それは、狂おしいほどの激しい愛だったのか。
フィリップ・ガレル監督は、愛に身を焦がし、愛に翻弄される人間の姿を捉える。
つつしみ深いほどに美しい映画女優と、若く奔放な画家が、傷つけ合いながらも堕ちていく。
欲望と嫉妬が絡み合って・・・。
ガレル監督の息子ルイ・ガレルと、イタリアの宝石といわれる 「昼下がり、ローマの恋」のモニカ・ベルッチの共演が見ものだ。
鮮やかな色彩で描かれる、フランス・イタリア・スイス合作のラブストーリーだ。
パリ・・・。
俳優を目指しているポール(ジェローム・ロバール)は、友人の紹介で、若くて奔放な画家フレデリック(ルイ・ガレル)と出会った。
フレデリックには、イタリアで女優をしているアンジェル(モニカ・ベルッチ)という妻がいた。
ポールはフレデリックに誘われ、恋人のエリザベート(セリーヌ・サレット)と、彼らの住むローマを訪れる。
そのローマで・・・。
美しく魅惑的なアンジェルが、自分以外の男の視線にさらされるのを見て、フレデリックは苛立ちを隠せない。
彼の屈折した愛に、アンジェルは苦悩する。
そして、その様子を目の当たりにする、ポールとエリザベートの困惑・・・。
照りつける太陽の日差しのもと、嫉妬と欲望が絡み合って、四人の男女の、ひと夏の熱い日々がこうして始まったのだが・・・。
フィリップ・ガレル監督は、亡くなった友人であり画家のフレデリック・パルドをモデルに、息子のルイ・ガレルとハリウッドでも活躍しているモニカ・ベルッチの、友情や激しすぎる愛を色鮮やかに描き出している。
共同脚本は、妻カロリーヌ・ドリュアス=ガレルが担当する。
父のモーリス・ガレルにとっては、遺作となった。
ガレルが師と仰ぐ、ジャン=リュック・ゴダールの「軽蔑」への返歌ともいえる愛の物語である。
フィリップ・ガレル監督のこの映画「灼熱の肌」は、愛ゆえの狂気を描いた「愛の残像」と並び、珠玉のような小品だ。
でも、恋ゆえに嫉妬に苦しむフレデリックの死は、突然すぎてにわかには理解し難い。
嫉妬といえば大抵女だが、ここでは女ではなく、男の苦悩が前面に露わで、その深さはどれほどのものであったか。
また、彼が愛したアンジェルの奔放な心のうちは・・・?
いつの時代も、愛が嫉妬を生み、嫉妬が愛を狂わせる。
女の嫉妬もあれば、男の嫉妬もある。
それが、ただならぬ悲劇を招くこともある。
怖ろしいものだ。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
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嫉妬のあまり死んじゃうんですか・・・。確かにちょっと分かりかねる心理ですね。難しい。
そこには、きっと男女の愛が絡んで・・・。
愛あればこそです。
嫉妬といえばジェラシーですよね。
ジェラシーといえば、タンゴなのです。
あれ、いい曲ですよねえ。
あ、映画とは関係ないのです。どうも・・・。