台風18号は各地に被害を残して立ち去った。
ここ小坪でもその爪痕が残った。
港の岸壁の一部が崩れ落ち、舟の乗り降りが不便になった。また港の堤防の一部の波消しブロックが波に押し流され、舟を係留するためのロープの設定をやり直さねばならなくなった。
港の奥まった区域に大量の漂流物やゴミがヤマと打ち上げられ、翌日には40人が出て一日掛かりの掃除を行った。
また、台風の通過する時間が満潮に近い時間だったためか、打ち寄せる波が、高さ3mの堤防を乗り越え、近くの道路やマンションの敷地に漂流物と一緒に流れ込んだ。
その時、波と一緒に数十匹のイワシが打ち上げられ、他にイナダも混じっていたそうだ。
そんな時、地元に住む友人は一本の電話を受けた。港の近くのマンションに最近引っ越してきた人が道路の真ん中をユッタリと歩く蛸と出会い、驚き座り込んで眺めていた。そして偶々通りがかった地元の人らしい人に「この蛸は食べられるの」聞くと「あー、この蛸は毒がある蛸の一種かも知れない」と即座に返答し、造作なく手でヒョイと握り上げ、食して美味いと思われる真蛸を自分が持ち帰った、との事。
電話でその出来事を聞いた友人は「ここら辺りに居る蛸は食べられない蛸なんて存在しない」と答えると「---やっぱりね、----」と、蛸好きのその人は後は無言だったそうだ。
海沿いの道路や公園や浜にも、様々な置物をして去った台風は、海の中にはどんな置物をしていったのだろう。
大きな波によって海底まで掻き回され、自分の巣が壊れ困った蛸をはじめ、貝や魚が居るのだろう。一方、浮遊する餌も豊富になり、喜んでいる魚も居るかも知れない。