:こちらも大接戦(2010-09-18)

6.温暖化の使者(温暖化の生物指標の1つ)?  「ツマグロヒョウモン」 が2年前に我が家の庭にも!(2010-09-17)

7.1992年の 「地球サミット」 当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違(2010-09-13)

8.10月の 「COP10」 議論される2つの主要テーマ 「名古屋ターゲット」 と 「名古屋議定書」(2010-09-12)

9. 世界経済フォーラムの「国際競争力報告 2010-2011」 スウェーデン2位、日本6位(2010-09-10)

10.地球的規模の環境問題に正面から対応出来ない 「自然科学」 と 「社会科学」 (2010-09-09)

11.ニューズウィーク誌の「世界のベスト・カントリー 100」 スウェーデン3位、日本9位(2010-09-05)
  

常に時代の最先端を歩むスウェーデン:上海万博の 「スウェーデン館」、大阪万博 「スカンジナビア館」

2010-09-25 21:24:08 | Weblog
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開園148日

今日の「スウェーデン館_中国2010年上海万博公式サイト」をクリックすると、上のような文字が目に飛び込んできます。
上海万博の会期は10月31日までの180日間です。

そして、スウェーデン館(パビリオン)が・・・・・



ネット上には数多くの関連記事がありますが、それらの中から資料価値が高いものを選んでみました。

ネット上にある主な関連サイト

●上海万博スウェーデン館(上海市観光局のホームページ)

上海国際博覧会は2010年5月1日から10月31日までの半年間開催されます。閉幕まであと37日(9月25日現在)、昨日(9月24日)の参観者数はおよそ35万人、累計参観者数はおよそ5577万人だったそうです。
 
2010年10月17日にこの記事を追加

●スウェーデン館_パビリオンCゾーン_中国2010年上海万博

●Welcome to the website of the Swedish Pavilion
スウェーデン館のウェブサイトへようこそ


博覧会の統合テーマは「より良い都市、より良い生活」(Better City、 Better Life)。この統合テーマに沿って、スウェーデンがスウェーデン館で提案するテーマは「持続可能性」(Sustainability)で、具体的には「持続可能な都市」(Sustainable cities Swedish theme at Expo 2010 in Shanghai)です。まさに時代が求めている最先端のテーマです。

スウェーデンでは、持続可能な都市の概念づくりや建設の実施は、今に始まったことではありません。次の図が示しますように、既に18年前の1992年の「地球サミット」の頃から自治体を中心に始まっていました。



このブログ内の関連記事
ストックホルム最大の「都市再生プロジェクト」の現状(2007-07-11)

緑の福祉国家62 「政策評価」のためのチェック項目(2007-06-01)

年度末にあたって、改めて「日本の都市再開発への疑問」(2008-03-27)

今日の決断が将来を原則的に決める(2007-04-04)



それでは、このあたりで40年前の「大阪万博」にタイムスリップしてみましょう。大阪万博の「スカンジナビア館」の外観と主張は次のようなものでした。そして、統合テーマは「人類のシンポと調和」でした。



このブログ内の関連記事
1970年の大阪万博のスカンジナビア館(2007-03-18)

第1回国連人間環境会議(2007-03-28) 



ネット上で見つけた興味深い関連記事

●幻のスカンジナビア館~1 

●幻のスカンジナビア館~2

●牛鍋蝸牛(ぎゅうなべ・かたつむり)地名の虫ブログ : スカンジナビア

●小田原万博探偵ブログ : 幻のスカンジナビア館の図面をさがせ。

●小田原万博探偵ブログ : 幻のスカンジナビア館のガレキをさがせ。

●パビリオンその後

●日本万国博覧会 – Wikipedia

●原子力委員会 長計についてご意見を聴く会(第9回)議事録 ご意見を伺った方 小林 傳司 南山大学教授 

 この議事録は32ページにおよぶ長文ですが、その12ページに次のような記述があります。
xxxxx
 ・・・・・それから、大学紛争、公害問題、皆さんご存じのとおり、それからアポロ11号、これは1969年の7月です。大阪万国博覧会、人類の進歩と調和、月の石が展示されました。未来学ブームです。唯一未来を謳歌しない展示をしていたパビリオンがありました。それはスカンジナビア館でありまして、そこでは公害問題の展示一色でした。ちょうどこの時期に入れかわるわけですね。意識が少しずつ変わり始める時期です。日本でも万博会場の外側では公害問題が議論されていました。そして、オイルショックが1973年です。そして、アメリカがテクノロジー アセスメントの部局をつくるのが1972年です。・・・・・・

・・・・・大阪万博のときの電力は当時稼働を始めた若狭湾の原子力発電所によって全面的に供給され、それは未来の火として売物でありました。今4割近くの電力を原子力発電所で賄いながら、万博のときに、2005年、愛知万博ですが、売物に絶対なりません。これをどう考えるかということになるわけです。・・・・・
xxxxx

●PDF] 淀野 隆 「私の万博体験」 ~モノとヒトの出会いのドラマ~

この報告書も33ページにおよぶ長文ですが、7~8ページにかけて次のような興味深い記述があります。
xxxxx
・・・・・ ところが博覧会では“ 先進国” の欧米諸国館では、どちらかといえば「ところてん式」動線を重視していた。典型は「英国館」であろう。いかなる内容のショーであろうと、1時間に1,800人に来場してもらい満足な情報を与えるためには、2分間で60 人ずつに情報に接してもらう必要がある、という計算をした。そこで採用されたのが、「マルチ情報提供」である。32 台のプロジェクターを使い16 のスクリーンに英国の文化、芸術、建築、生活などの紹介を2分間隔で見せる。大阪万博では、これをじっくり見るには、観客は忙し過ぎた。しかしマルチ映像との出会いにすべての日本人は驚いた。

スカンジナビア館はこのスライドプロジェクター技術をフルに活用し、公害問題に真正面から取り組んだパビリオンだった。来場者は入り口で「紙のスクリーン」を渡される。その手に持ったスクリーンで、天井から投射される映像を受けて進む。中央から右がマイナスの世界、左がプラスの世界だった。公害に対する警告や生活のあり方が映像や文字で投射された。これも大阪万博のお客には「奇異」であり「面白くない」ものだった。 殆どの来館者が素通りした。仲の良いスカンジナビア館の広報官からある日相談を受けた。

「みんな素通りしてしまう。どうすれば良いだろう?」「そうだね出口の扉を閉めて中で滞在させるようにしたら……」とアイデアを出した。数日後に電話があり「駄目だ!今度はみんな出口の前に集まり出口が開くのを待っている…」これには私も絶句してしまった。
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さらに、もう一つ追加します。

●循環型社会への模索-われわれはどこからきてどこへいくのか-
武田信生 支部長(京都大学大学院教授・眞宗大谷派西廣寺住職)

およそ8年前に行われた武田さんのこの講演の要約の中に「大阪万博で、スカンジナビア館は『工業社会における環境保護』を提唱し、技術が人間にマイナスに働くこともあるという警告をしていた」という記述があります。 

私はこの講演の要約に示された武田さんの「環境問題」に対するお考えに全面的に賛同します。ただ、ここで注意しなければならないのは、この講演の要約の中で武田さんがおっしゃている「循環型社会」と、現在、日本の政府や自治体が進めている「循環型社会」は、同じ言葉を使っているにもかかわらず、両者は定義がまったく異なり、似て非なるものであることです。日本政府や自治体が進めている「循環型社会」は循環型社会形成推進基本法(2000年、平成12年6月2日法律第110号)に準拠するものですが、この法律の目的は大量生産/大量消費/大量廃棄で成り立っている日本社会の廃棄物の処理・処分に力点を置いた基本法だからです。

このブログ内の関連記事
「持続可能な社会」をめざす国際社会と独自の「循環型社会」をめざす日本(2007-09-30)

平成19年版「環境・循環型社会白書」の不可解(2007-10-27)



このように、1970年の「大阪万博」と40年後の「上海万博」でのスウェーデンの振る舞いを概観してみますと、日本が高度成長期を経験した直後に、スウェーデンは他の北欧諸国と協力して「大阪万博」で今でいう「地球規模の環境問題」に警鐘をならし、2010年の「上海万博」では、高度経済成長まっただ中にあり、おそらく持続不可能な都市上海で、「持続可能な都市」の構築の必要性を訴え続けていることがわかります。

スウェーデンと日本の間には、「環境問題に対する考え方や対応」について、20年の落差があると言っても過言ではないでしょう。

スウェーデン総選挙の開票結果:「連立与党が勝利、172議席獲得、過半数には3議席届かず」

2010-09-21 21:24:50 | 政治/行政/地方分権
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9月18日のブログの「★明日は、スウェーデンの総選挙」の項で、「明日以降、スウェーデンの選挙結果を日本の一般紙がどのように報道するか注目しましょう」と書きました。今日はその最初です。

今朝の朝日新聞、毎日新聞および産経新聞が9月19日に行われたスウェーデンの総選挙の開票結果を次のように報じています。スウェーデンのメディアによれば、この選挙の最終結果が出るのは、9月22日(水)だそうです。ですから、ここに掲げた朝日新聞や毎日新聞、産経新聞の報道記事はあくまで9月19日に行われた投票の開票結果で、期日前投票の結果や外国在住の投票者の投票結果は反映されていません。



毎日新聞 2010年9月21日
与党連合が辛勝 スウェーデン総選挙 極右、初の議席



産経新聞 2010年9月21日
スウェーデン 中道右派 与党が勝利 高福祉の左派は退潮





今日はスウェーデンの総選挙、 ドイツは原発回帰に猛反発デモ

2010-09-19 10:58:24 | 政治/行政/地方分権
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今朝の朝日新聞は4面(国際面)で、今日行われるスウェーデンの総選挙とドイツの首都ベルリンの中心部で行われた大規模な原発反対運動を伝えています。今日はこの2つのニュースを将来の参照用としてこのブログ上に留めておきます。





このブログ内の関連記事
スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)



9月6日の毎日新聞と7日の朝日新聞が、ドイツのエネルギー体系を支えている原発について、新しい決定がなされたと、次のように報じています。

原発「必要」12年延命 独政権、全廃から転換(朝日新聞 2010年9月7日)
 

そして、今日、9月19日の朝日新聞はこの決定に対して、首都ベルリンで大規模なデモが行われたと報じています。詳しいことはわかりませんが、これらの記事を見る限り、ドイツの原発に対する考え方は、スウェーデンが21世紀前半社会にめざす「エネルギー体系の修正計画」と似て来たようにも見えます。
独・原発回帰に猛反発  ベルリンで大規模デモ(朝日新聞 2010年9月19日)  


(注)9月26日に、関連記事として上の記事を追加した。


この機会に、原発を運転すれば必ず排出される「高レベル放射性廃棄物」に対する処分の現状を示しますので、合わせてご覧ください。米国のオバマ政権が2009年に、前政権が決定していた「高レベル放射性廃棄物処分計画」を適切でないとして計画変更を決めましたので、現時点では、最先端を行くフインランドとスウェーデンにフランス、ドイツが続くという構図となっています。

今後も原発推進を続ける方針を明らかにしている日本は、2009年に日本の資源エネルギー庁が作成した次の資料によれば、皆さんの期待に反して(?)、高レベル放射性廃棄物の処分の分野ではスイスやイギリスと共に、中国の後に位置づけられています。日本政府の原子力担当の行政機関である資源エネルギー庁が作成した最新の広報資料ですので、誤りはないでしょう。

関連記事として、このブログ内の記事からスウェーデンの動きを掲げておきますので、合わせてご覧ください。

このブログ内の関連記事
スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決(2010-06-22)

日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?(2010-02-17) 




昨夕、菅改造内閣が発足。 明日はスウェーデンの総選挙:こちらも大接戦

2010-09-18 23:50:42 | 政治/行政/地方分権
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今朝の朝日新聞は昨夕発足した菅改造内閣の関連ニュースが満載です。他の全国紙も同様でしょう。

環境問題の改善や解決の為には「技術」よりも「政治」や「社会制度」だ、と考える私が最も注目しているのが菅改造内閣の顔ぶれです。予想外に早く、その顔ぶれが決まりました。

内閣閣僚名簿(時事)


今日とりあげる閣僚は、今回の菅改造内閣で環境相となられた松本 龍さん(この方についてはまったく知りません)ではなく、法務・拉致を担当することになった柳田 稔さんです。私は今回の菅改造内閣の発足まで、柳田さんのことをすっかり忘れていましたが、テレビでお顔を拝見し、17年前のことを思い出しました。

17年前というのは、環境基本法案とその関連事項が衆議院環境委員会で審議された年です。私は中央公聴会公述人の1人として柳田さんの他、何人かの環境委員と向き合っておりました。

○原田委員長 柳田稔君。

○柳田委員 まず最初に、小沢公述人にお伺いをしたいのでありますけれども、「この法の制定により、環境問題が改善の方向に向かうとは到底考えられない。」だから反対だというふうな結論であります。

私は逆に、先生が望んでおるような、ここまでできれば、例えばスウェーデンの先ほど言った環境コードですか、までできればそれはすばらしいものかもわかりませんけれども、現段階でこの環境基本法をつくっていって、さらに、先生も書いてあるとおり「法律には国民を間接的に教育してしまう効果がある」ということですから、国としてもこういうふうに環境に対して大変関心を持って前に進めるんだ、そういうふうなことも出てくるんではないかと思うので、私は、なぜ反対されるのか、まだ少しわからないのでありますけれども、いかがでしょうか。

○小沢公述人 反対というか、あるよりない方がいいかと問われれば私はあった方がいいという程度の話でして、つまり実効があるかどうかという点を考えたときに、もう少し環境問題ということを真剣に考えてやればもっと別なものができるであろう、こういうふうに私は思うわけです。

それはなぜかといいますと、今私が聞いている範囲では、この法律ができたときになくなるものは何かというと、公害対策基本法がなくなる、それで、そのほかのものは残るというわけですね。つまり、公害対策基本法のもとでできた大気汚染防止法とか水質汚濁防止法とか、そうゆうたぐいは残るわけです。そうしますと、過去の行政の対応と、つまり法律というのは生きているわけですから、変わらないではないか。もし許認可事項をやるとしても、今までの大気汚染防止法に沿ってやるのでしょうし、水質汚濁防止法に沿ってやるわけです。あるいは廃棄物もそうだと思います。
そうだとすると、私の認識では、20年前よりも今の環境の状態は一部のものを除いて悪くなっている、こうゆうふうに考えているわけです。ですから、従来と同じ法律が生きていて、それを早く変えるというなら別ですよ。早く変えるということがあれば、そうですけれども、既存の法律として生き続け、それに基づいて行政が判断をする、アセスメントもそうです、そういうことになれば、汚染物質はふえてしまうじゃないか、そういう意味で反対だと言うわけです。

○柳田議員 また、小沢先生に質問でありますけれども、基本法、これで環境を守るのだという理念を我々はうちだすわけですね。・・・・・・



この議論の続きは、次の 「環境基本法成立から14年⑩」をご覧ください。続いて、このブログの最終回「環境基本法成立から14年⑪」をご覧ください。なお、この環境委員会公聴会の議論全般にご興味のあるかたは、下記の関連資料をクリックして下さい。

このブログ内の関連記事
環境基本法成立から14年⑪ 中央公聴会での質疑応答を終えた私の感想(2007-01-16) 

環境基本法成立から14年⑩ 中央公聴会での質疑応答-その4 柳田委員とバトル(?)(2007-12-15) 

環境基本法成立から14年⑨ 中央公聴会での質疑応答-その3 情報公開、海外での企業の倫理規制(2007-12-14)

環境基本法成立から14年⑧ 中央公聴会での質疑応答-その2 環境教育、エネルギー政策(2007-12-13)

環境基本法成立から14年⑦ 中央公聴会での質疑応答-その1  環境計画、アセスメント、情報公開(2007-12-12) 

環境基本法成立から14年⑥ 中央公聴会での意見陳述-その4(最終回) 環境問題の本質(2007-12-11) 

環境基本法成立から14年⑤ 中央公聴会での意見陳述-その3 この法案の最大の欠陥(2007-12-10) 

環境基本法成立から14年④ 中央公聴会での意見陳述-その2 「環境保全」の意味が明確でない(2007-12-09) 

環境基本法成立から14年③ 中央公聴会での意見陳述-その1:エコロジー的視点が欠落している(2007-12-08) 

環境基本法成立から14年② 不十分なので、このままで私は反対だ!(2007-12-07) 

環境基本法成立から14年①(2007-12-06) 

関連資料
第126回国会 環境委員会公聴会 第1号(議事録全文)

今日改めて、この議事録を開いてみますと、今回の菅改造内閣で文部科学大臣になられた高木義明さんと国家公安および消費者・食品安全・少子化・男女共同参画担当大臣になられた岡崎トミさんのお二人のお名前を目にします。



私が17年前の柳田さんとの「環境基本法案」を巡る17年前のバトル(?)を、今日わざわざ持ち出したのは、今、山積している問題に対して目の前の困難から 「無いよりはまし」 程度の法律をつくっても、早晩行き詰まるという経験則を政治家にしっかり理解して欲しいからです。日本の政治家は行き詰まると、かならず「抜本的○○」というのですが、文字通り実行したことは一度もないといってよいでしょう。

菅首相は初めての内閣を自ら 「奇兵隊内閣」 と名付けました。奇しくも、菅首相は昨日発足した菅改造内閣を自ら 「有言実行内閣」 と名付けたそうです。そうであれば、菅内閣の閣僚が「抜本的な○○」と発言したときにはぜひ、文字通り抜本的な行動をとって欲しいと思います。

このブログ内の関連記事
政治が決める「これからの50年」(2007-01-05)



★明日は、スウェーデンの総選挙

さて、明日9月19日(現地時間)はスウェーデンの総選挙の日です。こちらも大接戦です。世論調査によれば、現政権である連立与党がやや優勢のようですが、野党連合が勝つとスウェーデン政治史上初の女性首相の誕生というサプライズがあるようです。

このブログ内の関連記事
スウェーデン社民党新党首に モナ・サリーン氏を選出(2007-03-25)

政治家の不祥事(2007-01-20)


また、移民促進政策に強く反対するスウェーデン民主党(極右政党)が初の国会議席を獲得するかもどうかも大多数のスウェーデン人にとっては大変気がかりなところです。与党連合 (保守党+自由党+中央党+キリスト教民主党)、 野党連合 (社会民主党+左翼党+環境党)共に真っ二つに別れ、数議席を争う大接戦ですから、スウェーデン民主党が国会の議席を獲得した場合に、この党にどう対応するかで大変難しい問題が生ずるからです。

明日以降、スウェーデンの選挙結果を日本の一般紙がどのように報道するか注目しましょう。

このブログ内の関連記事
スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)



温暖化の使者(温暖化の生物指標の1つ)?  「ツマグロヒョウモン」 が2年前に我が家の庭にも!

2010-09-17 19:05:28 | 温暖化/オゾン層
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今日の朝日新聞の夕刊の一面に、こんな記事が出ていました。



この「ツマグロヒョウモン」という蝶は今や「地球温暖化の生物指標」の1つになっていることを数年前から聞いて知っておりました。    

この記事によりますと市民参加調査「いきものみっけ」調査という環境省の調査プロジェクトがあり、約30種類の生物がその対象になっているとのことです。


そこで、思い出したのが2年前の秋のちょっとした少年時代に返ったような心躍る体験でした。庭の草むしりをしていたときに、門扉から玄関に通じる飛び石の近くにいままで見たこともない不気味な幼虫(下の図の黒にオレンジ色)を見つけました。30分ぐらいかけてインターネットで調べてみると、ツマグロヒョウモンの幼虫のようでした。たしかに、庭には食草となるスミレもありますし、葉が虫に食べられた跡も残っていました。

これが話題のツマグロヒョウモンか。それではと、私の人生で初めて蝶の幼虫の飼育を試みました。そして、その成果が次の2枚の写真でした。




ツマグロヒョウモン色々

埼玉県にお住まいの蝶の専門家の知人から「神奈川では大変有名になったアカボシゴマダラというチョウを初めて見ました」というメールを9月4日にいただきました。そこで、インターネットでこの名も知らない蝶を調べてみました。この蝶も「地球温暖化の生物指標」となっているようです。

今日、庭をせわしく飛び回っていた見慣れないあの蝶はもしかしたら「アカボシゴマダラ」かもしれないと淡い期待をもって、また、明日にでも来るかもしれないと蝶との再会楽しみにしています。もし、そうであれば、今日は記念すべき日の1つになるかもしれません。



     

1992年の 「地球サミット」 当時のスウェーデンと日本の環境問題に対する認識の大きな相違

2010-09-13 13:44:47 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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1987年4月に、国連の「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が「持続可能な開発(Sustainable Development)」の概念を国際的に広める先駆けとなった報告書「われら共有の未来」(通称ブルントラント報告)を公表してから、今年で23年となります。

ブルントラント報告が公表される以前から、発展途上国への援助を通して「持続可能な開発」を試みてきたスウェーデンが描く「持続可能な社会」の環境的側面の要約が、92年の地球サミットの前年(91年10月)に、スウェーデン環境保護庁から公表されています。


10月に名古屋市で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議=国連地球生きもの会議)との関連で言えば、上の図の⑧がわかりやすいと思います。この判断基準に従えば、70年代頃までは、日本のどこにでもいたメダカやドジョウ、タナゴなどの魚、フジバカマのような野草は、今絶滅が危惧されていますし、日本の普通の風景であった里山や棚田の現状を見れば、日本の状況の厳しさが実感できるでしょう。

最近の状況は、日本では3155種が 「絶滅危惧種」 になっているそうです。



次の図はスウェーデンと日本の環境政策の長期目標を比較したものです。

スウェーデンの目標は1991年、日本の目標は1995年に公表されたもの。両国には明らかな認識の相違がみてとれます。スウェーデンの長期目標は翌92年の「地球サミット」で署名された「生物多様性条約」の一歩先を行くものでした。ここに、スウェーデンの先見性を見ることができます。「生物の多様性」に対するスウェーデンの認識は92年の地球サミット以前からのものですが、これがスウェーデンが現在めざしている「エコロジカルに持続可能な社会」(緑の福祉国家)を実現する必要条件の1つとして認識されていることにご注目下さい。

この認識は2003年8月にスウェーデン環境保護庁によって16番目の「環境の質に関する政策目標」として提案され、国会の承認を得て、2005年11月から正式に16番目の「環境の質に関する政策目標」となりました。政策目標の達成期限は2020年です。この目標は16の環境の質に関する目標のうち最も達成が難しい目標の1つと見なされています。


このブログ内の関連記事  
私の環境論10 生態系の劣化(2007-01-20)

私の環境論11 人間の生存条件の劣化(2007-01-21)





10月の 「COP10」 議論される2つの主要テーマ 「名古屋ターゲット」 と 「名古屋議定書」

2010-09-12 10:21:39 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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9月9日のブログで、

21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロがなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」であり、「生物多様性の保全問題」と言えるでしょう。

と書きました。

これら2つの問題は「増加する人口とそれに伴う経済活動の拡大」と「有限な地球の許容限度」との関係の厳しさを示しています。「気候変動問題」が先進国と新興国や途上国、あるいは先進国間での思惑の違いから十分な成果があげられないままに、それでも、一定の共通認識が国際社会で共有されるところまできましたが、もう一つの「生物多様性の保全問題」はどうでしょうか。

気候変動問題は1997年に「京都議定書」が策定され、現在に至っていますが、「生物多様性の保全問題」については、来月に名古屋市で開催される「生物多様性条約第10回締約国会議(国連地球生きもの会議=COP10)」で、「名古屋ターゲット」「生物資源の利益配分」についての国際ルールとなる「名古屋議定書」の策定が期待されています。


今日は、来月名古屋市で開催される「COP10」の議論についてまとめておきます。

次の記事が示しますように、「生物多様性条約」は、1972年の「第1回国連人間環境会議」(ストックホルム会議)の20周年に当たる1992年に開催された「地球サミット」(環境と開発に関する国連会議)で、「気候変動枠組み条約」と共に署名されたものです。ですから、署名からすでに18年が経っています。



9月4日の朝日新聞に掲載された記事「いちからわかる 地球いきもの会議」によりますと、「生物多様性条約には193カ国・地域が参加しており、10月に開催される生きもの会議はその総会で、150カ国以上の閣僚が出席する国際会議だ。開催国・日本の環境相が議長になる。会場では自然保護に携わるNGOや企業も、取り組みを紹介するイベントを開く。政府は、期間中に約8千人の来訪を見込んでいる」とのことです。

まったくの余談ですが、私がこの記事を読んだときに真っ先に思い出したのが2008年5月20日の朝日新聞が「会議で出るCO2相殺 1万1300トン 30年かけ吸収」という見出しで報じた松沢成文・神奈川県知事のお粗末な「CO2削減対策」と、その説明を聞いた当時の高村外務大臣の認識でした。 


本題に戻ります。5月11日の朝日新聞は、この条約が2002年に掲げた「2010年目標」が達成されず、失敗に終わったと報じています。


生物多様性条約には、次の図が示すように、

①生物多様性を守る
②生態系の恵みは、回復が追いつく範囲で利用していく
③植物や微生物などの生物資源(遺伝資源)を採取して利用したときは、その利益を原産国にも適切に配分する

という3つの目的があります。

来月10月に名古屋市で開催される「COP10」で話し合う基本テーマは2つあります。

1つは2020年までに達成すべき世界目標「名古屋ターゲット」(条約事務局の原案では、世界の海に占める海洋保護区の割合や増すべき資金の規模など20項目の目標が挙がっている)をまとめること。

もう1つは目的の3番目「生物資源(遺伝資源)の利用と利益分配」(ABS:ABSは植物や微生物などの遺伝資源を使って開発した商品の利益を、資源提供国にも還元すること。これまでは任意の国際ガイドラインで各国の国内法に従い事前契約を結ぶように求められていた)のための国際ルール「名古屋議定書」を策定すること
 


さて、10月に開催されるCOP10のルーツは1992年の「地球サミット」であったことがわかりました。それでは、18年前の地球サミットおよびその後の国際社会での日本の振るまいや環境問題に対する基本認識はどのようだったのでしょうか。次の関連記事をご覧ください。

このブログ内の関連記事
1992年の地球サミット:「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(2007-12-04)

私の環境論4 21世紀も「人間は動物である」(2007-01-14)

私の環境論5 動物的な次元から逃れられない人間(2007-01-15)


明日は、地球サミットの前年、つまり、1991年当時のスウェーデン政府の環境に対する基本認識を探ってみます。




世界経済フォーラムの「国際競争力報告 2010-2011」 スウェーデン2位、日本6位

2010-09-10 22:17:36 | 経済
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世界経済フォーラム(WEF)が2010年9月9日、2010-2011年版の「国際競争力」の調査報告を発表しました。次の図はトップ10の順位とスコアを示したものです。


1位はスイス、2位スウェーデン、日本は6位となっています。スウェーデンを初めとする北欧勢は、フィンランドが7位、デンマークが9位、ノルウェーが14位でした。

●プレス・リリース(日本語)
●プレス・リリース(英語)


次の記事は今日の朝日新聞に掲載されたものです。


朝日新聞の記事は共同が配信した記事を掲載していますが、次の毎日新聞の記事は署名記事となっています。


競争力ランキングと言えば、もう一つ、スイスのビジネススクールIMDによるものがあります。2010年7月5日の産経新聞がこのランキングを報じています。


スコアはシンガポールを100とすると、スウェーデンが6位(90.893)、中国18位(80.182)、韓国23位(76.249)、そして、日本は27位(72.093)、インド31位(64.567)でした。北欧諸国はスウェーデンに続いて、ノルウェーが9位(89.987)、デンマーク13位(85.587)、フィンランド19位(80.002)、アイスランド30位(65.067)でした。

背景資料
●IMD WORLD COMPETITIVENESS YEARBOOK

●THE WORLD COMPETITIVENESS SCOREBOARD 2010


この2つのランキング結果は「国際社会における経済的な競争力」という同じテーマを取り上げても、判断基準が異なれば結果も異なることを示しています。

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世界最強の 「IT国家」 となったスウェーデン(2010-07-18)
この記事の中に、WEFの「国際競争力報告 2009-2010」のトップ10のランキングが掲載されています。

WEFの「国際競争力報告書 2007-2008」(2007-11-02)

米誌 『ニューズウィーク』 が公表した 「世界のベスト・カントリー 100」(2010-09-05)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-09)
 
日本経済新聞 「経済教室」 スウェーデンモデルの核心学べ 安心確保 活力と両立を(2009-09-19)

日本経済新聞 「経済教室」から  低炭素社会構築の道筋  成長・福祉と同時対処を(2007-10-04)


20世紀のスウェーデンは他のほとんどの先進工業国と同じように、豊かさの向上、貧困や格差などの社会問題は経済が成長することで解決できると考え、フォアキャスト的手法で、「福祉国家(人にやさしい社会)」を建設し、維持してきました。

1972年にローマクラブが「成長の限界を」発表したちょっと前1968年ごろに環境問題の重要性に気づき72年には 「第1回国連人間環境会議」 の開催に漕ぎつけました。

1980年代後半からはそれらの経験と教訓から「持続可能な社会」の模索を始め、以後、地球の限界(地球の有限性)が科学的に明らかになってくると、他の先進工業国に先駆けてバックキャスト的手法を用いて「生態学的(エコロジカル)に持続可能な社会」への道筋を考え、96年には20世紀の「福祉国家」を「緑の福祉国家」(環境に十分配慮した福祉国家)を建設するという新たな政治的なビジョンを掲げたのです。

「エコロジカルに持続可能な社会」には社会的な側面、経済的な側面および環境的な側面の3つの側面があります。今回の国際競争力ランキングはスウェーデンがめざしているエコロジカルに持続可能な社会の「経済的な側面」の評価でもあります。

2000年以降、経済のグローバル化の進展が高まるにつれて、国際機関で様々な国際比較が行われ、それらのデータに基づいて、国際ランキングが公表されるようになりました。ランキングの生命は「判断(評価)基準の的確さ」ですので、国際的に試行錯誤がなされ、改善が加えられています。

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進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて私たちが、最近知ったこと(2007-09-06)



地球的規模の環境問題に正面から対応出来ない 「自然科学」 と 「社会科学」

2010-09-09 12:18:43 | 環境問題総論/経済的手法
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これまでにもくり返し書いてきましたように、「私の環境論」他の多くの日本の環境分野の専門家や活動家の議論と異なるのは「環境問題」と「経済(活動)」を最初から関連づけて考えていること、そして、環境問題の解決のためには「民主主義の考え方」と「その実践」が必須なこと、具体的には環境問題の解決は、従来の公害とは違って技術的な対応だけでは不十分で、経済社会の制度の変革をともなうこと、21世紀に主な環境問題を解決した「エコロジカルに持続可能な社会」の創造のためには、さまざまな「政策」とそれらの政策を実現するための「予算措置」が必要なこと、つまり、環境問題の解決に当たって、「技術の変革」と「政治と行政のかかわり」を強く意識していることです。

20世紀の安全保障の議論は「軍事的側面」に特化されていましたが、21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロがなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」であり、「生物多様性の保全問題」と言えるでしょう。

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古くて、新しい問題、「環境問題」をもう一度考える(2010-01-18)


20世紀の経済成長の本質は資源・エネルギーの消費拡大でした。21世紀の経済成長は資源・エネルギーの消費を抑えて達成しなければなりません。

自然科学は私たちが直面している環境問題の現象面を分析し、理解するのに役立ちますが、環境問題の主な原因が「人間の経済活動の拡大」であることを考えますと、環境問題の解決には「人間社会」を研究対象とする社会科学からの総合的なアプローチ(法体系や制度などのソフトな変革など)が強く求められます。

これまでの自然科学は、多くの場合、人間を除いて問題を考えてきました。環境問題とのかかわりが深い生態系の説明(最近の状況は分かりませんが)では、たとえば次の図のように、人間の存在が抜けており、自然を「人間社会の外側」に置く傾向がありました。


このような傾向に対して、3年前に初めてお目にかかった名城大学大学院総合技術研究科教授の垣谷俊昭さんは、名城大学人文紀要(第42巻2号、2006年)に寄稿された論文「地球環境問題と文明と人間のこころ」の中で、現在の地球規模の環境問題を考えるときにとてもわかりやすく、そして、私にとっては新鮮な「現在の生態分布の模式図」を掲げておられます。


生態系の最上位に位置する人間の置かれた状況を表現する逆三角形(生態学の法則に違反し、ライオンより圧倒的に多い個体数など)の不安定感とその解説が「地球規模の環境問題の深刻さ」を視覚的にも科学的にも巧みに表現されています。





一方、社会科学の分野でも、特に経済学は「外部不経済の内部化」という言葉に象徴されますように、人間社会の外側にある「自然」を研究対象とせず、しかも、その判断基準は「お金の流れ」であり、お金に換算できないことは無視してきました。


このように少なくとも20世紀の「自然科学」も「社会科学」も、そして、21世紀に入って10年が経過した現在でも、自然科学や社会科学は私のブログのテーマである21世紀の「共通の根っこである私たちの不安(経済、福祉、環境などの不安)」に正面から対応できないのが現状です。

このような現実から、次の関連記事が示唆するように、世界の経済学者や社会科学系の学者や著名人のほとんどが「経済危機」は語れても、同時に「環境問題」を語ることができないのだと思います。

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私の環境論 「経済危機と環境問題」① 岩井克人・東大経済学部教授(2008-10-17)

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑪ とりあえずのまとめ(2008-11-29)

環境問題を忘れた「早急な金融危機の解決策」は、更なる「大危機」を招く?(2008-12-13)

「成長論」しか言えない経済学界(2007-02-14)


また、著名なエコノミスト、イェスパー・コールさんは、およそ10年前、月刊誌『論争』(東洋経済新報社 1999年11月号)で、エコノミストについて、次のように述べています。

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エコノミストは将来を予測できるという思い込みは、20世紀末における最大の神話の一つといってよい。たしかに金融がここまで自由化され、世界中のメディアが情報を探し求めているとき、エコノミストやその仲間であるアナリストのコメントが需要されつづけるのは不思議なことではない。しかし、これだけは肝に銘じておこう。

昨日の予想がなぜ今日はずれたかを、明日説明できる者--これがエコノミストの正確な定義である。

エコノミストは、一国の経済動向や成長の原因を後から検証することはできる。しかし、何が景気回復や冨の拡大の引き金になるかを予測することは、彼らにとってもともと不可能なことである。
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イェスパー・コールさんの「エコノミストの定義」「エコノミストは将来を予測できるという思い込みは20世紀末における最大の神話の一つといってよい」いうメッセージは、私のエコノミストに対する認識を見事に表現して下さっています。翻って考えれば、私たち一般人の「経済の基礎知識」の形成に大きな役割を果たしているマスメディアは「エコノミストは将来を予測できる」という前提で日々、大量のフローの情報を流し続けていることになります。

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「エコノミストはもともと将来を予測できない」、とエコノミストが言う(2009-03-23)



私たちが長年にわたって築き上げてきた「自然科学」や「社会科学」の現状が「21世紀の新しい社会づくり」の基礎知識として十分でなく、エコノミストがもともと将来を予測できない状況下では、私たちは賢明な政治的リーダーの下に、不十分ではありますが自然科学と社会科学の知識を総動員して 「現実の政治と政策」で現状を変え、未来に希望を見いだせる「エコロジカルに持続可能な社会」を創造することが「不安の解消」につながるはずです。 

とはいえ、日本の政治状況は日々のマスメディアを通じて私たちが十分認識しているとおり、混乱していますし、政治を支える官僚組織は見事なまでの縦割り組織で、システマティックな対応がまったくできません。
 
ですから、私は「日本の将来像」を議論するときに、国際的に見ても総合的に高い評価を与えられている「スウェーデン」が考えている「21世紀社会の方向性」を十分に検証し、その考え方に合理性があると判断される場合には、 「スウェーデンの考え」を日本の現状から出発して希望が持てる日本の未来を創造する助けとすべきだと思うのです。

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米誌 『ニューズウィーク』 が公表した 「世界のベスト・カントリー 100」(2010-09-05)

EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)



ニューズウィーク誌 の 「世界のベスト・カントリー 100」  スウェーデン3位、 日本9位

2010-09-05 20:50:16 | 持続可能な開発・社会/バックキャスト
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ワールドカップ、オリンピックを忘れよ、ミス・ユニバース・コンテストも。
Newsweekはブローバルな真のチャンピオン国家を検証するために、経済、政治、健康、生活の質で国家をランク付けする。



こんな書き出しで、3週間前の2010年8月16日、米誌『Newsweek』(電子版)「THE WORLD‘S BEST COUNTREIS」と題して、上位100カ国のランク付けの結果を公表しました。

次の表は、私がこの調査報告の上位100カ国の中から、「上位10カ国」および「その他の先進国・新興国9カ国」を抜き出し、総合順位とスコアおよび各分野ごとの順位とスコアをまとめたものです。



●ニューズウィーク誌:世界の「ベスト・カントリー」 ランキングでフィンランドが1位!


8月20日の朝日新聞はこの調査報告を次のように伝えています。



また、『ニューズウィーク日本版』(2010年9月1日号)も、この調査に基づいて「世界の成長力&幸福度ランキング」と題する、26ページの特集「本誌初の『ベスト・カントリー』ランキング 健康で安全で裕福に暮らせる国の意外な条件とは」(ラーナ・フォルーハー:ビジネス担当)を組んでいます。
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現時点では、どの国に生まれれば、最も健康で安全に、裕福に、そして生活水準を高めやすい環境で生きられるか――この問いに答えるため、本誌は初めて「生長力&幸福度国別ランキング100」を作成した。

このランキングでは、国民の幸福にかかわる5つの側面――教育、健康、生活の質、経済活力、政治的環境――に着目し、それぞれの項目について100カ国の点数を算出。それを指数化して総合ランキングを割り出した。このランキングはあくまで08年と09年の状況を切り取ったものだ(今回のランキングでは、できる限り最新のデータを使用した)。歴史的な推移を明らかにするものでもないし、未来を予測するものでもない。

ランキング上位には、実にさまざまなタイプの国が並んでいる。活力があり、健全で、幸せな社会を築く方法は、1つではないのだ。この点は、世界の国々の政治指導者や政策担当者が頭に入れておいたほうがいいだろう。
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この特集に掲載されている10本の記事のうち、私のこのブログのテーマに直接関連する次の記事を紹介します。

●尺度 国の経済状況を測るには有効だが環境破壊などは示せないGDPは時代遅れ?
 いま求められている繁栄の新たな指標とは、GDPに代わる「幸福度」という指標
 クリストファー・ディッキー(パリ支局長)

また、この特集にはこの調査で使われた「ランキングの評価方法」が示されています

しかし、このランキングの評価方法の項目を見る限り、Newsweekのこの特集記事は未だに「20世紀の発想の域」を出ていないように思います。21世紀の国際社会はには20世紀の発想では解決できない難問が山積しています。その最大の問題が「地球規模の環境問題」だからです。

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私の環境論14 環境問題は経済の「目的外の結果の蓄積」(2007-01-24)

「21世紀型経済の持続性」が現時点で最も高いと示唆されるスウェーデン(2010-08-09)


これらの山積する問題は技術では到底解決できない問題です。これらの問題をコントロールするために、経済成長を各国間で分かち合わなければならなくなったとき、これらの問題に対して技術的にではなく、経済的、政治的にどう対処すべきを考えると、民主主義に基づいた組織機構が何よりも重要な手段となります。

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21世紀の資本主義、その行方は???(2008-03-30)


ですから、総合ランキングの第3位に位置づけられたスウェーデンが「政治的環境」の分野で、第1位にランクされていること(この分野は日本の最も弱い部分。日本は25位) は特筆すべきことだと思います。この分野で菅首相がお手本にしているとマスメディアが報ずる英国は、今回のNewsweekの調査結果でも、また、3年前の次の関連記事でも日本より評価が低いことが気になるところです。 

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EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)