海側生活

「今さら」ではなく「今から」

お寺カフェの温かさ

2016年01月18日 | 鎌倉散策

暖冬の予報はどこへやら、冷え込みが厳しい。

ひと群れの水仙が咲くのを撮りに出掛けた。
底冷えが足元から体中に伝わってくる。まるで日本海を思い出させるような濃い灰色の雲が空を覆い、粉雪が舞い散り始めるかもしれないと身構える。
早々に切り上げ、何か温かい飲み物が無性に欲しくなった。

小正月を過ぎても北鎌倉駅近くは混雑しているが、奥まったここまではその喧騒も届かない。ピンと張り詰めた冬の空気だけが境内にも沁み渡っている。
円覚寺の一番奥まった所にその庵はある。苔生し蔦が這う石垣の上のミツマタの蕾に導かれるように、10段も無い石階段を三回、左、右に上ると可愛い門がある。入口で置かれている鈴を鳴らして待つ。上り口にはいつもこの庵独特の生け方をした花が飾ってある。着物姿に割烹着を着た色白の女性ににこやかに出迎えられる。コロコロと弾くような明るい声に気持ちもホッとする。テーブルまで案内する女性の白足袋が眩しく目に飛び込む。

庵の本堂は庭に面して幅の広い廊下があり、そこには大きなガラス窓から明かりが差し込んでいる。その和風カフェは庭に向かって、テーブルを横一列に配置してある。先客は若い白人男性一人だけだ。彼は背もたれに身体を預け、長い間、視線を庭に向けたまま身じろぎ一つしない。
先ず運ばれてきたのは焙じ茶だった。

丁寧に手入れされた庭には、薄赤色の山茶花が咲き、椿も濃緑色の葉の中に顔を覗かせている。 色濃い小さな紅い花が真っ直ぐ伸びた枝にビッシリと咲いている。聞けばギョリュウ梅と言うらしい。時折リスが忙しそうに庭を走り、また枝から枝へと飛び跳ねている。目白も姿を見せチッチッとツバキを啄んでいる。
時が止まってしまったかのような錯覚を覚える。

器受けのお盆には注文したコーヒーカップの横に蝋梅の一枝が添えられている。
コーヒーの香りに混じり甘い香りを放っている。淡黄色の花びらは半透明で鈍い艶があり、まるで蝋細工のようだ。

身体もココロも十分に温まった。

庵を後にして正面の佛日庵の高い樹を見上げると、木蓮の花が2~3個開きかけている、つい先日はまだ蕾だったのに。
春はすぐそこまで確かにやってきている。