最愛の人を失って、人生のどん底にいた男女がいかにして立ち直ろうとするか。
そんなシリアスな物語を、爆笑のドラマで綴る。
デヴィッド・O・ラッセル監督のアメリカ映画は、常識破りの爽快な作品だ。
先頃行われた、第85回米アカデミー賞授賞式では、この作品でヒロインを演じたジェニファー・ローレンスに主演女優賞がもたらされた。
当人は、女ながらタフで、他人を受け付けないタイプを演じながら、この作品を「最高に美しいラブストーリー」と称賛したが・・・。
作品に登場する全員が、とにかくクレイジーで、極端だ。
強烈な陽気さが、狂気と間違えるほど全篇をおおっていて、まあとにかく賑やかな世界を作り上げている。
妻の浮気で心のバランスを崩したパット(ブラッドリー・クーパー)は、相手の男を殴ったせいで、8か月間入院することになる。
退院したパットを待っていたのは、妻が接近禁止令を出したまま、家を売って出ていったという、素敵にハードなニュースだった。
高校の教師もクビになり、すべてを失くしたパットだったが、なぜか気持ちは前向きだ。
頭と体を鍛えて、妻の理想の男になれば必ずヨリを戻せると、根拠のない自信を抱いていた。
パットは、父(ロバート・デ・ニーロ)と母(ジャッキー・ウィーヴァー)とともに、実家で暮らし始める。
つい最近失業した父は、チーズケーキ店の開店資金を稼ぐために、アメフトのノミ屋を始めた。
熱狂的なファンであるイーグルスの勝敗に、一家の未来がかかることになった。
社会復帰を目指してリハビリ中のパットに、どうもイマイチな出来事が続く。
そんな時、パットは友人のローニ夫妻からディナーに招かれる。
その席で、ロー二の妻の挑発的な妹ティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出逢う。
ティファニーは、その愛らしい姿からは想像もつかない、過激な発言と突飛な行動を繰り出すものだから、パットは完全に彼女のペースに振り回される。
最近夫を亡くし、心が壊れたままのティファニーは、無礼な態度をとったかと思うと、パットをベッドに誘い、それを断った彼に平手打ちを食らわせるという始末だ。
ティファニーは立ち直るために、ダンス・コンテストへの出場を決意し、パットを自分のパートナーに任命する。
そうして、人生の希望の光を取り戻すため、二人の新たな挑戦が始まった。
ドラマの中の二人は、どちらもそこそこクレイジーで、どこかイカレている。
常識に当てはまらない、壮烈な二人の応酬が笑わせる。
面白いのは、ティファニーがパットの知り合いという間柄だ。
そのパットは、夫の死から立ち直れていないでいるティファニーに優しくすれば、人助けができるほど回復したと妻に思ってもらえる、そう信じているのだ。
ダンス・コンテストを目指して、猛練習に打ち込むパットとティファニーは、次第に、互いが心の痛みを一番理解し合えることに気づき始める。
最初は天敵だと思っていた相手のおかげで、かすかに見えてきた希望の光だった。
妻のこと、将来のこと、何ひとつ解決しないままだが、いよいよダンス・コンテストの日がやって来る。
デヴィッド・O・ラッセル監督の映画「世界にひとつのプレイブック」は、まことに賑やで熱いほどの、いかにもアメリカのコメディだ。
アカデミー賞主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスは、ダンス・シーンもふんだんで、全身を使っての熱演だ。
同じ主演女優賞にノミネートされていた、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェスカ・チャステインに競り勝ったのも解らぬではない。
そして、ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスの組み合わせで、絶妙な演技が繰り出されることになり、この作品は製作サイドとしても予想以上の成功となったようだ。
ただ、突飛な登場人物たちの人間関係には、計算されつくした、いかにもしたたかなアメリカ映画という感じが色濃く、個人的にはあまり歓迎の域を出ない。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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私のような人間も,こういうわかりやすい映画の方が良いかもしれません・・・。
そういっては何ですが、いまどき、いろいろとこねくり回した、難解な作品もありますから。
所詮2時間のドラマなのですから、なるべくシンプルで、急所を押えて、テーマもはっきりした作品が望ましいですね。
描写も、あまり気を衒わないほうがよろしいかと・・・。
はい。