徒然草

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映画「ラスト・プリンセス~大韓帝国最後の皇女~」―激動の人生を駆け抜けた悲劇の女性の物語―

2017-09-26 16:00:00 | 映画


 これほど悲しい人生があったか。
 祖国を愛し続けた、朝鮮王朝最後の皇女のドラマである。
 李氏王朝、日本統治時代を生きた皇女、徳恵翁王(トッケ・オンジュ)の悲劇を描いた作品だ。

 日韓併合と朝鮮王室消滅を図る政略に巻き込まれた皇女は、1912年生まれ、時代に翻弄され、時の権力者の意のままに、虐げられた人生を送らねばならなかった。
 「八月のクリスマス」 (1998年)、「四月の雪2005年)、「危険な関係」(2012年)ホ・ジノ監督が、この徳恵の悲劇を韓国目線で映画化した。




日本統治時代、大韓帝国の初代皇帝・高宗(ペク・ユンシク)の娘として生まれた徳恵翁主(ソン・イェジン)は、父の死後わずか13歳で日本への留学を強制される。
祖国へ帰れる日々を待ちわびながら、月日は流れ、大人となった彼女の前に、幼なじみのキム・ジャンハン(パク・ヘイル)が日本帝国陸軍少尉となって現れ、再会する。

ジャンハンは大日本帝国軍に従事する一方、密かに朝鮮独立運動に力を尽くしていた。
徳恵は、監視役のテクス長官(ユン・ジェムン)の目を逃れ、ジャンハンらの独立運動に協力するのだった。
彼は王朝復興のため、徳恵と皇太子である兄王を上海へ亡命させようと計画する。
信念に突き動かされた者たちは、激動の歴史の中で、想像を絶する運命に身を投じていくのだったが・・・。

朝鮮を支配していた日本を、ここでは声高に非難してはいないが、その非人道的な行為は胸に迫ってくるものがある。
希望を失って、絶望の渕をさすらう徳恵翁主が、圧倒的な存在感でこのドラマを牽引する。
この活劇交じりの史劇は、史実を土台にしたフィクションだが、緩急自在な展開に繊細な情感もにじみ、何と結構見栄えのする力作となっている。
祖国からも見捨てられ、終戦後も帰国を認められなかった皇女の悲しみが、痛いほどに伝わってくるのだ。

ドラマは、虚実を交えた悲劇を上手く作り上げている。
ここにも、戦争のもたらす悲劇がある。
ドラマの語り口はややメロドラマ調だが、韓国側から見た日本を描いているので、日本人がこの作品を観るとどうも居心地はよくない。
この韓国目線と向き合うとき、日本統治下の韓国がどれほど痛苦な思いをさせられたか、察するに余りある。

この時代は韓国人にとっても、決して誇れる時代ではなく、皇女の話も日韓の歴史の狭間に忘れられてしまった人物かもしれない。
いや、多分そうだろう。
その人物を掬い上げて、彼女のドラマティックな生涯を映画の題材とした。
徳恵翁主は、父親が日本の勢力に毒殺されたと信じていたらしく、おそらく抗日的な意識は最後まで拭いきれなかっただろう。
彼女は政略結婚を余儀なくされ、一人娘の自殺、自身の離婚など、過酷な人生を歩むが、映画の中の人物像は決して美化されていない。
終盤近く、統合失調症で錯乱するヒロインの姿は、鬼気迫る演技だ。

この韓国映画「ラスト・プリンセス~大韓帝国最後の皇女~」は、切なくても品格を備えた大河ドラマの趣きもある。
丁寧にまとめられていて、観て損のない良質な作品といえそうだ。
もっとも、亡命計画で失敗したジャンハン(パク・ヘイル)が銃弾に撃たれながら生きていたというのは、ちょっと出来過ぎの感は否めないが・・・。
まあ、国家戦略の駒とされるヒロインの姿が、感動と共感を呼び、「韓国観客動員560万人」のヒットを打ち立てたというから、この作品の人気のほどもわかるというものだ。
         [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
次回はフランス・ポーランド合作映画「夜明けの祈り」を取り上げます。


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