徒然草

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映画「パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト」―その苦悩と歓喜の軌跡の中で愛を紡ぐ情熱のフラメンコ―

2016-08-18 16:30:00 | 映画


 フラメンコの地・アンダルシアから世界へ。
 フラメンコギターに、新しくジャズなどの要素を取り入れ、活躍の場を広げた、天才の生涯を綴る伝記ドキュメンタリーだ。
 パコ・デ・ルシアは、超絶技巧に歌心を持ち合わせ、2014年に66歳で急逝したのちも、ジャンルを超えてミュージシャンの世界にも影響を与え続ける、天才フラメンコギタリストだ。

 情熱的な演奏と、彼が育ったアンダルシシアの風景の素晴らしさは、スペイン音楽そのものだ。
 クーロ・サンチェス監督はパコの実の息子であり、プロデュサーのルシア・サンチェス・バレラと脚本の共同執筆者カミルダ・サンチェスは、監督の姉妹だそうだ。










パコ・デ・ルシアについては、この映画を観るまでほとんど知らなかった。
作品は、郷愁の漂う映像と、インタビュー映像を絡めながら、テンポよく編集されている。
彼がフラメンコ界において、いかに偉大な天才であるかが分かろうというものだ。

ギターの爪弾き、超絶テクニック、正確なリズムを探求する姿は、孤高の音楽家である。
フラメンコに革命をもたらした男だ。
天才の光と影・・・。
この映画の冒頭及び終幕の場面は、マジョルカ島のパコの自宅で撮影された。
パコは、メキシコに滞在していたときに、心臓発作に見舞われて急逝した。
カメラは、その直前まで誰にも見せなかった、彼の人生、政治、芸術、孤独に対する深遠な考えを、プライベートな素顔とともに余すところなく映し出している。
映画では、独裁政権が崩壊し、音楽世界の広がる時代風景にも触れている。

世の女性たちの心を鷲掴みにし、頑なまでの完璧主義といい、音楽探求の執念は狂気に近く、その生き様に刻印された、栄光と挫折の軌跡をたどってみるがいい。
そして、それはまた、伝説のギタリストの苦悩と歓喜の軌跡でもあろうか。
スペイン映画「パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト」は、音楽映画としてのドキュメンタリーであり、官能的で華麗な旋律が奏でる名演奏シーンには心が震える・・・。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点