松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

切なくも悲しい、震災後の霊魂物語。

2016-04-16 16:56:32 | 日記・エッセイ・コラム

 東日本大震災の時も、二日前に前震がありました。M7.2最大震度5弱。このとき秋田は震度4でした。まさかこれが本震の前触れだとは、誰も思いませんでした。

 5年前から続く、被災地における、タクシー運転手に起こった不思議な出来事が5月号ムーに掲載されています。たいてい季節外れの冬服を着た若い男女や子供で、不審に思ったドライバーが質問したり、目的地まで送ってあげたりすると「私は死んだのですか?」「ありがとう」と言い残して消えてしまう。

 こんなことが仲間の間では常識となっていたようなのです。石巻市と気仙沼市のタクシー運転手100人に、聞き取り調査をして、体験した現象をまとめた卒業論文を提出した学生がいます。東北学院大学・地域構造学科の工藤優花さんだそうです。彼女のゼミでは、被災地の死と向き合うフィールドワークを重ねていて、その成果を「呼び覚まされる霊性の震災学」として刊行されています。

 仙台市では、市街地で拾った女性客が「どこどこの港まで行って下さい」と更地になった場所を告げる。「あそこはもう何もないよ」と言って振り向くと、もう女性の姿はない。運転手は「またか」と思ってメーターを上げずに、言われた場所まで車を走らせ、そこで1回ドアを開閉し、また仕事に戻るのだそうだ。「家に帰りたい人が多いからね。いつもタダで送ってあげてるんだよ」

 釜石では、ラーメン屋さんに出るそうだ。店主は仮店舗で営業する2代目。初代は震災の犠牲になった。それで後を継いだ。ラーメンをすすっていると、2代目の跡継ぎの男の子が口で「ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン」と言う。店主は無言で3人前のラーメンを作り始めた。客は自分一人だ。「どうしたの?」と聞くと男の子は言う。「だってお客さんが来たのに、鳴らないんだもん」この子には見えているのだ。店主は息子に「ここか?」と聞き、どんぶりを差し出す。聞けばその風体は、以前来ていた常連たちにそっくりなのだと言う。感動した彼氏は「その人たち、ラーメン食べてる?」「うん、まずいって言ってる」まだまだ味は先代には及ばないらしい。

 ほかにも様々な、心温まる、切ない話が出てくる。それはそうだろう。何万人という、それぞれの物語があるのだから。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 熊本地震と東日本大震災の関係 | トップ | 私の霊魂物語(再掲載) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記・エッセイ・コラム」カテゴリの最新記事