徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「レボリューショナリーロード」―幸せのあとさき―

2009-01-28 20:00:00 | 映画

それは、誰もが逃れることのできない、運命の愛だったのか。
あなたの最愛のひとは、果たして今でもあなたを愛していますか・・・。

アカデミー賞作品賞にも輝いた空前のヒット作「タイタニック」(97)から、レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットという、映画史上にその名を残したカップルが誕生して早くも11年、華も実もある大人のスターの再共演だ。

舞台は、高度成長期1950年代のニューヨーク郊外ということになっている。
“レボリューショナリーロード”と名づけられた新興住宅街に住む、ウィスラー夫妻の物語である。

映画「アメリカン・ビューティー」(99)で、アカデミー賞作品賞と監督賞を手にした、サム・メンデス監督の作品だ。
私生活では、サム・メンデス夫人でもあるウィンスレットとは、この作品でも初のコラボレーションということになる。
ディカプリオは、ウィンスレットとは友人同士というから、知性派、実力派の三人がタッグを組んで大人の愛の表現を実現した格好だ。
さて、その出来ばえは・・・、となるとどうだろうか。

アメリカ・コネチカット州・・・。
エイプリル(ケイト・ウィンスレット)とフランク(レオナルド・ディカプリオ)のウィラー夫妻は、二人の可愛い子供に恵まれ、美しい家に暮らし、誰もが憧れる理想のカップルだった。
フランクは、ここから毎日ニューヨークの大会社に通勤し、その間エイプルは、こじんまりとした可愛い白い家で、愛くるしい二人の子供の面倒を見ていた。

あるパーティー会場で、二人は初めて出会った。
フランクは彼女の輝くような美しさに、エイプリルは彼の個性豊かなきらめきに惹かれ、人生が素晴らしいものになると信じて結婚した。
誰もがうらやむ、家族の生活であった。

しかし、実は二人の心中にはそれぞれ静かにしまいこまれていた思いがあった。
フランクには漠然と抱いていたヨーロッパで成功する野望が、エイプルには夢みていた女優の道が・・・。
その後も、はた目には理想的な夫婦、家族であり続けたが、7年間の結婚生活中胸に秘めた思いは、徐々に二人の関係を蝕んでいたのだった・・・。

そんなある時、それぞれの‘輝かしい未来’と‘完全な自己実現’のため、エイプルはひとつの計画を提案する。
それは、このいま住んでいる家を引き払い、パリで暮らそうというものだった。
「本当は生きていなかった、これまでの歳月を取り戻すために」二人は、その大きな賭けに出ることを決意する。

・・・そして、やがて訪れる葛藤・・・。
大きな渦の中で、二人の運命が試される賭けでもあった。
そのことが、理想とはかけ離れた、愛が燃え尽きるまでの、崩壊の序曲であるとも知らずに・・・。

この作品に見えるのは、誰かを愛する余裕すら残さなかった妻の不幸かも知れない。
美しい妻エイプルが、楽々と手に入れた常識どおりの幸せは、自分が本当に望むこととは違うことに、気づいていなかったし、考えもしなかったことなのだ。
これを、人間の勝手なエゴイズムと言ってしまえばそれまでだ。

真面目に働き、一度だけの自分の浮気まで妻に告白する夫に、妻は顔色ひとつ変えない。
夫婦の考え方の違いが次第に露呈され、いさかい、ののしりあいはエスカレートしていくあたり、通俗的な筋立てに見えて、どうも感心できない。
パリへの移住は結局実現しないのだが、思いつきも唐突だし、妻エイプルの変節、心の動きもにわかには理解しがたいところで、メンデス監督は、もう一歩も二歩も踏み込んで欲しかった。
それに、案外あっけない結末の幕切れも、フランクならずともがっかりだ。
せっかく素晴らしい演技者を揃えていて、最も重要な女の心の変節の過程を十分に描ききったとは言えない。
とくにこの作品の後半の部分は、濃密なドラマであるだけに、通俗に流れず、女の心の痛み、男の心の惨めな本質にもっと迫ってよかったのだ。
作品の芯(核)がゆるい。

人は誰でも、いつの時代にも自分らしく生きたいと願っている。
それは、夫婦とて同じだ。
世界中に共通する普遍的なテーマだろう。
サム・メンデス監督のアメリカ映画「レボリューショナリーロード 燃え尽きるまでは、エモーショナルだが、決して甘やかなものではなく、壊れやすい結婚生活を描いている。
・・・夢と理想を追い求めていたはずのフランクの前に、予期せぬ衝撃の出来事が待ち受けていたのだった・・・。