徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」―熱き仲間たちの名誉も栄光もない過酷な挑戦―

2016-08-09 22:00:00 | 映画


 仲間との絆と友情のため、最も過酷な登攀を余儀なくされた遠征隊がいた。
 極寒の地獄の中、知られざる77日間の真実を、イ・ソクフン監督が綴った。
 2005年に、山岳史上最も壮絶なドラマが演じられた。
 俳優たちは、本物の遠征隊を髣髴とさせる、臨場感あふれるリアルな映像を作り上げたのだ。

 そこは、人間が近づくことの許されない、神の領域だった・・・。
 エベレストで遭難した登山仲間のため、遺体回収を敢行した、韓国の英雄的登山家オム・ホンギル率いる登山隊の実話をもとにしている。










2004年、その悲劇は起こった・・・。
登山家オム・ホンギル(ファン・ジョンミン)は引退後、手塩にかけて育て、ヒマラヤ4座を登頂した最愛の後輩パク・ムテク(チョンウ)が、エベレスト登頂成功後のが下山途中の遭難死したことを知る。
ムテクが遭難した地点は、人間が存在できないデスゾーンと呼ばれる、エベレスト地上8,750メートル付近だ。
遺体の収容は不可能とされていた。

誰もが諦める中、足を悪くして引退したホンギルだったが、数々の偉業を成し遂げたかつての仲間たちを集め、“ヒューマン遠征隊”を結成した。
そして、山頂付近の氷壁に眠るムテクと、帰りを待つ家族のため、危険かつ困難なデスゾーンの登攀に挑むのだった。
「必ず迎えに行くから」という、登山仲間との最後の約束を果たすために・・・。

ヒマラヤ、モンブランなどでの撮影は5カ月に呼び、死線を超えた男たちの熱い友情のドラマは完成した。
仲間の遺体回収ということだけを目的に、世界最高峰の山で、危険極まりない決死の捜索が行われる。
韓国の名優ファン・ジョンミンが、今回は実在のカリスマ登山家に扮し、強く優しさを兼ね備えた理想のリーダー像を、全身で体現している。
登山には新人で、やがて成長し、自分が隊長としてエベレストに挑戦する好青年ムテクを、チョンウがシリアスに緊張感を盛り上げていく。
多分この作品は、韓国での本格的に山岳を扱った映画ではないか。
吹雪や雪崩、そしてクレバス、厳寒の中のロケーションによる本物の臨場感と、荘厳で雄大な大自然のスペクタクル映像を見るだけで胸がわくわく躍る。

イ・ソクフン監督韓国映画ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆」で語られるもの、それは仲間たちの友情、夢、そして生と死といった普遍的なテーマの数々である。
この作品はその意味でも、すでに山岳映画の域を超えたヒューマンドラマであり、期待にたがわぬ作品だ。
ヒマラヤには、今も多くの登山家の魂が眠っているという。
彼らは、祖国の家族のもとへ帰るという夢をかなえることができず、志半ばで亡くなった。
ヒマラヤの8,000メートル峰というだけで、人間の能力を超越した世界だ。
その頂きへの挑戦は、まさに命がけの行為で、作品には深い余韻が残り胸熱くなる力作といえる。
      [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
次回はアメリカ映画「シークレット・アイズ」を取り上げます。