徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「シャニダールの花」―人の胸に寄生する美しい花の狂気―

2013-07-27 07:00:00 | 映画


イラクのシャニダール遺跡で、埋葬された骨とともに、花の化石が発見された。
野蛮とされたネアンデルタール人も、死者を悼み、花を捧げていたそうだ。
そんなところから、“人間の心の発生の瞬間”という説を唱える人がいるらしい。
このドラマの着想は、そこから生まれたようで、人が初めて生んだ花として、この名がつけられたとする‘仮説’である。

石井岳龍監督は、花はエロスと死の象徴といわれるところから、それに侵される男女の生命力の在り方をとらえなおすべく、人間と花の関係性にこだわり続けた。
それは、人の胸に花が咲くという寓話のような設定で描かれる、男女のある愛の形であるという。
二人を狂わす愛の花とは、どんな花なのか。






     
ごく少数の、限られた少女の胸にだけ、いまだかつて誰も見たことのない、美しい花が咲く・・・。

そんな、不可思議な現象が起こっている。
満開の時に採取されたその花の成分は、画期的な新薬の開発につながるとされ、億単位の価格で取引されていた。

シャニダール研究所に勤める植物学者の大瀧(綾野剛)は、セラピストの響子(黒木華)とともに、日々、選ばれた女性たちの胸に宿った謎の小さな蕾“シャニダールの花”の研究に追われていた。
彼らの使命は、提供者の胸に芽吹いた花を育て、最も美しい形で採取させること、つまりゲストハウスに収容されている彼女たちは、やがて咲くであろう自らの花を、研究所に高額提供することを義務付けられていたのだった。
また今日も、周知の大人たちには違和感を抱えて生きる、ハルカ(刈谷友衣子)という少女が母親に連れられて、新たに入院することになった。

一途な研究に没頭する大瀧と響子は、花の成長に誘われるように、次第に恋に落ちていく。
しかも、花を採取するときに、提供者の女性が謎の死を遂げるという事件が相次ぎ、大瀧は研究所に不信感を抱き始めた。
一方で、響子はそれが危険な花だと知りながらも、その花の魅力にのめりこんでいく。
そして、互いに惹かれあっていた二人の運命の歯車も、少しずつ狂い始めていくのだった・・・。

世にも美しい花といわれる、伝説のシャニダールの花が、二人の愛を狂わせていく。
研究所の施設(ゲストハウス)にいる女性たちの悦び、哀しみ、戸惑い、様々な感情は、花の成長に影響を及ぼしている。
花が人間を支配しているように・・・。

ドラマは、ときにミステリアスな展開を見せながら、登場人物たちの言葉少ないセリフとともに、静かな狂気がホラーのように漂う、何とも言えない不可思議で謎めいたシーンが続く。
これは、あくまでも虚構の物語である。それはそれでよろしい。
が、それにしても、登場人物たち、とりわけゲストハウスに収容されている、実験人間のような花を提供する立場にある、若い女性たちの心が読めないし、こじつけっぽい脚本も粗雑で安易な感がある。
かなり練られた脚本だというけれど、力量不足は否めない。

主役の大瀧と響子の関係も何だかよくわからないし、ここに出てくる少女たちを含めた登場人物たちの素顔とか、何故彼女たちがこの施設に入らねばならなかったか、何がどうして起こったのかなど、説明、描写不足で理解しにくい。
・・・というより、どうも理解できぬ。
とにかく、「人間」が描かれていないことには、どうしようもない。


石井岳龍監督作品「シャニダールの花」は、一風変わったドラマで、おやっと目を向けたくなるが、テーマ自体もはっきり見えない。
この作品を楽しめた人には申し訳ないが、いやいや、スクリーンの中の出演者たちも、どこか人形のように見える。
はっとさせるような、どんな思いつきであれ、着想だけでよい映画などできるはずもない。
映画のラストも、一見破滅へ向かうように描かれながら、永遠の世界観を暗示させるシーンになっているが、これとて通俗的でとってつけたようで・・・。
総じて、期待外れの一作である。
     [JULIENの評価・・・★★☆☆☆](★五つが最高点


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
それは (茶柱)
2013-07-27 19:45:17
残念でしたね。期待はずれだと期待した分だけ,ですものね。
映画はやっぱり期待以上のものを見たいものですね。
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Unknown (三崎東岡)
2013-07-28 00:07:50
シャニダールの花のハルカ役の刈谷友衣子さんは、TBSで放送予定の「木曜ドラマ9スクラップティーチャー教師再生」にもでるそうです。
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それでも・・・ (Julien)
2013-07-28 14:34:47
この作品を、高く評価している方もいるんですね。
映画は、わかりませんねえ。
これ、何だろうって、期待しますものね。はい。
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三崎東岡様・・・ (Julien)
2013-07-28 14:42:53
コメントをありがとうございます。
この女優さんも、他の出演者の方々も、恥ずかしながらほとんど存じませんでした。
刈谷友衣子さんは、雑誌モデルからデビューされたひとで、そういえば、いま放送中のNHK「激流~私を憶えていますか?~」にも出ていたんですね。
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