OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

レイ・ブライアントと旅に出よう

2008-11-20 11:55:37 | Jazz

Gotta Travel On / Ray Bryant (Cadet)

人間、何かのきっかけで真っ当な評価をされる事は間々あることですが、レイ・ブライアントの場合は、あのモントルーでのライブ盤の大ヒットでしょう。

そのアルバムは1972年7月に行われたモントルージャズ祭でのステージを収めたものですが、なんとオスカー・ピーターソンの代打として堂々のソロピアノを披露! 大ウケしたことからその音源が「Alone At Montreux (Atlantic)」というLPになったのです。

そして実際、これは我が国でもジャズ喫茶の人気盤となり、折からのソロピアノブームもあって売れ行きも良く、私もリアルタイムで入手して聴きまくったほどです。その内容については、以前にもご紹介しておりますが、ブルース&ゴスペルを基調にした真っ黒で小粋なムードは、たまらない魅力がいっぱい♪ 中でも私は、その冒頭に置かれた「Gotta Travel On」という曲が大好きになり、なんとかそのオリジナルバージョンを探し求めて辿り着いたのが、本日の1枚というわけです。

録音は1966年2月17&18日、メンバーはレイ・ブライアント(p)、ウォルター・ブッカー(b)、フレディ・ウェイツ(ds) というトリオに、17日のセッションではスヌーキー・ヤング(tp) とクラーク・テリー(flh) の2人がアンサンブルで加わっています――

A-1 Gotta Travel On (1966年2月18日録音)
 ほとんどキャノンボール・アダレイあたりが出てきそうなゴスペルにブギウギのイントロから、ウキウキするようなソウルフルなテーマにグッと惹きつけられます♪ 歯切れの良いフレディ・ウェイツのリムショットも楽しく、またウォルター・ブッカーの重量級ベースもジャストミート!
 もちろんアドリブパートでもレイ・ブライアントは、その雰囲気を崩すことなく分かり易くて楽しい、そしてブルース&ソウルなフレーズを連発しますから、あたりはすっかりグルーヴィ♪

A-2 Erewhon (1966年2月17日録音)
 意味不明な曲タイトルも、業界では当たり前という「逆さ読み」で解消するというレイ・ブライアントのオリジナル曲で、仄かに暗いゴスペルメロディとホーンのアンサンブルが実に良いムードです。しかも、ちょっと昭和歌謡曲なんですねぇ~、これが♪
 アドリブらしいパートが無いのも高得点です。

A-3 Smack Dab In The Middle (1966年2月18日録音)
 おぉ、これまた初っ端からキメのフレーズがテーマになっているという素敵なメロディ♪ ダンスやストリップのステージショウでは定番として用いられる曲ですが、ウォルター・ブッカーの強靭なピチカートも冴えた名演だと思います。なにしろアドリブよりは、キメのフレーズだけが強調された潔さなんですよっ♪

A-4 Monkey Business (1966年2月18日録音)
 レイ・ブライアントのオリジナルブルースとなっていますが、ほとんどアドリブフレーズから美味しい部分を抽出して組み立て直したような思惑が素敵です。
 ミディアムテンポのグルーヴを見事に作りだすトリオの一体感、そしてレイ・ブライアントの楽しいピアノタッチとメロディ作りの上手さは流石だと思います。

A-5 All Things Are Possible (1966年2月17日録音)
 ラテンビートが冴えた楽しい曲調、そしてホーンアンサンブルが絶妙という素敵なトラックです。レイ・ブライアントの強力なピアノタッチが上手く活かされたアレンジ、さらにスイングしまくったアドリブはゴッタ煮の美味しさでしょうか。
 なんとなくナベサダの元ネタという気も致しますね♪

B-1 It Was A Very Good Year (1966年2月17日録音)
 同時期のフランク・シナトラがヒットさせていた名曲のカバーだと思いますが、ホーンアンサンブルがなんとなくバカラック調で楽しいかぎり♪ レイ・ブライアントも原曲の哀愁を増幅させるピアノタッチと装飾フレーズがニクイほどです。もちろん明確なアドリブなんてありません。
 しかしフレディ・ウェイツのブラシ&リムショットも強靭なビートを敲き出していますから、演奏はグイグイと盛り上がって快感です。

B-2 Bag's Groove (1966年2月18日録音)
 モダンジャズでは大定番のブルースを、このトリオは豪快にスイングさせています。やっぱりレイ・ブライアントには、こういう正統派ハードバップも必要ですねっ♪ とにかく素晴らしすぎます。
 フレディ・ウェイツのハードなドラミング、ウォルター・ブッカーのペースソロもエグイ魅力がいっぱいですから、数多い同曲のモダンジャズバージョンでも、私はこれが上位に選ばれると信じるほどです。
 とかにくカッコイイですよっ!

B-3 Midnight Stalkin' (1966年2月18日録音)
 なんだか意味深な曲タイトルですが、ちょいとマイナーなゴスペル風味のジャズロック♪ このヘヴィで緩いグルーヴが如何にもサイケおやじ好みです。
 レイ・ブライアントのアドリブも、全くその路線で「泣き」のフレーズ、あるいは執拗な粘っこさ、分かり易い音の選び方が最高の極みつき!
 もちろん昭和歌謡曲の味わいが潜んでいるのは、言わずもがなです。

B-4 Little Soul Sister (1966年2月17日録音)
 オーラスは曲名からして、これもレイ・ブライアントの人気オリジナル曲「Little Susie」の続篇という趣向だと思われます。
 快適なテンポと快楽的なコード進行が、とにかく素敵ですが、随所にモードっぽい味付けも新鮮ですし、妥協しないベースとドラムスの意気地も見事だと思います。特にフレディ・ウェイツはビリー・ヒギンズと同類のビシバシ系が、完全に私の好みですし、ウォルター・ブッカーも凄いアドリブと強靭なウォーキングで目からウロコの大活躍です。

ということで、どちらかというとジュークボックス系のA面、グッとジャズ寄りのB面という構成になっています。このあたりはアナログ盤の特性が活かされてるわけですが、ブッ通して聴いてもだんだんジャズっぽく盛り上がっていきますから、CD鑑賞もさらにOKだと思います。

だだし内容の問題からでしょうか、このアルバムをジャズ喫茶で聞いた記憶が私にはありません。まあ、そうでしょねぇ~、と納得出来る事実ではありますが、こんな楽しくて充実した作品は、もっと名盤扱いされても良いはずなんですが……。

個人的にはフレディ・ウェイツの実力と魅力に目覚めた1枚ですし、もちろんレイ・ブライアントは安定した魅力を発揮していますが、この人のドラミングだけを中心に聴いても全く飽きないんですねぇ♪

コメント
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