人間には寿命がある。これはいかんともしがたい。寿命があるのは人間ばかりではない。生物の宿命である。
寿命があるのは命を持っているものばかりでなく「もの」にも寿命があるようである。
ユニークなオーディオアクセサリーを製造販売しているGe3の一部の商品にも寿命があるようである。
私は「昇氣」と呼ばれるちょっと変わったGe3の製品を愛用していた。見た目的には良いものではない。
正方形の台座の上にウサギの毛であろうか、白いふわふわの毛が円形に乗っている。それを目にする人の多くは「ちょっと、不気味・・・」という印象を持つであろう物体である。
これをリスニングルームの四隅に設置すると、リスニングルームに響く音響に変化を与える。その変化の方向性は、「より生気がみなぎる・・・」という印象を受けるものであったので、10年ほど前から設置されたままになっている。
しかし、この「昇気」には寿命があるようなのである。写真を撮ってGe3にメールで送って判定してもらったところ、「寿命が尽きています・・・」との判定結果であった。
現在販売されている「昇気4」は、そういった「寿命問題」に対応すべく、エネルギーパックが交換できる仕様に変更されている。つまり寿命が尽きた場合、本体はそのままで内部に設置されてるエネルギーパックのみ交換すればまた復活する仕様となったのである。
「寿命が尽きた・・・」との判定を受けたので、全て最新バージョンの「昇気4」に切り替えることにした。
現在我が家のリスニングルームには四隅だけでなく、さらに3個追加して、全部で7個ある。リスニングルーム前方に壁際の床に3個、リスニングルーム後方の壁際の床に4個という布陣である。その7個すべてを最新バーションに切り替えた。
最新バージョンといっても見た目は全く同じである。床に置いてあるので、リスニングポイントに置かれたイージーチェアに腰かけると、視界には入ってこない。
「寿命が尽きた・・・」との判定を受けた「昇気」で耳を慣らした後に、7個すべてを取り換えた。設置位置は全く同じである。前方3個、後方4個である。
そして、つい先ほどまで耳にしていた、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番の第2楽章を、再度聴いた。「これで、変化がなければ・・・『どういうこと!』・・・となるよな・・・」と心の片隅で思っていたが、その最初の音を耳にして、そんな心配は「風と共に去りぬ・・・」という状況となった。
「音がフレッシュ・・・」、「若返った・・・」、「枯渇していたものが、再び沸き上がるような・・・」、「若々しい肌の張りを感じる・・・」という断片的な感想が心の中に沸き起こった。
10年選手であった従来の「昇気」は確かに寿命が尽きていたようであるということが、感慨深く納得できる音の変化であった。
「昇気4」になったので、今後は一定の時間が経過した場合には「エネルギーパック」を交換することによって、常にフレッシュな機能を保ったまま使用できる。
この「エネルギーバック」の交換機能・・・人間にもあれば良いのであるが・・・還暦を迎え、様々な機能低下をしみじみ感じるこの頃、そんな思いが心の片隅をよぎった。