国会で何百という嘘をついて来た元総理が、今なお政権党最大派閥のボスに納まっている。国会が日本国権の最高機関だから、政治家としてこんな大罪はないはずだ。日本という国は一体どうなっているのか。というこの安倍晋三という人物がまた、国家・国会の無視を通り過ぎた「国家無知」「政治教養なさすぎ」。そんな諸事実を数え上げてみたい。
安倍晋三氏が近代国家の基礎である三権分立というものを知らないという重大事件に、こういうものがあった。黒川弘務・東京高検検事長を検察トップの検事総長につかせるべく、その定年延長をふくむ検察庁法の改正をくわだてたことが。その際、検察庁史でも異例の動きが現れた。二〇二〇年五月一五日、松尾邦弘元検事総長ら検察OB一四名が、検事総長や検事長らの定年延長を可能とする検察庁法改正案の撤回を求めた意見書を法務省に提出したのである。この意見書には、裁判への起訴権を一手に握る検察庁首脳人事に行政権の長が介入するのは司法権の侵害、三権分立無視であるという下りがあった。
『衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王政を確立し君臨したルイ一四世の言葉として伝えられる「朕は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる』
『検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない』
さてそれで、安倍内閣が同法案を引っ込めたのは、意見書提出三日後のことだった。
もう一つ、国家無知を示した答弁、国会討論にこういうものがあった。
質問「国民勤労統計という国家基幹統計を改竄したというのは、国家の危機に繋がりかねないこと。そういう認識はおありか?」
安倍氏の回答「私が国家ですよ。(そんな危機など招くわけないじゃないですかと言いたかったのだろう。この質問の意味も理解できなかったのだ)」
確かに、氏は行政機関の長である。そして、国家三権のもう一つ、国会の過半数党派のボスでもあった。が、ただそれだけのことであって、「私が国家」などであるわけがない。氏と言えども、国家三権のもう一つ司法権・裁判所には裁かれるのだし、彼の上の国家に相当する憲法も国民も存在する。いったん国民に国会過半数(その実は、国民の四分の一ちょっとの支持だけだ)を与えられたら黒川事件のように司法権人事までを内閣が握って良いなどと言う憲法条項は存在するわけがない。
笑い話にしかならないのだが、「私が国家」を、もうお一つ。「桜を見る会」とは、毎年の春に前年の国家功労者を祝い励ます会として発足した。その「国家行事」の参加者がいつの間にか保守党個人選挙の功労者達にどんどんすり替わっていった。それも「ちょっと歩けば山口県人に行き当たる」と語られたほどに、安倍晋三後援会員が増えていった。「私が国家」でなければできないことだが、これは「私の国家」、つまり、国家の私物化である。
さて、こういう人物だからこそ、彼のある国家観にそぐわぬ国民を度々「反日」と呼んで来られたのだ。が、どんな日本人でも国の主人公・主権者なのであって、公僕の一人としての彼が「反日」などと呼べるわけはないのである。と、このことは、政治家・安倍晋三氏を前にした時には意外に重要なことになる。以下のように、彼が一部の国民を排除する全体主義国家思想に当たるような日本国家観を醸し出してきたからだ。
『私たちは、皇室を中心に、同じ歴史、文化、伝統を共有しているという歴史認識こそが、「同じ日本人だ」という同胞感を育み、社会の安定を導き、ひいては国の力を大きくする原動力になると信じています』(「日本会議のめざすもの」)
安倍氏はこの日本会議政治家らの最高顧問の一人で、こういう「同胞感」を持たぬ僕のような人物への嫌悪感を隠さない人物だった。こういう国家思想を持つのは思想の自由に属することだろうが、彼が公人としてこの思想で「反日」などという言葉を国民に使うのはその思考が拙過ぎるというもの。ある全体主義国家思想で、一人の国民を疎外し、侮辱した罪になる。
嘘八百答弁の国会無視。三権掌握の画策。「私が国家」と「私の国家」。「君は国民ではありません」。氏は国民主権に無知なお方なのだ。国民主権からこそ「私の国家」つまり独裁を排する国家体制、三権分立も生まれたのであるから、これら総てが国民主権を知らない証拠になろう。知っていてこんな国家無視連発ならもっと重罪になると言っておく。いずれにせよ、政治家としては恥ずかしすぎることだから辞めなさい。