徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

文学散歩「絵本作家 西村繁男の世界展」―やこうれっしゃで出発!―

2016-08-21 18:00:00 | 日々彷徨


 西村繁男(1947年~)の、奔放で奇想天外な絵本を含め、多彩な魅力溢れる作品世界を、原画を中心に展観している。
 9月25日(日)まで、神奈川県立近代文学館で開かれている。
 かつての〈昭和〉という時代を髣髴とさせる、リアルで、あたたかな世界が広がる。
 絵本原画をはじめ、取材メモ、ラフスケッチなどの資料を交えて紹介している。

 1980年(昭和55年)に、「こどものとも」絵本として発表された『夜行列車』など、文字のない絵本でありながら、ひとりひとりの人物をその表情まで細やかに描きだし、読者の想像力をかきたてる。
 発表されてから35年以上たっているが、いまなお読み継がれている。
 これらの多彩な作品群は、どれを見てもあきないものばかりだ。












注目される「絵で読む 広島の原爆」(1995年)などは、西村繁男長年の自分の宿題としていた取材を重ね、試行錯誤の繰り返しから生まれたすぐれた絵本である。
子供たちも大人たちにも、平和の尊さを訴え続ける意義深い作品で、一見に値するものだ。
人と、人を取り巻く社会を描くことを目指してきた、西村繁男の原点を見る機会だ。
どの作品群も豊かな物語性があって、子供から大人まで魅了するもので、結構楽しく見ることができる。

9月3日(土)には西村氏本人の講演「人と出会って絵本が生まれる」9月19日(月・祝)には西村氏とのコンビで沢山の絵本を生み出している絵詞作家内田麟太郎氏の講演「西村繁男さんと がたごとがたごと」も予定されている。
いずれも、作品誕生の舞台裏やエピソードについて語る講演で、ほかにもギャラリートークなど関連イベントがある。

暦の上ではとうに立秋を過ぎて、なお厳しい残暑が当分続きそうだ。
連日、日本のメダルラッシュに歓喜した、リオデジャネイロのオリンピック熱戦もようやく終盤を迎えて、こちらも目が離せない賑やかさだった。
この時期、シネコンをはじめ街の映画館や図書館も、涼を求める(!?)子供から、学生、大人たちで混み合っている。
そんな中で、たまたま人気(ひとけ)の少ない、ゆったりとした時間が流れる、よく空調のきいた文学館の静かな空間でのひとときも、また捨てたものではない。

次回はインドシナ映画「鏡は嘘をつかない」を取り上げます。