実際にあった、嘘のような本当の話を、キャメロン・クロウ監督が映画化した。
しかも、誰にでも起こりうるキセキ(奇跡)として描いた。
2006年に、イギリスの動物園を買い取り、家族とともにそこへ移り住んだ、イギリス人ジャーナリストの実話である。
失った人を忘れるのではなく、深く愛し続けながら、悲しみから立ち直ろうとする主人公が、爽やかな元気を招く。
コメディの要素もたっぷりの、人と人の絆を描く、温かな物語だ。
大人も子供も、素直に楽しめる作品だ。
今回は、試写会での鑑賞となった。
ベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は、ロサンゼルス新聞のコラムニストで、危険な冒険に挑むリポーターだった。
ベンジャミンは、半年前に最愛の妻を亡くし、シングルファーザーとなった。
彼は悲しみを抱えながら、14歳の息子と7歳の娘の,幼い二人の子供たちと、悲しみと混乱の中にいて、新しい人生を歩み始めようとしていた。
家族に元気を取り戻そうと、仕事を辞めたベンジャミンは、郊外の18エーカーの土地に建つ古くて素朴な家を買った。
ところが、何とその家は、ローズ・ムーア・アニマル・パークと呼ばれる、動物園のおまけがついてきた。
そこの動物たちの世話をしていたのが、ケリー・フォスター(スカーレット・ヨハンソン)を中心とする、献身的な飼育員のチームであった。
経験もないし予算もない中で、ベンジャミンは、飼育員や地元の人々の助けを借りて、動物園の再会を目指すのだった。
ベンジャミンの仕事は、もはや冒険リポーターではなく、いまや毎日の暮らしそのものが冒険となっていた。
しかも、その冒険は、彼の家のすぐ裏庭で起きていたのだ。
果たして、ベンジャミンが動物園を買った本当の理由は、何だったのか。
ラストシーンには、愛する人をもっと大切にしたくなる、サプライズが用意されている・・・?!
9カ月もかけて、実際に建設された動物園のセットが、このドラマの見ものだ。
大農家スタイルの大きな家といい、原作の舞台はイギリスなのだが、映画の舞台はアメリカだ。
ロケの場所は、ロサンゼルスの郊外だというが、よくこんな場所が見つかったものだ。
子供が反抗期で問題を起こし、父親のベンジャミンが学校に呼び出されたりと、彼はいろいろと苦労が絶えないがよくやっている。
登場人物たちの心情を表すかのような、音楽の使い方(選曲)がいい。
クロウ監督がこの映画を作りたかったのは、誰もが幸せになってほしいからであり、そこに生きようとすることの意味を感じ、喪失感が逆に意欲や希望やエネルギーに変わりうることの素晴らしさを、訴えたかったのだ。
映画のクライマックスで、映画のモデルとなった、実在のベンジャミンら主人公たちが友情出演しており、作品の中で「パパはほかの人のパパよりずっとハンサム。だって、ほかのパパはみんなハゲてるんだもん」というシーンでも、映画では娘のロージー役の実在の娘エラちゃんが登場し、とにかくベンジャミン一家が総出で登場しているのも見逃せない。
深い悲しみから立ち直ろうとする主人公を、「ヒア・アフター」のマット・デイモンが心のこもった演技で見せ、動物園の飼育員という役どころを演じる、「それでも愛するバルセロナ」の実力派女優スカーレット・ヨハンソンは、ここではセクシーなイメージを一新し、真面目で現実的な女性を演じている。
キャメロン・クロウ監督のアメリカ映画「幸せへのキセキ」は、あまり癖がなく、どこまでもミラクルな物語だ。
見終えたときに、悲しみを乗り越えた幸福感に思わずほっとして顔がゆるむ、ヒューマンでちょっぴり感動的な作品だ。
映画の原題は「We Bought a Zoo」だが、邦訳のタイトルは、あまり感心しない。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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コメントをありがとうございました。
なかなか、ほっこり気分にはなれませんものね。
明るい希望といっぱいの元気がほしいものです。
いや、いや・・・。
まあ,世間が殺伐としていますから,映画ぐらいはほっこりしたいものですね。