海側生活

「今さら」ではなく「今から」

漁師町の静寂

2009年10月08日 | 浜の移ろい

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朝から雨が降っている。
紫陽花が咲く頃に降るような細かい雨が今日も降っている。今日で三日目だ。風は吹いていない。

いつもは港に停泊している大型舟も中型船も一艘も見えない。やがてやってくる台風に備えて避難港に向った後だ。見慣れた風景と違い港が広く見える。また、どの小さな船も、いつもより高い位置まで浜に引き上げられている。そして前後左右をロープで固定されている。
漁に使われる網をはじめ道具の全てが収納されている。
浜に人影は無い。普段は何処からとも無く姿を現す猫達も今日は全く鳴き声すら聞こえてこない。トンビの影も何処にも見えない。何処からか鴎の鋭い鳴き声だけが時折聞こえてくる。台風が去り、海が穏やかになるまでこの静けさは続くのだろう。

知人から明日は会社を臨時休業にするとの連絡が早々にあった。

夜になり、テレビからは首都圏の方々の小・中学校が明日は休校になったニュースが流れ、フェリーや空の便の運航中止や一部鉄道の運転取り止め等のニュースが流れている。

翌朝、窓から外を見ると、モノクロの世界が目に飛び込んできた。
雲は低く、海は一面に白波が立っていた。波以外は何も見えない、高さ6mはあるだろう。
風は窓を叩きつけ、眼下の椰子の木が大きく揺れている。波消しブロックに当たった波が砕けて大きく飛沫になって舞い上がっている。時折この窓にもバシャッと飛んでくる。

テレビのスイッチを入れると、昨夜に比べ航空・鉄道・船舶・道路等の運行休止の範囲が広がっている。

この人を寄せ付けない海の荒々しさも海が持つ一面か。

やがて、後二日もすれば今日と打って変わって、風は収まり、波は穏やかになり、青い空と青い海を見せてくれるだろう。
そして港はいつもの表情に戻る。
そして最高の釣り日和になるはずだ。