アジアと小松

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小松基地問題研究会

20230904アナログ爺が、『堤未果のショックドクトリン』を読む

2023年09月04日 | 読書
20230904アナログ爺が、『堤未果のショックドクトリン』(2023年刊)を読む

 「ショックドクトリン」という聞き慣れない言葉の理解からはじめなければならなかった。堤は「ショックドクトリンとは、テロや戦争、クーデター、自然災害、パンデミック、金融危機、食糧不足、気候変動などショッキングな事件が起きたとき、国民がパニックで思考停止している隙に、…新自由主義政策(規制緩和、民営化、社会保障切り捨てなど)を強行すること」(37頁)と定義している。
 これはフリードマン(アメリカの新自由主義経済学者)の論法で、<①ショックを起こす、②政府とマスコミが恐怖を煽る、③国民をパニックで思考停止にする、④政府が新自由主義政策を導入する、⑤多国籍企業、投資家が国家と国民の資産を略奪する>という政治手法である。

 具体的な例として、南米チリーで、1970年の選挙でアジェンデ政権が成立し、米国資本が経営する銅鉱山や電信電話事業の国有化を図った。大地主の特権を奪う農地改革にも手をつけた。
 アメリカ(CIA)は大統領選挙の時から選挙に干渉していたが、本格的な転覆のための内政干渉が始まった。ブルジョアジーはアジェンデ政権への妨害を組織し、1973年9月11日のクーデターでピノチェット独裁政権が始まり、新自由主義政策を展開した。(ブログ「アジアと小松」「20170119映画「チリの闘い」劇場用パンフレットを読む」参照)
 もうひとつは、アメリカ2001/9/11ツインタワー事件直後の10月26日に、「米国内外のテロリズムと戦うこと」を目的として政府当局に対して権限を大幅に拡大させた法律「愛国者法」が成立した。電話、FAX、メール、クレジットカードナンバー、銀行口座、ネット上の発言や掲示板でのやりとり、書店で買った本などをチェックすることができるようになった(25頁)。
 イギリスでは、ワクチンパス(コロナウイルスのワクチン接種を受けたことを証明するもの)のなかに、メンタルヘルス、生活情報、生体認証データ、民族的出身、犯罪歴まで組み込んでいる。ノルウェーでは、ワクチンパスに顔認証機能を搭載し、食品購入履歴を追跡管理できるようにしている。スウェーデンでは、皮下に埋め込んだ極小チップ型パスを実験している。日本では、ペットの体内にマイクロチップを埋め込むことを義務化した。

 マイナンバーカードは、国民総背番号制であり、全国民に番号を付け、政府が、その番号を使って、納税、犯罪歴、金融口座、各種免許、親族情報等あらゆる個人情報を紐つけして管理する制度である。この国民総背番号制は、1968年に佐藤内閣が導入を検討したが、強い反対にあい、途中で頓挫した。
 マイナンバー法は2015年に成立した。国民総背番号制の時ほど反対世論が起きなかったのは、マイナンバーが「税、社会保障、災害分野の3つの分野に限定されている」と嘘をついていたからで、その後コロナパンデミック下で健康保険証や運転免許証と一体化させ、国民の監視・管理体制を強化しようとしている。

 堤未果は「注視しよう」とまでは言うが、その先は、アナログ爺の私たちこそが「反対!」と声を上げねばならない。

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