徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ハナミズキ」―夢は叶えられるためにある―

2010-08-25 22:00:00 | 映画

土井裕泰監督の、遠距離恋愛を描いたピュアなラブストーリーだ。
女性の自立という視点から、若者たちの10年の歳月を綴る。
10年という時の流れの中で、人はいかに生きたか。
いかに変わったか。
あるいは、変わらないものは何か。
それが、愛か。
そこには、様々な小さな「奇跡」も生まれる・・・。

海外で働くことを夢みて、平沢紗枝(新垣結衣)は勉学に励んでいた。
彼女は幼い頃に父を亡くし、北海道で母の良子(薬師丸ひろ子)と二人で暮らしていた。
つつましく暮らす家の庭には、ハナミズキが大きく育っていた。
自分の病状から、娘の成長を見届けることができないと悟った父(ARATA)が、幼い娘への思いを込めて植えたものであった。

紗枝は高校生になって、東京の大学への進学を目指していた。
彼女は、ふとしたことから、別の高校に通う木内康平(生田斗真)と偶然出会い、恋に落ちた。
紗枝は、その康平に励まされながら、大学に合格し、進学した。
そして、紗枝は東京へ、康平は北海道に残り、猟師の仕事を続けていた。
こうして、二人の遠距離恋愛が始まる。

夢に一歩ずつ近づき、華やかな都会暮らしで、だんだん美しくなってゆく紗枝の姿は・・・。
故郷に残った康平の心に、小波が立ち始めていた。
そんな時、紗枝の前に、同じような夢を抱いて前向きに生きている、大学の先輩・北見(向井理)が現れたのだった・・・。

10年という歳月の流れを、北海道、東京、ニューヨーク、カナダを舞台に、描いている。
時が流れていくその間には、いろいろな出会いや別れ、家庭環境や状況の変化もあり、紗枝と公平の二人は、不器用なすれ違いを繰り返したりもする。
それは、お互いのことを想うあまりでもあった。

二人が高校を卒業してから、一緒に過ごした時間は少なく、おそらくは数日しかなかった。
あとは、互いを想いながらの、いわゆる遠距離恋愛の日々であった。
10年の歳月は、決して軽くはない。
それぞれの人生に見えてくるものには、悲しみもあれば歓びもある。
ぎごちない高校生の二人が、別れと再会を重ねつつ、二十台の後半にさしかかって、大人としての落ち着きも出てくる。
変わったこと、変わらないこと・・・。
二人は、お互いがたとえ傷つくことになったとしても、自らを決断する意志だけは、確かに持ち続けていたのだった。

決して、いたずらに運命に翻弄されているのではない。
ドラマは、ピュアな時の流れを刻みながら、ロケ地の風景の移り変わりとかかわりあうように、彼らがともに過ごした歳月をすがすがしく綴っていく。
主題歌「ハナミズキ」(一青 窈)の優しい響きも、この愛おしい純愛映画にはよく似合うようだ。
作品は、ややもするとドラマの冗長さが目立ち、やたらと偶然の多いメロドラマになってしまっていることは気がかりだ。
この種の物語としてはきわめて平凡で、自然と先の展開が読めてきてしまうあたり、どうも構成に幼さも残る。

人の運命は、いつどこでどう変わっていくものか、誰にも分からない。
わからないのが人生だ。
土井裕泰監督作品「ハナミズキは、将来の人生設計がまるで違う、異質の二人の間の距離、その距離の壁に立ちはだかる、あるひとつの青春の愛を描いていて、あくまでもすがすがしい。
ただこの映画、特別に新味を感じる作品とまでは言いがたく、真夏の炎暑の中の清涼剤としてなら・・・、といったところだろうか。