アジアと小松

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小松基地問題研究会

『もっと知りたい 金沢ふるさと偉人館 91人の偉人たち』

2013年04月21日 | 歴史観
『もっと知りたい 金沢ふるさと偉人館 91人の偉人たち』

 金沢市の昨年度予算で、金沢ふるさと偉人館が小学生用の郷土人物伝を編集・発行した。編集会議への傍聴を求めたが、拒否された。この1年間事務局と編集委員に、くり返し手紙と資料を送付して、植民地支配や侵略戦争で功績を挙げた人たちを賛美・美化する編集方針を批判してきた。

 当初、人物伝に取り上げる人物は体制順応型人物に偏在し、体制批判的人物は除外されていた。根本的には、弁証法的に歴史を見るのではなく、「偉大な人物が歴史を作る」という新自由主義史観に問題があった。

 私たちの批判は蟷螂の斧の如くではあったが、妥協策として、戦前の植民地支配と戦争に協力した人物を取り上げるならば、その内実にせまり、負の面も紹介し、かつ体制批判的人物をも取り上げるよう要求し続けた。

 たとえば、前者では、八田与一のダム建設は台湾植民地支配と切っても切れない関係にあること、飯森里安は原爆製造にかかわっていたこと、加藤せむは良妻賢母型の女子教育を推進していたこと、ジャーナリスト三宅雪嶺は太平洋戦争支持に転向したこと。もちろん軍人は言わずもがなである。

 後者では、資本主義を全面的に批判した作家島田清次郎や鶴彬、女性の参政権のためにたたかった米山久子や駒井志づ子、不屈のジャーナリスト桐生悠々を採用するよう要請した。

 当初30人程度としていたが仕上がった人物伝にはスペースの差はあるが、91人が対象化された。体制順応型の人物だけが歴史を作ったかのような新自由主義史観は退けられ、体制批判的人物も掲載することに転換された。しかし、植民地支配や原爆製造にかかわった人物を必死に守りぬこうとする事務局の壁はなかなか崩すことが出来なかった。

 2013年4月、『もっと知りたい 金沢ふるさと偉人館 91人の偉人たち』が、金沢市内の小学生に配布され、教材として使われることになった。現場の教員にとっても、体制順応型の30人の人物を教えるのか、体制批判的人物も含まれている91人の中から選んで教えるのか、教育空間が広がったと思う。特に、小さいスペースに閉じ込められた人物たちの中に社会を変えてきた人物がいることに注目してほしい。

<収録されている金沢ゆかりの人物>
【科学】
高峰譲吉、桜井錠二、木村栄、藤井健次郎、飯盛里安、(その他:大野弁吉、大屋あつ、井口在屋、高橋順太郎、辰巳 一、田中□吉、山崎延吉、原龍三郎、冲中重雄)
【文学】
徳田秋声、泉鏡花、室生犀星、中西悟堂、(その他:尾山篤二、小松砂丘、島田清次郎、中野重治、彬、長沢美津、中原中也、井上靖、水芦光子)
【学問】
三宅雪嶺、鈴木大拙、西田幾多郎、藤岡作太郎、(その他:石川舜台、長尾巻、赤羽萬次郎、井上友一、桐生悠々、細野燕台、中田邦造、米山久子、駒井志づ子)
【教育】
黒川良安、関口開、北条時敬、加藤せむ、(その他:小川直子、納富介次郎、メリー・ヘッセル、黒本稼堂、山本良吉、日置謙、石原堅正、赤井米吉)
【芸術】
谷口吉郎、北方心泉、松田権六、(その他:竹久夢二、魚住為楽、玉井敬泉、吉田三郎、木村雨山、氷見晃堂、高光一也、寺井直次、蓮田修吾郎)
【産業】
清水誠、津田米次郎、安宅弥吉、八田与一、(その他:関沢明清、中橋徳五郎、早川千吉郎、野口遵、小倉正恒、林 安繁、藤本吉二、畠山一清)
【地域】
小野太三郎、横山隆興、高多久兵衛、森下八左衛門、(その他:西川吉平(長右衛門)、森田柿園、長谷川準也、水登勇太郎、木谷吉次郎、井村徳三郎、三浦彦太郎、安藤謙治、浦上太吉郎、荒崎良道、松本佐一郎)
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