棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

童話 僕のバオバブ-2

2008-08-12 17:16:51 | 大人の童話
「お父さん!!ことしの夏休みにはマダカスカル島に行こうよ!!」
「ママママ マダカスカル島??  ああ あの南アフリカに近い島国のことか?? 出し抜けになんだよ」
「さすがにお父さん。その島にあるバオバブの樹がみたいんだっ。」
「バオバブ??? 何だそりゃーー」
「へへへへ・・・。そこまでしらなかったー。チョット待って!!」
僕は写真集をとりに行きました。


「変な樹。たこが逆さまになったみたい」妹の茂子がいいました。
「いっちゃーー悪いけど、お隣の奥さんみたい」お母さんは僕と同じ発想をしてクスクス笑っています。
僕はお母さんに似ているといわれるけれど本当かもしれない。
「バオバオ・バオバオ・・・」
まだ赤ちゃんの賢治が一番正しい発音をしました。
お父さんは写真をじーーと見つめていますが、心ここにあらずという顔。
「あなたどうしたの。黙り込んで。世界には面白い植物があるものねー」
「そそそそーーだろーー。だからさー、今年の夏休みに見に行こうよ」
今度はお母さんも絶句。
妹の茂子と賢治が「ばおばぶーーー。バオバオぶーーー」とおおはしゃぎ。
「辰雄。チョット待ってくれ。お前の気持ちはよく判るが、急にそんなことを言われても・・・。なーーお母さん」
「そそそーよー。マダガスカル島なんて、いったいどこにあるか知らないし、遠すぎるわよ。ことしの夏休みはよていが決まっているの」
「去年なんかの夏休みは、急にハワイに行ったじゃーないか」
「アレは知り合いがいけなくなったからからお鉢がまわってきたのさ。
南アフリカなんてとてもいけねーよー」
「みみみ南アフリカ!!そんなところイヤ!! だいたい飛行機代だってものすごく高いんじゃーない。だったら、ヨーロッパのほうがよっぽどいいわ」
「おいおいチョットまて。海外旅行どころではないだろー」とお父さんは、すぐにバカ乗りするお母さんにいいました。
「そおねーー。我が家の経済状況からすると、とても海外旅行なんて・・・。」現実に戻ったお母さんはきっぱりといいました。
「南アフリカ旅行なんて夢みたいなものよ。辰雄がしっかり勉強していい会社に入って、私たちをつれていってちょうだい」
話はまったく別のことになってしまった。
わがやの経済状況といわれると、ぼくもこれ以上はなにもいえなくなってしまった。
実際なんともならない問題だと僕も思った。


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