海側生活

「今さら」ではなく「今から」

落葉に思い出を

2010年12月07日 | 思い出した

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夜来の雨も上がり、小春日和に誘われ名残の紅葉を観に出掛けた。
獅子舞谷は、鎌倉では珍しく深い山間にある。

木の葉が一年の最後の輝きを見せる、それは色彩豊かに彩られた独特の景色。
ブナ林に入ると、辺りは一面黄色の世界、懐かしげなセピア色に染まる。
周りには人影は無い、音も無い。時折、聞こえるのは百舌の乾いた高い鳴き声と、枝から離れた乾いた葉が落ちながら、他の葉に触れる微かな音だけだ。

さらに歩を進めると、ふいに息を呑むほど美しい光景に出会った。
谷一面に絵の具箱をひっくり返したような色とりどりの景色が眼の前に広がった。
一色一色に自分だけの名前を付けたくなる。落ち葉のそれぞれの独特な色に 「自分の思い出」を付けてみた。
一枚の葉の中には様々な色がある。「赤」と話し言葉では曖昧な呼び方をするが、朱色(しゅいろ)、紅(くれない)、朱華色(はねずいろ)、洗朱(あらいしゅ)、茜色(あかねいろ)、緋赤(ひあか)、洋紅色(ようこうしょく)、臙脂色(えんじいろ)、紅梅色(こうばいいろ)等と和の世界にはあるそうだ。

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全体に物憂げな風情を感じる臙脂色の葉には「人の名」を、鮮やかさに思わず眼を見張る緋赤の葉には「思い出」を付け始めた。色あいの違う落ち葉を手にする度に「人の名」や「思い出」が次から次へと、まるで落ち葉に文字が書かれているかのように浮かび上がってくる。

それらの人との出会いや出来事は、ずいぶん前の事で、自分は封印している積りだった。

やがて、名前を付けるのを止めた。
一つの思い出が次の思い出を呼び起こし、更に色あいの違う葉を見つけるのが難しくなった。

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思えば、それらの出会いや経験は、全てが私の人生道場だった。今日の全ての土台になっている。

うかうかしているうちに今年も又、急ぎ足で過ぎていくのだろう。