所属同人誌の月例冊子8月号のあとがきに、こんな文章を書いた。
『 五輪「騒動」が終わったら、今度は「領土問題」が賑やかだ。こんな時にも、大マスコミが、官僚、政治家の手助けをしていると思えてならない。「福島」、景気などを脇に置こうとの「大本営発表」と言わぬまでも、誰かが新たな社会的ニュース種まきをしていることは明らかなのだから。それもやるにこと欠くように「無人島の領土問題」。大マスコミというのは変に「国家」を背負った機関なのか。不思議だ。こんなことよりも今の世界、総選挙を前にして扱う問題は山積だろうが! 二五歳以下の失業率はスペインで五割、イタリアやギリシャでもアメリカでも若者の失業は深刻らしい。日本でも同年代に失業、半失業は多く、その年齢の自殺者の最多原因だと聞いた。世界的に若者の就労がこんなでは、景気・税収どころか、世の希望そのものが壊れた時代と言えよう。今常勤の若者も含めて、この世代とその子の世代や、逆にその父母、祖父母など周辺の人々にとっても。』
さて、昨日この文章を読み直す機会があって、改めて痛感したことを書こうと思い立った。
スペイン、ギリシャでは、若者の失業率5割と聞く。イタリアもフランスも今後に予想されるユーロの沈下につれて、3割から4割へなどとふえていくだろう。なんせ、ユーロの存在で唯一利益を得ていると言われてきたドイツにスペイン救済策をめぐって憲法違反問題がわき起こり、ユーロ崩壊も噂され始めたのである。若者のこの失業問題はアメリカでも深刻であって、雇用問題が医療保険問題に次ぐオバマ大統領最大の課題になっている。ブリクス諸国はと見ても、中国の景気減速が各方面から予測され始め、この動きにつれて真っ先に職を失っていくのは中国都市化地域の若者たちだと思われる。
若者は世界の未来の希望だ。それが世界的に職業が無くって、日本では自殺者がますます増えるなどと、人類にとってこんな悲劇はないだろう。我々のような老人も、そもそも世間の親たる者皆が、安心して死ねないというような大問題ではないか。さて、誰がこうさせたのか。これはそもそもやむを得ぬ状況であるのか。
スペイン、ギリシャの「景気」はなぜここまで落ち込んだか。いずれもがサブプライムバブルの食い物にされ、その破裂の煽りからこうなったと言われてきた。世界の投資会社がこれらの国でもリーマンと同じことをして、日本住宅バブルが弾けた後の「失われた20年」と同質の、それよりももっと酷い状況になっているのである。さらに追い打ちをかけてこれらの国々の「売り」で今現在儲けている人々がいることも明らかである。しかもこれらの国は、貿易も日本のような黒字ではないし、日本のような莫大な個人貯蓄も皆無なのでもあろう。国際的信用が皆無だということだ。
サブプライムバブルというものはそもそもどういうものであったのか。僕はこう思う。ここで〇六年辺りから何度も書いてきたことだが。
前世紀80年代ほどから、供給サイド経済というかけ声の下に、世界の需要よりも供給の力の方が遙かに大きくされてきた。ここから、何に投資しても儲からず、金利をいくら下げても借り手さえいないような状況が生まれた。そこで日本などのだぶついた資本に目を付けた世界のある人々が、産業に投資するのではなくマネーゲームを企画・立案して、これに明け暮れるようになった。住宅バブルとその周辺の証券化商品が「無限の値上がり」、「無限の信用」を唱っていった。他方、マネーゲームならぬ現物企業の方では、株主資本主義ということで株価を上げるべく整理統合、切り売りなどなどと、短期的視野の合理化がとことん進められた。先進国からは、高度技術産業以外は消えていき、サービス業が増え、派遣、臨時などの雇用が増えた。
さて、こんな状況下ではいくら「景気が良く」?なっても、若者の職業など一向に増えるわけがないと思う。それどころか、この状況下で「景気がよい」ということと、良い職業が増えるということとは、矛盾する可能性の方が大きいのではないか。そもそも現物経済を手段にするようなマネーゲーム経済では、雇用など増えるわけもないのだと思う。
さしあたっての結論はこういうことだろう。短期的マネーゲームの世界的規制をして、そのかわりに資本がもっと新規有望「実業」の長期的育成に回るように、そこでもっと苦労していこうとなるようにしなければならない、と。若者の世界的失業問題自体が、こういうことを最も深刻に要求していると言えるのではないか。金子勝は例えば、日本再建に関わって「グリーンニューディール政策」を叫ぶ。そこでこそ、日本に景気と雇用とを作ろうと叫ぶ。この論は正しいと思うのだが、マネーゲームの世界的規制を抜きにしては、こういう政策も魂の入った実効性あるものにはならないはずだ。それはこういう姿を見ても明らかだろう。
日本やアメリカの大銀行は現在、ユーロ圏関係空売りでもっともっと大儲けをしようとしているはずだ。他の国に失業などの悲劇をもたらして自国が生き延びようというそんな姿勢は、昔で言えばその国に戦争を仕掛けるも同然だろう。そういう大国こそが、マネーゲームの世界的規制に最も消極的という意味で、犯罪的だとも言えるのだと思う。そもそも、この日本でギリシャやスペインの若者失業問題がこれほど話題にならないのは、どうしてなのかと、いつも不思議に思ってきた。
本当に拙い文は百も承知だが、僕が今最も気になっていることをなんとかまとめてみた。皆さんと、是非討論してみたい。
ドイツやフランスが南欧などの貧困世帯相手にサブプライム住宅を長年やってきた。リーマン爆発以降、そこの住宅バブルも爆発。傾いたギリシャなどにドイツなどの金がつぎ込まれてちょっと持ち直すとする。そこの大銀行の株が上がるなり、国債の利子が下がるなりね。するとしばらくして、日米などの投資銀行などが空売り大勝負をかけて、つぎ込んだ金を大儲け。また全てが、がたんと落ちるよね。するとまたまた新たな援助の相談だ。と、このように、同じことが延々と繰り返されてきたわけ。白紙の手形を切ってるようなもんだね。
確かに、通貨だけで経済・財政統合がないというシステムと、その中の経済不均等発展問題は絡んでいる。が、サブプライム住宅バブルがなければ、こんな大きな問題も起こらなかったとは、識者なら誰でも知っていることだ。バブル崩壊で値下がりが激しい分、空売りで大儲けできるのだからね。もう一つ、人の不幸を金にするシステムこそ僕は問題と思うけどね。
その欠陥は、随分前から指摘されてたのに
・ この窮状が実はまだ、公的債務1000兆超えでもそれを上回る国家資産があることと、国債が世界一の個人資産など国内でまかなわれていることとの上に支えられているのだ。つまり、今の老人たちの過去世界一の努力と有能さの上に、こんなに無能な日本国家の信用が保たれている訳である。
・ 以上は逆に、自民、民主政府自身及び官僚たちが効果的努力を何もしていないし、官僚の言うままの政治を変える気もないということを示している。その上で消費税を上げるというのだから、非常に質が悪い。消費税は、没落した中産階級にも、失業中の若者にも同じようにかかる。
・ かてて加えて、官民上げた環境、新エネルギーなどの新産業育成(雇用の増大)にも不熱心で、原発を死守しようとあがいてきた。そればかりか、大銀行は国債の金転がしを主たる儲け口とする有様。
・ このように蔓延した不条理風潮では、不条理な政治方針しか出てこないはずだ。橋下持ち上げ、石原の尖閣騒ぎ、民自提携なども、そういう文脈だと思う。全て、歴代官僚主導の既定路線内ということだろう。むしろ上に書いた他国より圧倒的に有利な条件をアメリカ援助に費やしてきたとさえ言えるのではないか。歴代官僚の悪行を捉えていて、自国のためにこれらを活用してきたのがアメリカだけということだろう。
それは、証券資本主義がバブった後に破裂し、巨大な政府債務が累積して沈没寸前なのがアメリカ! と評したのは西部邁ですが、ではこの国はどんな状態にあるのでしょうか。
石原の爺さんの挑発に乗ってほいほい? していて大丈夫なのでしょうか。