徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「森崎書店の日々」―古書店に借り暮らして―

2011-02-14 02:30:45 | 映画
   

こういう映画もあるのだなあ、という感じの作品だ。
大人へと成長する女性の、小さな躓きとささやかな希望・・・。
季節とともに移り変わる、古書店“森崎書店”と、古書の街、神保町の風景が淡々と綴られる。

新鋭日向朝子監督は、この作品を一つの地域映画として、都会の片隅で普通に生きて暮らしている人々を、実にささやかに丁寧に描く。
ドキュメンタリーの中に織り込まれるように、心の奥で欲していた優しさをにじませて、神保町という舞台が選ばれたのだった。

貴子(菊池亜希子)は、同じ会社に勤める恋人の竹内英明(松尾敏伸)が、職場の別の女性と結婚すると知らされて、気が動転してしまった。
恋人だったはずの彼を失って、彼女は会社を辞めてしまうのだった。
そんなときに、傷心の彼女のもとに、叔父サトル(内藤剛志)から、店の仕事を手伝ってくれないかと依頼を受ける。
サトルは、神保町で古書店を経営していた。
貴子は、しばしこの古書店に借り暮らしをすることを決心した。

はじめて足を踏み入れた、世界に有数の古書店街神保町・・・。
店番をして、百円の文庫本が売れただけ、それが彼女の初仕事であった。
貴子は、失意と孤独の中で、この古書店と出会い、そこに出入りする様々な人たちと触れ合いを重ねることで、次第に回復して大人へと成長していく。

彼女は、ふと手にした本を開き、次第に本の世界に引き込まれていく。
古本には、たとえば押し花が挟んであったり、気に入ったところにラインが引いてあったり、小さなメモがあったりと、前の持ち主の痕跡が残っている。
人は、それぞれが口にしないけれど、それぞれが過去を持っている。
そんな生活の中で、貴子は街に慣れ、神保町という街そのものが一冊の本みたいで、そこには、途方もない世界が広がっているように思えてくるのだった・・・。

神保町の古書店街は、よく足を運んだこともあって、妙に懐かしさがあふれ、文字通り本屋だらけの面白い街だ。
ここには、何か惹かれるものがある。
日向監督も、そこに不思議な魅力を感じて、いまあるこの街の姿を、映画「森崎書店の日々」として撮っておきたいと考えたのだそうだ。
ちよだ文学賞大賞を受けた、八木沢里志の原作を読んで、主人公貴子の、失意とささやかな回復と成長を、夏から冬へと移り変わる神保町の風景の中に描いた。

作品は、ひとりの女性の物語に過ぎないが、同時に神保町という街の物語だ。
アクション映画の派手さも、強いメッセージもあるわけではない。
地味な作品だが、淡々とした空気感と、そこには何やら優しさと癒しのような空間もあって、これもまた心地よい。
個人的には、希少本や絶版本を集めるマニアでもないけれど、でも古本探しというのは、ときには結構楽しいものだ。
ふと立ち寄った古書店の片隅で、懐かしい古本とめぐり合ったときの、あの小さなときめきは何とも言えないものだから・・・。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんな映画が (茶柱)
2011-02-15 00:23:28
有るんですねー。
神田はあまり行ったことはありませんが、古書店は結構好きなんですよね。大型店じゃなくて、商店街の隅にこっそり建っているようなのが。んー・
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古書店というのは・・・ (Julien)
2011-02-15 14:05:45
いいものですよね。
好きですねえ、私も・・・。
べつに本を買わなくてもいいのです。見ているだけでも、ええ。
意外とあきないんですよ。
そのうちに、結構時間のたつのも忘れてしまったりしまいましてね・・・。(笑)
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