OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

フレディの黒い天使

2008-11-06 12:07:55 | Jazz

The Black Angel / Freddie Hubbard (Atlantic)

ウイントン・マルサリス登場より以前、一番アグレッシブに活動していたトランペッターはフレディ・ハバードでしょう。

そのスタイルはハードバップからモードやフリー、もちろんジャズロックからクロスオーバー&フュージョンと何でもござれ! しかも1960年代の公民権運動や反戦活動、あるいはロック革命あたりまでも背景としたアルバム作りは、時として節操が無いとか迎合主義と批判されるほどでした。

しかし発売されたアルバム群は、現在でも聴きごたえたっぷりの力作が多く、もちろん過激でありながらジャズ本来の楽しさや快楽性も大切にした基本姿勢は不変で、本日の1枚は代表作かもしれません。

まず、このブラックスプロイテーションなジャケットが最高ですねっ♪

メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ジェームズ・スポールディング(as,fl)、ケニー・バロン(el-p,p)、レジー・ワークマン(b)、ルイス・ヘイズ(ds)、パタート・バルデス(per) という、これは当時のレギュラーバンドのようです。ちなみに録音データはジャケットに記載がありませんが、発売されたのは1970年である事から、おそらく1968年頃の演奏だと思われます――

A-1 Spacetrack
 いきなり幻想的なケニー・バロンのエレピ、さらにテンションの高いドラムスの切り込み、激しく咆哮するトランペットに呻くアルトサックス、おまけに独善的なベースが好き勝手に自己主張する導入部を聴いていると先が不安になりますが、やがて断片的に出るカッコ良いテーマリフや壮大なアフリカのようなメロディ、さらに猛烈スピードの突進ドライブがやってきますから、後はもう演奏の流れに身をまかせ♪
 渾身の全力疾走で十八番のフレーズを連発するフレディ・ハバード、そこへ執拗に絡んでくるジェームズ・スポールディング、ルイス・ヘイズのシャープなドラミングも最高です。しかも所々に多重録音やエコーマシンのような小賢しい技も使われていますが、それがちっとも気にならないんですねぇ~♪
 それはバンド全員の意思統一とヤル気が物凄いからでしょう。
 ケニー・バロンのエレピも最高に良い感じですし、何時までも独善的な態度を崩さないレジー・ワークマンにも、逆に好感が持てます。
 あぁ、これが1970年の音なんですねよねっ♪
 けっこうスピーカーと真剣に対峙する必要に迫られますが、強制的というよりは自主的に、という雰囲気は、現代でも十分に通用すると思います。

A-2 Eclipse
 幻想的で素敵に和んでしまうフレディ・ハバードのオリジナル曲です。ハートウォームなトランペットを彩るジェームズ・スポールディングのフルートも良いですねぇ~~♪
 またリズム隊も好演で、ギリギリのいやらしさというケニー・バロンのピアノ、自在に蠢きながらもビートの芯を外さないレジー・ワークマンのペース、さらにルイス・ヘイズのブラシはポリリズムの真髄を感じさせてくれます。
 そしてもちろんフレディ・ハバードは新主流派の存在意義を旗幟鮮明にした真摯な吹奏♪ 

B-1 The Black Angel
 ラテンビートを使ったケニー・バロンのオリジナル曲で、モードでも楽しい曲と演奏は出来ますよ、という決意表明です。
 ジェームズ・スポールディングのフルートは些か緊張気味ですが、パタート・バルデスのパーカッションが快楽的ですし、フレディ・ハバードの硬軟バランスのとれた姿勢がありますから、結果オーライでしょう。
 それにしてもケニー・バロンはツボを押さえるのが上手いですねっ♪

B-2 Gittin' Down
 そしてついに出たっ! フレディ・ハバードが十八番の快楽ジャズロック♪ ケニー・バロンのエレピも雰囲気満点です。しかし相当に頑固なレジー・ワークマンのペースが硬派な姿勢ですから、決してぬるま湯ではありません。
 ジェームズ・スポールディングのアルトサックスも意地っぱりなところを聞かせてくれますし、ルイス・ヘイズも凡百なロックビートは敲いておらず、フレディ・ハバードは嬉しくなるほどの熱血を迸らせています。
 またケニー・バロンが、もう最高ですっ! エレピの楽しさを活かしきった伴奏の合の手♪ 白熱のアドリブソロも時間が短すぎて、悔しいほどですねぇ。

B-3 Coral Keys
 これもフレディ・ハバードがライブステージでは定番演目にしていたボサロックの人気曲♪ ですから、ここでの纏まりの良い演奏はジャズの快楽そのものです。あぁ、ハートウォームなフレディ・ハバードを激しく煽るリズム隊とのコンビネーションが、本当にたまりません♪
 またジェームズ・スポールディングがフルートで登場すると、その場は完全に当時のブラックシネマの劇伴サントラの世界です。ケニー・バロンとパタート・バルデスの存在も楽しい限りですし、レジー・ワークマンのペースも強い印象を残します。

ということで、当時最前線のジャズが楽しめます。それは些か先進的で過激なA面と快楽主義のB面という、アナログ盤の特性を活かした構成にも明らかで、こういう部分はCDで通して聴くと些か楽しみが薄れるんじゃないでしょうか。

A面で力いっぱいテンションを上げ、B面で和むという、つまりはレコード盤をひっくり返して針を落とす「儀式」があってこそ、最高に楽しめる作品だと思います。

如何にも当時というジャケットも素敵ですし、アナログ盤でもこのあたりのブツは安いはずですから、ぜひっ!

コメント
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