アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

20220919 A君とのウクライナ討論

2022年09月19日 | 読書
20220919 A君とのウクライナ討論

 ようやく、ロシア・ウクライナ戦争を冷静に見る目が生まれつつあるようだ。9月18日付けの『北陸中日新聞』書評欄には。『第三次世界大戦はもう始まっている』(エマニュエル・トッド)の書評が掲載された。さっそく本屋に走ろうと思う。

A君とのウクライナ討論
 2月24日に、ロシアによるウクライナ侵略が始まったが、この戦争の性格については、「20220306 日本は戦争加担をやめろ」(ブログ「アジアと小松」投稿)で、私の考えを展開した。3月中旬ごろに、A君から「(米帝・NATOは)対ロシアの挑発的軍事拡張を続けてきた。プーチンは追いつめられ、バクチ的な賭けに打って出た」「(ウクライナへの)軍事援助ではなく、自国政府の侵略加担…を阻止」と、米帝・NATOこそが戦争の原因をつくったという、私と同意見のメッセージが届いた。
 しかし、4月に入ると、A君はNATO批判をしなくなり、「ウクライナ人民の果敢な反撃」などと、ゼレンスキーの戦争が民族解放戦争であるかのようなニュアンスで話し始めた。挙げ句の果てに、A君は「侵略を受けたウクライナが、外国から武器を確保しようとすることは、当然だろう」と言いだした。これでは、日米欧帝国主義によるウクライナ軍事支援を容認する論につながるのではないかと感じた。

 5月に入ると、「ウクライナ人民は強固な民族意識を持って抗戦している」、「ウクライナ人民が戦争と平和の主体」、「ウクライナが被抑圧民族であることを明確にし、その自決・自己決定権を断固として擁護」と主張し、ウクライナにおける国論分裂(戦争反対派の弾圧と戒厳令)を無視し、ゼレンスキーの戦争を民族解放戦争として支持すると打ち出した。
 これは、ゼレンスキーとウクライナ人民を同一視した論調であり、ロシア語の使用を禁止し、ロシア母語人民の権利を剥奪し、ウクライナ領域内の人民(多民族、多言語、多宗教)を分裂させてきたゼレンスキーによる民族政策を支持してよいのだろうか。【注:「東部ウクライナでは、ロシア語が廃され、ロシア系住民への迫害が8年も行われてきた」(2022.5.31ヒューリマン 明子)、「ウクライナ政府―義務教育でのロシア語使用を2020年に完全廃止」(2019.10.5『Sputnik 日本』)、「ウクライナ―ロシア語広告禁止」(「2020.1.17『東京新聞』】

 また、A君は「ウクライナ人民はNATOから武器は受けても軍隊の直接介入を要請しない(だろう)」と推論し、武器援助までなら、傀儡国家にならないという趣旨のようで、ここでは、もう、おおっぴらに日米欧による武器援助にゴーサインを出している。しかし、『YAHOOニュース』(3/11)は「米英の情報機関と特殊部隊のチームがウクライナ国内で動いている」と報道し、『北陸中日新聞』(5/25)は「米軍統合参謀本部議長は5月23日の記者会見で、ウクライナへの米軍(特殊部隊)派遣を…検討している」と報道している。韓国(4人戦死)、欧米などから多数の「義勇兵=傭兵」が参戦(ポーランドからは1831人)していると報道されている(6/19『北中』)。

 その後も、「アメリカは榴弾砲18門と砲弾3万6000発、高機動ロケット砲システムの砲弾、対艦ミサイル「ハプーン」発射台2機とミサイルを送り、欧州諸国の国境に臨時倉庫を造り陸路輸送をおこなう」(6/17『北中』)。「侵略開始後の(アメリカによる)軍事支援は約56億ドル=約7500億円にのぼる」(6/19『北中』)などと報道されている。
 A君は武器援助と軍隊派遣のあいだに万里の長城を築き、武器援助まではOKであると主張しているが、しかし、欧米帝国主義はそのラインを突破していることを見なければならない。

 5月下旬には、A君は「<戦争の原因は米帝・NATO拡大である>、<米帝バイデンの世界戦争戦略が根本原因>という主張は反動的で危険な姿勢だ」とまで言いだし、3月中旬ごろの主張とは真逆の論に転換しているが、その転換の理由を述べていない。
 ああ! A君は日米欧帝国主義批判を封印し、「反帝」の綱領を引き降ろし、「容帝」に変質した。そういえば、5月初旬には、A君は「新しい反戦闘争」と書いていたが、かつて、ゴ・ジンジェム政権と米帝によるベトナム侵略戦争に、「日本の参戦国化阻止」を掲げて、砂川、羽田、王子、佐世保などで、命を賭けてたたかった若き学生・青年たちの精神も、「古くなった」ということか。

 その後も、A君は「アメリカ大使館に(ロシアによるウクライナ侵略を)抗議に行けば」と、茶化しているが、ウクライナ市民・兵士、ロシア人兵士に多数の死者が出ているときに、こんな軽口を叩いていていいのだろうか。A君は米(日)による武器・軍費援助(参戦)を問題にもせず、「アメリカ大使館へは抗議にいくな」というメッセージなのだろう。

 また、A君はウクライナ・ロシア間の民族問題は遡ればキリがないから、「(ロシアのウクライナ侵略は)2021年7月のプーチン論文に起源する」と主張しているが、せめて、1991年ウクライナが独立し、国家として自立した政策を展開できるようになってからの<ウクライナ・ロシア・NATO(米帝)>の政治、とくにゼレンスキー大統領就任(2019年)以降の<ウクライナ・ロシア・NATO(米帝)>関係とウクライナ市民の意思(ゼレンスキー大統領就任直後のアンケートでは多数がロシアとの交渉を望んでいる)を整理しなければ、戦争の本質は見失われ、米帝・NATOは「正義の味方」として免罪されるだろう。

 A君は「挙国一致の戦争動員に参加協力せず、ロシア軍と戦わないこと、国内外へ退避すること、…ウクライナ住民の自主的主体的な選択こそが尊重されるべき」と解説しているが、ゼレンスキーは60歳以下の男性の出国を禁止し、戒厳令を敷いていることには触れない。ロシアのウクライナ侵略開始にたいして、ゼレンスキーは市民の退避を優先すべきであったが、結果的に住民を盾にした戦争となり、多数の民間人の死傷者が出ている(沖縄戦の牛島司令官のように)。
 ロシア・プーチンによる侵略戦争を非難することと米帝・NATOによる戦争挑発・加担を批判することとは矛盾しない。どうも、A君は矛盾すると考えているようだ。 (6/19執筆)

 そのころ、私は、A君に別れを告げたが、その後どのような主張をしているのだろうか。8月25日のNHKニュースでは、ウクライナ支援について、「アメリカ=1兆3000億円+追加支援4000億円、イギリス=追加支援87億円(無人機2000機)、ドイツ=追加支援680億円(ロケットランチャー)」と報じ、ますます代理戦争の感を呈している。


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