1946年製作のジャン・コクトーによる傑作や、アニメーション、ミュージカルなどでも親しまれたおなじみの物語だ。
もともとフランス生まれのおとぎ話で、今回は鬼才クリストフ・ガンズ監督のもと、フランスのスタッフ、俳優によって実写化された。
「アデル、ブルーは熱い色」でカンヌ映画祭パルムドールを受賞したレア・セドゥが、若々しい「美女」を演じ、スクリーン全体が絵画を思わせるような、重厚感あふれる映像世界を作り上げた。
物語は、ミステリアスでやるせない背景を紐解いていく過程に、新しい解釈をほどこしている。
妖しくも幻想的な美しさが、衣装や美術の細部にも徹底していて、自然の神聖さを感じさせる描写も目をひく。
霧にかすむ「メルヘン」の美しさに、ついついひきこまれる。
裕福な暮らしから一転、財産を失い、田舎へ引っ越してきた商人の娘ベル(レア・セドゥ)は、貧しい暮らしに不安を募らせる兄姉らに反し、のどかな生活に幸せを感じていた。
だがある日、父が吹雪に巻き込まれ、森の奥の古城に迷い込んでしまった。
そこで、愛娘ベルへの土産にと赤い薔薇を手折るが、その瞬間茂みから野獣が襲いかかる。
一日だけ命の猶予を与えられた父は、家族にことの全てを打ち明ける。
それを聞いたベルは、父の身代わりにと古城へ向かい、野獣(ヴァンサン・カッセル)の住むその城に囚われの身となってしまった。
姿は恐ろしいが、ベルには優しい野獣はかつての王子であった。
王子が野獣に姿を変えるまでに、何があったのか。
ベルは、心を惹かれながらその道を探っていく。
そして、野獣の過去が少しずつ明らかになるにしたがって、野獣の悲しげな表情とともに、ベルの気持ちも少しずつ変化していくのだった・・・。
夢と現実が入り交じる不思議なストーリーが、ファンタスティックに展開する。
野獣の姿を演じるヴァンサン・カッセルと、美しい娘ベルを演じるレア・セドゥ・・・。
華やかさと演技力を持つ、二人のスターが競演するドラマは、いろいろなドラマの要素を詰め込んでいて、満腹感をもよおすほどだ。
視覚効果十分、サービス精神たっぷりで、観ていて飽きない。
特殊メイクなしの野獣の演技は、洗練と凶暴の中に哀しさを漂わせており、このフランス映画「美女と野獣」は、童心に還って無心に愉しめる愛の物語だ。
気鋭のクリストフ・ガンズ監督は、1740年に書かれたヴィルヌーヴ夫人の原作小説を徹底検証し、この作品では隠され続けてきた野獣の過去に光を当て、スリリングな展開の物語に発展させた。
舞台装置の豪華さといい、優美な衣装といい、ため息の出そうな映像美は必見の価値は十分ある。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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そこにスポットを当てた作品ってちょっと気になります。
お話もそうですね。古い昔話ですもの。
ただ「実写」というのも珍しいのではないしょうか。はい。