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随筆紹介 「病院の姥たち」  文科系

2011年02月24日 10時38分52秒 | 文芸作品
 自作品以外で僕がここに紹介してきたのは、同人誌の月刊冊子作品から。これは先月号からのもので、S・Hさんの作。秀作と思っています。こうだから僕は、フェミニストを公言したいと、そんな内容の作品です。 

【 こういう人がいるから健康保険が赤字になると、お叱りを受けることを覚悟して書く。
 K整形外科病院は朝早くから治療を待つばあちゃんで溢れている。K団地の八十五歳以上の婆さま軍団がバス通院。午前八時、病院に到着。別のルートからの婆さま達と待合室で合流する。十人の病院友達が昨日も出会っているのに〔お早う元気だった〕と挨拶。
 全員の無事を確認する。八時三十分から始まる電気治療のフロアーは、名前を呼ばれた婆さま軍団で占領される。膝、腰、腕等、痛む部位に電気刺激、温湿布治療十分施行。
 電気治療が終わると名前を呼ばれマッサージ用ベッドに移動。たわいもない会話を青年マッサージ師とかわし、介助を受けながら手足の屈伸を十五分行う。硬くなった筋肉を揉みほぐす。〔腰、膝の痛みが和らぎ体が軽い。ああ、極楽。ありがとう〕マッサージ師に礼を言う。
 ここまでの治療は他の病院と同じだが、姥たちのお目当ては、K病院が、筋トレ用に設置した二つの医療器具が無料で使えるサービスにある。病院が繁盛する大きな理由だ。
 一つは、椅子に腰を掛け、足の爪先から付け根まで両足を差し込み、すっぽり包む一対の袋。スイッチをいれる。袷になった布袋が空気で膨らみ筋肉に圧力を加え、空気を抜く、を繰り返し、筋肉を鍛えることができる。三組ある器具を姥仲間が占領。おしゃべりが弾む。三十分で終了。待っている仲間と交代する。
 次は全身の筋トレだ。振動装置内蔵の台の上に両足を乗せる。台に固定された逆U字形の太いステンレスパイプを両手で掴み垂直に立つ。振動回数ボタン操作を、スイッチON。
 足の裏から振動が波のように押し寄せる。離れた場所から筋トレに励む姥たちを見ていると、衣服越しに、爪先から上に登るように全身の筋肉が大きく震えている。四分乗るだけで六キロ歩いて筋肉を鍛えたと同じ効果がある。今日の姥の治療はこれで完了だ。
 計算書が出来上がる。治療費は一割負担で百五十円。湿布を貰っても二百四十円の支払いだ。体が軽く気分良くなった姥軍団は、喫茶店ランチに繰り出す。
「今日から仲間に入るよ」と、元八百屋店主の姥が手をあげた。彼女は連れ合いをデイケアに預けることに成功、仲間に加わることが出来ると大喜び。昼飯作りは嫌だと、こぼしていた。「私がここに来るだけで、先生は一月三万円は儲かっている」と言って憚らない。さすが商人。チャンと計算ができる。独り暮らしの姥は、お化粧をして身だしなみもよく、友達を作り楽しむが、待合室で他の患者さんの迷惑になるような行動はとらない。
「一日、誰とも喋らない生活だとおかしくなる」と姥が公言。雨の日以外毎日病院に来る。
 元気だと思われている高齢者でもあちこち不具合を抱えている。年金生活で体の現状維持に気をくばり、最低の出費で抑えることを実行すれば、誰もがこのやり方になる。
 医療費の無駄遣いだとめくじらたてるな。これぐらいの恩恵があってもいいじゃないの。】

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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無敵の婆さん万歳 (まもる)
2011-02-24 11:51:25
 まさにリアルな現実の描写です。

 婆さまは逞しい。元気がないのは爺さまたちだ。
 わたしも毎日市営の温水プールに通っているが、元気で賑やかなのは婆さま軍団。

 水中歩行が目的だが、水中おしゃべりだ
安い温泉なのだ。
 水中歩行中も向かい合っておしゃべりに余念がない。
 後ろが詰まって困っていてもどこ吹く風。
 散々おしゃべりして、栄養たっぷりの体形を
誇ってプールサイドでまたひとしきりひとしゃべり。

 偏見ではないが我らお爺のかなうところではありません。
返信する
羨ましい (臆病爺)
2011-02-24 20:13:41
老いて男は友達がつくれない。
縦社会にどっぷり漬かっていたせいか
組織を離れると人との付き合い方がわからないし、その勇気がなくて閉じこもってしまう。

それに引き換え女は縦も横もない。
好奇心一杯で声をかけ友達を作る。
合わなければさっさと相手を選び直す。
おしゃべりで相手を知り自分を伝え絆を深めて
人生を楽しむ。
返信する
御応答深謝 (文科系)
2011-02-24 23:09:19
 まもるさん、臆病爺さん、御応答深謝。それも、この随筆を転載した意図にぴったり合った自己批判まで付けていただいて、願ったり叶ったり、我が意を得たり、でした。これを投稿した意味があったと、とても喜んでいます。

 僕は、現在まで15年ばかりやって来たこの同人誌活動と、それ以前から数年前まで長年続いたクリスマス・ホームコンサートに家族で参加したこととで、こういう女性たちと付き合ってきたのがとてもラッキーだったと振り返ることができます。

 何か楽しみを求めて、とにかく踏み出してみることだと思います。踏み出せば、何かが生まれる。こんな女性たちが集っている場所はいっぱいありますし、男が踏み出せば新しいモノを一杯付け加えられて彼女らも楽しくなり、男の影響、「力」に向こうも恩義すら感じるモノ。
 明日は、そういう随筆をご紹介してみましょう。「男が入って、人生が救われた」とまとめても良い作品です。これも素晴らしい随筆ですよ。
 我が同人誌に最近、80歳近い女性が一人入ってきました。人生に、遅意図言うことはないと思います!
返信する
女性は元気 (らくせき)
2011-02-25 13:11:28
ニュージーランドの地震で多くの方が
亡くなってしまって。
とくに若い女性たちが留学していたのに。
志途中で地震にあわれて、残念です。

アメリカへの留学が日本人は減ってしまって
大丈夫か?という声をテレビで聞きました。

しかし今回の地震で日本の女性は元気。
海外へも積極的に出て行っていることが
分かりました。

NHKがジャパンシンドロームなどと言って
日本は大丈夫か?とキャンペーンを
張っていますが、
ちょっと身近なところを見ると
また違った日本の姿が見えました。

ニュ-ジーランド地震で亡くなられて
方たちのご冥福をお祈りします。

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