徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「五日物語 ―3つの王国と3人の女―」~リアルな幻想世界とその緻密で荘厳な映像美~

2016-12-11 12:00:00 | 映画


 17世紀初頭にナポリ王国で生み出された、世界最初のおとぎ話「ペンタローネ(五日物語)」に描かれたのは、400年の時を経た現代と変わることのない、残酷なまでの女の“性”(さが)であった。
 「ペンタローネ」の物語は、グリム兄弟にも多大な影響を与えたといわれる。
その女の“性”をテーマに3話を選んで、「ゴモラ」(2008年) マッテオ・ガローネ監督が映画化した。

 この作品、どんな映画にも似ていない独創的な美的感覚で、元画家の感性を十二分に発揮して、ゴヤの古典ホラー映画からインスピレーションを得たともいわれる。
 映像は壮麗な中に不気味さを漂わせており、皮肉に富んだストーリーを融合させた。
 フランス・イタリア合作映画だ。





3つの王国に渦巻く、それぞれの世代の女たちの欲望が並行して描かれる。
まだ見ぬ大人の世界に憧れながら、父である王と暮らすハイヒルズ国の王女の結婚する相手に王が決めたのは、屈強で醜いオーガ(鬼)であった。
華やかな城から連れ出され、過酷な鬼の住処での生活に耐えながら、王女はひたすら逃げ出す機会をうかがっていた・・・。

ロングトレリス国の不妊に悩む女王(サルマ・ハエック)は、魔法使いの教えどおりに、怪物の心臓を食べて美しい男子を出産する。
成長した彼は、同じ怪物の心臓のもとで生まれた下女の息子と兄弟同然の友情で結ばれたが、年頃になった息子の心は母親から離れていく。

ストロングクリフ国では、人目を避けて細々と暮らす老婆の姉妹がいた。
好色な王(ヴァンサン・カッセル)に、その美しい声を見初められた姉は、不思議な力で若さと美貌を取り戻し、まんまと妃の座に収まるのだが、妹の嫉妬を買うようになる・・・。

それぞれの世代の女たちの欲望は一応叶えられるが、そこには皮肉な運命の裏切りが待ち構えている。
この作品では、人助けをした者があっさりと命を落とし、裏切ったものがいい目を見る。
童話というのは、優しいものではなく、本当は恐ろしいものなのだ。
そう思うと、何が幸せなのだろう。よくわからない。
そこがファンタジーなのだろうか。
でも、なかなかリアルなファンタジーだ。

登場する怪物も、敢えて特撮映画のように撮っており、3つの王国の古城もそれぞれ実在の古城で撮影されている。
黒ずくめの女王が、白で統一された広間で赤い心臓にかぶりつく。
緑の森の中で、真紅の布をまとった、白い肌の女が横たわるシーン、ややホラーじみるが絵画のような造形と構図で描かれる幻想的な世界や、剣と魔法の世界が目を楽しませてくれる。
エロティックで退廃的なシーンは少なく、イタリアマッテオ・ガローネ監督のこだわりと美意識が、いたるところに散りばめられている。


フランス・イタリア合作映画「五日物語―3つの王国と3人の女―」では、17世紀イタリアのバロック様式を再現するにあたって、イタリアを縦断して、歴史遺産ともいえる建物や、おとぎ話そのものの景観での撮影を敢行し、3つの王国の城としてスクリーンにその荘厳な姿を見せている。
ドラマの筋立てについては釈然としない部分もあるのだが、世界遺産にも登録された景観に一歩踏み込むなど、このロケーションの美しさと素晴らしさは必見だろう。
      [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
次回はロシア映画「神聖なる一族24人の娘たち」を取り上げます。


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2 コメント

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リアル・ファンタジー (茶柱)
2016-12-11 21:05:51
ファンタジックなリアル。
映画なのだからと思いつつも、一定のリアリティがないと入り込めない。ファンタジックな要素がないと映画の意味がない。

難しいバランスですね。
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映画って・・・ (Julien)
2016-12-14 17:51:54
何でもできちゃうんですよね。
結構こじつけがましいことも言いますしね。
理屈ではないのですけれどね。
どんな作品でも、リアリティにはこだわっていますね。
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