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アジアと小松

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小松基地問題研究会

『土地』(朴景利著)つづき

2012年03月26日 | 読書
『土地』(朴景利著)つづき

 この小説は、「(朝鮮)李朝末期から解放まで、(朝鮮)民族の姿を崔参判家と平沙里の人々を縦軸にし、歴史的な社会状況を横軸にして描いたもの」(著者まえがき)です。
 昨年(2011年)、講談社から日本語版(6冊)が発行されましたが、完全版を4分の1ほどに縮めた青少年版の翻訳です。

 著者、朴景利は解放後の韓国を代表する作家のひとりです。1926年に、慶尚南道統営に生まれ、1955年に文壇にデビューしました。『土地』は1969年9月に執筆を開始し、25年の歳月をかけて、1994年に脱稿し、2008年5月、81歳で亡くなりました。

 石川県立図書館には、まだ、最後の1冊が届いておらず、5冊目を読み終えたところです。
 この物語(『土地』)は1890年頃の大地主の没落から始まり、1910年「韓国併合」、そして、1919年「三・一独立運動」、1923年「関東大震災」、1929年「光州学生決起」、1931年「万宝山事件」、「満州事変」、1938年「南京大虐殺」まで、日帝による残虐な植民地支配と朝鮮人民のたたかいが描かれています。

 幼少期の主人公たちが成長していく過程は比較的理解が容易でしたが、その子、孫の世代へと時間が流れ、空間が東アジア全域に広がり、日帝の支配が強まるにしたがって、読者(日本人)の理解を困難にしています。4分に1に短縮したこともその原因でしょう。

 上海爆弾事件と尹奉吉について著者がどのように描くのか、注目していたのですが、万宝山事件と満州事変から1938年の南京大虐殺に飛躍し、上海事変、桜田門事件(李奉昌)、上海爆弾事件(尹奉吉)が描かれていません。割愛された4分の3の中に含まれているのでしょうか、朴景利の尹奉吉観を見ることができないのは非常に残念です。

 最後の1冊は、侵略戦争への動員(徴兵、徴用、強制連行)と暴圧、解放を迎えるまでの物語になるのでしょう。著者は1926年生まれですから、不二越強制連行被害者(1930年頃の生まれ)と同世代です。彼女たちは日本の植民地支配のまっただ中で生まれ、成長し、1945年の解放を迎えました。著者や不二越被害者の人生は数千万の朝鮮人民に共通する人生です。

 強制連行被害調査に韓国を訪問し、当時の様子を肌で感じる機会を多く持ちましたが、あるとき、ソウルの雑踏で、老婦人から声をかけられたことがありました。韓国語を話すことができない日本人であることを伝えると、老婦人は日本語で話し始めたのです。街ですれ違う老人にも、公園でくつろぐ老人にも、すべてに共通する人生であることを思い知らされました。

 『土地』を、ここまで読んできて、私は、日本という国と民が、当時も今も相変わらずだという思いを募らせています。私たちの国と民が朝鮮(中国)に対して侵した罪を自覚しようとしない感性こそが、同じ過ちをくりかえす原因になるのではないかと危惧しています。
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