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(海蔵寺/鎌倉)
不意打ちを食らった。
やや遅れて配達された年賀状の中に旧友が亡くなった事を報せる「寒中お見舞い」が二通あった。二通とも差出人は奥さんの名前だ。
Nさんとは郷里の高校時代に同じバスケット部のフォワードとしてコートを走り回った。特にNさんとは阿吽の呼吸でパス回しが出来た。試合では部員は少なくチームは弱かったし、何も特筆すべきものはない。ただ奥手だった二人は好きな女の子の話も尽きることは無かった。卒業後の進路や将来の夢などを夜通し語り合う日もあった。
Aさんとは大学で同じクラスになったのが縁で、長崎弁しか話せない上京したばかりの自分に東京弁との違いを面白く教えたり、 関東一円の観光地を案内したりしてくれた。中でも横浜の自宅に度々夕食に招いてくれ、常に腹を空かせていた自分には堪らなく嬉しかった。家族の皆さんの温かさもホームシックを和らげてくれた。家族の皆が使っていた語尾に「―――ジャン」って言う横浜独特の言い方が今でも自分にも受け継がれている。横浜ジルバを教えてくれたのも彼だった。
埋めようのない空白がココロの中に漂い、やり場のない寂しさだけが残った。
八年前の病気の発見時にその刻の覚悟は出来ている。しかし思いの他、遠くまで来てしまった。今、未知の世界に居る感覚だけがいつも想いの中にある。
死はどんなに覚悟をしていても不意打ちにやって来る。それも背後からの---。背後からいきなり来る死に対して、誰が万全の備えなどできるだろうか。