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棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

7―絵師-良秀

2009-02-13 09:30:29 | 大人の童話
良秀-7
絵師にとっては宝物が奪われた思いだったのでしょうか。ことあるごとに、お暇をいただけないかと請願いたしておりました。
 私どもにしてみれば、お屋敷にご奉公できること事態、末代の名誉なことであるというのに・・・。そのひとつをとってもおそれおおく、尋常な親とはとても思えませんでした。

6―絵師良秀―芥川龍之介―地獄変より

2009-02-12 18:19:17 | 大人の童話
良秀-6
なんとも醜き容姿の絵師でしたが、世の中は不思議なもので、その娘は真に美しく気立ての良い子で、評判は大層高いものでした。
多少なりとも暮らしぶりが良くなっても、絵師は先立たれた妻の後添えをもらうことなく、ひたすら娘に愛情をそそいでいたのです。
 高価な衣装や装身具をおしまずあたえていましたが、娘は少しもおごることもなく、貧しき人たちにわけてしまうのでした。
 良秀はそんな娘の振る舞いになにもいわずにいた、というのも不思議といえば不思議ではないでしょうか。
それがいつしか大殿のお耳に入り、お屋敷にご奉公に上がるように命じたのでございました。良秀は大殿のご恩も忘れて、お断りをしたのでございます。
 大殿はたいそうご立腹なさいましたが、こころやさしい娘が進んでお屋敷に上がり、父親の無礼を詫びたのでございます。

大殿も大層おきにいりで、人一倍お目をかけておいでになりました。

4―絵師・良秀-芥川龍之介・地獄変より

2009-02-10 08:30:05 | 大人の童話
良秀-4
良秀は「汚らしく見えるものや、偽善・偽悪の心の中に、美の極致がある。たとえば、鷲や鷹を高貴な鳥として多くの絵師は描くが、小動物を襲い、屍を食らう。生きるということの本質を描きださなければ、ただのお座敷絵だ」
などと、場所もわきまえす゛憎きことをぬけぬけと申すのでございました。
俺のことを地獄絵の名人だと称してくれるが、俺は地獄を描いているのではなく、この世の人間世界を描いているだけだ。
この世が地獄なのか極楽なのかわからん。
ただ、この世のありようを見た目でなく、内側からえぐり、描き出しているのだ。
 長者であろうが下賎であろうが、死ねば腐り悪臭を放つ。やがて白骨となり、土くれとなりて、風となってしまうのだ。それが、あらゆる喜怒哀楽にもだえる、人間の宿命であ。逃れることは出来ない世界。いってみれば、人間社会の究極の美しき姿ともいえるだ。
 と。まーわけのわからない事を、お悟りを開かれた大僧侶のごとく、平然と言ってのけるのでございました。
 打ちつてられた屍の悪臭をものとせず、鼻をつけんばかりに写し取ったり、罪人の処刑には、血潮を浴びるのもいとはず描いているという、ぶりでございまし
 いやしき身分の者はおろか、罪人、乞食、はたまた打ち捨てられた死人を、高貴なかたがたの中に描き出すのでございました

3-絵師・良秀-芥川龍之介-地獄変より

2009-02-09 09:09:49 | 大人の童話
3-良秀
御殿に出入りすることが、誉れと思われていたのに、天才絵師といわれていた良秀は、お招きにあずかっても三度に一度はおろか、十に一度しかこないという礼儀知らずでございました。
 お座敷にあがっても、大してうれしがることもなく、自分の絵についてだけのことを、得々と語り続けるのでございました。

2-絵師・良秀 地獄変より

2009-02-08 08:33:08 | 大人の童話

大殿は豪放快楽にして、人々はその度量の大きさに感服しいたのでございます。
政にたずさわる高官は当然ながら、当代一流の文人墨客が出入りし、毎夜盛んな宴が繰り返されておりました。
 お座敷での談義や祝宴に参加できることが、人々の誉れでした。
富と権力にむすびついていくことでもあり、お庭先までお客様がお待ちでございました。

1-絵師・良秀・・・地獄変より

2009-02-07 08:12:47 | 大人の童話
都が今よりも、もっともっと華々しかったころ、私はその中でもひときは権勢と財力に富んだ、大殿のお屋敷にご奉公しておりました。
 これからお話をするおぞましき事件は、大殿がお目をかけておられた絵師良秀のことでございます。
 この絵師良秀のことをご紹介いたしますと、その容姿たるやヒキガエルか猿をおもわせ、陰では[猿秀」などと呼ばれておりました。
絵のことはわたくしにはわかりませんが、大層な評判でこぞって求めておりましたが、絵はきらびやかなものではなく、むしろ生々しく、恐ろしく観えました。

これからお話をする、世にもおぞましき事件は、大殿が絵師良秀に「地獄変」の屏風絵を依頼したことにあります。

⑳-窓辺の象-ラスト

2009-02-04 08:03:25 | 大人の童話
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         とおのく意識のなかで、象は、もう一つの呼び名を思い出した。
         確か ビニール風船 だと呼ばれたことを。


         象は、いや、ビニール風船は いやいやまったく姿を変え、ひかかっていた。
          絵 JOO TAROU 40x60 アクリル・その他   ありがとおございました

19-窓辺の象

2009-02-03 08:22:56 | 大人の童話
19
やがて象はそれまで感じたことがない、からだの変調をおぼえた。
自分の姿を形ずくっていたと思われるものが、かすかな音を立てながら消えてゆくのを実感した。
嗚呼・・・世界は魔術が解けてしまった
もはや自分ではどうすることも出来ない、無力さを知った。
絵 JOO TAROU 40x60 アクリル・その他

ryusun

つぶやき

絵本と無縁になった大人に

子供たちに向けたというより、内なるものを呼び覚ます大人への絵本