OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ルー・ドナルドソンと猫と美女

2008-11-24 11:52:29 | Soul Jazz

Midnight Creeper / Lou Donaldson (Blue Note)

美女ジャケットが多い後期ブルーノートの中でも特に有名な1枚ですよねっ、これは♪ レオタード系のセクシーな衣装、太股にいるのは黒猫ですね♪ 見開き仕様のダブルジャケットを開くと完全なお楽しみになるデザインも洒落ていますが、蝋燭も意味深というのは、あくまでもサイケおやじ的な嗜好でもあります♪

さて、内容は当時、ファンキーアルトサックスの第一人者だったルー・ドナルドソンの楽しい傑作で、データ的にはブルーノートに復帰しての大ヒット作「Alligator Bogaloo」に続くものとされますが、その密度はさらにディープで妖しいものになっています。

録音は1968年3月15日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ブルー・ミッチェル(tp)、ジョージ・ベンソン(g)、ロニー・スミス(org)、レオ・モリス(ds) というワクワクしてくるバンドです――

A-1 Midnight Creeper
 アルバムタイトル曲は「Alligator Bogaloo」の完全なる二番煎じですが、さらに重心が低くなったビートがたまりません。オルガンのドヨドヨ~とした響き、粘っこくて歯切れの良いドラムス、微妙にサイケロックっぽいギターのオカズとリズムが、テーマ部分から最高の魅力となっています。
 そしてルー・ドナルドソンがオトボケのフレーズでアドリブをスタートさせれば、早くもバンドのグルーヴは最高潮! このイナタイ雰囲気の良さは筆舌に尽く難いですねぇ~♪ 絶妙のユルフンファンクとでも申しましょうか。
 すると後を引き継ぐジョージ・ベンソンが持ち味を完全披露♪ 実はこのレコーディング直前にはマイルス・デイビスとのセッションにも呼ばれていた当時の尖鋭派でありながら、俺はやっぱり、こっちだよ~ん、と自己主張しているような潔さが最高です。
 またブルー・ミッチェルの気抜けのビールようなアドリブも、この弛緩した黒っぽさの中ではかえって心地良く、ロニー・スミスのハッスルオルガンが浮いてしまうほどです。
 あぁ、これが最高っ! なんて台詞は、昭和のジャズ喫茶では禁句でしたねぇ。尤も鳴ることも、ほとんどありませんでしたが……。

A-2 Love Power
 レイ・チャールズあたりが十八番にしているカントリー&ウェスタンのR&B的解釈とあって、ここでのバンドの勢いも止まりません。レオ・モリスのドラムスがキメまくりのビートは実に気持ち良く、ロニー・スミスのオルガンが軽やかに疾走すれば、ルー・ドナルドソンは正統派ビバップをお気楽に変質させた楽しいフレーズを連発してくれます。
 そしてタイトル曲ではイマイチの調子だったブルー・ミッチェルが本領発揮♪ 全体のノリがホレス・シルバーのバンドに近くなっているのも要注意でしょうか。ジョージ・ベンソンもツッコミ鋭いアドリブで、その場をさらに熱くするのでした。

A-3 Elizabeth
 さて、これがこのアルバムの中のハイライト! と私が勝手思い込んでいる名曲にして名演です。それはズバリ、ルー・ドナルドソンが書いた妖しいラテンのキャバレーモード♪ ユル~いビートとモタレのグルーヴの中で、ルー・ドナルドソンの艶やかなアルトサックスが魅惑のメロディを歌いあげるテーマ部分だけで、気分は最高♪
 アドリブパートではジョージ・ベンソンが、これまた雰囲気を大切にしてジンワリと歌う素晴らしさですし、ロニー・スミスの思いっきりラウンジ系のオルガンも、何故か胸キュンです♪
 あぁ、素敵な美人ダンサーが目の前に現れてくるような♪♪~♪

B-1 Bag Of Jewels
 ロニー・スミスが書いた、ちょっとモードが入ったブルースということで、まずは作者本人が手本を示したような硬派なソウルを披露♪ レオ・モリスとジョージ・ベンソンが作りだすグルーヴにもハードな雰囲気が滲ます。
 ブルー・ミッチェルの神妙なアドリブは、些か???な気分も漂いますが、リズム隊の重いビート感がそれを十分に補っていますから、結果オーライでしょうか。
 そしてジョージ・ベンソンが正統派としての実力を見事に発揮しています。そのスタイルは、この時点では相当に新しかったのじゃないでしょうか。今でも古びていないのですからっ!
 肝心のルー・ドナルドソンは適度な力み、自然体の背伸びが全くベテランの味わいで、好感が持てます。こういう、ほどよく尖鋭的なところも本人の持ち味のひとつなんでしょうねぇ~。あまり評価はされていないのが不思議なほどです。

B-2 Dapper Dan
 オーラスは粘っこいシャッフルビートで演じられるソウルフルなハードバップです。
 もちろんこういう雰囲気なら、俺に任せろ! というメンツばかりが集合していますから、まずはブルー・ミッチェルが得意の分かり易いフレーズでムードを設定すれば、ルー・ドナルドソンは居眠り運転のような誘惑のユルフンファンク♪
 しかしジョージ・ベンソンがブルースロックっぽいギターで刺激してくれますから、ハッと気がつく赤信号という感じでしょうか。それを引き継ぐロニー・スミスが、これまたブルースロックのオルガンですからねぇ~~♪ これって本当にモダンジャズ?
 はい、これぞ、モダンジャズだと思いますねぇ~。ジャズ喫茶じゃ、本当に気持ち良い居眠りモードへ突入してしまうでしょう。

ということで、弛緩したグルーヴが許せないというのならば、これは失格盤かもしれません。しかしこの重心の低いビートでユルユルな演奏こそが、新しいソウルグルーヴじゃないでしょうか?

スピーカーに対峙するよりも、所謂「ながら聞き」には最適というのは苦しい言い訳かもしれませんが、そうしていても自然に腰が浮いてきますし、ジャズ喫茶ならば思わず飾ってあるジャケットを確認してしまうかもしれません。

ちなみに冒頭で述べたとおり、このアルバムジャケットは見開き仕様で眺めるとさらに素敵なデザイン♪ ぜひともご確認下さいませ。絶対、現物が欲しくなるはずです。

そうした魅力も含めて、このアルバムは私の大切な偏愛盤のひとつですが、CD化はされているんでしょうか? 車の中でもイケるような気がしています。

コメント
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