女子が男子に読んでほしい、恋愛小説のNO.1がこの映画の原作だそうだ。
ファンタジー・ノベル大賞受賞の作家越谷オサムの小説を、三木孝浩監督が映画化した。
現実から非現実へ・・・。
おやっと思われるような不思議なシーンが続く中、ありえないような不思議な世界のドラマを演出する。
様々な伏線を張りめぐらし、湘南の海岸を舞台に繰り広げられる、青春の詩情たっぷりの物語世界だ。
まあ、かなり強引な演出もないではないが、ちょっぴりミステリアスな味わいも・・・。
新人営業マンの奥田浩介(松本潤)は、気の弱い内気な男だ。
恋愛も奥手だし、カノジョもいない。
彼は、さえない日々を淋しく過ごしていた。
ある日、新しい広告のプレゼンテーションに訪れた仕事先で、美しく素敵な女性と出会った。
その瞬間、浩介に懐かしい記憶がよみがえる・・・。
彼女は中学時代の同級生で、渡来真緒(上野樹里)だった。
当時いじめられっこだった真緒を、浩介が助けたことがきっかけで、二人は生まれて初めての恋をした。
それは、浩介の転校から十年ぶりの再会であった。
太陽のように明るい真緒に、浩介は再び恋に落ちる。
真緒は、仕事をてきぱきとこなす女性に成長していた。
二人は、一緒に広告の仕事に取り組むことになり、さらに二人は永遠の愛を誓い合い、結婚する。
しかし、何故か真緒の身体は急速に弱っていく。
実は、彼女には誰にも知られてはいけない、“不思議な秘密”があったのだった・・・。
このあたりから、ドラマは上質なファンタジーの要素が重層的に加わり、転調していく。
真緒の異変に気づきながら戸惑う浩介、そして自分の知らない真緒の存在、ある事件を境に、真緒が浩介の前から突然姿を消してしまうという展開は、もはや非現実的な現象だ。
舞台の大半が湘南江の島で、荒唐無稽なラブストーリーも、観る人が観ればそれなりに楽しい。
ドラマは後半に入ると、民話のような色彩を帯びる。
爽やかでロマンティックだ。
陽気と悲しさが交錯し、大人でも十分楽しめる。
三木監督は、再会して間もない男女の距離感や、寄り添い感、そして初々しさを、どこまでも丁寧に撮っている。
そこがいい。
こういう作品にかけては、上手い演出を考える監督だ。
胸キュンのシーンなども随所に散りばめながら、二人の恋は、やがて奇跡のようにハッピーな終焉へと向かうのだ。
三木孝浩監督の作品「陽だまりの彼女」は、非日常的でファンタジックな世界へとつながっていく設で、10年にわたる純粋な男女の初恋物語として、切なくもリアルに描かれたドラマである。
若者も大人も楽しめる作品だし、原作にも登場するビーチ・ボーイズの楽曲も効果的だ。
愛されるより、愛することを選ぶ。
そんな言葉が合いそうな作品だ。
荒唐無稽はさておいて、おとぎ話みたいなこんな映画もよいではないか。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
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度が過ぎるのは「・・・」ですが。
伏線を張り巡らして、ちょっとミステリアスですが・・・。
ドラマは中盤に至る前に、ネタがばれてきますけれどね。