徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「あなたを抱きしめる日まで」―切なくつらい過去への心の旅路―

2014-03-28 14:33:42 | 映画


 親子の生き別れが、いかにそれぞれの心に深い傷痕を残すか。
 スティーヴン・フリアーズ監督は、シリアスな実話をもとにユーモアを交えて描いた。

 50年前に、カトリック修道院によって幼い息子と引き離された、ひとりの老婦人の息子探しの旅を、個人史に寄り添うように、悲しみの中にたどる旅路である。
 そこには、本来人間の救済が目的であるはずの教会が、婚外子を金銭と引き換えに、非情な養子縁組を行っていたという、驚愕の事実も・・・。
イ ギリス映画の佳作である。









<iframe src="//www.youtube.com/embed/8je10N93Skk" frameborder="0" width="560" height="315"></iframe>

<iframe src="//www.youtube.com/embed/8je10N93Skk" frameborder="0" width="560" height="315"></iframe>


1952年、アイルランド・・・。

若き十代のフィロミナ(ソフィー・ケネディ・クラーク)は、未婚のまま妊娠してロスクレアの修道院に収容される。
そこには、同じ境遇の多くの少女たちがいて、出産の面倒を見てもらいながら働かされていた。
フィロミナは男子を出産するが、やがて子供は彼女から奪われ養子に出されてしまう。

・・・それから50年後、娘のジューン(アンナ・マックスウェル・マーティン)に、フィロミナ(ジュディ・デンチ)は自分の秘密を打ち明けた。
老いた母親の告白を聞かされた彼女は、政府の元広報担当でジャーナリストのマーティン・シックススミス(スティーヴ・クーガン)に依頼して、母親に会ってもらう。
最初は断っていたマーティンも、フィロミナの話に引き込まれ、ここから二人の息子探しの旅が始まる・・・。

生き別れの息子を探す、母親の物語は悲しい。
その悲しみを、ユーモアが救っているのだ。
取材する側とされる側の偶然から始まった、二人の旅である。
二人はわずかな情報を頼りに、アメリカへ。

実話をもとにした物語の先には、思いもよらぬ真実が浮かび上がり、政治や宗教、差別といった、様々な問題点も見え隠れする。
重く悲しい旅路のはずが、フェロミナとマーティンの二人のちぐはぐなな掛け合いが笑わせ、ドラマは飽きさせることなく、ちょっとしたミステリアスな要素を交えながら、後半、修道院時代の真相が次第に明らかになりあたりから、緊張感が高まる。
とりわけ、フェロミナと修道女が50年時を経て向き合う最後の場面は、熱く、強く胸に響く。

スティーヴン・フリアーズ監督イギリス映画「あなたを抱きしめる日まで」は、信仰に生きる修道女が、何故人身売買というような愚行に及んだかなど、この謎を、すべてこの作品が描き切っているとは言えないが・・・。
・・・子を想う親の愛の深さが、心にしみる。
ヒロインのジュディ・デンチは、そこにいるだけで存在感があり、ときとして輝くばかりの表情を見せる彼女の演技が素晴らしい。
息子探しの旅のラストは、アイルランドのみならず、アメリカの社会問題をもはらんで、衝撃的な結末を迎える。
深い、余韻の残る作品である。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点